実演鑑賞
満足度★★★★
小劇場には珍しい季節狙いの夏芝居かと思ったら、これは日本劇作家協会の推薦・夏芝居で、この劇団のシリーズ公演の第三作でもある。
地域では知られている神社の参道にある名物団子屋一家の三代にわたる人間模様ホームドラマだ。雑種の飼い猫まで噛んでいるのもご愛嬌。
作者(堀越涼)の三十歳代の実体験が下敷きになっている由で、今も地方都市に綿々と残っている日本の伝統的な命のつながりを、神社、その祭礼儀式、伝統信仰を護る家族の生き方、地域との関係の中で、いまに続く生活ドラマとして描いている。
たとえば、加藤拓也の「ドードーが落下する」が地方の演劇青年の人生を辛く切実に描いているのに比べると、こちらに登場する都会からやってきた演劇青年(当日客演・藤原祐規)はいかにもの今時のその場に生きる青年である。どちらがいいということではなく、どちらも今までの日本の地方に生きる人々の類型から逸脱していく時代の子である。青年だけではない、伝統の中に生きている老若の登場人物たちの生き方にも、時代の生き方は反映している。そこが、夏芝居のシリーズドラマを装ってこの夏枯れの時期に上演されたこの芝居の一番の見どころだろう。
使いにくい横に長い座高円寺の舞台を中央に置いて客席を対面に組んだ古典劇のような舞台はノーセット、上手に稲荷神社の鳥居、下手に五本の竹を立て、そこに西洋音楽の四人編成のバンド(木管のファゴットが入るというユニークな編成。V,Gu,Pf)を下座として置くという抽象舞台で、劇中歌もあり、邦楽楽器も活躍する。一見無秩序な構えなのだが、これが神社の門前町という舞台によく似あう。この美術・音楽が第一。物語は女性を軸にした三代のホームドラマなのだが。人情噺の相続劇に落ちそうなところを女性個人の生き方の問題にしているところが第二。三十歳を軸に観客が同感しながら見ているのは、都会に生きる人々も地方に根があるからであろう。客席は幕内も多いがそれだけでは230の席がみるみる埋まるということにはならない。
注文を言えば、キャラを出すことに慣れている花組の俳優(男優)たちに比べ女優陣の性格表現が弱い(面白くない)ところ、広い舞台を持て余し気味で、女優陣のセリフがお互いに届かず会話が単調になってしまったこと、音楽が意欲的なのはいいが過剰なこと(饒舌に通じる)。ほかの方々も指摘されているが脚本が説明過剰なこところ、ことに出だしと最後の部分、説明は演技で埋めなければ、シチュエーションドラマは締まらない。それは17名に猫という登場人物の数がこの芝居の構えとしては多すぎるところからきている。
作・演出も俳優も甘さは目につくが、それらはすべて、物語の日常のやさしさと道具立て、夏芝居の気分で帳尻を合わせてしまった2時間5分である。
せっかくタイトルにも使っている雑種の猫の使い方までは手が回らなかった。
実演鑑賞
良くも悪くも昔のホームドラマを見ているようだ。
演出も演技も素晴らしいのだがストーリーは田舎の日常そのものである。
私は演劇に非日常を求めているので合っていなかったというのが結論だ。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/08/12 (月)
観てきました☆ まず劇場に入ったところから洗練された舞台美術と対面舞台に期待が高まります☆
あやめのお芝居は何度も観てきましたが、今回も素晴らしかったです☆
実演鑑賞
満足度★★★★★
いきなり偉そうな言い方になるが「上手くなったなァ・・」というのが最初に漏れた感想。お盆らしく御霊もご登場遊ばすが過剰に意識させず涙腺を弄られるあざとさがなく、それはつまり「リアル」そのものに語らせている。「いい話」には目が厳しくなる自分だが、過不足がない。千葉の田舎町を舞台に凡そ三世代にわたる家族と地域の半径幾許の中の物語が紡がれる。
「雑種」とは作者の実家の団子屋を舞台に書かれたシリーズとの事だが、それだけに作者の飾らぬ筆致が印象的である。(ノリの良い演出は健在だが、空隙を埋めるような過剰さ、つまり借りて来た感がないのはそういう事なんだろう。)物語の中心は母という事にはなるが、皆に等しく眼差しが注がれ、いずれ忘れ去られ、今もひっそりと健気に暮らす者たちの群像が浮かび上がる。どこにあってもおかしくない庶民の物語。
当地を訪問するお客が日替りゲストらしい。私は知らないが花組芝居の名物役者らしく(あやめの客層でもあるのだろう)一々笑いが起きていた。
座組を支える金子侑香の立ち回り方は長女という役柄をはみ出て気丈な女将の如くなのが(主役でなくとも)滲み出るが、客席を向いた時その目力を初めて認識。
音楽(効果も)の生演奏も相変わらず質が高い。祭り囃子を奏でる下座に太鼓までは判るが演者が篠笛まで吹いていた(二人も。リード付き篠笛なんてのがあれば習得に時間は要さないかも知れないが..聞こうと思って忘れた)。
実演鑑賞
満足度★★★★★
身につまされる観客も多かろう。何れの役者も自然体で良い演技をしているし、生演奏は無論のこと、照明も良いし、等身大の脚本、演出もグー。
実演鑑賞
満足度★★★★★
中盤から終盤にかけての怒涛の展開が好きでした
序盤は説明・導入が丁寧すぎるような気がしないでもないが、あのほんわかした展開が好きな人にはたまらないんだろうな
客席で挟まれたステージも端から端まで上手くて
利用していて素晴らしかった、観にくいと感じることが
なかったので良かった
シリーズものですが過去作を観ていなくても充分
楽しめますが、観劇三昧で2時間過去作を観て行ったほうが私はより楽しめました〜、おすすめです
実演鑑賞
満足度★★★★★
とても素敵な作品でした。
お団子屋さんを舞台に、現在と過去を交錯させながら描いた物語で、リアル感があり観応えがありました。
優しい気持ちになると共に、亡くなった両親や、昔を思い出し、涙腺が緩みました。
役者さん達の演技も良いし、生演奏も良かったです。
大満足の舞台でした!
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
日本の原風景、良き日本人を見るような公演。
本作は、劇団代表の堀越涼 氏の実家の団子屋をモデルにした雑種シリーズの第三作目。何処か分かるが当日パンフにも明記していないため、敢えて伏せておく。しかし その土地の方言で喋り、この時期に相応しい風習などを盛り込んだ家族劇。家制度や血縁とは といった一筋縄ではいかない問題や思惑を絡め、観客の心を揺さぶる。その情景は心温まるもの。
物語の肝は、<駆け落ち>と<化け猫>か。
この物語は 堀越氏の歩みを切ったり貼ったりしながら作った、人生に限りなく近い話だという。悪人は登場しない、しかし立場や考え方の違い、思惑によって小さな騒動が起きる。その山あり谷ありの人生(物語)は、多かれ少なかれ観客に寄り添い 共感を得ていると思う。課題や問題を乗り越えるには、人の思いやり優しさであると。その滋味をしっかり味わえる秀作。
(上演時間2時間 休憩なし)
実演鑑賞
満足度★★★★★
あたたか~い気持ちになって劇場を後にしたよ
家族って大切だよな
徒歩5分の駆け落ち(笑)
みんなおせっかいで温かいよ
確かに背伸びせず、手の届く範囲の幸せって大事かもしれない
「田舎びと」になるのもいいかな
37年変わらない化け猫小夜はどこにいったかな
ひょっとして我が家の長老猫ヤーちゃんに会いに来てるかな
相変わらず空間の使い方が絶妙
両側に客席を配置
ステージの上高く神社の屋根の骨組みが下がっているのだが、ライトが当たるまでほとんど気づかない
そのステージ上を目いっぱい使い、時にキャストが走り回る
そのため場面転換は素早く、テンポよく進む
キャスト皆感情表現も良く、キャスティングも頷ける
音楽はいつも通り生バンドで
カーテンコールの演奏もいつものように
ギター以外は浴衣姿
ピアノとパーカッション担当は忙しいが、ひとり浴衣が短いと思ったら、狭いところで結構動き回るから(笑)
上の屋根の照らし方含めライティングが絶妙だった
団子屋の客として現れた日替わりゲストの山崎バニラの白石市観光大使ぶりが面白かった
ステージ降りたところの観客に観光大使の名刺渡してた(笑)
しかし、演出・脚本の堀越くんが6年間実家の団子屋で修行してたとは知らなかったよ
実演鑑賞
満足度★★★★★
最高!最近みた舞台ではトップ3に入るかと。私は劇伴バンドの真横で拝見させてもらいましたが、すべての音をバンドで奏でているのを見てびっくりしました。音楽絡みでは役者さんの歌もピカイチ。それと、どうでもいいことですが、座・高円寺、まさかあそこまで舞台をつくりかえられるとは…です。舞台の展開も映画のようですごくよかったです。跡継ぎとかいろんな現代的な問題を女性目線で描かれていてすごくよかったです。さっそく家族に行くように伝えました。そのぐらいハイクオリティの舞台でした。
実演鑑賞
満足度★★★★★
初日拝見。とにかく見事。本当に面白かった。舞台の光の使い方、現代と過去、この世とあの世、この使い分けが見事で、お話の内容も素晴らしく、ここ最近では上位の素晴らしい作品でした。とにかくみんな色々あるけど、前向きに、元気に生きている。ものすごく伝わりました。2時間という時間も全く感じなく、集中して見られました。優しい楽しい時間をありがとうございました。
実演鑑賞
満足度★★★★★
自分の死期が近いのか?と思う程泣いた。ああだこうだつべこべ色々与太れるけれどそのことだけは間違いなく事実。心が弱っているのかも知れない。今作を自分の好きな連中、皆に観て貰いたい。つまんなくてもいい。イマイチでもいい。何か皆これを観て欲しい。そんな作品。
凄く猫が好きで、猫に救けられて生きてきたような気分の自分にはこういう作品はヤバイ。
昔、利害関係のないよく知らない人に何故か親身になって助けて貰った記憶が甦る。生き長らえて今残るものはそんな無名の優しさだけ。何の興味もない田舎町の夏祭り。知らぬ素振りで素通りした筈なのに心が震える程焼き付いている景色。それは一体何故なんだろう?
千葉県香取市にある香取神宮の参道沿いにある団子屋、梅乃家本店がモデル。
日替わりゲストは木原実氏、実優さん親子だった。
物語は団子屋「小堀屋」を切り盛りする井上啓子さんが主軸。彼女の娘達、長女金子侑加さん、次女大森茉利子さん、三女小口ふみかさん。そして近所の神社の神主である原川浩明氏、その息子の松浦康太氏。
何十年も神社の境内にいるようなヨボヨボの猫、小夜。心が弱っている人を見付けるとそっと近寄っていってニャアと鳴く。
東京、神田からこの田舎町を気に入って越してきた中野亜美さん。流石だねえ。どんどん女優として力を付けている。
下手に吉田能氏率いる生演奏の楽団。東京節(パイノパイノパイ)をアレンジしたような歌もいい。ヴァイオリンの中條(ちゅうじょう)日菜子さんは松井珠理奈系。
MVPは3人。次女大森茉利子さんの娘役の佐藤つむぎちゃん。子役の使い方が見事。演出家の腕の見せ所。
主人公でもある井上啓子さんの飄々とした味。時間軸を越えても何も変わらずにそのまんま成立させるキャラの強さ。
そして原川浩明氏の優しさ。安田忠夫みたいなとぼけた不器用さで弱って怯えた野良猫の心を時間を掛けて解きほぐすような。優しさは伝播していく。何処かの誰かに届いていく。
シリーズ3作目らしいが全く知らない自分でも充分に楽しめた。このクラスの作品でも空席があり、当日券を売っていた。何の予定もないんなら絶対観た方がいい。これが日本の演劇の最高峰。話はまず観てからだ。