はつかねずみと人間 公演情報 はつかねずみと人間」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 意義ある上演だが。
    入った瞬間舞台美術に驚く。小劇場でここまで作り込むのも珍しい。見事に時代風景が反映されており、劇空間がパッと映える。照明の入れ方なども幻想的で綺麗だ。

    主演二人の演技力はかなりの実力だと感じた。一方、端役、特に女性陣の素人演技がどうしても目にかかる。キャスト数がそもそも非常に多く、下手に弱い演技で作品全体を色褪せさせるのならば、もう少し人数を削れば良かったのではないかというのが正直なところではある。

    原作は未読だが骨のある脚本に仕上がっており、作品のテーマ的にも現代日本で上演する価値のある作品であったことは確か。それだけにチケット定価の高さと観客席の空白がもったいなかった。とは言え、何を目的に上演するかは劇団それぞれだろうから仕方ないのかもしれない。

  • 満足度★★★★★

    あまりにも秀逸な舞台に感無量!
    スタインベック「はつかねずみと人間」を舞台化した作品。初観の劇団だったが、舞台セットといい、キャストの演技力といい、非の打ちどころがなかった。いあ、それどころか終盤の悲哀には号泣したほど。
    完全無欠のストレートプレイ。

    以下はネタばれBOXにて。。


    ネタバレBOX

    純情で白痴の大男レニーと目端が利く小男ジョージは幼馴染の季節労働者である。二人は貧困に苦しむが、奇妙な、それでいて暖かいお互いの友情に支えられる。彼らの夢は、金を貯めて自分達の小さな農場を持つことであった。叶う望みの薄い夢に向かって現実の厳しさに耐えてきた二人であったが、ある日、レニーの過ちが元で夢は破れ、悲劇が訪れる。

    舞台はアメリカの農場労働者の夢と現実の悲哀が見事に描写されていた。苦しい状況の中でも夢をみることでお互いを支える友情。しかし、その友情さえも奪ってしまう現実の厳しさ。そのことを感じ取るだけでも、本公演は観劇に値する。

    舞台はメイに関わったレニーが些細な誤解や不運で起こった悲劇だったが、この物語の特徴は悪役らしき人は出てくるが、そういう人達もどことなく同情を誘うように描かれている。結果、悪人はいないのに些細な誤解が元で悲劇的な結末を迎える。「しかたがねえよ、ジョージ。まったく、しかたがなかったのさ」というスリムの言葉がすべてを語っているという気がした。「しかたない」だけに非常に悲しい。

    終盤、メイを誤って殺してしまったレニーをカーリーと農場労働者が射殺しようとくまなく探すが、その前にジョージがレニーの後頭部を打ち抜く場面でのジョージのセリフが胸を打つ。舞台はこの二人の悲劇で終わるが、この二人の演技力あってこその感動だった。観客の感情をうまく高めて芝居に感情移入させてくれる。見事な舞台だった。どのキャストも見事な演技だった。

    ああ、素晴らしい舞台を観ると満ち足りた幸福感を味わえる。

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