スィートホーム 公演情報 スィートホーム」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★★★

    少年
    14歳の少年が祖母と両親を殺害するという実際に起こった事件に想を得た作品。
    安易な楽観主義に陥らない展開は、暗いかもしれないがその分共感を覚える。
    これまでチョコが得意としてきた、“歴史上の大事件から個の感情へフォーカスする”
    ダイナミックさは無いが、きわめて個別の、特殊なケースの中に私たちとの共通点を見出す、
    繊細な作品になった。
    西尾さんの役が、「親愛なるわが総統」と終始ダブってしまったのは私だけか?

    ネタバレBOX

    上手に事件現場らしい居間、下手に一段上がって
    殺風景な机とパイプ椅子のある部屋…。
    劇場に入ってすぐ、現在と過去のいきさつが交互に描かれるのだろうと想像した。

    両親と祖母を殺害した少年は、少年院を出る日が近づいているが、
    後悔しはているものの、奪ったものの大きさに今一つ思い至っていないように見える。
    そしてただひとり生き残った祖父に、彼を受け入れる気は毛頭なかった。
    少年院で彼を見守り続けた精神科医は、敢えて祖父に少年との面会を強く要請する。
    最初は拒んでいた祖父もついに面会を承諾し、小さな部屋で少年と向き合う。
    だが最初の面会は「(おじいちゃんも)殺しておけばよかった」
    という言葉でさらに亀裂を深くする。
    精神科医は、少年の言動を更生のプロセスとして受け容れ、祖父に理解を求める。
    祖父は「いったいあの時何があったのか」と初めて当時の少年の立場に思いをはせる。
    それは、すれ違う家族の感情を一身に受け止めるという、
    14歳の心には過酷な日々だった…。

    祖父を演じる高橋長英さんの演技が落ちついていて、舞台に安定感が増す。
    揺れに揺れているはずの心中を、時に露わに、時に沈痛な表情で豊かに表現する。
    孫に過剰な愛情を注ぎ、嫁と奪い合う祖母を演じた大西多摩恵さんが素晴らしく
    ねっとりとまとわりつくような、うっとうしい愛情を見事に声にのせる。
    常に自分の理由を最優先する世代ともいえようか、
    短絡的な行動に出た少年を演じた辻井彰太さん、
    最初、“同級生にけがをさせて反省している”ような顔をしていた彼が
    ラスト、墓参に通う彼を待っていた祖父と再会する場面で、
    爆発するような苦渋の表情を見せる。
    この変化が鮮やかで素晴らしかった。

    祖父と少年の間に横たわる深い溝を埋めようと奔走する精神科医を演じる西尾友樹さん、
    情熱を持ち、辛抱づよく温かいアプローチを続けるキャラがぴったりなのだが、
    どうしても昨年観た劇団チョコレートケーキの「親愛なるわが総統」を思い出してしまう。
    戦後収監されたアウシュビッツ強制収容所の初代所長ルドルフ・フェルナント・ヘースの
    心の底深く分け入っていく精神科医の役だった。
    理想の人間像とはいえ、よく似た人物造形であったこと、
    せっかくの味わい深い台詞が少し早口だったことが気になった。

    「母と祖母の間で板挟みになる少年の立場に立って考えてみてください」
    という精神科医のアドバイスで、家族を顧みなかった祖父が初めて当時の状態を知る…
    という展開は、ちょっと中学校の道徳の時間みたいな印象を受けた。

    過去と現在を行き来しながら、死者の声も織り込むという構成は
    奥行きが出てよかったと思う。
    いつものチョコレートケーキのごつごつした手触りが、すこし角が取れた感じだが
    この少年がモンスターでもなんでもなく、私たちと多くの共通点を持つ
    感情の持ち主であるという温かなまなざしが感じられて、
    こういう視点を持つ作者に尊敬の念を覚える。




  • 満足度★★

    窮鼠猫をかんだ事件,把握が非常に皮相的
    劇場によって、内容とか雰囲気がある。位置的なこと、大きさ、新しいか古いか、そういうことも予測される。もちろん、同一の劇場で、スカもあれば感動もある。

    今回この企画は、内容が暗く、敬遠されているかと感じた。アマチュアの演劇は、関係者ばっか。プロ化が、進むと屁理屈ばかりのオタク集団なのだろうか。

    わたしの子どもの頃、教育ママとパパが金属バットで寝てるところを撲殺されるというショッキングな事件があった。その事件後の祖父と少年の回想の物語。

    一番大事なのは、起きた事件はすくいようもない。せめて、同様の結果を招くことがないようにすることだ。表面的な対策はだめで、根本的に変わらないといけない。

  • 満足度★★★★★

    ずっしりと
    「家族」というものを事件を通して考えさせられました。心地好い居場所=家であるべきだろうけど、あの少年は家庭の中でボールのように扱われそして爆弾に変わったのではないか?とも感じました。 古川さんらしい事件に想を得ての物語。今も色々な事件が起こっているけれど共通しているものもあるんだろうなぁ。人間だものね。高橋長英の祖父の心の揺れがじわじわと浸透して、孫の成長も見守りたく、、、。そして何より殺された家族の出し方とかの演出が感慨深く感じました。

  • 満足度★★★

    正攻法
    堅実な舞台だった。

    ネタバレBOX

    役に入り込むことが演技の最良の方法なのかはわからないけれど、
    ラストの辻井彰太さんの役への入り込み方は凄かった。
  • 満足度★★★★★

    秀作でした
    重い題材なので、私の苦手分野かと心配したが、脚本古川さん、演出日澤さんで、西尾さん出演なので、チョコレートケーキファンとしては見逃せないと思い、見に行って正解でした。
    達者な役者陣が醸し出す空気は濃厚、沈黙が饒舌で、愛のある悔恨と再生の物語は、秀作でした。

    ネタバレBOX

    家族愛のすれ違い、掛け違いが切なく落涙でした。傷は消えなくても、跡も痛みも和らぐと信じられる作品で、後半は、場内すすり泣きが響いてました。

    照明や音響が、とても活きていた。
    開演時の電話の呼び出し音と、スポットライトを電話だけに当てたとかり、シンプルなのに、印象深い。
    ラスト祖父のシルエット(顔の影)が、余韻を深め、素敵でした。

このページのQRコードです。

拡大