満足度★★★★
地震のあと
もちろんこの脚本は震災のまえに書かれたのだろうし構想は以前からあったのだろうけど、そのもともと以前の世界のために書かれた言葉、「ここはどこですか?」という問い、がこの震災以降の世界にまた変質した響きかたで響いてきて、明るい客席であらかじめ渡されていた避難経路のGoogle地図をぼんやり眺めながら明らかに変容したその土地の「根拠」のようなものについて思い、そこに「物語」があるにしてもそれは確かにずっと昔に死んだロシアの作家の物語をひっぱってくるくらいの距離感だなあ、とかそんなことを考えていた二時間だった。飽きるということもなく、いつまでも見ていられる作品だった。
ただ、序盤など特に、俳優の演技体とともに(あるいはそれを先導するように?)律儀に変化する照明なんかにある種の息苦しさを感じて、かといってそれがうまいように効果をあげていたというようには感じられなかったのが残念ではあった。演技が感情的になるとその息苦しさは薄れるのだけど、それはおそらく演出家の萩原氏の本意ではないだろう、と想像する(お門違いだったらすみません)。
ところで、これが長いと言う人はおそらく、出発したあるものが葛藤を経て最終的にあるところへと解決していく、そしてそこに作者の考えなりなんなりの答えがあるということを期待していたのかと思うのですがそんなものが無いことは最初に言っているので、そういう期待さえしなければ長いとか感じることもなくずっと見ていられる作品であると思います。実際は110分くらいだったけれど120分とわざとアナウンスしたのはそういった態度をとることをさりげなく求める作戦であったのかという気もします。
満足度★★★
土の匂いがしました
舞台だけでなく、客席まで芝生を張り詰めたセットに驚き。いかにも分譲地ですね。土の匂いがしました。さて、芝居の方は自意識の塊のような登場人物たちが次々にしゃべりまくるというもので、もうウザくて、イライラしまくり。でも2時間近くこれが続くと、カタルシスも感じてしまいます。嫌悪感を覚えながらも、結構面白かったです。
満足度★★
ここから始る
開発をテーマに、ソレによって過去の思い出に浸る人たちとソレによって新たに出発しようとする人たちの物語だったが、脚本家はもうちょっと観客を楽しませよう、理解してもらおうという心意気がないと観客の支持は難しいかも。エンゲキってやっぱ、観客の導入がないと成り立たない商売だから、主催者側がまず考えるべき事は「どうしたらお客さんに来てもらえるか?」だと思う。この2時間だけで物語の真髄を観客に理解してもらえる舞台を作るということが基本中の基本なのだから・・。
以下はネタばれBOXにて。。
満足度★★★
不思議な魅力にあふれる。
分譲地をテーマにした居場所探し、自分探しの物語。台詞まわしが独特で文語から口語に近づけながらも様式美があるという不思議な文体。最初は違和感を感じたが後半はむしろ心地よかった。
人物・設定毎に地明かりが細かく変化し、単調なシーンを重構造の深みのあるものにしているのは見事。
不思議な前説から唐突に芝居が始まり、ラストも唐突に終わった。そういった違和感を散りばめながら、ビデオカメラを使ったりマイクを使ったりしながら、新しい演出にも力を入れている。