人生にハサミが入る。
涙が出そうになるのをなんとか堪える。その必要もないのに。
おそらくその衝撃を安っぽい感動に換算させてしまいたくなかったからだろう。
華麗な男性遍歴が連なる中には、硬い男優陣もいるけどそれをがっちりと受け止めていく安奈淳の度量に魅了される。その演技をおそらく嫌いだという人もいるだろう。でもそれはたぶん、「二人ぶんの人生を生きたわ」というほどの激しい一生をとうてい受け容れられない護りの姿勢から発せられる個人的な感傷にすぎない。
伸びやかで深みのある歌声、そして凄腕のピアノ。
流転の人生をざくり、ざくりと巧みにカットしながらテンポ良く繋げてゆくクリアな演出が、シニカルな批評的視点も含み合わせておりトータル2時間半をクギ付けにさせられる。