実演鑑賞
満足度★★★★
観劇後すぐは、観客が登場人物たちを十分に理解し、愛するための要素が人物造形にも文脈にも足りていないように感じて、それだけに物語に没入しづらかったり、クライマックスシーンで描かれる痛みをその濃度で受け取れなかったように感じていた。しかし、本作が描きたかった本質はそこではなく、むしろ逆なのかもしれない。
売れる=愛されるということへの疑問や、大衆から浴びせられる愛の不確かさと脆さ、幸せである状態よりも不幸である状態の方が注目が集まるという皮肉…。そういったこともがこちらに問いかけられているのかもしれない、という気持ちになってからが本当の余韻の時間であったように思う。
そんな観劇後すぐには気づけなかった本作がもつ途轍もない問いかけとエクスキューズに後々くらった。
「笑い」という暴力、過激化する欲求、「面白さ」の成立と同時に失われるもの、その残酷。
(とくに前半は)一見そうはみえないようなポップな手触りとなっているけど、その実切実なまでの社会への批評性が通底する作品だった。その意図の有無は分からずとも、奇しくもこれが今こその改革を要するM-1直前の上演であったことも含めて。
「笑い」を巡る暴力性や歯止めのきかない承認欲求、頭ひとつ抜きん出るために過激化していくパフォーマンス、SNSをはじめとする匿名性を有したメディアを通じて顔の見えぬ者によって築かれる名声や評価、そうした中で見失われる本質、そして、されども貫かれる狂気と信念。振り返るたびに示唆に富んだ上演であったと痛感する。
実演鑑賞
満足度★★★
個人的に気になったのは、役者が張り上げるような発声になってたところ。
それ以外は、ああ良くできてる、良いなあって思うところばかりなんだけど。
モヤモヤした感じがずっとあって、良かったとは言えない感じ。
入場して美術に感心して、役者は個性も魅力も技術もある人ぞろい。
着眼点も面白いし、セリフもなかなか切れてた。
それでも、面白くは無かったです。観て損したとかは無いんですが。
初演は観てないんですが、今年、アトリエ春風舎で観た短編は、めちゃんこ面白かったんだけどな。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/12/22 (日) 16:00
2度目の観劇。切なくて、そして考える芝居。107分。
「面白い」とはどういうことか、についての深い芝居。2018年の初演時にはもっと笑いが起こっていたと思うが、時代の変化を考えさせられる。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/12/20 (金) 14:00
素晴らしかった。戯曲、演出(観劇素人で判ってないのかも知れないけど)、舞台美術、その配置、照明、
中井千聖さん、名村辰さん、大場みなみさん、花戸祐介さん、佐藤有里子さん、てっぺい右利きさん、柿原寛子さん、谷川清夏さん、永井一信さん、俳優の皆さんも素晴らしい!見惚れてました。大場みなみさんのサングラス姿への展開に涙!
陰と陽、笑と怒り、単純に線引きして区別出来ない世界を描き切っていた。
その結果、シアタートラムの劇場の雰囲気、舞台のサイズに負けていないくによし組をみれた。
今下書きを用意している今年のベストの原稿に「くによし組『ケレン・ヘラー』」を書き加えました!
実演鑑賞
満足度★★★
話の筋は良く判ったものの、そこへ行くまでの状況が納得(共感)できなくて…モヤモヤしてるうちにどんどん進んで行った。
不条理劇だから、話の流れにリアリティを求めてはいけないのかな?
アフタートークがあったおかげで、話の趣旨はわかったけど…
実演鑑賞
満足度★★★
アフロ子(中井千聖さん)とケイト(大場みなみさん)によるお笑いコンビ「ポジティboo」。十八番ネタの「ヘレン・ケラー」(ヘレン・ケラーの「WATER」を茶化す)にクレームが入り謹慎中。名村辰氏はアフロ子の内面として話の進行役を務める。二人はバイトしている古本屋の二階、ケイトの家で一緒に暮らしている。古本屋の性欲旺盛な店長(花戸祐介氏)、バイトの谷川清夏さん、新しく入ったてっぺい右利き氏。てっぺい右利き氏はケイトにガチ恋していてストーカーのように付きまとう。「ヘレン・ケラー」ネタはお母さんが初めて大爆笑してくれたもので、アフロ子にとって絶対に譲れないものだった。それをやれないことに我慢ならずコンビを解散。お喋りロボット、サリバンちゃん(柿原寛子さん)を購入して新しい相方に。タブーなしで面白いと思うこと全てをやる芸風で突き進む。
中井千聖さんは「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の「いまきた加藤」を思い出した。
大場みなみさんは幸薄いATG顔。当時の原田美枝子っぽい。
谷川清夏さんも華がある。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/12/19 (木) 18:30
笑っていいのか考えてしまう、笑えない、お笑い芸人の物語。深い。(1分押し)105分。
2018年初演作品をリライトした再演で、初演も観てる。ヘレン・ケラーをネタにしたギャグをする女子2人が不謹慎だと活動休止に追い込まれるが…、の物語。不謹慎と笑いの境界がどんどん難しくなっている現在にこそ考えるべき作品だと思う。初演はもっと笑いが多かったように思うが、劇場の規模が大きくなったこともあって、観客が笑う場面が少なくなった気がする。國吉らしい細かいギャグはいっぱいあった。役者陣もみな好演だが、ロボット役を演じた柿原が特に良かった。