うれしい悲鳴

アマヤドリ（東京都）

公演に携わっているメンバー：21人

団体紹介

私たちの劇団は本公演をもって「ひょっとこ乱舞」というプロジェクトを終了し、新たな実演組織と運営会社へと発展的に解消いたします。

実演組織は所属俳優たちとの継続的な活動の場を死守しつつ、客演陣に対しては開かれた場であることを忘れない「伝統」と「革新」が交錯する場を目指します。運営会社は会計監査に耐える透明性の高い経理を実行して法人格の取得と継続的な公的助成の獲得を目指すとともに、国内外を問わず新たな観客の下へ作品を届けられる企画力に磨きをかけます。

新たな10年を歩き始めるにあたって私たちが原点としたのは、お客様を巻き込んで広がっている「記憶」です。お客様とともに呼吸を重ねてきた時間は、何よりも大きな私たちの財産だからです。

私たちは演劇を通じてお客様に楽しんでいただき、感動してもらいたいと考えてきました。宇宙にたった一人で取り残されたような孤独な魂を、孤独のまま「つながり」に変えることが演劇になら出来ると信じてきたからです。これからもそのことを信じて、演劇の続きをしようと思います。

応募公演への意気込み

本公演で挑戦することは大きく三つです。

劇作面では、現代口語演劇以後の言語空間においてスケールの大きな物語を紡ぐことに挑みます。近年、戯曲が扱う題材は繊細でリアルになった反面、あまりに個人的な問題に終始してしまう欠陥を抱えてきました。今回、私たちは近未来の日本を題材として政治や国家という社会の枠組みを問い直しながら、「いかに個人の感覚を繊細に描きつつそれを社会と接合させるか」という課題に挑みます。

二つ目は演出面での挑戦です。私たちは「踊る体としゃべる体の接合」という普遍的なテーマに「群集を有機的かつ即興的に動かす」という、劇団独自の切口で挑みます。
「動くのは楽しい」というシンプルな起点から、俳優の体が何もない空間を次々に変化させる「舞台ならではの醍醐味」に満ちた作品を目指します。

三つ目は制作面での挑戦です。私たちは初見のお客様を無料にするサービス「タダ観でGO！」を今回も継続して観劇の間口を広げ、また、3月11日の千秋楽には福島より演劇研究会「ほのお」を招聘してリーディング公演を行い、「東北の演劇人の声に耳を傾ける」活動を継続します。
その他、「ひょっとこ大爆破」を飾る豪華パンフの作成、ゲストを招いてのポスト・トーク実施、創作途中でのワークイン・プログレス開催など、お客様と共に作り、楽しんでいく企画・サービスを追求していきます。

集団として一区切りとなる今回、全てを出し切ってかつて辿りつけなかった場所を目指します。

将来のビジョン

次回公演では「原宿カルチャー」をヒントに「コレクター」についてを扱います。資本主義、情報化社会、趣味の多様化、オタク、タトゥー、アニメ、ファッション、など現代日本が抱える様々なモチーフを「集める」というキーワードの下に再構成するのです。

たとえば、いわゆる「かわいい」グッズに群がる少女たちや洋服・アクセサリーを集めるファッションマニアたちと、美少女キャラやアイドルグッズ、アニメ関連商品を買い漁るオタク趣味のコレクターたちは全く別種の人間だと思われたりもしますが、「好きなモノを集める」という点で共通の傾向を持っています。それらの「ハイレベルな消費者たち≒コレクター」を描くことによって、私たちの暮らしとそれを取り巻く多すぎる「モノ」、それによって必要以上に駆り立てられている所有欲の正体を暴き出します。

その際、モノを所有することの幻惑的なまでの楽しさと、強烈な虚しさとを両面から描き出し、現代人の極大化した物欲の果てを見据えるような、大きな感動をもたらす物語を展開したいと考えています。