タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦 公演情報 タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.5
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  • 満足度★★★

    物足りなさを感じる演出
    ワーグナー作品は大胆な読み替えや斬新な演出が話題になることが多いのですが、このプロダクションはセットが抽象的な点を除いてはオーソドックスな演出で、安心して観られるものとなっていました。

    荘厳な序曲に乗せて、舞台全体がゆっくりと奈落から迫り上がって来る冒頭が印象に残りました。続くバレエのシーンではライヴカメラの映像を後方に映し出したり照明を頻繁に変化させたりと視覚的な要素を盛り込み過ぎていてダンサー達の存在感が薄まっているように思いました。
    本編に入ってからはセットの変化があまりなく、解釈や手法においても目新しさが感じられず、演劇的観点からは興味を引かれる場面がほとんどなかったのが残念でした。

    音楽的には全体的に抑え目の勢い任せにしない安定した演奏でした。タイトルロールを演じたスティー・アナセンさんが他のメインキャストに比べて声量が弱くて不安定な所もありましたが、演技が自然で良かったです。領主ヘルマンを演じたクリスティン・ジグムンドソンさんの厚みのある声と堂々とした立ち振る舞いが素敵でした。
    繊細なピアニッシモから迫力のあるフォルティッシモまで美しく響かせる合唱が素晴らしかったです。

    セットは作品中で登場する竪琴の弦をモチーフにしたと思われる、ストライプのデザインが支配的で、10m位はありそうな何本もの柱状のオブジェや、床面の縞模様がシャープな雰囲気を生み出していました。

    今年はワーグナー生誕200周年なのに、新国立劇場ではこの作品1本しか上演せず、しかも新制作ではなかったのが残念です。

  • 満足度★★★★

    全3幕、上演時間3時間55分(休憩含む)をたっぷり堪能
    ハンス=ペーター・レーマンの演出は、スケールがあり、壮大で美しい。

    ネタバレBOX

    ご存じの方も多いとは思うが、あらすじはこんな感じだ。

    禁断の地ヴェーヌスベルクで女神と愛欲にまみれて家庭を顧みなかったタンホイザーが、女神との生活を捨て自宅に帰る。
    しかし、城で行われた歌合戦によって、タンホイザーがまだ快楽に気持ちが傾いていたこと、また、禁断の地ヴェーヌスベルクいたことを知られてしまう。それを知った騎士たちに「裏切り者」となじられて、切られそうになるが、タンホイザーの妻・エリーザベトが中に入り、領主がタンホイザーにローマに行って法王から罪の赦しを得ることを命令する。タンホイザーは、巡礼者に混じってローマへ向かう。
    ローマから巡礼者たちが戻ってくるが、タンホイザーの姿はない。エリーザベトは、タンホイザーの罪が赦されるのであれば、命を捨てることを決意する。
    タンホイザーは、身をやつしてローマから戻るが、法王の赦しは得られなかった。法王は、タンホイザーに、その罪が赦されることは、自分の持っている杖に緑の葉が生えるぐらいにないことだ、と言われた。
    タンホイザーはやけになり、禁断の地ヴェーヌスベルクに戻ろうとするのだが、エリーザベトによってそれは妨げられる。エリーザベトは命を持ってタンホイザー救おうとしたのだ。タンホイザーはそれを知りこと切れる。
    そこへ緑の葉が生えた法王の杖が持ってこられて、タンホイザーの罪が赦されたことが告げられる。

    この舞台は、まず序曲で驚かされる。
    それは、円筒形の大きなセットがスモークの中から次々と現れてくる。舞台の天井より高いぐらいのセット、3階席ぐらいの高さはあろう。
    それが壮大な音楽とともに、舞台の奈落からそびえ立つように現れる様子は圧巻だ。もうこれだけで、シビレてしまった。
    つまり、セットが登場するという、それだけで間が持つというより、感動してしまう。これからの舞台が期待できる序曲だ。

    序曲から続くのは、禁断の地ヴェーヌスベルクを表現する、新国立劇場バレエ団によるバレエ。
    男女のバレエ・ダンサーが艶めかしくも美しく踊る。
    とても美しい。バレエの公演か? と思うほど。

    タンホイザー役(スティー・アナセン)は手堅い。さすがだと思う。
    ヴェーヌスベルクの女神(エレナ・ツィトコーワ)と、タンホイザーの妻・エリーザベト(ミーガン・ミラー)の歌は見事だ。声量も表現もたっぶりしていて、心地良い。
    また、特に男性合唱が良い響きだ。
    騎士団が現れて来る個所などは、舞台袖のオフの声が舞台の上に徐々に現れてくるという効果はなかなか。
    牧童を演じた國光ともこさんは、一見華奢な体つきなのだが、素晴らしい歌声であった。

    歌合戦のために騎士や貴族、その妻たちが、次々に舞台に現れてくる様も、豪華でわくわくさせる。
    セットの使い方は意外とシンプル。映像や照明もいい。

    全3幕、上演時間3時間55分(休憩含む)をたっぷり堪能した。

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