満足度★★★
歌に包まれる至福
正直にお詫びします。
なめてました、私。
安奈さん、素敵でした。
女優として「ピアフ」を受けたということは演じるだけでなく、
彼女(ピアフ)を丸ごと飲み込んで昇華させるということ。
演者として差し出さなければならないのは
人に夢を見させるようなキレイで伸びやかな歌ではない。
求められているのはライトの中に立つ彼女の影の濃さにも似た孤独と
幾度も繰り返し堕ち、汚れ、降りかかる悲しみに枯渇しひび割れた心。
そういった彼女という人間の奥行きと陰影が集約されたカタチで声に現れなければ。
ストーリー展開としては駆け足で生涯を追った為、
ピアフに関わる人の描かれ方が通り一遍で深み無く、面白みに欠けると感じた。
が、ピアフ=安奈さんがスタンドマイクに向かう時、
今回求められるモノは其処にある・・・そう感じ、
同じあの空間に居る幸せを味わい包まれる喜びに浸ることが出来た。
満足度★★★★★
さすが安奈淳!
25年ぶり位に安奈淳の舞台を見た。
ベルばらのオスカル以来、安奈さんのファンになり、退団後も数年は舞台を見ていたけど、就職、結婚、出産、育児と色々あったので観劇とはご無沙汰していた。でも子供も大きくなったので、今年から観劇熱が復活。
東京宝塚劇場でチラシを手にして、安奈さんとPIAFに魅かれて、四半世紀ぶりに安奈さんの舞台を観に行く気になった。
1週間前だったけど、チケットも取れたので。
そして今日、四半世紀ぶりに安奈さんの舞台を目の前で見ることができた。
大変な病気を乗り越えて、60歳という年齢での出ずっぱりの舞台。
セリフを喋り続け、その合間には、熱唱に次ぐ熱唱。
歌声は若い時と全然変わらなかった。ほんと、やっぱり歌唱力がすごい。
演技も上手。もと男役だし、セリフも決まっている。
今のへっぽこ宝塚生徒に見習ってほしい。
やっぱり私が昔惚れ込んだだけのことはある素晴らしい舞台人。安奈淳。
舞台はものすごくテンポがよく、飽きさせない。話に引き込まれていく。
今日の舞台、みんな素晴らしかったけど、やはり私は安奈さんの、熱演に感動した。身体大丈夫かなと心配してしまう。
お芝居の内容もほんとよかった。こんな素晴らしい舞台を小劇場で間近に見ることができ、感激の一日でした。
もう明日で終わりだけど、また再演してほしい。
人生にハサミが入る。
涙が出そうになるのをなんとか堪える。その必要もないのに。
おそらくその衝撃を安っぽい感動に換算させてしまいたくなかったからだろう。
華麗な男性遍歴が連なる中には、硬い男優陣もいるけどそれをがっちりと受け止めていく安奈淳の度量に魅了される。その演技をおそらく嫌いだという人もいるだろう。でもそれはたぶん、「二人ぶんの人生を生きたわ」というほどの激しい一生をとうてい受け容れられない護りの姿勢から発せられる個人的な感傷にすぎない。
伸びやかで深みのある歌声、そして凄腕のピアノ。
流転の人生をざくり、ざくりと巧みにカットしながらテンポ良く繋げてゆくクリアな演出が、シニカルな批評的視点も含み合わせておりトータル2時間半をクギ付けにさせられる。