一角仙人 公演情報 一角仙人」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-5件 / 5件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/01/31 (金) 14:00

    能楽には、というより金の蜥蜴が取り上げる題材は怨念などによる「ドロドロ系」が多いような印象(偏見?)だが、本作は原典がインドであるためか「カラッとした」感覚。
    で、クライマックスが「宴」なので唐突に昭和30年代の「駅前シリーズ」「社長シリーズ」などの喜劇映画も思い出す。5年前の初演時にはそんなことはなかったが、どこか違ったのだろうか?(笑)
    あと、装置はシンプルだが衣装が凝っていて説得力があるのはいつもながらお見事。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    説明には「能楽『一角仙人』を題材に、神や鬼が跳梁跋扈する時代劇ファンタジー」とある。さらに当日パンフによれば「インドの『マーハーバーラタ』、今昔物語の『天竺編』、歌舞伎の『鳴神上人』そして能楽までアレンジした金の蜥蜴流平安神話ミュージカル」と記してある。長々と引用したのは、これら 取っ付きにくそうな芸能を独自の観(魅)せる公演として仕上げ、楽しませるところが巧くて好い。

    また能楽作品を分かり易くとの配慮から用語解説もあり、例えば、三か月も雨が降っていなかったため、雨乞山へ向かった。この山、物語上は架空だが作品のイメージとしての地理的な場所や一角仙人が住む仙境ー御在所山など丁寧な説明がある。もっとも観劇に際しては、その前知識がなくても理解できるよう工夫されている。

    時は平安、まだ神と人、あの世とこの世の境目が曖昧で同じ所で暮らしていた時代 という設定。能楽としての能面や装束ではなく、時代劇としての衣裳、そして言葉遣いも現代風で身構えることなく楽しめる。勿論、音響・音楽(音源)は、小鼓・能管・篠笛・龍笛といった和楽器、照明は鮮やかな文様や暖色を照射する美しさ。その舞台技術は、場転換などで効果的な役割を果たしていた。そしてラストは…。
    (上演時間2時間 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は 山なりの段差を設えているが、左右は非対称。真ん中の台 下は空洞。場面に応じて屏風状の衝立や障子戸が運び込まれる。段上の一部が半円状 それが開閉し岩を現す。シンプルなセットは、一角仙人と竜神との殺陣シーンを観せるため 広い空間を確保している。上演前の鳥の鳴き声が山奥を思わせる。

    物語は、人間を信じない一角仙人と信じる竜神の心の有り様や葛藤、それを人間の所業と絡め描いている。平安時代の朝廷(帝)は、その権力基盤が脆弱で いつ謀反などで崩壊するかといった疑心暗鬼に苛まれていた。知恵者 中宮徳子は、敵対勢力がいる拠点(村)を洪水で流すことを進言する。権力者の陰に女あり。そして朝廷は、巫女の協力によって竜神と契約を結ぶことに成功する。一方、一角仙人は 嘗て人間に欺かれ、額にあった鹿の角を切られた忌まわしい思いがある。人間に対する思いの違いは 戦いで決着を、その結果 竜神は岩山に閉じ込められた。

    竜神は、その力をもって人間が必要としている地域へ、必要なだけ雨を降らせていた。その竜神の力がなくなり、三か月間も雨が降らない。物語には河童も登場し、この世は人間だけではなく、妖怪や獣 そして植物など万物が雨(水)を欲していた。ちなみに河童は、シェイクスピア劇における道化師の役割を担わせたのだろうか。さて、人の所業は至る所に影響する、そんな教訓めいたことが浮き彫りになる。何とか雨を降らせたい、そこで 一角仙人に酒を飲ませ神通力を弱めさせ、竜神が岩山から出られるように…。

    一角仙人は酒好き、巫女の母娘が 何とか飲ませようとするが、頑として聞き入れない。母が唄い、娘が舞ってもてなす。別シーンでも同じような舞唄を披露し、金の蜥蜴公演らしい魅せる演出が好い。また場転換はすべて暗転、その際 雷鳴といった効果音を轟かす。照明は丸形や幾何学文様といった照射で美しく印象的だ。ラストは朝廷(帝)を始め、今回の騒動を起こした人間が自ら死をもって償おうとする。人間は過ちもするが、悔い改めることも出来る、そんな寓話劇。登場する者(神・妖怪・人間)が全員現れ、踊り歌う祝祭をもっての大団円。
    次回公演も楽しみにしております。
  • 実演鑑賞

    1月31日観劇。四分の三位面白かったです。

    ネタバレBOX

    最後はグダグダに感じました。BGMの感じもあって、最初から動きがもう少し綺麗だと違和感無く楽しめたかなとも思います。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    大本のネタはインドの叙事詩「マハーバーラタ」第3巻に収められた作品であるが、日本では「今昔物語」中の天竺編に所収され、また能の同名作品として、歌舞伎では「鳴神」としても脚色・翻案され上演され続けてきた作品の系譜であるが、今作はこの系譜に矢張り能の演目の1つである「岩船」をも加え祝詞の如き用い方をして物語を膨らませている。学問的系譜の詳細は興味のある方に詳細を追って頂くこととして、今作の噺に移る。

    ネタバレBOX

     一角仙人は、元御在所岳一帯の自然を司る神であったが、人間と交わりを持った頃酒に酔って深く眠り込んでいる所を襲われ額から生えていた鹿の角を折られ仙人に降格させられてしまって以降人間不信に陥り人間と付き合わなくなっている。一方弟の龍神は兄より都に近い近江との境にある雨乞山(架空名、実際は鈴鹿山脈にある雨乞岳をイメージしている)を拠点とし、命短くか弱い人間が懸命に生きようともがく姿を観て好感を持っているが、兄からは再三、人間は信用できぬ、裏切ると忠告される。然し龍神は人間を信じることに賭けた。その直接的な契機は彼が護る谷間の村に住む村長の娘には龍神である己の姿が見えたこと、そんな契機を通じて会話を交わし信じられる人間が居ることを信じたことが大きかった。然し今作の時代設定は朝廷の支配が陸奥や他の辺境地を平定する以前に絞られており登場する村長の治める領民も皆、かつて朝廷と戦い敗れて近江近在の谷間に逃れ今は鉾を収めて暮らすことを選んでいた。だが敗れたとはいえ華々しい戦闘を終えてからジェネレーションが1つ移った程度のこと、若者の中には露骨に朝廷に盾突こうとする者達が居り、実際に小競り合いも時に起きていた。こんな状況を打開しようと噂を伝え聞いた朝廷の女御・徳子は切れ者として帝から政を託されているのをいいことに龍神を誑かす算段を付ける。民を助け救う為と偽り、兄の一角仙人から神と雖も契約をしたら、それを破る訳にはゆかぬ、契約はするなと戒められていた水を操る力を持つ龍神と契約を結んだ。そしてまつろわぬ民の棲む谷間の村を襲う洪水を起こさせた。
     このことが在って兄弟は大喧嘩をし、兄は弟を岩山に封じ込めてしまった。それ以降一向に雨が降らぬ。田畑は枯れ、川は干上がり河童や水の中、周縁で暮らす動植物総てが命の危機に瀕している。この悲惨な状況に至って初めて帝は失政であったと気付き対応策を練る為の情報収集から始めた。そして龍神が岩山に閉じ込められたことが原因だと突き止め現場に巫女及び関係者を伴って謝罪に赴く。この場面、谷間の村からも人々が訪れてもいて物語のクライマックスだから詳細は観て頂くとして、今作に内包されている様々な地域の様々な神話、歴史、文化、風俗、風習等を過不足なく実に上手く繋いだ暮川 彰さんの脚本の良さとそれをヴィヴィッドで楽しく而も華やかさも添えた演出が光る。殺陣のしっかりした動きはキチンと居合などの剣技を磨いた一角仙人役の竹田 光一さんの杖捌きが決まっている。無論対する龍神役で演出・脚色も担った幸田 友見さんの動きも良い。また効果音として用いられている小鼓、能管や篠笛、龍笛の用い方も実に効果的。女優陣の舞いのあでやかさもグー。
     ところで、一見華やかであでやかだが、ヒトの持ち得る希望と過ちを繰り返す絶望的な愚かさである戦争という諍い事とは次元を異にする神仙の世界との対比を嚙み砕いた大人のお伽噺として創作された今作、実際に今世界で起こっていることを挙げて稿を終えよう。
     一般的に民衆は戦うことを好まない。殆どの場合生産性等無く、互いに傷を負い今迄より惨めになるのは自分達自身だと知っているからである。然し権力者の発想は全く異なる。権力にも含まれる力という言葉がその形を端的に表しており、敵対勢力を総て下してこそ争乱が平定される為平和が訪れると考えるのである。より酷い目に遭って負けた側に恨みつらみが堆積し、いつも火種が絶えないことに対する根本的考慮は無いに等しい。反論する人々は言うであろう。徹底的に監視し怪しければ厳罰と収監、様々に権利を圧殺する法の制定や差別を「合理化」できる法を制定し、身内スパイを作り密告システム等を作って体制を守れば良い、と。然しそんなことで体制側の社会が安定するのか? これだけ情報通信ネットワークが発達し、世界中に送受信され他者から或いは他国からの干渉や非難はないのか? より本質的な所では支配されている人々からの反撃の脅威は弾圧すればするほど被支配者内面で増大する。そしていつか爆発する。支配する側にはそのことに対する恐怖が去ることは無いから遂にはジェノサイド以外に打つ手が無くなる。実際に現在それが進行しているのが歴史的パレスチナにおける状況である。シオニストが行っている行為は当に総てこの方向に向かっている。元来シオニズムという論理のオーダーは規定のものであったから、そこからの唯一の論理的展開は尖鋭化以外に在り得ない。それがアメリカというイスラエル加担国家のトランプ就任で更に加速しているのが現状である。どちらに真の正義があり、どちらが人道の罪を圧倒的に多く犯しているのかは、バイアス無しに見れば誰の目にも明らかである、という問題に直結するような視点をも彼方に見えるような気がするのである。
  • 実演鑑賞

    能要素はかなり少な目。

    ネタバレBOX

    権力闘争や計略、対立の辺りはASHという劇団の劇を連想させるものがありました。
    終盤説教臭くかったのは、個人的には残念。
    最後はめでたし、めでたし。なるほど大人のおとぎ話。納得。

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