愚鈍起承転浪漫譚 公演情報 愚鈍起承転浪漫譚」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.4
1-8件 / 8件中
  • 満足度★★★★

    難しく長いタイトルでしたが
    ドン・キホーテの物語を、
    寿命の迫った役者の人生になぞらえての2重芝居でした。
    原作にあわせての場面進行をするので、
    物語を知らなくとも楽しめる作りになっており、
    作品紹介というカタチとしても楽しめました。

    ネタバレBOX

    誇大妄想の主人公にふさわしい面白い鎧が気に入りました(^^)
    バケツの兜に、物干し竿の槍。
    ビールの空き缶で作った胸当てなどは秀作といえましょう。

    主人公の妄想上は美しくとも、現実の描写で「口からの悪臭がする・・」、
    などといったマイナス要因からヒロイン降りたがる役者さんとか。
    馬やロバ役をやりたくなくて、ドンから一斉に目を逸らすシーンなど。
    うまくコメディシーンなども取り入れており、退屈しなかった。

    また劇中劇になるので、前上演作の小道具の話とか。
    わかる人にはわかるという、小ネタの仕込みぶりにもクスリと笑えました。

    ほとんど素舞台ながら、衣装や小道具。
    前説などにて、上手に状況説明する巧みさは、わかり易くてGoodでした。
  • 満足度★★★★

    後半の多重的性格が素晴らしい
    漢字八文字のお堅いタイトルが付いているだけに、どんな内容なのかな、と思っていたが、ドン・キホーテを素材とした中々面白い内容だった。
    劇団を題材にしていて、劇団員対象の自虐ネタなども織り交ぜながら、
    芝居が進んでいく…。

    私など、演劇は観るだけの人間で、演劇関係者の舞台裏など中々知る機会
    もないのだが、やはり一癖ある人間同士(?)、色々あるんだろうな
    と感じ入った次第。

    初めは、稽古開始前の、ベテラン劇団員の変な習性に、
    若い団員たちは引いてしまっているのだが、そこにさらに変な人(?)
    姫路が登場する(笑)

    自転車の車輪やら掃除用のモップ(?)を持ち、かつ(前の座席でしか
    見えないと思うが)鎧はビール缶で作ったもの(ある意味凝ったもの)で、
    これも笑ってしまう。

    一応、設定では、姫路は演出家らしいが、そういう設定が不要と
    思われるほど、ドン・キホーテ(ドン・キショーテ)役に成り切っている。
    それで、若い役者はさらに引いてしまい、冷やかに見ながらも、
    何とかやめさせようと試みる。
    私としては、正直、前半のこの辺りでは、落ち着いている若い役者の
    冷やかな台詞が、興ざめに感じられて、劇の雰囲気や進行の妨げに
    なっていたような気がした。これがちょっと残念。

    しかし、話が佳境に入るにつれ、この話が、ドン・キホーテの話そのもの
    なのか、それともその話を「演じている」話なのか、あるいは
    「演じるための稽古をしている」話なのか、分からなくなってくる、
    というか渾然としてくるのである。

    ドン・キホーテも、妄想で自分が騎士と思い込み、そして佳人を思慕する。
    姫路も、妄想によってドン・キショーテになってしまったのは、
    ある意味同じ現象で、そういう意味で、この芝居が二重(いや三重以上?)構造性を有している。
    こういう多重的構造を感じさせる演劇には、そうはお目にかかれるもの
    ではなく、貴重な鑑賞体験をしたと思った。

    音楽には、クラシックのいわゆる「後期ロマン派」と呼ばれる辺りの曲を
    中心に用いられていた。R.シュトラウス(ドン・キホーテも)、マーラー、ショスタコーヴィッチ、さらには、ブラームス、チャイコフスキー等々も。
    こういうクラシック音楽の使用は、普通は上手く行かないことが多い。
    なぜなら、劇の付随音楽として書かれたもの以外は、そのクラシック音楽
    自体、独立した芸術作品であり、劇の内容と齟齬を感じさせられることが
    ほとんどである。まして、この作品では、マーラー5番のアダージェット
    に歌詞まで付けて歌ったりして…(ふつうは悪趣味になるのだが…)。
    ところが、今回は不思議なほど違和感を感じさせなかった。
    思うに、その場その場に合うだけでなく、劇全体の雰囲気を醸し出させる
    ためにも役立つ曲(の部分)が選ばれていたと思う。
    選曲者の音楽の素養の深さと見識を感じさせる。

    なお、この作品はR.シュトラウスで言えば、むしろオペラ「ナクシス島のアリアドネ」(あまり有名な作品ではないが)との類似性を感じさせる。
    このオペラも、芝居の舞台裏の話が前半(ここの台本はモリエール)で
    あるし、この前半部分のドタバタおふざけの後、陶然としたアリアが歌われる辺りも、今回の芝居との共通性があるように思われた。

    5Pに近い4P。

  • 満足度★★★★

    幸せな男の話
    余命幾ばくもない妄想男に付き合ってくれる人たちはなんて優しいのだろう。楽しく切ない劇中劇は最高でした。空席が目立つ客席はちょっと残念でした。

  • 満足度★★★★

    少々退屈ぎみ
    大御所と○○塾の関係かと思いました。

    ネタバレBOX

    失礼ながら、とある大御所が死に臨んだときにこういうシチュエーションを希望されるのではないかと思えるくらいの設定、仲代達矢さんと無名塾の役者との関係かと思ってしまいました。

    右手を上に、左手を下にして、時計回りに回す。180度回転したら、また右手を上に、左手を下にして、再度時計回りに回す。二人が重なって立ち、90度ずらしてこの動作をすることで、風車の羽が回転するように見せたパフォーマンスはとても美しく感動しました。

    2時間以内に抑えるとか内輪のネタも入りコミカルな面もありましたが、話は結局ドン・キショーテの話をなぞることが主となり、全体にワンパターンで次第に退屈してきました。

    ここの大御所はドン・キショーテになったり素に戻ったりしましたが、どちらもさほど変わりなく、最後の素に戻ったお別れシーンも当たり前過ぎて感動はありませんでした。
  • 満足度★★★★

    絵画のように美しい
    舞台のひとこまひとこまの描写が絵画のように美しい。それはキャストらの配置と衣装、照明スポットの当て方が計算されているからだ。また姫路役の早川毅の演技があまりにも素晴らしい。相当な実力派だ。物語は劇中劇。会場は半分以上が空席だった。惜しいと思う。311の大震災以来、吉祥寺シアターが満席になることはなくなってしまったのだが・・。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    ある劇団を舞台に、ここの演出家・姫路を軸にして他の役者らの情景を綴った物語。
    姫路は自分自身を「遍歴の騎士ドン・キショーテ」だと思い込んでいた。彼は余命いくばくもないが、妄想の世界で理想を追い求めて旅に出ることにした。劇団員達は彼の最後を華やかに見届けようと団結し、彼に合わせて一世一代の「お芝居」を打つことに決めたのだった。

    「ドンキホーテ」の物語を「ドン・キショーテ」として演じ続ける姫路。彼に付き合って姫路を支えながら演じきる劇団員。現実と理想に苛まれる男のロマンを可笑しくも切なく綴っていた。これを劇団員や演出家が観たら相当、共感するだろうと思う。姫路を狂人だと言っていた劇団員自身も、この狂人的お芝居に参加し、デタラメを言って主人を信じ込ませ、ドン・キショーテの従者として従ってしまうのだ。

    こうして劇団員らは姫路を最後までとことん劇的に騙し、今の世界は現実なのか、永遠に覚めない夢なのかも解らないまま、夢うつつでいられた姫路は本当に幸せなのだとも思う。一人理想を掲げても無力なのだが、こういった後押しする団結力こそが明日への大きな糧となる。

    『どんな困難な状況にあっても、解決策は必ずある。救いのない運命というものはない。災難に合わせて、必ず一方の扉を開けて、救いの道を残している。』といったドン・キホーテ

    この物語は「現代版ドン・キホーテ」だが、独特の滑稽さと美しさのバランスが見事な舞台だった。現代を生きるワタクシ達も、独自の滑稽さと美しさで生きているのだから、そう変わらない。
  • 満足度★★★★★

    浪漫
    正に、題名どうりの素敵な物語でした。叶うか解らない夢や理想を持つことは、希望や活力であるが、時に重荷になったりする。夢見るだけでなく行動することは、犠牲や空回りもあり、その姿は他人から見れば、時に滑稽だったりする。それでも全てが無駄にはならない希望が見えてくるのが、浪漫と思いました。




    遅刻してしまい、開幕7分位見れず、最後列に座りました。過日、他の劇団の作品を、この劇場の後方で見たせいで、作品の良さより粗が目立ってしまい、他の方々の観てきたと違いすぎたという、苦い経験があり、不安が過ったのですが、余計な心配でした。シンプルな舞台に、4本の柱、いくつかの椅子、木箱、役者さんの力量で、いくつもの情景を魅せてくれるので、良かったです。照明、導入音楽も良く、役者さんが奏でる効果音としての風音、馬の蹄音は、特にお気に入り。主人公役(早川毅さん)が、特に秀逸で、還暦以上のベテラン役者さんの味は、さすがと思っていた私。お見送りに出ていらした姿は、30代半ばにもいかない方で、驚いてしまいました。まんまと、騙され・・イエイエ!しっかり役柄を信じ込んでしまいました。シンクロさん、これからも、見続けたい劇団さんです。

    ネタバレBOX

    劇中劇が含まれるのですが、劇団演出家であり老役者でもある姫路(早川毅さん)は、余命わずかの病を、抱えながら、作品作りをしている。

    劇団員は仕方なく、彼の最期の一世一代の「お芝居」を創る事を決意し、結末の見えない旅に出る事にしたのだが・・・

    姫路のやり方に、不満を持つ若手や、姫路の体を心配するあまり辞めさせようする仲間。

    それでも、めげずに続ける姫路の姿は、時に滑稽でもあるが、潔い格好良さもありました。

    よく有りがちな劇団物劇中劇に収まらず、『ドン・キホーテ』との絡め方も面白かったです。パフォーマンスよりシンプルだったり、より納得できたりと、身体表現の使い方も上手く、新鮮な演出で魅力的でした。



    人生って仕事も恋も遊びも、他人にどんな評価されようとも、貫き通したいことが、あるだけでも、幸せなのかなぁ~なんて事を、思いました。

    脚本や演出の良さを活かせる、表現力のある役者さんが多かったです。
    神田役(草光純太さん)、小曲犀役(張徹雄さん)、印象的でした。
    姫路(早川毅さん)は、特に秀逸で、逞しさや滑稽さは、もちろん、余命いくらばかりの痛さや弱さや、細々とした声も、最後列の私まで、しっかり伝わりました。
  • 満足度★★★★★

    舞台はシンプルでも
    とってもシンプルな舞台ですが、力強く、イマジネーションを刺激してくれる工夫が素晴しく、それとクラッシック音楽と照明がまたまたそのイメージを増幅してくれるとてもスマートで洗練された劇に仕上がってました。
    一番前の席でしたが、この舞台はどちらかといえば後方で全体を見渡した方がより強くイメージをつかめたかも・・・と。
    ドン・キショーテ役の早川さんの声にうっとり!
    台詞の間と舞台の転換も完璧!大満足です。
    これでは次回の公演も見逃せません。

  • 満足度★★★★★

    美しく、ソフィスティケイトされた空間
    吉祥寺シアターの、あの天井の高い奥行きのある舞台を、あんなに上手に使いこなしている劇団を初めて見ました。シンプルな舞台美術が、お手本のような力強いライティングにより、様々な空間として活きてくるのは役者さんの力量が有ってこそのものだと思いますが、それぞれのシーンが絵のように美しく、よく計算されていて印象的でした。ストーリーの面白さ、台詞の切れの良さも抜群です。愚鈍で不器用で誠実なドンキホーテに現代の役者バカの人生を重ね合わせた、現代版「ドン・キホーテ」素晴らしい出来でした。音楽の選択も良く、男達の可笑しさ、切なさを美しく彩っていました。う~ん、なんというか、生きるのが下手な男達を描くのに、これだけ洗練された演出を持ってくるとは・・・・。素晴らしいものを見た満足感でいっぱいです!

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