実演鑑賞
満足度★★★★★
凄まじかった。
目に見えて人が怪我したり死ぬ出来事は起こらずとも、日常がいかに地獄かを、言葉や意識や無意識によってどれだけの見えぬ血が流れ、心が殺されていくかを60分で描き切っていました。
私も、誰もがあの教室にいた、いや、いるのだと改めて知らされた。
冒頭に高校生たちが手に取るティーン誌は私がかつて長く携わっていた雑誌で、その表紙とめくられていく誌面からぴたりと自分が担当した企画やページが見えて、その時頭上から何かを振り下ろされたかの様な気持ちになった。
少し昔にある世代を魅了したあの"カワイイ"雑誌の中にも、ポップにコーティングされながらその実鋭い刃を剥いた言葉たちが恐らくある。無関心から誰かを透明化したり、物や人への人気投票によって優劣をつけたりがある。他にも色々あった。
そして、紛れもなく私もそれを送り出してきた一人である。
だから「振り下ろされたかの様な気持ち」ではない。振り下ろした、振り下ろしていたのは自分の方なのだ。それらがこうして、ただでさえあらゆる傷を追わねばならない放課後に流通していたことを恥ずかしながら10年以上も経って痛感することになって、これはもう後世忘れてはならない感覚だと刻んだ。刻む様に血の流れ続ける放課後をみていた。
女子高を描いた演劇だけど、女子高生の問題ではない。
全ての人間があの教室の椅子にまず着席せねばならないと思った。
だからこそ、年1回位の頻度でカンパニー出費でなく公的助成や主催のもと上演されてほしい作品でした。俳優が皆痛い程に素晴らしかった。
升味加耀さんは今まさに掬い上げ、摘み取らなくてはならぬ問題に真っ向から筆を入れる劇作家の一人だと思います。それは私が観たどの作品でも揺るがない。岸田戯曲賞の選評ではその眼差しや覚悟についてがあまり言及されなかった気がしてて遅ればせながらもどこかに記したい気持ちにもなり(記し)ます。
実演鑑賞
満足度★★★★
初演は映像配信で観たので、実演は今回が初めて。
2012年のとある高校の放課後。突如中止になったミス・ミスターコンをめぐる女子高生たちの会話から、ジェンダーやセクシャリティに関わる無知や差別が浮かび上がってくる。
初演では「言いたいことを詰め込んだ」ような気迫が印象に残っていたのだが、今回初めて実演に触れ、「女子高生」たちの会話のテンポ、流れに引き込まれ、乗らされたうえで、語られていること、起こっていることのグロテスクさに対面させられた。
この劇に織り込まれた、(悪意のない)内面化された偏見、無知、差別は、設定から12年後の今にもよくあるもので残念ながら「おわって」はいない。その終わらなさをあらためて丁寧に解きほぐして、向き合うきっかけにもなりうる作品だと思う。
実演鑑賞
満足度★★★★★
昨年上演された作品が早くも再演、とのこと。僕は初見でした。タイトルから連想するのは「我慢を強いられていることへの耐え難き怒り」で、それを思うだけでも胸が痛い。
舞台は、私立の女子校(中高一貫校?)の教室。放課後を過ごす五人の生徒と一人の教師による会話劇。校内のイベント「ミス・ミスターコンテスト」が突如中止になり、その話題と、生徒たちの日常を綴りつつ物語は進んでいく。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/08/03 (土) 18:00
2023年初演の作品を再演。女子高の教室の風景が描く重い問題の行方。63分(4分休んでアフタートーク22分)。
昨年初演され劇作家協会の新人戯曲賞の最終候補に残った作品の再演で、初演も観ているが、今回も「重い軽さ」と呼べる芝居だったように思う。
女子高の教室に集まる5年の女子校生と若い女教師の描く学園生活と、その中から見えて来る重たい問題…。女子校生らしい軽くポップな会話で展開される物語だが、徐々に隠されていた重さが緊張感を呼ぶ。展開される芝居のクオリティが高いのは言うまでもないが、観客も内容に意識があるせいか、笑って良いと思えるシーンでも笑いが起こらないのは何だかなぁ、の気分にはなってしまう。