来訪者(作・演出:中津留章仁) 公演情報 来訪者(作・演出:中津留章仁)」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
1-12件 / 12件中
  • 満足度★★★★

    よかった。
    すごくよかった。
    泣いた。

  • 満足度★★★★★

    想像力
    正直、いつまでも“最初に構成ありき”のようなスタイルはどうなのかなと
    ちらっと思い始めていたのだ。
    そんな浅い考えを根こそぎブン投げる力強さと説得力があった。
    構成、台詞、役者、すべてが熱いメッセージを持っている。
    強力なスタイルには理由がある。

    ネタバレBOX

    北京の日本大使館を舞台に、
    尖閣諸島をめぐってトラブルの絶えない日中両国と、
    竹島問題を持ち出すタイミングを計りたい韓国が
    それぞれの思惑を抱いて情報戦を繰り広げている。
    危機感の薄い大使や
    紛争地帯での経験豊富な海千山千の外交官、韓国の外交官・中国共産党員らは
    駆け引きに明け暮れる。

    経済格差の広がる中国底辺層の不満は、今や日本だけでなく中国政府にも及び、
    ついに漁民に混じって武器を持った者が船に乗り込み
    尖閣諸島へ向かったという情報が入る。
    彼らの目的は負傷者を出し“戦争を起こすこと”だ。

    大使の細貝(山崎直樹)が、確たる証拠がないと日本政府への通報をためらう中
    彼の妻が中国側に人質に取られてしまう。
    日本政府が「取引には応じない」と突っぱねたことから
    細貝は妻を助ける道を断たれ、絶望のあまり拳銃自殺する。
    襲撃される日本大使館。
    混乱の中、中国人家政婦をかばって外交官岸(龍坐)が撃たれて負傷する。

    “国家の問題”が“個人の感情”に左右される事実がリアル。
    危機感の薄い大使は、妻が人質に取られて初めて強大な負の感情に気付く。
    絶望して「国を裏切るために必要なものは何か」と問う細貝に、岸が答える。
    「それは想像力です」と。
    外交官にも政治家にも「想像力」は必須なのだが
    実は「想像力」など無い方が政治は動かしやすいし、
    そんなもの持っていない政治家が仕事をしているという事実を突き付ける台詞だ。
    そして、日中戦争が勃発する。

    期待に違わず大使館内部のセットが見事。
    この環境に日々身を置く人々が次第に想像力を失って
    “多少の犠牲はつきものだ”的な考えになって行くのが解る気がする。
    緻密なセットは、“環境が人間の思考回路を作る”事を視覚的に教えてくれる。

    その後の状況は、ナレーションと共に雨のような文字情報でスクリーンに流れ
    第二部は一転、休戦状態に入った尖閣諸島ののどかな風景に変わる。

    国を追われ、あるいは居場所を失ったかつての外交官たちがここで暮らしている。
    日本と中国が、それぞれ領有権を主張するために
    ここに人を住まわせているのだ。
    一見のどかだが、実は一触即発の危険を孕んだ島の現実。
    そしてここでも国家の行方を左右するのは個人の感情だった…。

    「あなたが僕を嫌いになるから、僕もあなたを嫌いになる」
    中国人を蔑む島の漁師に対して、島に住む中国人陳(阿部薫)が叫ぶ台詞だ。
    (阿部さんの中国語、大変努力されたと思う)
    島では中国人の元家政婦姜(林田麻里)が通訳をする。
    この時差がまた、日中関係のもどかしさと面倒くささを体現している。
    全編通して韓国人、中国人の日本語がそれらしく、この台詞量をよくこなしたと思う。

    大使役と漁師役(異母兄弟という設定に笑ってしまった)の
    二役を演じた山崎直樹さん、どちらもいいけどやはり漁師が素晴らしい(笑)
    中国人と仲直りする武骨だけど人の気持ちがわかる漁師が上手い。

    紛争地を渡り歩いて人脈もあるが、時に単独行動で突っ走る
    外交官岸を演じた龍坐さん、この印象的な風貌で全く違った顔を見せるから
    やはり二部構成は面白いと思う。
    人間の多面性を誇張するにはうってつけの構成だ。

    多面性という点では浜島(吹上タツヒロ)と乃波(川崎初夏)コンビも
    振れ幅大きくて魅力的だった。
    第一部では理路整然と持論を述べる外交官の二人が
    結婚して島で暮らすうちに不仲になり、乃波が中国人陳と不倫…。
    ダメダメ夫と、女としての素朴な感情が露わになるあたり、とてもよかった。 

    中津留氏は、今リアルタイムで時事問題を芝居にできる数少ない劇作家のひとりだろう。
    現実を解説するなら“そうだったのか、池上彰”で十分だ。
    だがそれを動かす個人の感情を国家に対比させて「侮るなかれ」と警告する
    この危機感のあぶり出し方は、やはり演劇ならではだと思う。

    ラスト、日中はまた戦争になるかもしれないという暗澹とした中で
    岸と姜が結婚を誓うという終わり方にひとすじの希望が残された。
    国家は人を幸せになどしてくれないが、
    幸せになる方法はほかにあると、私も思いたい。
  • 満足度★★★★

    最終日観劇
    目の上のタンコブ的な国家の懸念問題がみっちり詰まった前編、それからの展開の後編。
    その国にすればどこを巡っても正論。
    国の枠組みを外したら、後に残るのは国の境を越えた人間同士の想いだけ残る。一語一語に聞き入りどこで自己処理していいか今回も苦悩寸前。

  • 満足度★★★★★

    重厚、充実、面白い
    アクチュアルな政治的問題を主題とした「仮想歴史」劇。演技のリアリティと演劇的な大嘘が大胆に結合され、ダイナミックな物語のうねりにひきこまれてしまった。面白い。

  • 満足度★★★★★

    圧倒された
    このような、社会派のタイプの芝居は...

    ネタバレBOX

    「背水の孤島」についでこの劇団を見るのは2回目。
    登場人物の描き方、考え方がステレオタイプのような気がしたが、それでも圧倒された。
    私は安部総理のような、ナショナリスト(失礼かもしれないが)ではないが、それでもこの国が好きだ。特に、前編と後編の間に流されるテロップには背筋が凍るような気持ちにさせられた。

    観てみる価値は十分にあると思う
  • 満足度★★★★★

    領土問題
    土地は誰のものか?シンプルに訴えた社会性のある舞台でした。

    ネタバレBOX

    実際に起こったネタを題材に1部は政治的に見せ、暗転後、のどかな島の風景に移ります。このギャップが素晴らしく、3時間、まったく飽きなかったです。
    また暗転の合間にテロップのように字幕が流れ、同時にナレーターもその言葉を追うといった形でこの説明で2部の状況を殆ど観客に飲み込ませる理屈は、感服しました。素晴らしいものを観ました。
  • 満足度★★★★

    「3時間休憩無し。途中、幕間に魔法の様な舞台転換有り」
    と広告に打てばいいのにと思う。


    「背水の孤島(初演)」「狂おしき怠惰」に続いて3回目の観劇になります。
    上記のフォーマットは徹底していて、ブレなくて自分は好きです。
    もし自分が簡単にウリを説明しようとしたらやはりそういう表現になると思います。
    それをチラシとかの広告では全くわからないだろう事はマイナスです。


    広告については素人ですが、わかりやすくと言うのは鉄則だと思います。
    劇場来てから上記の事に引いてる人が必ずいるんですよ。。
    「え、3時間なの?」とか客席がざわざわしている。
    自分はそれを知って、また知った上で面白いと思って来ていますが、幕間に席を立つ人が複数。
    幕間休憩無しは芝居に対する集中力を切らさない事が最大のメリットと思いますが、席を立ってしまう人が見えてしまうと気持ちがちょっとざらついてしまいます。
    なので何とかして欲しい。
    何とかした方がいい。


    こんな事を書きつつ、途中で席を立ってしまった人は勿体無いとは思った。
    2幕目の方が観やすかった様に思う。


    席置きであるかなり豪華なパンフレットがあり(これも毎回ブレずにある様子)その中に


    「演劇としての価値とか
     そういったものは
     観る側が決めれば良いことなので
     私には興味が無い~」


    とあった(勝手に引用失礼)
    捉え方次第だとは思いますが、ちょっと危うく思う。
    この芝居を好きになるか嫌いになるか、観て決めて欲しい、
    と言うこともあるかもしれないが、
    「3時間休憩無し。途中、幕間に魔法の様な舞台転換有り」
    と言われて来たくないと思ってしまう人を客席まで呼んでしまっているのはどうか。



    芝居は色々なデザインのチラシがあります。
    本当に色々趣向を凝らしたチラシだけでも作品、と言える様なものもありますが、
    正直、自分個人で言えば、チラシを観て「行ってみよう」と思う事は殆どありません。
    何故ならば、チラシを観ただけじゃ、まぁどんな芝居がされるのか全くわからない為。


    何でもっとちゃんと宣伝しないんだろうと不思議だったりします。
    広告を打つ段階で内容が決まっていない、とかも多々あるんだと思いますが。
    特に劇団としての形がある程度決まっているならばなお更。


    どんな手法のチラシを使ってもいいと思いますが、
    「夢だけ一杯」のチラシばかりでその部分は画一的過ぎると実はずっと思っています。
    うちはこういう芝居するんだぜ!
    って書いてあるとこがあっても良いのにね。

    ネタバレBOX

    当日パンフレットの話が出ましたが、かなり分厚く豪華。
    以前は凄いなと思いつつも役者個々によって温度差がある様にも感じていたのですが、
    今回はある程度テーマが絞られていて良かったと思う。
    (もしかしたら前もテーマあったのかもしれませんが。テーマが良かったのかも?)


    これも毎回徹底しているのですが、現在寄りのテーマからスタートし、2幕では未来の話に飛ぶ、自分はSFだと思っているんですけれど、そんな形。
    人種による違い、考え方の違いってのは確実にあるんだろうなと。
    人種違ったっていいじゃないか、と思ったりするのと同時にそう感じてしまう。
    アイツのせいで悲劇は起こったと考えると、やはり仲良くはしたくないよな、と。
    ただ、「忠誠を誓う為のある意味裏切り」の場面で笑いが起こったので、笑い話に終わる様に収まれば良かったのになー。
    と言うか、笑い話では終わらないんだろうなと読めてしまったので、。

    銃を持った人への詰めの甘さが龍が如くの様でした。


    林田麻里さんの中国人は凄くないか。
    関西弁の様に本場?の人が見たらどう思うのかわからないですが、自分にはちゃんと中国人に見えた。
    ステレオタイプとしての中国人と言うのが根付いていると言う事でもあるけど。
    てか実は、前回とかに出ていたあの人はいつ出てくるんだろう?
    とずっと思って観ていたので。
    化けた化けた。


    冒頭に書いた通りですが、休憩無しの幕間に入る転換が本当に魔法の様なんですよ。
    どれくらいの時間だったんだろう、体感で3~5分くらい?
    全く違うセットが現れるという。
    劇場的にゆったり観れたのが強いですが(前回は考えてみれば下北駅前劇場か?)、3時間は生理現象とか無ければ全然観れると思う。
  • 満足度★★★★

    見応えのある舞台
    「狂おしき怠惰」に続いて二作目の観劇です。

    「今現在、ここにある問題」をテーマに、3時間もの長時間、途中暗転なしの2部構成、唯一の幕間的な舞台転換の時間を利用して叩きつけて来る言葉の嵐、舞台というより映画的な演出、などなど、前回観たものとよく似ていました。これが中津留さんの表現方法なのでしょう。私は好きです。
    舞台のセットも、役者も、みんな素晴らしかったです。

    表現は似ていても、テーマが違うと当然受けるものも違います。
    今回は「尖閣」がテーマでしたが、ズシンときました。
    登場人物の語る言葉が、ひとつひとつ突き刺さってきました。
    いい物を見せていただきました。

    ネタバレBOX

    正直言えば、私の考え方は磯山や船江に近いです。
    ひとのせいにするようですが北陸出身の(ってこれ関係なくないんですよ)ダンナからの影響と、以前就いていた仕事での、中国人たちとの数々の摩擦のために、今の私はあの国民に対してぶっちゃけ好感が持てません。

    中国人役の林田さん、上手でしたね。
    最初出てきたときの嫌な感じ(笑)自己主張ぶりなど、私の知っているある中国人女性を彷彿とさせました。
    この役を日本人の林田さんが演じていると思うことで、なんとか素直に観ることができました。
    他の役もですが、日本人ではなくネイティブの俳優を使えば言葉も楽だったと思うのですが、このお芝居を日本人がやっているというのが、私にとってはとても重要でした。ま、そういう人間もいるんです。
    亡命した孫が「今はアメリカ人です」と言った途端に態度を変える磯山に、客席で失笑が起きましたが、私も似たような感覚です。

    ですから、岸の言葉はかなりきれいごとに聞こえました。
    そんなこと言ってたら、日本は中国にいいようにされちゃうよ!利用されるだけされるんだよ!とか、つい思っちゃうんですよね。

    けれども、彼の言葉で、私に欠けている「想像力」『自分の人生と関係ない人間の命を思いやれるかという力』について考えされられたのも確かです。

    近未来にこのようなことが起きたら、自分はどうするかわかりません。
    が、考える機会になりました。
    そして、今までとは少し違う考え方もするかもしれません。
    「想像する」ことができるかもしれません。
    ありがとうございました。

    私の並びにいた人が、場面転換のスクリーンの時に席を立って帰って行きました。終わったと思ったのか、長い時間に耐えられなかったのか。
    そのことに気を取られて、ほんの十数秒ですが言葉が聞き取れなかった(字面も追えなかった)のが、残念でした。
    年配の方には、少し長すぎるのかもしれませんね。
    あれだけの内容なので、難しいと思いますが、2時間強くらいにしていただけるともっといいです。
  • 満足度★★★★

    少し無理っぽい
    そろそろワンパターンも考え時、題材によってはケースバイケースで臨機応変に対応しなければいけないのではないかと思いました。

    ネタバレBOX

    韓国人に、武器の使い方も知らずに平和を語るなみたいなことを言われ、武器を持つと使いたくなってしまうと反論していた外交官が、尖閣に住み始めてからヤギを退治するために猟銃を使っているという話を聞いたとき、これは使いたくなるんだろうなと思いました。

    それにしても、やわな中国大使でした。色々な事を想定していないのでしょうか。

    そしていつもの第二部ですが、第一部の関係者のその後ということで作らざるを得ない面はあるのでしょうが、と言うかそんなこと誰が決めたんやって言いたいですが、日中戦争休戦後に全員が外務省を辞めて尖閣に住みますかぁってんです。今回は少し無理があったと言わざるを得ませんでした。

    それに、第二部の山崎直樹さんは全くの別人として出ているとばかり思っていましたが、自殺した中国大使の腹違いの兄弟、具体的にはお父さんのお妾さんの子供で、顔も見たことがなかったのが、領有権を巡るいざこざで自殺したことを聞いてお国のためにと一肌脱いで尖閣に住むようになった漁師さんとの設定で、もう無理でしょう、笑いというよりも失笑ものでした。

    俺の言霊を聞けというナレーションがありましたが、言霊という表現は嫌いです。言葉は言葉です。俺の言葉を聞けで十分です。
  • 満足度★★★★★

    批評性がすばらしい
    今の社会状況の中で、尖閣諸島の問題をここまでダイレクトに扱うというその意志が素晴らしい。それも、この複雑な問題を、その複雑さを単純化せずに舞台に乗せている。近い将来に起こり得るかもしれない未来予想芝居。そうなってほしくはないが。

    ネタバレBOX

    ただし、演劇的に一番私がゾワッとしたのが、長い場面転換の幕間のような部分(垂れ幕が下り、そこに時間経過と状況経過を表す言葉が投影され、それを語るモノローグの声が流れる部分)だったというのが、、、なんとも。芝居の一部ではあるが、舞台上の芝居自体ではない部分なので、、、。

    また、星野卓誠さんが演じた役の設定が、日本人が中国人へ持っている偏見のステレオタイプな像のように見えて、、、、劇全体のバランスから言えば、日本の側に立つ訳でも、中国の側に立つ訳でもない、良いバランスなのだが、この役は物語を展開させる上で重要な役だけに、、、、ちょっとだけだがひっかかった。

    と書いても、これだけ複雑な問題を、どちらかに偏らずに、一つの物語にまとめるというのは、凄いことで、素晴らしいと思っているのは前提なので、悪しからず。

    龍坐さんの立ち姿や演技が素敵だったな。
  • 満足度★★★★

    領土紛争から見えてくるもの
    初日観劇。
    個の有様と国家の有様の関係性が、等身大の台詞で語られる。
    あり得ない設定ながら、リアルな世界とも遠くない、魔可不思議な現実感。
    中津留ワールドが癖になりそう。

  • 無題635(13-060)
    19:00の回(晴)。18:31開場(指定席)。最前列は「B」、舞台全面に暗幕...ということは相当なセットが用意されているハズ。「狂おしき怠惰」からで2作目(あまりあわなかったので今回はどうかなと)。場内には単調なギターの音色が聴こえています。右が下降、左がときどき上昇するフレーズ...これが開演まで延々と続く、ということは確信的に流しているということでしょうが、飽きる。ためしに数えてみたら1分間で、右が16回、左が2回(但し、別パターンあり)..が約30分続く。18:55前説(場内アナウンス、2時間55分、途中休憩なし)、いつもの小さな劇場とは客層が違います。19:01ギターが大きくなり、19:02暗転~20:26-インターミッション(字幕とナレーション)-20:34~21:56終演、ギターが鳴る。役者挨拶なし。やはりちょっと違いました。報道番組のコメントを集めてお話にしました...までではないにしても、国際力学がこのように動くものだろうか..とずっと思ってしまいました。これだけ緊張度が高まっているなかあまりに無防備だし、防弾ガラスじゃないのかな...とか、情報収集/分析力はなさそうだし、盗聴されてるし、護衛はいなくていいのか、第二次大戦下ならわかるような気もするのですが。暗転~早口の経過報告~まったく違ったセット、も予定調和してしまったので、その間の時間が退屈。出てきたシーンも戦後(停戦中)らしくないし...。ということでお話はダメでしたが、役者さんはとてもよかったです。

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