桜の園 公演情報 桜の園」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.1
1-7件 / 7件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★

    鑑賞日2025/01/20 (月) 12:00

    座席1階S列1番

    価格12,000円

     ケラさん(長いので省略しているだけで、知り合いってわけではないよ)の舞台で不満足だったことなんて滅多にないのだが、今回はさすがに両手を挙げて賞賛ってわけにはいかない。正直な話、チェーホフを題材にして、ケラさんは何をしたかったんだろうかと、観劇中ずっと首を傾げながら観る羽目になってしまった。
     オリジナル戯曲の数々で、演劇界のトップに昇り詰めたケラさんである。ブラック・コメディでは定評のあるケラさんなのである。それがどうしてまたチェーホフのような古色蒼然とした戯曲に惹かれたのか、と訝しんでいたが、観劇していざ感想を述べようとしても、「何かよう分からん」としか言葉が出て来ないのだ。私に語彙力がないという意味ではなく(まあ、ないけどな)、『桜の園』に本来内包されていた人間悲劇と喜劇、それが形象化されてるとは到底思えなかったからである。
     いずれ映像化されて、どの公演かをご覧になる方も多いと思われるが、生で観ても何とも茫洋として凡庸な出来にしか思えぬこの舞台、映像だとひたすら退屈にしか思えないのではなかろうか。
     ……いや、劇場ではそこそこ笑いも起きてたから、ケラさんファンには面白い芝居だったのかもしれない。チェーホフだって、その人物造形において「笑い」を担わされてるキャラクターはいるのだから、これまで観てきた多くの『桜の園』の舞台で笑いは起きていたのだ。
     しかし今回の笑いは違う。観客はチェーホフではなく、ケラさんによってオリジナルから改変された新しい台詞回しに笑っていたのである。
     つまり、ケラさん版『桜の園』は紛れもなく『ケラさんの桜の園』であり、『ケラさんの桜の園withチェーホフ風味なんちゃって』ってな作品になっちまっていたのだ。……チェーホフの味わいはほぼ雲散霧消。なら、全編ケラさんオリジナル戯曲にすればよかったのに。チェーホフ借りてくる必要、なかったんじゃね?
     悪く言えばそういうことになる。(以下ネタバレ)
     

    ネタバレBOX

     古典作品を現代化する意義はどこにあるのか。それはその戯曲の根底に、時代を超越した普遍性が潜んでいると見出だせるからだろう。ロシアの没落貴族の物語など、そのまま提示されても現代日本人の観客の共感は呼べまい。
     従来の『桜の園』の演出家は、彼ら彼女らの悲喜劇を、現代日本人にも通じる「別離」の物語として捉え直して来たのだ。
     そのためある劇団は、舞台装置に凝り、登場人物たちをエキセントリックに彩り、またある劇団は装置そのものを廃し、演者には衣装をも廃した黒子に徹するように指示していた。実際、先鋭的な『桜の園』は腐るほど観てきたのだ。
     それが、ケラさんの舞台はどうだろう。セットはいかにもロシアの豪邸の一室である。女主人は女主人らしいドレス、メイドはメイド服、みんな当たり前で工夫がない。別に普通でおかしくないじゃん、と仰る方もあろうが、フツーって、フツーだなあと思われちゃったら、それは貧弱、貧相に見えるってことなんだよ。演劇としての華がない。
     実際、見事なくらい、あのチェーホフ戯曲の登場人物たちが纏っていたオーラが減殺されてしまっていたのだ。更に、それに輪をかけて、ケラさんお得意の“信者にしか受けない”ギャグがキャラクターを陳腐なものにしていく。
     『桜の園』を、このケラさんバージョンで初めて観たって人はどれくらいいるだろうか。それなりに面白かったと感じた人はまだ幸せだが、つまんなかったと感じた人は、全くの不幸である。その人は“本当の”『桜の園』を知らない。
     『桜の園』は面白いんだよっ! 余計なギャグで色付けしなくたって、キャラクター同士のやり取りだけで笑いを呼べるんだよ。
     なのにケラさんの舞台は、キャナルシティの大きな舞台を持て余しかのように、役者と役者との間もチグハグで、二者の間が遠すぎたり近すぎたり、観客の視点誘導の計算が全然なってなかった。あれじゃ素人劇団の舞台と変わらんわ。
     おかしいなあ、ケラさん、こんなに下手な演出家じゃなかったはずなのになあ。やっぱりチェーホフ相手だと手に余ったってことなのだろうか。それとも単に相性が悪かっただけだろうか。これがケラさんの一時的な黒歴史に過ぎないことを祈りたい。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    チェーホフはよく判らん。S席12000円⁉『江戸時代の思い出』が面白かったのと天海祐希さんを(多分)観たことがなかったのでこわごわと抽選予約に参加。当選してしまった。『桜の園』自体は観ているがそこまでハマってはいない。

    小間使いドゥニャーシャを野口かおるさんだと思って観ていた。途中、「そういや池谷のぶえさんも出てたな」と思い、「もしや!」とやっと気が付いた。そのぐらいキャラ変している。同じくロパーヒン(荒川良々氏)もやっと気が付いて驚いた。従僕ヤーシャ(鈴木浩介氏)もかなり後になって気付く。こんなキャラも演れるのか!?禿ヅラ被った大学生トロフィーモフ(井上芳雄氏)にも驚く。こんな贅沢な配役はない。わざとイメージと違うキャラを演らせるギャグなんだろう。
    それにしても女主人ラネーフスカヤ夫人(天海祐希さん)の登場シーン。スターのオーラ。思わず客席は拍手しそうになっていた。背が高くピンと立ち、誰よりも際立つ存在感。これはファンが付くわけだな。宝塚でトップを張るとはこういうことだ。
    家庭教師シャルロッタ(緒川たまきさん)のマジックもなかなかのクオリティ。老僕フィールス(浅野和之氏)も流石。屋敷の事務員エピホードフ(山中崇氏)の「ね」。隣の地主ピーシチク(藤田秀世氏)の借金をねだるクズっぷり。

    ネタバレBOX

    第一幕は人物説明で第二幕からスタート。舞踏会シーンで木目の扉が向こう側からライトを浴びると中が透けて見える演出が効果的。結局何も出来ないままパリの愛人のもとに帰る天海祐希さん。ずっと選択が出来ない。ただ時間が過ぎ去るのを待っているようだ。
    今回の『桜の園』も何か違って見えた。何が正解かは解らないがこれじゃない。クーラーをかけているのか?と思う程客席は寒かった。

    『桜の園』は滅びる美しさへの哀悼の作品。(今となっては間違った時代だったのかも知れないが)古き良き時代への郷愁。大して恵まれた環境でもなかったのにふと誰もが呟いている、「昔は良かったなあ」。人間の本能の物語。
    無学な農奴の息子、商人として時代の波に乗り金を稼ぎ捲るロパーヒン。今なら窮地に陥る主家の憧れの貴夫人を自らのアイディアで救ってやれる。彼女の養女とも言葉こそ交わさないが相思相愛だろう。全てを手に入れることが出来る筈。だが競売にかけられた土地と屋敷を落札したものの、皆は去って行った。手に入ったのは自分が手に入れたかったものとはまるで別物。これはどうしてだ?欲しかったものは“時間”だった。あの時の“時間”。そんなものどうしたって手に入れられる訳がない。手に入らないものを求めて悲しくなる話。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/12/21 (土) 17:30

    2度目の観劇。やはり、いい芝居だ。84分(15分休み)79分。
     ケラ meets チェーホフ・シリーズの最終作。特別な事件はなく淡々と没落に向かう旧貴族を描くが、豪華で達者な役者陣が、笑いと切なさを籠めて演じる。美術や照明も見応え。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    チケットの抽選に次々と落選。最後に立ち見席に辛うじて当選。85分、休憩15分、75分。計3時間の立ち見の「桜の園」である。
    世の中の動きに目を瞑り、異郷の大都市で放埒に生きてきた女性が、一族共々時代の流れの中で故郷から放逐されるふるさと物語り。19世紀から20世紀にかけて世界の各地でさまざまな形で起きた近代から現代への社会変動を背景にした20世紀演劇で最も広く上演された作品の一つだ。だが、その「桜の園」も随分変わった。それが如実に現われたのがラネーフスカヤを演じる女優の年齢である。今は東山千栄子のラネーフスカヤを実際に見た人は少なくなっているだろうが、見た世代では、この女主人公は60才過ぎの老人としてすり込まれている。かつて新劇の代表作とされたこの作品の女主人公を演じた名優たち、細川ちか子、杉村春子も老年になってからの主役であった。
    昨年パルコ劇場での上演では原田美枝子(演出はイギリス人)、今回は天海祐希。ちょっと昔になるが、2003年の蜷川演出では麻美れい。一つ。いのちある俳優によってしか表現できない演劇では、俳優も又同時代の顔になる。観客も又共に時代を生きなければならない。
    今回の演出はケラリーノサンドロヴィッチ。彼の舞台としては静かな舞台だが、今の時代と併走する円熟の舞台だった。ケラも歳をとる。コロナで上演寸前に上演中止になってから5年。多作のKERAの作品のなかでもあまり本をいじらず「演出」の代表作のひとつだ。
    ラネーフスカヤを演じる女優が若くなったのに従って、戯曲の読み方が大きく変わった。
    二つ。没落貴族の哀切のドラマから、新時代を拓く若者の解放のドラマへ。戯曲の中で重点の置き方が創る側でも見る側でもほとんど180度変わった。それが、ドラマの構造から各登場人物のキャラ作りにも及んでいる。KERAの演出は細部にまで細かく手がはいっている。中止になった舞台からはキャストが替わった役もあるが、みな過去に見なかった役の演じ方をしている。しかも、理に落ちた芝居をしていない。荒川良々、山崎一、緒川たまき、さらに藤田秀世(ピーシチク)、鈴木浩介。だからこそ、役者たちもラストの名台詞も生きている、ケラはかつて「若者は常に正しい」と言い切ったことがある。ここが三つ。
    故郷へ帰る汽車の汽笛から始まり、全く意外にも軽かった幕切れの時代が変わる音で締めた音響設計。さらに保守的だがまとまりの良い美術をも良かった。ここが四つ。
    年末に「ヴェニス」と共に「桜」も本年屈指の作品だった。





  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/12/14 (土) 17:30

    ラストシーンが好きな演出でした。
    人間関係が良く表現されていて良かった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/12/12 (木)

    チェーホフ!ブラボー!!
    とても楽しかった。これでケラさん演出の4部作終わりなのね。
    セリフ一つも逃すまい!と身構えることなくすんなりとそれぞれの気持ちが入ってきて、3時間があっという間でした。
    とても見易かったといっていいものなのか…。
    ラストがこれまたじーーんと心に沁みました。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/12/09 (月) 13:00

    ケラのチェーホフ作品の第4弾・最終。とても分かりやすいチェーホフで面白い。84分(15分休み)78分。
     同戯曲はいろいろと観てるが、本作は非常に分かりやすい。役のキャラクターを際立たせる演出で、それぞれの役の持つ意味が分かりやすく作られる。特にロパーヒンの視点を軸にしている感じがあって、彼だけが現実を見ている印象がある。他の役は、現在の視点から言えば「おバカ」という感じだが、その意味で「喜劇」とチェーホフは呼んだのではないか、と思わせてくれる。役者陣は皆熱演だが、ロパーヒンを演じた荒川良々が特にいい。大転換する舞台美術や、照明も巧みだが、特に第二幕の後半の照明が美しい。

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