満足度★★★★
本作は近松門左衛門の『女殺油地獄』(おんなころしあぶらのじごく)の翻案ですが、近松ワールドから更に、登場人物の造形を深化させています。
ところで、若い観客の皆さんの観劇後のツイッターでの感想、つらつらと拝見してみると、主人公の吉雄はもちろんのこと、吉雄の母親(演・のぐち和美さん)の心理に関しても、表面上の言動だけで判断されたのかな? と、多少は長く生きてるオッサン、微笑んでしまいました。
血がつながっていようが・いまいが、親子の情・兄妹の情。
惚れていようが・惚れられていようが、男女の情。
そして、どうしようもない半端者ながらも、吉雄が持ち続けようとした男の矜持。
『流砂ゑ堕つ』は、観る側の人生経験・人生観で、いかようにも解釈できる会話劇でした。
満足度★★★★
鑑賞日2016/10/01 (土)
近松門左衛門の『女殺油地獄』を元に、ユニット主宰で劇団鹿殺し所属の有田杏子さんが脚本をお書きになり、劇団居酒屋ベースボールの新里哲太郎さんが演出された作品。
観ている間、ヒリヒリするような緊張感で息が詰まりそうだった。主人公のやることなすことすべてが裏目に出る。馬鹿だよ、そっちに行っちゃダメだ、と見ていてハラハラしてしまう。悲劇へ向かっているのはわかっているのに、どうにもならない、悪い予感に似た緊張感。
流れ落ちる砂のように、掴もうとしても掴めないまま、落ちてゆく。彼がほんの少しだけ賢く生きられたら、すべて違ってきたはずなのに。それでも皆が彼を愛していたのだろう、そう思うといっそうやるせない。