「キムンウタリOKINAWA1945」「OKINAWA1972」【4月6日(木)19時の回の公演中止】 公演情報 「キムンウタリOKINAWA1945」「OKINAWA1972」【4月6日(木)19時の回の公演中止】」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-11件 / 11件中
  • 実演鑑賞

    流山児×詩森ろば舞台は、第一弾「OKINAWA1972」、数年後の「コタン虐殺」を観た。今回はその続編的・総集編的公演のようで観たいが二つは厳しい。「OKINAWA1972」の方は概略分っており、アメリカ世(ゆ)から「本土返還」までを時代設定とし沖縄ヤクザという題材のユニークさ。「知らなかった」知識に触れた「面白さ」が評価の大半だったので(書き直したとは言え)骨格は変わらないと踏んで「キムンウタリ」に絞った。

    結論から言えば、やはり自分の肌に合わない作品を作る人だな、という感想。何がそう思わせるのか・・。宮台真司によれば「芸術は痛みを伴うもの」。演劇はどうか。現実に傷ついた人の心を慰撫する演劇も立派な芸術だが、本当に感動した舞台は現実の(真の)「痛み」に届いている。ただし宮台氏は「痛み」を「刺す」「不快」とも言い換えていて、フィットするのは「不快」である。快感という甘味にまぶして薬を飲む喩えで言えば、快感より不快が上回る。詩森ろば氏の舞台のこの「不快」から、私は色々と考察を余儀なくされても来た。今回も、不快の源を考える。

    詩森氏は劇作家である前に「演出家」と自認する、とは何度か(トーク等で)耳にしたが、この「演出」が肌に合わない、と感じる事が過去幾度か。感覚的なものだが、自分にとってのそれは例えば、客席に向かって俳優が喋る(ナレーション)台詞・演技が多い。そしてダイアローグでない台詞の時間を舞台上で「持たせる」ためにリズミカルに、時に歌に乗せて、何らかのアクションとセットで言わせる。「埋めてる」感が嫌である。それは自分が言葉を理解したいと考えるからか・・。演出意図は恐らく「説明言葉が理解できない」観客層に配慮しての事だろうと思うものの、ノリノリで言わなくとも、普通に説明すりゃいいじゃん、と思ってしまう。
    劇中人物としての発語に感情移入させないために持ち込む異化効果は例えばどんでん返しとして、またはディープな芝居の息抜きとして、現代演劇でも用いられる一般的な手法だが、これは、「芝居を観て解決しても(カタルシスを覚えても)現実の解決にはならない」という社会変革を志向したブレヒトの「思想」を超えて、汎用性を持ったという事。しかし詩森氏はこの「異化」の元来の趣旨を感覚的に導入しているのかも知れぬ。
    ・・仮説はともかく、今回「不快」であった理由は、その構造にある(いや構造そのものは優れているのだが)。

    ネタバレBOX

    オープニングは楽しい。まだ客電も点いた中で、平場でのやり取り(役者が互いを俳優名で呼び合える空間)。ここでまずこの芝居の複雑な構成を整理する。芝居(詩森が書いた)は、知念正真氏の戯曲「人類館」に「インスパイア」されて書かれたもの、と繰り返す。この繰り返し具合から、戯曲「人類館」にあやかった、または引用された箇所も多いのかな、と推察される(知ってる方はパクリと言う勿れ、また意に沿わなかったらそれは「人類館」が私に書かせたもの、という弁明で詩森氏の舌出し顔が浮かぶ)。そして戯曲「人類館」は1903年大阪博覧会でアイヌや植民地化した台湾高山族等を「展示」した人類館を題材にしたものである。これらを解説している(タキシード姿の)自分は「調教師」(山下直哉)だと言い、相方の黒服女性(伊藤弘子)は「女」、同じく黒の塩野谷正幸が「男」、彼らは「現在」に生きている。
    一方他の役者たち・・舞台奥、脇に足場が組まれ、中段にズラッと軍服やモンペ姿の男女が並ぶ。冒頭場面では中央の話し手と肩の力の抜けたやり取りをして小気味よい。そして彼らは1945年地上戦に突入した年の沖縄を舞台に、劇中劇を演じる役者たちだ。

    「構造」というのは、「本体」と言える劇中劇と、これを見世物として紹介し時に割って入るなど君臨する「調教師」という構図。劇の開始と終了を仕切りながら、劇の内容をせせら笑う。だが、終盤に至って彼は敗勢に回り、引きずり降ろされる(が、それで解決した訳ではない、という含みを残す)。
    戯曲「人類館」を見て(読んで)いないので何とも言えないが恐らくこの調教師の存在は採用したのではないか。何しろ皮肉が効いている。

    しかし(そろそろ批判に入る)・・まず当初はこの調教師が、皮肉な存在であるとは判らない。単なる進行役と見ていたら、最初「ご覧あれ」と劇中劇の開幕を宣した後、「この猿芝居を!」と言う。「え?今何つった?」と耳を疑うが、早口ながら「サルシバイ」としか語を形成しない音が残っている。始まった芝居が、なるほど気持ちの入らない「なんちゃって」芝居になっている(演じる役者はそうしなくたって良いだろうに、である)。この時点で「おちょくってんの?」となる。
    俳優自らがアイヌ、沖縄すなわちマイノリティを名乗る者でない場合、その存在を貶める行為を「演じる」事の慎重さを考えねばならない。これはマジョリティの弁えの大原則だと考えている。後々それら(侮蔑的な扱い)は、「調教師」がニヒリズムやウヨ言説を象徴する存在として見えて来る事で、初めて飲み込めて来るのだが、これはよくよく最初に明示しておかなければ、「手放しにマイノリティを揶揄する時間」を許した事になる。(調教師という存在がヒールである事を示しておかなければ・・という意味だ。)
    戦地を逃げ惑う沖縄人、ひめゆり隊、日本兵となったアイヌ人らの運命を描く各シーンは次第に本域になって行く(感情移入を誘う)が、これを茶化す調教師が終盤になって漸く敗勢になる。そしてウヨ言説の薄っぺらさ共々暴露され、「真っ当」な認識が勝利する事にはなる。逆転劇は見事である。
    だが、良きヤマトンチュを杉木に担わせ、美しく描く割に、現代のネトウヨ世論に通じる差別的言語をアイヌや沖縄人に浴びせる場面を、よく舞台上に再現できるな、というのが正直な感想だ(彼らに浴びせた同じ分の罵倒、侮蔑をヤマトンチュに対しても舞台上で同じ時間又は強さをもって浴びせるのでなければ、釣り合いがよろしくない)。作家自身が「差別する側である自分自身を偽らず・・」という事なのだろうか(まさか)。
    しかも・・ほぼ最後に近い台詞に、沖縄がアイヌと一緒に慰霊碑に祀られるのを好まない、と沖縄人が抗議した事を紹介し(これは史実だろう)、「虐げられた者の中にも存在する差別感情!」といった言葉で総括させるのである(一体何様だ)。

    「人類館」が書かれたのは沖縄人の目線から、つまり沖縄からの告発であり暴露の戯曲であったと想像される。被虐の立場から、身内の弱さを吐露することは許される。調教師は言わば沖縄自身であり、己の中にあるそれを自虐的に吐露し、戦争悲話や美談、心温まる物語が如何に都合よく「消費されてきたか」を皮肉り、最後に言わなくていいエピソードまで添えて、「身内」を告発しつつ、その先にある大きな存在を告発したのではないか。
    だが詩森氏のこの作品では、役者らのアイデンティティを沖縄・アイヌに設定しきれていない。そう名乗ることも相当な覚悟だが、そうした上でこれから私たちは演じるのだ、という宣言が足りず、なし崩しに「勝手に」沖縄やアイヌに成り代わっている。この不遜さが終幕の段階でも私の中で払拭できなかったわけである。
    作品はある種の「挑戦」なのかも知れないが、どことなく「自分に甘い」感じを受ける。せめてパンフにその事のフォローに十分な文字を割く位の配慮をもって、それはやるべき事である。それが私の判定だ。

    (比較して恐縮だが、畑澤聖悟がコザ騒動を背景に沖縄を描いた自作「HANA」に寄せて、己が「沖縄」に犠牲を負わせ差別してきた側に属する事を忘れず、同時に、東北の縁辺で差別された歴史と先人の思いを受け継ぐ者として、かの地と関係を育んでいきたい、これからも仲良くして下さい、といった言葉を紡いでいた。詩森氏の中にどの程度「自分はどこに立つのか」の問いの突き詰めがあったのか判らないが、私にはそれが感じられなかった事が非常に残念であった。)
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2023/04/19 (水) 14:00

    「キムンウタリOKINAWA1945」
    沖縄戦にアイヌの人逹が参戦していた事実(今のロシアがウクライナの戦争に僻地の軍人を参戦)。当時アイヌ・朝鮮・沖縄の人逹が差別されていた事実。アイヌ語の使用を禁じた事実(今の中国を思わせる)。沖縄の一般人を巻き込み多く人達を苦しめた事実。色々と考えさせらる事が多い。
    1903年大阪万博で起こった学術「人類館」事件について、少数民族への差別的扱い等をもう少し深く掘り下げて欲しかった。

    ネタバレBOX

    最後に白旗を掲げ「アイアムノットジャパニーズ」語る言葉に差別されてきたアイヌ民族の誇り、アイデンティティーを感じた。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/04/19 (水) 19:00

    「OKINAWA1972」
    沖縄返還は沖縄にとってなんだったんだろう。沖縄やくざが本土化に翻弄される姿それは沖縄の人達の苦悩と重なる。日米外交の駆け引きが米軍に沖縄基地を自由に使用させる事になり現在も問題を引きづっている。沖縄返還は本土の悲願というが、本当に沖縄のための返還だったのか考えさせらる作品だった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    沖縄戦の地獄の中で、人間の良心が目を覚ますような、命の尊さをうたう物語的な見せ場のシーンになると、とたんに調教師(山下直哉)が現れて、「このあとどうなったかというと、二人とも爆弾で死にました」と、非情な現実で美談に水を指して、観客に物語に酔うことを許さない。「戦死ガチャ」なるサバイバルごっこをして、無作為のように次々殺し、これが戦場ですよとつきつける。ブラックな虚無とアイロニーを徹底させた芝居だった。戦争のヒューマニズムやヒロイズムを拒否し、不条理劇とも見紛うニヒルでシニカル、非常にとんがった作品である。

    ネタバレBOX

    調教師が舞台回しになり、冒頭は「人類館」の見世物小屋ふうにはじまる。沖縄戦の地獄めぐりを経て、最後は二代目調教師(男、塩野谷正幸)が初代に取って代わり、再び差別を繰り返す。人間、過ちはなかなか改まらない。皮肉の効いた結末だった。

    生き残ったアイヌ出身兵と沖縄出身兵が協力して南北の塔を建てた。これはいい話だが、その一方、沖縄県民が「なんでアイヌと一緒にされるんだ」といって、出身で犠牲者に差を設けたらしい。事実かどうかは要確認だが、ありそうなことである
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「キムンウタリOKINAWA1945」

    1978年、The Crassは「Punk Is Dead 」と歌い、1981年、The Exploitedは「Punks Not Dead」と返した。
    今作はまさに「Punks Not Dead」。もう演劇である必要もない。アイヌと琉球の被差別の歴史から日本を語る。
    『ドラゴン怒りの鉄拳』というブルース・リーの名作がある。日本映画にある、耐えに耐えて到頭堪忍袋の緒が切れて・・・の段取りを全部カット。開幕そのままブルース・リーはブチ切れている。Aメロ、Bメロ省略、サビだけというハードコア・パンク。スターリンの『虫』みたいな感じ。今作もそんな荒々しさで叫びまくる。言いたいことが客に伝わらなくちゃ意味ねえんだよ!どんな形になろうが伝えてやる!凄く良い。

    『怒りの鉄拳』の「東亜病夫」のように、「琉球、朝鮮、アイヌはお断り」がキャッチーに歌われる。作曲演奏の鈴木光介氏の才能が今作を彩る。
    知念正真の戯曲『人類館』をモチーフに物語は綴られる。1903年大阪で起きた「人類館事件」。人間動物園として、各地の土人の暮らしぶりを観客に提供。アイヌ、琉球、台湾生蕃、朝鮮・・・。今作では沖縄戦に投入されたアイヌ人兵士と現地のウチナンチュー(沖縄人)のエピソードを芝居形式で送る見世物。シルクハットにタキシードとマント、鞭を片手に持つサーカス団の団長風の調教師(山下直哉氏)、横に立つアシスタント的な女(伊藤弘子さん)。鞭を鳴らしながら観客に口上をふるい、絶望と地獄の沖縄戦で楽しませてくれる。属国とされた弱い民族は理不尽に支配され服従するしか道はない。しかもアイヌは琉球人にさえ差別された。実話のエピソードが並べられ皆当たり前のように死んでいく。後に残るのは「キムンウタリ(山の同胞)」と刻まれた石碑、南北之塔。

    安全圏から高みの見物を決め込む観客に拳銃を向ける調教師・山下直哉氏がMVP。このメフィストフェレスは誰も彼もに銃を突き付ける。どうやったらこの話を観客が自分自身の話だと受け止められるようにすることが出来るのか?
    ウチナンチューの兵士役、五島三四郎氏は林泰文や若き日の本田博太郎っぽくて愛嬌がある。
    ウチナンチューの妊婦役、竹本優希さんも印象的。

    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    ひめゆり部隊の看護兵役の福井夏さんが記憶に残る。米軍に投降して生き延び、戦後はパンパンになった。

    死んだ先でも差別が待っている。しかももう死ねない。祀られるのは英霊だけで、殆どのウチナンチューは犬死にだ。

    この世は差別で作られている。差別こそが人間の本質である。差別を克服する為ありとあらゆる取り組みを試してみたが、新しい差別が増えていくだけ。今作に「絶望すらも抱き締めろ」という台詞がある。「それだって唯一無二の自分自身」。世の中の矛盾、自分の中にある矛盾を肯定して生きていくことか。

    長渕剛『ひとつ』

    悲しみは何処からやって来て
    悲しみは何処へ行くんだろう?
    幾ら考えても解らないから
    僕は悲しみを抱き締めようと決めた
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    沖縄裏社会の抗争を、フィリピン男とのハーフの日島(五島三四郎)を軸に描く。並行して、佐藤栄作(塩野谷正幸)と若泉敬(里見和彦)の、密約をめぐる密会を描く。少々説明的なのが難点。二つの全く関係のない物語を並行してみせるのも、焦点を甘くした感がある。尻丸出しで、ペニスをちぎられる(!)拷問を受ける日島のマブダチ(工藤孝生)の体を張った演技には脱帽である。

    戦前に沖縄にやくざはいなかった。戦後、米軍の物資を盗んで売買した「戦果アギャー」が沖縄やくざの始まりだという。直木賞を受賞した真藤順丈「宝島」は戦果アギャーから始まり、3人の主人公のうち一人がやくざだった。この舞台を見て「宝島」の背景も分かった。戦後沖縄の裏社会の抗争の歴史を、沖縄旋律のラップにして見せたのが、この芝居の見どころ。ただ、そうした「説明」が必要だったろうかという気もする。舞台を見るうえでは、三人の親分(ミンタミ=甲津拓平、スター=杉木隆幸、金城=龍昇)と一人の大親分(流山児祥)の関係さえわかればいいので。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/04/12 (水) 14:00

    『キムンウタリOKINAWA1945』を観た。心が痛くなる芝居。(3分押し)106分。
     敗戦直前の沖縄を舞台に、沖縄戦線に配属されたアイヌ人兵士たちと沖縄人兵士を軸に、戦争と民族差別という2つの問題を題材にした。不明にして「人類館」事件も、本作のベースとなったらしい知念正真の戯曲『人類館』も知らなかったが、強烈な内容で、エンターテインメント要素を入れてはいるものの、ひたする心が痛くなる。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/04/11 (火)

    『キムンウタリOKINAWA1945』
    知念正真の傑作戯曲「人類館」をリスペクトした構造で描く。(チラシより) まさにサーカスを観ているような、時にその内側にいる錯覚をも感じた。
    沖縄とアイヌの共通点を知り、自分はいったいどこに属するんだろうとも考えさせられた作品でした。

    ネタバレBOX

    いじめる側になるか、いじめられる側になるか。殺す人になるか、殺される人になるか。…。
    大河ドラマ「渋沢栄一」でのパリ万博を思い出し、
    劇団チョコレートケーキ『ガマ』で観たガマの話を思い出した。
    また、まさか沖縄戦にアイヌが駆り出されていたとは。
    音楽そして音担当の鈴木浩介さんが作り出す音楽が台詞のように響く。あれこそ本当の魔術師かもしれない。。。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/04/07 (金)

    「OKINAWA1972」
    知っているようで知らない沖縄。
    1972年は小学生だったな。なんで沖縄がアメリカだったのかなんて気にすることすらしなかった。
    今も続く“搾取”“差別”どうにかならないのかな…。
    詩森ろばさんの脚本に力強い劇団の芝居と鈴木光介さんの音や音楽が絶妙な空気感を醸し出してくれている。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「OKINAWA1972」

    素晴らしい脚本に唸った。
    まさかの実録ヤクザもの。中島貞夫の『沖縄やくざ戦争』と松尾昭典の『沖縄10年戦争』を観ておいた方が楽しめる。笠原和夫の危な過ぎて映画化されなかった『沖縄進撃作戦』という脚本も御薦め。「これを製作したら俺が殺される」と東映の岡田茂社長がストップを掛けたガチ実録。この辺りの映画は、抗争を煽るとして当時沖縄では公開出来なかった。

    伝説の空手家兇暴ヤクザ、新城喜史(よしふみ)、通称“ミンタミー”(目ん玉)。映画では千葉ちゃんが大友勝利まんまで演じた。とにかくヤマトンチュー(本土の人間)が大嫌い。「タックルせえ!タックルせえ!(叩き殺せ)」。
    今作では甲津拓平氏が演ずる。

    同じく伝説の空手家ヤクザ、又吉世喜(せいき)、通称“スター”(仇名のシターが訛ったものとされる)。未だに尊敬を集める男の中の男、リンチを受け生き埋めにされても自力で這い出して生き延びるなどのエピソードが多数、“不死身の男”と呼ばれた。Vシネでは小沢仁志が演っていた。
    杉木隆幸氏が演ずる。

    内部抗争の末、本土の山口組と手を組まざるを得なくなる上原勇吉。上原組は50〜60人、対する旭琉会は800人。勝負にならない戦いだが、延々と地獄の抗争を繰り広げた。映画では松方弘樹が踏ん張る。
    演ずるは龍昇氏。

    主人公的な立ち位置にいる語り部は日島稔。『海燕ジョーの奇跡』という小説、映画にもなった。演ずる五島三四郎氏は石森太二と町田町蔵をMIXしたような魅力。喋り口が朴訥で好感を持つ。上原組のヒットマンとして名を残した。

    亀頭をペンチで捻り上げ切断されると云う、未だに誰の心にも残るトラウマリンチを受けた日島稔の弟分。演ずるは工藤孝生氏。やけに明るく能天気でこの地獄をエンジョイしてみせる。

    この修羅地獄を生き延びてみせたのは富永清。演ずるは浅倉洋介氏。金城正雄の要素も混ぜているのかも。

    エロい巨乳がいるな、と思ったら福井夏さん。流石に場をさらっていく。

    佐藤栄作(塩野谷正幸氏)と若泉敬(里見和彦氏)が沖縄返還を巡り、ニクソン配下のハルペリン、キッシンジャーと極秘会談を続ける描写がサイドストーリー。

    フィリピン人にレイプされて孕んだ子供を必死に育てた母親役、かんのひとみさん。彼女がある意味、今作の要。縫いぐるみの猫との遣り取りは美しい。読み書きが出来ない為、必死に勉強して字を覚えていく。

    凄く好きなドラマ。こういう作品にこそ、神が宿る。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    この話、どうまとめるのか心配になったがアメリカの属国としてろくに相手にもされていなかった現実で締めてみせる。(若泉敬は密約を暴露した後、自死する)。
    沖縄密約暴露事件の元毎日新聞記者、西山太吉氏についても触れられた。

    だが自分が求めたのはそこではない。純情を汚さず生きていこうと云う人々の秘めた願い。そこに何の意味も価値もないが、それが故に尊い。刑務所に面会に来る母親がどんどん字を覚えていく描写が美しい。ただ、それでも物語は終われない。何故、沖縄は今日まで苦しみ続けなくてはならないのか?

    話題になった『新聞記者』も、安倍政権が生物兵器の研究施設のある大学を作ろうとしていると云うネタにどうも乗れなかった。何か違う。安倍政権(黒幕の『日本会議』)が憲法改正してまでどうしてもやらなくてはならないことを示すべきだった。『それは“戦争の出来る国”作り。敗戦国の汚名を払拭して、敗戦前の主権国家に戻すこと。敗戦国のまま、戦争回避を掲げたままではこの国に未来はない。戦争は一つの有力な外交手段であるが故』。善悪の彼岸に立つ、そここそを突いて欲しかった。

    眼前に迫っている台湾有事、嫌でも選ばざるを得ない。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2023/04/07 (金) 19:00

    『OKINAWA1972』を観た。面白い。(3分押し)109分。
     2016年に初演された作品を手直しして上演。初演も観ているのだが、初演とは違った面白さ、というか、初演より面白く感じた。沖縄返還前後の沖縄ヤクザのあれこれと返還に伴う「密約」という政治的側面を並行して描く。関連を示す、というのではなく、沖縄返還の2つの面を描いたという印象で、初演よりも整理されている感じを持った。妻役の伊東弘子の佇まいが印象に残る。
     前日にもう1作の初日が役者の怪我で中止になり、本作の初日を迎えた。

この公演に関するtwitter

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  1. 最近観た映画『シャドウ・イン・クラウド』『遊星からの物体X』『トロール』『レギオン』。舞台『キムンウタリOKINAWA1945』『OKINAWA1972』。流山児の芝居を観るのは久しぶり。

    1年以上前

  2. 最近観た映画『シャドウ・イン・クラウド』『遊星からの物体X』『トロール』『レギオン』。舞台『キムンウタリOKINAWA1945』『OKINAWA1972』。流山児の芝生を観るのは久しぶり。

    1年以上前

  3. 舞台「キムンウタリ OKINAWA1945」千秋楽。この舞台を観れて良かった。それぞれの役が愛おしく感じ、あの空間や音楽がとても好きで素敵な作品でした。それぞれが生きて戦っていたことアイヌのこと戦争の悲劇だけではなく知らなくてはい… https://t.co/iWA26NjUGy

    1年以上前

  4. お世話になりっぱなし三上陽永さん出演、流山児★事務所 公演「キムンウタリOKINAWA1945」をスズナリで観劇。登場人物が多く設定も複雑に交差するので前半は頭フル回転、それを見事に後半で伏線回収する展開に昂奮w https://t.co/YjAlaI4ubK

    1年以上前

  5. 現在上演中!の公演 「 OKINAWA1972」は2023/04/23まで上演中です。感想は→https://t.co/iOY2vHSokk #キムンウタリ #上演中 #劇評 #流山児

    1年以上前

  6. 現在上演中!の公演 「 OKINAWA1972」は2023/04/23まで上演中です。感想は→https://t.co/iOY2vHSokk #キムンウタリ #上演中 #劇評 #流山児

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  7. 下北沢スズナリ 流山児事務所 OKINAWA 1972 お疲れ様でした! https://t.co/PQSYCNf3wc

    1年以上前

  8. 現在上演中!の公演 「 OKINAWA1972」は2023/04/23まで上演中です。感想は→https://t.co/iOY2vHRQuM #キムンウタリ #上演中 #劇評 #流山児

    1年以上前

  9. 現在上演中!の公演 「 OKINAWA1972」は2023/04/23まで上演中です。感想は→https://t.co/iOY2vHSokk #キムンウタリ #上演中 #劇評 #流山児

    1年以上前

  10. 舞台稽古の時に、差し入れでいただいたアイスクリーム🍨これでだいぶ乗り切れました❣️ 本日は夜公演「キムンウタリ OKINAWA1945」19時開演です。 #流山児事務所 https://t.co/p40FwppnQG #流山児事務所 #下北沢ザスズナリ

    1年以上前

  11. 4/12 今日の公演 キムンウタリOKINAWA1945/ザ・スズナリ OKINAWA1972/ザ・スズナリ なんだコイツ/駅前劇場 わたつうみ/「劇」小劇場 世界が消えないように/小劇場B1 彼女も丸くなった/シアタートップス… https://t.co/OQkZCIXxZF

    1年以上前

  12. 舞台「キムンウタリOKINAWA1945」沖縄戦で沖縄の人とともに戦ったアイヌの人たちという重いテーマではあるが、歌と踊りと時にユーモア挟みつつ観やすいつくりになっていた。流山児事務所の劇団公演という事で集団のパワーを感じた。1月に沖縄旅行 ひめゆり資料館に行っておいてよかった。

    1年以上前

  13. 4/11 今日の公演 キムンウタリOKINAWA1945/ザ・スズナリ 鳳凰祭四月大歌舞伎/歌舞伎座 滝沢歌舞伎ZERO FINAL/新橋演舞場

    1年以上前

  14. 舞台「キムンウタリOKINAWA1945」観劇しました。沖縄戦争での辛くて悲しい現実がとても苦しかった。重いテーマだけど生演奏での歌と踊りとても楽しくて良かったです。アフタートークでのお話もいろいろ聞けて楽しかったです。 パンフレ… https://t.co/bpVSFrwq03

    1年以上前

  15. 流山児★事務所公演『キムンウタリ OKINAWA1945』@ザ・スズナリ。見世物小屋的な舞台で展開するのは1945年の沖縄の姿。所々にユーモアを織り交ぜながらも、どこか息苦しいような現代社会に対するメッセージは痛烈。演者が放つパワ… https://t.co/Ftz9jMjEvB

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  16. 流山児★事務所公演『キムンウタリ OKINAWA1945』@ザ・スズナリ。見世物小屋的な舞台で展開するのは1945年の沖縄の姿。所々にユーモアを折り交ぜながらも、どこか息苦しいような現代社会に対するメッセージは痛烈。演者が放つパワ… https://t.co/1Su6hT8vfn

    1年以上前

  17. 流山児事務所公演 「キムンウタリOKINAWA1945」 観に行ってきました。 とても面白かったです! 重い題材ですが、 すごく演劇的で力強い舞台。 存分に堪能させて頂きました。 「OKINAWA1972」という作品と2本立てで… https://t.co/rW8DpmnzfF

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  18. 流山児事務所公演 「キムンウタリOKINAWA1945」 「OKINAWA1972」 稽古も佳境。 これからが正念場。 これが必需品。 [かんのひとみ R扱い 予約フォーム] https://t.co/bTPOahQR17 [公演… https://t.co/iSjQU9KM6Q

    1年以上前

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