満足度★★★★
昭和11年の東京が舞台の三好十郎の喜劇。東北から出てきた女中が無邪気に富豪一家の裏を暴く90分。とても面白かった。チケットが安い!
各人物の陰影が濃いから、出てきた瞬間に空気が変わる。ドタバタ喜劇だけど、笑えない現実も突きつけられて怖くなる。私は戯曲の世界をひたすら誠実に立ち上げるお芝居が好き。研修所公演はありがたい。
満足度★★★★★
修了公演はいつもスゴイ
八幡みゆきさんの出オチのようなオープニング。彼女、こんなにも存在感があったのかと驚かされた。あの、役へのフィット感は最高だ。あれほど不幸な田舎娘が似合うとは。ポジションは「おしん」で、精神は「じゃりん子チエ」。愛おしいキャラクター。●貧富の差が人間の歪みを生む。そこに奔放な性の欲望が渦巻き、裏切りと侮蔑が社会を蝕む。放蕩息子に弄ばれ、懐妊を悪のように扱われる幸薄い女中を宇田川はるかさんが好演。控え目な演技ながら女としての人としての誇りを醸す。彼女の今後を観続けたい。●毎年思うこと。修了公演までの1年で、幾つかの試演会を経て研修生のそれぞれにスポットが当たる演目を上演させるスタッフの目と、目に見えて成長する研修生に感心させられる。先輩たちに劣らぬ活躍を期待しよう。●修了生ももう100名超。多くの公演や作品で見かけるようになった。しかし、まだまだ十分とは言い難い。研修所には、国立の強みを最大限に活かして、OB公演等の企画を切に願う。『研修所修了生』という大きなカンパニーの活性化を望む。
満足度★★★★
噛みついていた。
1936年初演の作品という。
最近は新国立主催公演より研修所公演の方が面白いと感じる事が多い。 今回が修了公演との事で、前回の「血の婚礼」で演じた俳優たちを思い出しながら観劇。あと一回は観て送り出したかった・・などと勝手な思いを抱きつつ。 今作は、前回母役で印象に残った岡崎さつきが着物姿で女主人を演じる「冨田家」に、八幡みゆき演じる十歳の少女ステが女中として雇われた日から、「富豪」の家中の虚飾と不実の光景を目にした挙句、「噛みつく」時までを描く。 当家の父母と令息令嬢、その婚約先の両親や新聞記者、二人の女中と書生、ピアノ教師、そしてステを紹介した施設の女性が見事にキャラ分けされ、どの役作りも勘所を外さず芝居のアンサンブルは気持ち良いものがあった。 秀逸は主役ステの形象で、聞けば家は貧しく悲惨だが明るくあっけらかんとした、おぼこ娘を好演(怪演)。
舞台は大きな正方形の台上にあり、頂点を結んだ線で仕切られた一方が食堂、他方はさらに二分割して娘の居室と女中部屋。回転舞台で転換時はゆっくりと回り、ただし高さはなく背後も見通せる。大振りな仕掛けは栗山演出っぽいが、「家庭内」劇の軽妙さは損なわず、ステの無垢な歩行のイメージに当てたようなピアノ曲(古典だが曲名判らず)と相性もピッタリだ。
終盤、転換ではなく舞台がゆっくりと回って家の中の様相を見せる。この効果は昨年のペニノ「地獄谷温泉 無明の宿」に等しい。
戯曲の時代的な限界は所々感じたが、現代の上演に耐える仕上がりに持って行けたと思う。ぐっと引きつけ、身につまされる箇所もあり、何より最後まで目が離せなかった。
・・とは言いつつ、難点をネタバレに。
満足度★★★★★
予想以上
研修生の演劇ということで、”ある程度”は許容するつもりでしたが、
なかなかの出来栄えです。
三好原作の部分は今回差っ引くとして、研修生の演劇のみに注目すれば、
所作がたどたどしかったり、セリフをかんだりするのは、まぁ見過ごせる範疇ですし、
場面場面での登場人物のキャラクタを強烈に演じ切り、喜劇(悲劇)を
十分に演じていました。
当初、A席 \3,240円ということで「研修生レベルなのに高いなぁ」と
思っていましたが、この内容であれば十分釣り合うかな、と。
(企画としてはおかしいですがね)
この中から将来の有望な俳優が出てくることを切に願います。