全てにおいてパーフェクト
大好きな俳優さんばかり集まった黄金の布陣。関西から遠征しますよそりゃ。ひさしぶりに舞台の上で見る大石さん、ラスボス感がすごく台詞の中のブレスの入れ方が最高。初めて見た亀島さんには一番感情移入しちゃうし、主演の武谷さんの職人ぶりが凄い!オッサン~じいさんにしか見えない。でも後で画像をみたら青年なので、演技で錯覚させられました。森下さん……クロムやん!(笑)どんな見たことない森下さんが飛び出すかと思いきや、すっごい森下さんらしかった。
俳優目当てで行きましたが、初めての柴さんの本、すばらしい。起承転結。してからの物語を壊して砕いて片付け方が素敵。きっと色んな立場の人にそれぞれの響き方をするのだなと。
何より杉原さんの演出、素晴らしい!本当に。杉原さんの演出の中で一番好きです。これ。たたみきって何も無くなる所の演出と、口がきけなくなった後の演出的処理とその時の照明。たまりません。もっと杉原さんの演出作品見たいです。
満足度★★★★
終演後も残りたい造語「畳む」
人生を畳む、とは、時間経過とともに広げ過ぎた(自分に帰属する/関わる)空間や、そこにある増え過ぎた物たちを、片付け、元のサイズに戻す。そうして自分が「散らかした」ものを「片付け」て人生を終えるという意味。
情報は日々流される。諸々のメディアを通じたそれらは時代を追うごとに加速して増加し、接触可能な情報はネットに溢れ返っている。エントロピーは21世紀に入ってなお増大し続ける。
そうして「大事なこと」の大事さが薄まり、ONE OF THEMにしか過ぎなくなる。これが被災者や原発やオスプレイやヘイトや冤罪を忘れさせている元凶だとしたら、せめて自分が散らかした情報や物は、片付けようという、いじましい公共精神に富んだ「偏屈者」が、主人公である父だ。
この話は、ずっと「畳もうとする」父と、息子のやり取りで進む。「畳む」ことの限界に突き当たったりもして、物語としては迷走するが、この「畳む」発想の強烈さが、父子の物語の帰趨への注視を続けさせる。
装置は面白い。TATAMIと印字された一畳スペースの枠に、父は寝る。だだっ広いKAAT大スタジオ一杯に布が敷かれ、何もなくなった時点を表わしたりする。そうした演出は悪くない。
が、お話のほうに一抹の疑問ありだ。
満足度★★★★★
観客の、それぞれの状況によって、異なった深読みもできるのではないか
特に、この内容を身近に引き寄せてしまった観客には、苦い味がするに違いない。
(あとはネタバレで)