満足度★
「いや~、きっついきっつい」
トイレで一緒になった女性の第一声。まさにそのとおり。きつくてイタイ。いまどきこんな出来損ないのアングラ劇みたいなのをやるとは蛮勇がすぎて滑稽だ。おまけに苦悩の表現がみんな一緒。静止から動き始めてだんだん激しくなり、狂気のように苦悩し、うめき、また静かになる。全く同じパターンを3度も繰り返されると、途中席を蹴る人が続出するのも当然だ。私はこの劇はいったいどういう落とし前をつけるつもりなのか興味があったので我慢して最後まで見たが、隣のおじさんが何度も私のほうをちらちらと伺い、(通路側だったので)出たそうにしていたのが気の毒だった。すみません~。終演後、気の無い、しかし温かい拍手が聞こえた。さすが、名にしおう礼儀正しい日本人だ。韓国人演出家に気兼ねしたのだろう。劇の落とし前は予想したとおり、やっぱり何にもないのであった。
満足度★★★
理性を捨てたパフォーマンス
韓国の演出家、チェ・スンフンさんと日本の役者とのコラボレーションで作られ、物語性を感じさせない悲痛な雰囲気のパフォーマンスが繰り広げられる作品でした。
上手に便器、下手に浴槽が置かれた舞台の4方に沿って本が床に散乱していて、開場時から2人ずつの男女が壁際に全く動かずに佇んでいて、黒い服と靴を身に付けた4人の女性が舞台の中央に出て来て新聞を広げたり、畳んだり、頭に巻き付けたりするシークエンス、黒服の女性の1人が赤い照明に照らされる中で次第に興奮状態になって行くシークエンス、壁際の4人がそれぞれ決まった動作をしつつ、ゆっくりと舞台を周回するシークエンスのパターンが4回繰り返される、明快な構成からなっていて、音楽もそれぞれのシークエンス毎にタイプの異なるノイズミュージックが対応付けられていました。
黒の女性のソロは、涎や涙を垂れ流しながら、断片的な台詞を絶叫したり、吠えるように歌ったり、骨箱に入った遺灰を体に塗りたくったり撒き散らしたりといった、理性のリミットが外されたような狂気じみたもので、タイトルとは裏腹に絶望を感じさせました。
壮絶なパフォーマンスによって、芸術が備える、精神を解放する儀式的な力を浮かび上がらせる意図があるように思えたのですが、同じパターンを繰り返す図式的な時間構成は野生的な表現を戯画化してしまっていたように感じました。また音楽の音量と役者のテンションが対応し過ぎていて滑稽に見えたのが残念でした。
観客に媚びることのないハードコアな表現を貫く姿勢は素晴らしいと思いますが、いかにも「前衛」に見える表現を安易に用いがちに感じました。
満足度★★★★★
キクなあ。。。
会話のない舞台。
抽象的な身体表現&メタファにあふれていて、最初は、面食らったが・・・。
開演30分くらい経った頃。
舞台上で繰り広げられているものに対して、地獄絵図のように重苦しく、鳥獣戯画のように軽妙に「人間そのもの」を表現してるなあ、と感じ始めてから、グイグイ引き込まれた!
舞台上で繰り広げられる世界に、ズッポリズブズブにひたりきった!
そこからの90分。あっという間に感じた。この手の舞台では、初めてかも。
この舞台は、韓国の演出家チェ・スンフンさんが、「説明」に書いてあるようなテーマを、役者さんに投げかけて、それぞれのシーンを作り上げていく・・・という作り方をしたらしい。
それらのシーン。
これは、観る人それぞれで、感じ方もおもしろさも違ってくるんだろうなあ。
「正解」を探るんじゃなくて、身近な人々や街の風景を想起したら・・・とってもリアルになった。 ま、ボク自身が持ち合わせている「業」や「欲望」「生き様」そのものなのかもしれないけどさ・・・「自分のことはさて置いて」のほうが、気がラク(笑)
チェさんの用意する「正解」はあるんだろうけども・・・それぞれが、何かを感じ取って、人生の色付けに使えたら、それでイイと思った。
アフタートークでは、謙遜の言葉が連発した役者さんたち・・・。
その身体表現、すばらしかったです!おもしろかったです!脳に身体に・・・ビンビンきました!!!