実演鑑賞
満足度★★
鑑賞日2025/01/20 (月) 12:00
座席1階S列1番
価格12,000円
ケラさん(長いので省略しているだけで、知り合いってわけではないよ)の舞台で不満足だったことなんて滅多にないのだが、今回はさすがに両手を挙げて賞賛ってわけにはいかない。正直な話、チェーホフを題材にして、ケラさんは何をしたかったんだろうかと、観劇中ずっと首を傾げながら観る羽目になってしまった。
オリジナル戯曲の数々で、演劇界のトップに昇り詰めたケラさんである。ブラック・コメディでは定評のあるケラさんなのである。それがどうしてまたチェーホフのような古色蒼然とした戯曲に惹かれたのか、と訝しんでいたが、観劇していざ感想を述べようとしても、「何かよう分からん」としか言葉が出て来ないのだ。私に語彙力がないという意味ではなく(まあ、ないけどな)、『桜の園』に本来内包されていた人間悲劇と喜劇、それが形象化されてるとは到底思えなかったからである。
いずれ映像化されて、どの公演かをご覧になる方も多いと思われるが、生で観ても何とも茫洋として凡庸な出来にしか思えぬこの舞台、映像だとひたすら退屈にしか思えないのではなかろうか。
……いや、劇場ではそこそこ笑いも起きてたから、ケラさんファンには面白い芝居だったのかもしれない。チェーホフだって、その人物造形において「笑い」を担わされてるキャラクターはいるのだから、これまで観てきた多くの『桜の園』の舞台で笑いは起きていたのだ。
しかし今回の笑いは違う。観客はチェーホフではなく、ケラさんによってオリジナルから改変された新しい台詞回しに笑っていたのである。
つまり、ケラさん版『桜の園』は紛れもなく『ケラさんの桜の園』であり、『ケラさんの桜の園withチェーホフ風味なんちゃって』ってな作品になっちまっていたのだ。……チェーホフの味わいはほぼ雲散霧消。なら、全編ケラさんオリジナル戯曲にすればよかったのに。チェーホフ借りてくる必要、なかったんじゃね?
悪く言えばそういうことになる。(以下ネタバレ)