満足度★★★★★
圧倒の世界。
笠井叡×麿赤兒「ハヤサスラヒメ 速佐須良姫」を観る。
二人の達人の初共演。舞踏やオイリュトミーを知らなくても、舞台に圧倒される。その意味で、すごい舞台。
大駱駝艦メンバーと天使館メンバーのコントラストがはっきり。重力とスピード、曲やリズムの取り方、流れる時間...。同じ動きをすると質感の違いがくっきり。影のようにも、双子のようにも。
二つに別れてしまったものの遊戯。幼女の笠井さんと老女の麿さんは、親子のようにも、一人の女の一生にも見え。
混沌を積み上げて、そして大団円の群舞、とおまけ(笑)。素直に楽しむべし。
満足度★★★★★
宇宙の理(ことわり)
笠井叡さんと麿赤兒さんが存在するだけで、男女、明暗、有無などの二項対立や宇宙の理(ことわり)が、あらわされているようでした。唯一無二といえる2つの世界がぶつかり、反発し合いながら共存。自らピエロになって笑いを生み出すのは究極の優しさであり、永遠の子供らしさだと思いました。終盤は涙が流れっぱなし。天使館と大駱駝艦の若手の身体に、笠井さんと麿さんのDNAがしかと受け継がれていることも感動的でした。
満足度★★★★
延年の芸能
畢竟ダンスは、寿福増長、遐齢延年。芸能の根源である天の岩戸開きをテーマにするこの作品は、確信犯でそこを狙ったのでしょう。たしかに観て寿命が10日くらい延びた気がします。まあ、どんな芸能でも元気な老人を観ると観ている方もが元気になるものですが、69歳であのエネルギー、それだけでオールオッケーです。舞踏は健康によいのだなあ。
まじめに付言すると、大駱駝艦の4人の舞踏手は、本当に素晴らしい踊り手でした。金剛力士像が踊り出したらこんな感じでしょう。空中に自らをモノみたいに固めて放り出す動きがとりわけ素晴らしかった。
嘲笑と共感を同時に誘うユーモアのセンスも心地よかったです。
満足度★★★
『第九』で踊る
笠井叡さん率いる天使館と麿赤兒さん率いる大駱駝艦というベテラン舞踏カンパニーの合同公演で、ベートーヴェンの交響曲第9番を丸々1曲踊る中に醜さや滑稽さから美しさや崇高さまで、様々な情感が表現されていました。
無音の中、明かりが入るとアンサンブルが円形に並んでいる印象的なプロローグの後、第一楽章では舞台前面を底辺、奥中央を頂点にした三角形に照らされた床の中を激しく踊り続ける笠井さんと静かに歩く麿さんを中心にして展開しました。第二楽章では長方形に照らされた床面の中で、スケルツォの楽想にマッチしたリズミカルな動きが天使館と大駱駝艦それぞれ4人によって繰り広げられダイナミックでした。第三楽章では女装姿の麿さんと笠井さんの滑稽なやりとりが続き、次第に醜さの中に美しさが感じられました。第四楽章では合唱のパートに合わせて大勢のアンサンブルも加わり、祝祭性に富んでいて壮観でした。
第三楽章のクライマックスの転調したところで初めて青い照明が使われたときの美しさが印象に残りました。
金髪に上半身裸の天使館メンバーとスキンヘッドに全身白塗りの大駱駝艦メンバーのビジュアル上の対比だけでなく、同じ動きをしても腕や腰の使い方が全然異なっていたのが興味深かったです。
魅力的なシーンが沢山ありましたが(激しく動くときより静かなときにそう感じることが多かったです)、音楽が偉大過ぎて、踊りが負けているように感じました。
曲想やリズムに合った、ある意味分かり易い振付で様々な雰囲気が描かれていて楽しめましたが、個人的には第四楽章冒頭でのそれ以前の楽章の回想で、それぞれの楽章の照明に変化させる等、もっと音楽の構造・形式と関わりを持った演出・振付のものが観たかったです。
満足度★★★★★
大駱駝艦は大地を踏みしめ、天使舘は宙を行く
天使舘主宰の公演。
天使舘・笠井叡と大駱駝艦・麿赤兒はが、ガップリ四つに組んだ。
ベートーヴェンの第九を鳴り響かせ、大祓。
年の瀬にふさわしい公演。