雑種 小夜の月 公演情報 あやめ十八番「雑種 小夜の月」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    日本の原風景、良き日本人を見るような公演。
    本作は、劇団代表の堀越涼 氏の実家の団子屋をモデルにした雑種シリーズの第三作目。何処か分かるが当日パンフにも明記していないため、敢えて伏せておく。しかし その土地の方言で喋り、この時期に相応しい風習などを盛り込んだ家族劇。家制度や血縁とは といった一筋縄ではいかない問題や思惑を絡め、観客の心を揺さぶる。その情景は心温まるもの。
    物語の肝は、<駆け落ち>と<化け猫>か。

    この物語は 堀越氏の歩みを切ったり貼ったりしながら作った、人生に限りなく近い話だという。悪人は登場しない、しかし立場や考え方の違い、思惑によって小さな騒動が起きる。その山あり谷ありの人生(物語)は、多かれ少なかれ観客に寄り添い 共感を得ていると思う。課題や問題を乗り越えるには、人の思いやり優しさであると。その滋味をしっかり味わえる秀作。
    (上演時間2時間 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は対面客席で 中央に舞台。会場(座・高円寺)入口に近い方に赤い鳥居、その反対側に竹林と演奏スペース。天井には社の屋根骨組み。情景によってテーブル等の道具を搬入搬出する。

    物語は団子屋「小堀家」の三代に亘る家族劇。現世で中心になるのは小堀青子、その娘で長女 密、次女 白、三女 綾で、そこに東京 神田から来て従業員になった日下部美穂。すでに亡くなった先代夫婦や青子の夫、近所の裏のおいちゃん等が時代を超えて現れる。勿論 お盆の時期という設定が、日本的な習俗を絡め滋味溢れる話として展開していく。日々のゆったりとした営み、そこに地域の人々との関わりや祭りといった行事でアクセントをつける。

    青子は小堀家の一人娘、幼少期から婿養子を迎える と聞かされていた。その夫 忍は長男で実姉は結婚に反対していた。青子と忍は思い余って駆け落ち、その甘美な響きとは違い、実家から徒歩5分の裏のおいちゃん家へ匿われる。典型的な家制度、お盆という風習を通して過去/現在の往還(37年間という時)は そのまま彼岸/此岸の人々の思いを通じさせるもの。裏のおいちゃんの通夜、それから猫-小夜の存在、その姿は見(擬人化)せず 役者の抱きかかえるような演技で表現する。弱っている人がいると傍に行って鳴く、という台詞が物語の底流にある<人の優しさ>。
    そして三世代の小堀家と対を表すのが、裏のおいちゃんの息子。実の息子ではない―血縁がない。そこに地縁と同時に血縁という<縁>の綾を落とし込み、日常の暮らしにさりげなく深み(人生模様)を描く。

    あやめ十八番らしい生演奏(ピアノ、ファゴット、ヴァイオリン等の洋楽器)、それとは別に劇中でラストシーンに用いる祭囃子(太鼓・笛等の和楽器)を練習する場面や劇中生歌を挿入し、人の地域および行事という切っても切れない情緒を描く。そして和洋楽器を上手く使い音響・音楽の幅広さを楽しませる。勿論 照明の諧調によって時間の流れなどが伝わる。登場人物 18人(日替わりゲスト含め。観劇回は山崎バニラ サン)は、三世代と地域の人々を描くとなると、この人数は相当か。むしろ、人物造形(当て書のようにも思える)がよく出来ていると感心する。縁と言えば、次女 白を演じる大森茉利子さんの娘 佐藤つむぎちゃんまで出演させ親子初共演している。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/08/11 17:31

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