ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶 公演情報 ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    予想外に笑いどころの多かった
     フリージャズのインプロビゼーションのように、「リズム的に合ってるのかはずれてるのかよくわからないけれど、エモーショナルな部分ではピタリとシンクロしている」ように感じました。音と言葉と身体の動きによるフリージャズですね。

     第1部「ホットペッパー」での派遣社員達の送別会企画の会話、第2部「クーラー」の会話、第3部「お別れの挨拶」の長い挨拶、どれも、ただしゃべりたいことを話しているだけで相手がちゃんと聞いているのかは微妙。JAZZのインタープレイって、"音による会話"って言われることがありますが、実際にはかみ合わない会話だったり、あるときは喧嘩だったり、自分勝手な自己主張だったり、でも予定調和な会話にならないが故にスリリング。今回の舞台は、そんなおもしろさにあふれていたと思います。

     音楽があることで、無音になる瞬間が極端に少ない。音楽のない前作では、無音になった瞬間の場内の緊張感は半端なかったのですが、今回は音楽のおかげでとてもリラックスして拝見することができました。

     予想外に笑いどころの多い舞台でもありました。
     当日パンフに"何としても自分の置かれている状況を肯定したいという思いはある。(岡田氏談)"とありました。そのような描き方だから笑えるのだと思います。

  • 満足度★★★★

    手法のキレはやはり圧巻
    2度目のチェルフィッチュ。前回観た『フリータイム』よりはるかに分かりやすく、ちょっと「面白い」と思ってしまった。
    独特の手法から紡ぎだされる徹底的に空虚なリアル。
    無自覚に「普遍」を描こうとする演劇人が多い中、正面を切って表層を描くチェルフィッチュは、やっぱり強いしカッコいい。
    意図した感想か分からないけど、僕は、チェルフィッチュを見るたび表層こそがリアルなんだと確信します。

  • 満足度★★★

    空虚な言葉がコミカルに浮き彫りに
    まず、あの繰り返されつつも、微妙に細部が異なっている厄介な台詞を
    語りつつ、切れの良い動きを見せ、もとい魅せてくれた俳優達にエール。

    何度も何度も執拗に繰り返される、一見意味の無い言葉の数々、
    「ホットペッパーって役に立つんですよねー」「クーラーが寒くて地獄
    みたいなー」「女性ってそうですよねー」…

    何回も繰り返される動きと共に、見ているうちに俳優達がまるで
    「演技している人間」というよりも「律動するゼンマイ人形」か何かのように
    見えて仕方がありませんでした。

    ネタバレBOX

    結局、派遣の社員達はクビにされた同僚の送別会をやる、といいながら
    その実皆自分のことで頭が一杯で、同僚をタネにしてどれだけ自分のことを
    語る、というか、押し付け合うか競っている。 そんな空虚過ぎる風景。

    正社員達も互いのことなんてどうでもいいし、クビになる同僚も会社の
    人間なんて素でどうでもいい。 どうでもいい人たちが開いてくれる
    送別会より、それにかこつけて自分のことを話す方が大事。

    暗転直前、派遣の「小松さん」がクビになる「エリカさん」に、
    「私達も遅かれ早かれ後を追いますんでー」って言った時笑った。 ヒドッ。

    『ホットペッパー』が一番面白かったかな。 登場人物が三人と
    三者三様違う動きを見せてくれるし、台詞もヴァリエーションがあったし
    一人が躍るような動作で自己主張してる時の、他の二人の反応も
    何気に面白かった。 うちわであおぎ出したりするし(笑
    ぎこちなく、不穏なjohn cageの音楽もマッチし過ぎです、本当に。


    『クーラー』『別れの挨拶』は動きの切れは凄く良いのだけど
    いかんせん人物が二人ないし、一人なのでどんなに良くても
    基本同じ動作の繰り返しなので冗長にはなった、かな。
    少し時間も長いような気がした。

    でも、動き的には『別れの挨拶』が一番良かったと思います。
  • 満足度★★★★★

    普通の人が共感できる演劇の最前線!
    素直に笑わせてもらいました!
    前回横浜で観た作品は面白かったけど、正直いって演劇ファンでもない友人を誘って観に行ける内容ではなかったのですが、今回は違います。
    逆に、芸術家くずれの演劇ファンなんかじゃなくて、ごく普通の会社勤めの、ごく普通のビジネスパーソンこそが、より共感できるような内容だったのではないでしょうか。
    で、それがいまの演劇の最前線・・・となると、ま、これ「演劇ファンが、隣の課の○○さんを誘ってみるのに好適な作品」とさえいえるかもしれません。

    ネタバレBOX

    ストーリーはあるにはありますが、基本はダンスに近いです。
    で、この演劇とダンスのフュージョン具合が、「最前線」と思われている理由ですね。
    ただ、この「ダンス」の動きというか振り付けが、極めて「リアル」な、笑っちゃうほど「そこかしこのオフィスでよく見かける」動作をベースにしたデフォルメなんですね。
    いや、怖いくらいです。
    で、テーマは、平田オリザ『ソウル市民』の、現代日本オフィス編っていう感じで、よく考えると深い・・・と。

  • 満足度★★★★

    不思議な魅力にとりつかれる。
    若者の日常会話をデフォルメしたような台詞が音楽に乗って繰り返される。そして、えも言われぬダンス(と言っていいのか?)風の体の動き。全てが斬新で刺激的。また観たいと思わせる魅力あり。

  • 満足度★★★★

    歌と踊りとチェルフィッチュ
    「ホットペッパー」「クーラー」「お別れの挨拶」の順で上演。会社のオフィスらしい場所設定が共通で、それによって三作が一つのお話になっている。が、ストーリー自体はそんなに複雑なものではない。上演時間はトータルで70分ほど。
    私が見た回は場内の冷房がかなり効いていて寒かった。まさか「クーラー」という作品の内容に合わせて意図的にやったとは思わないが、これから見る予定の人はクーラー対策をしておいたほうがいいかも。

    「ホットペッパー」と「クーラー」はそれぞれ単独で見たことがあり、そのときはそれほど面白いと感じなかったが、今回は以前とどういう違いがあるのかはわからないけれど、最後まで、3作とも、面白く見た。

    ネタバレBOX

    「ホットペッパー」は武田力、伊東沙保、横尾文恵が出演。音楽はジョン・ケージ。台詞と動きが普通の演劇に比べるとよりいっそう音楽に呼応しているので、パフォーマーの音楽性やリズム感が優れていればいるほど、台詞は歌に、動きはダンスに近づくように思える。この3人の中では武田力のパフォーマンスが飛び抜けてよかった。派遣社員が退職することになり、その送別会をどうするかという相談がテクスト部分の内容だが、この作品ではもう歌と踊りのパフォーマンスだと割り切って、言葉の意味とかストーリーはあまり考えなくてもいいのではないかと思った。

    「クーラー」は山縣太一と安東真理が出演。これまでに2度見ているが、今回がいちばん面白く見られた。音楽はステレオラブとトータスとあるが、これは聞いたこともない。台詞や動きの反復が目立った。山縣太一の胸ポケットに入れたタバコが、彼が腰をかがめるたびに床に落ちる。何度目かに落ちたとき、タバコの箱が思わぬ方向へ転がったが、それでもパフォーマンスに大きな影響はなかった。それを見たとき、全部とはいわないまでも、一部にパフォーマーが即興をやる箇所を設けても面白いのではないかと思った。(いや、私が気づかなかっただけで実際にやっていたりして・・・)

    「お別れの挨拶」は前2作の出演者全員が下手に並び、彼らに送別される派遣社員の女性が挨拶をするという設定で、基本的にはそれを演じる南波圭のソロ・パフォーマンス。音楽はジョン・コルトレーン。ここではもう見る側も体をスイングさせる感じで、演劇というよりも音楽とダンスのパフォーマンスとして楽しんだ。

    これまでのチェルフィッチュの作品はおおむね演劇作品として見てきたし、その場合はパフォーマーのしゃべりや動きも基本的には役者の演技の延長として捉えていたが、今回のようにこれだけ音楽性が高まると、役者もただ芝居の演技力があるだけでは追いつかなくなってくるのではないだろうか。
    オペラ歌手とブロードウェイ・ミュージカルで活躍する役者を比べてときどき思うのだけど、前者は演技力がそこそこでも歌唱力があればカバーできるし、ダンスは踊れなくてもなんとかなる。それに対して後者は演技力のほかに、歌って踊ってが求められる。
    チェルフィッチュの芝居とブロードウェイのミュージカルを比べてもしかたがないが(笑)、今回のチェルフィッチュの作品が役者にとって通常の芝居よりもハードルが高いのは確かだろう。

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