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カテゴリ:ワークショップ告知 返信(121) 閲覧(7073) 2014/04/01 15:06
「今週のレッスン内容」
俳優・声優養成所のレッスンと一口に言っても様々で、
大人数で短時間、受講者の実力や抱えている問題を無視した
画一的な通年カリキュラムのワンパターン繰り返しや、
流れ作業的に漠然とした言葉しか言わないレッスンは良くないです。
講師も人間だから間違ったことを言う可能性はあります。
だからこそ、押しつけではなくて、選択肢の一つとして
具体的な案、具体的な方法を提示すべきです。
人は比較案があった方が、自分が本当は何を求めているのかを実感しやすい。
僕のアドバイスを自分に問い試すことで、貴方に有効かどうか判断してほしい。
有効でなければ次のアドバイスを出します。そのくらいの引き出しがなければ逆に
演技レッスン講師をやるべきでないと思っています。
大きな流れで各曜日時間帯レッスンのカリキュラムはもちろん作っていますが、
メンバーのリクエストや実際入った仕事に合わせて柔軟性を持たせています。
少人数の「相手役のいる個人レッスンならでは」、を大事にしていきます。
今週のレッスン内容を紹介します。
木曜
9:00~
・シェイクスピア作品のシーンスタディ
古典の台詞を感情のふり幅大きく届け、また長台詞を聴いている間、
自分の間が埋まっているかを感じ、改善するレッスン。
時に配役を取り換え(その際は即興性をより重視)、
台詞に捕らわれやすい古典だからこそ反応することの大切さを実感。
・アニメのアフレコ
メンバーのマイクワーク実習のリクエストに応え、マイクを複数で分け合う場合、
また画の動きに合わせてマイクをOFFったりモノローグでは近づいたりの
加減の効果を掴むレッスン。
15:00~
・先週初見対策で読み合わせ→半立ち稽古をした作品の、初立ち稽古。
通常のリハーサルと違い、プロンプは挙手制。
物語が繋がるよう自分で何とかする緊張感、相手役が台詞が飛んだ時、
自分に何が出来るかをケースバイケースで体験。
この回は言葉の細部よりも、シーンの流れを掴み、自分の役の人物が、
そのどこで気持ちが変化していくか、家で自主練していた時のイメージを
なぞっていないか、その場でもらっているかを感じるレッスン。
土曜
11:00~
・ヴォイスサンプル制作実習
専用音声ブースでのサンプル収録の前に、ヴォイスサンプルに
求められるものは何か、逆にサンプルとして有効でないケースを
具体的に紹介することでレクチャーしていく。
声のカタログ作りで陥りやすいポイントを整理後、個々の内容のブラッシュアップ。
・人気作品の立ち稽古
再演を重ねる人気作品のシーンスタディ。初立ちでの流れや気持ちの確認の
次の段階として、作家の書いた文体と自分の日本語の癖を比較し、作品世界に
自分の口調や感性を合わせることが何をもたらすかを指導。繰り返し演技する。
17:00~
・TVドラマ演技実習
ホームドラマの映像作品を取り上げ、感情交流を主軸に演技を構築後、
舞台演技と映像演技の違いをレクチャー。演技で強調したいメッセージがある時、
演技を大げさにすることと、感情を大きく出すことの違いを比較しながら実感。
・オーディオドラマ実習
感情表現に没頭すると出やすい各自の癖の中でも、演技に有効なものをチョイス。
癖はそれをやるから自分がノリやすくなるもので、癖を取り入れて演技する効果を
テイクを重ねることで体験する。
日曜
9:30~、15:00~
脚本・演出家による夏のワークショップ(全8日間72時間)の5日目。
ダブルキャスト(役によってはトリプル)で立ち稽古。
台本の指定がアタマにありつつも相手役を感じて気持ちで演じる重要性、
演出に合わせてその場で演技を変えていく即興のふり幅の必要性を実感していく。
各レッスンの合間(今週は日曜を除く)には1時間の補講時間を設け、
希望者に個別レッスンしています。
今、舞台リハーサル中のメンバーや映像撮影を控えたメンバーが
本番前に度胸試しを兼ねて実演。
「こういうつもりで演っているのに、なぜそれが伝わらないか。」
演出家ではなく演技コーチとして、そのポイントをピックアップし、
改善策を提示、自分に合うものを選んでもらう時間にしています。
画像はシーンスタディ用稽古場。ここと音声ブース稽古場を組み合わせてレッスンしています。
熱いやる気に毎日接することで、僕自身心に得るものが多く、遣り甲斐を強く感じています。
ヴォイス&アクターズ道場
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「どんな三角形で演ってる?」
物凄くザックリ言うと、演技表現は
心・脳・身体の三つのバランスを取りながら演るものだと思います。
心と脳がどう違うのかは難しいところですが、
心が思わず笑ったり、泣けてきたりすることと
脳で次の台詞を考えたり、演技の段取りを思い出す作業は別モノでしょう。
心・脳・身体のバランスが正三角形なのが理想的な演技者の演技中のバランスだと云われますが、
僕の実感では、それは人それぞれ。
アクションから俳優業に入った方に、身体の動きできっかけを取った方が
台詞が淀みなく出てくる場合が多く見受けられたり、
ミュージカル俳優で、ダンスの振り付けなど動きを再現しながらの方が台詞に感情が入りやすいと言う方も多いです。
人によって身体の点に向かって伸びる辺が長い形のバランスで演技した方が、その日の出来が良い可能性が高い。
心、テンションは高く存分に本番中感情的にはなっているのに、肝心の台詞の音が潰れて
何を言っているのか聴き取れなくてお客様が置いてけぼりな俳優などは
心を維持しつつ脳の意識を高く出来れば台詞術は改善しやすくなります。
逆に本番中でも、気持ちで話すより、アナウンサーの滑舌訓練のように、綺麗に発声は出来ているのだけれど
心の動きが感じられない、事務的な機械的な口調になりがちな俳優もいます。
旅公演の舞台の仕事などで、前回の本番から二週間以上間が空いて、昼間一度だけ通し稽古して夜久しぶりの本番、
なんていう時の通し稽古は、僕の場合、心・身体より脳で演じている度合いが高くなります。
本番では「心」重視で、気持ちで動く、気持ちで話す為に、あえて丁寧に脳で確認しながら演じるカンジです。
本番でも滑舌よく話さなければ、という目標がその俳優の「一番」になってしまい、
なぜ言いたくなるのか、言って相手をどうしたいのかが二番三番、もしかしたらそれ以下になっている俳優は
本番テイクでも脳を中心とした二等辺三角形のバランスになりがちなのではと感じます。
舞台初日の演技が堅い、
昼夜公演が続くと動きのキレが悪くなる、
誰かが台詞を噛み始めると連鎖反応が起きやすい、
楽日にアドリブを入れたがる俳優が多い・・・
演技を巡るあれこれは、自分の心・脳・身体のバランスが今どんな三角形を形作っているかの自覚があれば
良い方向に向かえる確率が高くなります。
道場のレッスンの利点は少人数で何テイクも演技が出来ることですが、
初見、半立ち、初立ち、返し、通し、練り通しの各段階ごとに、
今のテイクの心・脳・身体のバランスがどんな三角形になっていたか?を問いかけるようにしています。
もっとこんなバランスだったら、今の演技のこの部分はこうならなかったのでは?
今の演技より、何を意識すればもっと気持ちが伝わるだろう・・・
僕は、本番では心の比重が一番大きく、心の先導されて話したり動いたり、
自由にその場の思いつきで振る舞っているように見えながら、
「役者って、気持ちのまま笑ったり泣いたりしているだけで楽な商売だな。」って観ている観客が
もし台本を読んだ時、「・・・・・台本の通り正確に話したり動いたりしるんだ・・・・・」と思われるような演技が
良い演技表現だと思っています。言うは易し。でも出来ることでそこを目指したレッスンを
本人や相手役や役柄が変わる度全てがレアケースだと思って毎週しています。
ヴォイス&アクターズ道場
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「勝手に来るのに追いかけると逃げるもの」
先週土曜の「俳優のためのアレクサンダーテクニック」レッスンでの
シーンスタディ時、みんなで自我と役の目的のバランスをいろいろ試している中、
役の台詞の中のある言葉が俳優自身の記憶を喚起させて
ねずみ花火が弾け飛ぶように湧き溢れる感情がコントロール出来なくなったメンバーがいました。
演技後、恥じるように反省するメンバーに倉持講師が
「感情が溢れ、溺れかけてもその中から自分の意思で
台本の内容に、演技の場に戻ろうとしていたことが大事だし、美しいこと。」
とサポートしていましたが、僕も全く同感です。
何があっても、僕が開かれた稽古場で演技探求の時間を持ち続けたいと思うのも、
こういう瞬間に立ち会える喜びがあるからです。
感情って自分でもどうしようもないくらい、思わぬ時に勝手に来るのに、
こちらが求めて追いかけるとスルリと逃げて距離を取ってしまうもの。
役の感情に溺れることイコール充実した演技ではないけれど、
役を生きるのに有効な感情が、自分自身の内から溢れ出て、
自分の体験・記憶から来る感情に突き動かされているというのに
台本の指定通り作家の紡いだ言葉を話し演出の希望通り動けている・・・
話していること動いている動機は役の目的の為なのに
内面は自分自身の感情に突き動かされている状態。
その至福は巨大なもので、僕の場合、それを体験して以降
自分という人間との付き合い方が前よりもずっと楽になった実感があります。
それは微妙なバランスで、次のテイクでは今度は感情を待ってしまったり、
置き換えの作業そのものに没頭してしまったり・・・
何もかも上手くいく本番なんて、どんな名優でも一生に何度あるのだろう。
でも求め続けていれば確実にレベルを高く維持することが出来ます。
自分を使って、同時に自分と闘って、瞬間を選択している演技を見ると
僕は感動するし、この稽古場を共有出来た喜びを大きく感じます。
日曜に道場メンバー二人が舞台公演を終え、今日別の舞台に出演のメンバーも千秋楽。
別のロングラン作品では春からの長い本番期間を乗りきったメンバーが今日神奈川で大楽を迎えます。
稽古と公演で感じたあれこれを記してくれたメールを読みながら、
素敵な楽日を迎えてほしいと心から願っています。
ヴォイス&アクターズ道場
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「自信と謙虚のあいだ 1」
大滝秀治さんの生前の様々な御発言を、
それを聞いた方のエッセイとして集めた本の中に、
役者に必要なこと、として
「自信と謙虚のあいだ」
という言葉がありました。
謙虚の下をいくと卑屈になり、自信の上をいくと自惚れになる。
俳優の自意識のあり方のバランスを取ることの難しさについての言葉です。
大滝さんの舞台は遺作となった「帰還」はもちろん、
降板された「うしろ姿のしぐれていくか」も含め、
可能な限り観続けてきましたが、自分自身が年を取っていくにつれて
「自信と謙虚のあいだ」
この言葉が身に沁みるようになりました。
難しいバランス・・・でも必要な意識だと感じます。
僕が大滝さんと御一緒させていただいたのは
22年前のTVドラマ。
当時、もうリハーサルをやらないTVドラマが多くなっていた中、
この局の連ドラには珍しく(?)ガッツリとリハーサル。
それも大滝さんの達ての御希望だとマネージャーから聞いて
渋谷ビデオスタジオの5階に出かけました。
船で行方不明になった大滝さんを見つけ助けた漁師が僕の役。
自宅に連れ帰ったところを持て成してもらいちょっとした宴になっている場面。
舞台でも映像でも普通、飲食のシーンでもリハーサルはモノがある「つもり」でやったり、
紙コップと紙の皿を並べて、高級レストランの場面を稽古したりするのもよくある事です。
でもその時のリハーサルは、おそらく大滝さんの希望だったのでしょう。
リハーサルなのに、いわゆるパーティー料理、オードブルや
空き瓶ではなく本当に中身が入った酒類が用意され、
本当に「・・・これから打ち上げ飲み会?」状態でした。
大滝さんはキャスト・テーブルに座って、台本を抱きしめていました。
悩んでいるような怒っているような考え込んでいるようなお顔。
握りしめた台本を開くわけでなく、もう覚えきっている台詞たちを
頭の中でそらんじている様子でした。
スタッフが発注したパーティー料理の大皿数々には
テリーヌやスモークサーモン等洋風のおしゃれオードブル。
大滝さんはそれが気になるようで、もっと家庭料理、漁村の漁師料理、
せめて和食を用意出来なかったのかスタッフに確認していました。
場面の演技的には、激しく口論するシーンなので、演技中飲食する
時間的余裕は全くない場面です(つづきます)。
ヴォイス&アクターズ道場
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「自信と謙虚のあいだ 2」
大滝さんはキャストのテーブルで目を閉じて、台本を抱きしめていました。
悩んでいるような怒っているような考え込んでいるようなお顔。
握りしめた台本を開くわけでなく、もう覚えきっている台詞たちを
頭の中でそらんじている様子でした。
スタッフが発注したであろうパーティー料理の大皿たちには
デリバリー業者から届けられたテリーヌやスモークサーモン等洋風のおしゃれオードブル。
大滝さんはそれが気になるようで、もっと家庭料理、漁村の漁師料理、
せめて和食を用意出来なかったのかスタッフに確認していました。
場面の演技的には、激しく口論するシーンなので、演技中飲食する
時間的余裕は全くない場面です。
TVドラマにしては1シーンが長い場面のリハーサルが始まり、
大滝さんが料理の容器たちの上にかけられたホコリよけのラップを
端から順に剥がして、次も剥がして、次も・・・
その大滝さんがラップを剥がした皿の数々を、あわてたADさんがもう一度綺麗にラップ、ラップ・・・
1テイクごと通して演じる度、台詞を言い終わった大滝さんは
何度も料理皿のラップを剥がして剥がして・・・
演技の中で飲食するわけでなく、だから本来ならリハーサルだから
料理も発注されることなく無対象で「あるつもり」でのリハだったはず。
リアルな演技を求める大滝さんに合わせて、誰も演技中使わないパーティー料理が数々用意され、
お礼の宴の最中の設定で料理にラップがかかったままなのが許せず
台詞一回云ってはラップを剥がし続けていた大滝秀治さんの姿を目の当たりにして
「この方はリアルに、本当に感じながら演じないと納得出来ない方なのだな・・・」
リアリズムの追求、という言葉が浮かびました。
何もそこまでこだわらなくても、という意見もあるでしょうし、そこまでやらず妥協点を低くしたとしても
きっと同じ演技を大滝さんは出来たはずでしょう。
それでも、なくても出来る、無駄と切り捨てられがちなところにもこだわるからこそ
演技中の自分が納得出来る感覚があり、それを大切にする。
頑固に「心の柔らかい部分で感じようとする」演技への姿勢を見て、
常にこだわり、その場で感じることを大事にしようとすることで
「自信と謙虚のあいだ」にご自分を留まらせようとする
大滝さんの演技者としての戦い方を垣間見た思いがしました。
ヴォイス&アクターズ道場
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「11月8日の補講レッスン内容」
少人数のグループレッスン
(感覚としては「相手役のいる個人レッスン」という言葉が
一番ピッタリくる形態になります)を週6レッスン展開していますが、
併行して各自の目標・希望に沿った個人補講も毎週行っています。
8日(日)の補講希望は4名。
Aさんは、希望する団体に入る為のオーディション対策とヴォイスサンプル制作。
オーディションで求められるラインについての考察と
自分の表現にバリエーションを持たせる為に何を意識すべきかの説明。
具体的な台詞の稽古。
Bさんは、舞台公演本番前、感情開放と長台詞とブレスが上手く連動しない部分の改善。
開放を自身で制限してしまうのは欠点ではなく美点で、感情は本人が我慢している時に
伝わりやすいことの説明と、それを台詞術に反映させるポイントを稽古。
Cさんは、ミュージカルのオーディションに向けてのレッスン
歌詞を心象と事象に分けての歌い分けについての指導と
課題の台詞のキャッチボールのチェック。演技のテンポアップと緩急、間の関係。
音楽に身体が乗るのと気持ちが入ることの違いの比較。
Dさんは、ヴォイスサンプル収録前の内容の検討とリハーサル
サンプル内容の選択、順番について、何の為のサンプルかによってどう変えるべきか指導
サンプルで何をしたいのかと何が求められているかを合致させるレッスン。
それぞれの補講内容を書き出すとこうなります。固くてなんだか伝わりにくいですね(笑)。
難しい論理へ座学の補講ではありません。説明はなるべく簡単に、
1回やっては次に意識するポイントを決めて、もう1回、じゃあもう1回と
実技を繰り返すレッスンです。
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、
おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに」
尊敬する井上ひさし氏の言葉ですが、それが演技レッスンでも出来ればといつも思っています。
グループレッスンの時間枠とは別なので、
個々の都合と相談しながらの時間調整も上手くいき、
各自40分ずつマンツーマン補講が出来ました。
正直、マンツーマンの1レッスンでも伝えたいことは山ほどあるし、
ノンストップで補講レッスンしていても時間はもっと欲しいと思うばかりですが、
各人の希望に大きく応えられた手応えがありました。
それぞれの成果が楽しみです。
演技することで自分と付き合うのがもっと楽になる、人生が楽しくなってほしいです。
補講にプラスのレッスン料などはかかりません。
せっかく108㎡の二つの専用稽古場があるのだから
場所も講師もなるべく利用しやすくして有効活用してほしいと思っています。
ヴォイス&アクターズ道場
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「声優の職人道具」
演技という仕事そのものが、一般的に思われているよりもずっと
技術が必要とされるもので、中でも声優は職人だと僕は思っています。
感性はもちろん大切ですが、感性は誰だって持っています。
インタビューや芸談では「あの声優は感性が良い。」的感性論に
なりがちですが、俳優・声優になりたいと思う人で
感性が繊細じゃない人を探す方が難しいと僕は感じています。
茨木のり子さんの詩に
「自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ」
という言葉がありますが、
自分を守る、自分と闘う、自分で遊ぶ
その術も演技者に求められる技術の大きなひとつです。
演技を知り、出来るようになることで人生が前よりもっと楽しくなるのは
自分との付き合い方を知るから。僕自身がそうでした。
新稽古場で設備も整え、本格的な声優レッスンが出来るようになって
良かったと思うのは、本当の現場と同じ手順を踏みながらも、
自分の演技の加減をいろいろ変えたり、自分の精神の立ち位置もあれこれ試せることです。
本当のオーディション、本当の本番だったら、誰だって安全パイを選択しがちです。
でも稽古場だったら冒険が出来る。
それも1レッスンにつきほんの1回や2回短い場面しか演じられないよりも
ボリュームある役を何度も何度も演じられて、なおかつ失敗が許される方が
自分の使い方が分かるのが早く、より高みに行きやすくなると信じています。
先日の声優実習でも外画のアテレコをやったのですが、
台本を持たずに音声ブースに入っての演技に挑戦したメンバーがいました。
今年、僕が出演した作品でも声優初仕事なのにノー台本でブース入りしていた
子役さんがいて、僕はそのガッツに心底敬意を感じましたが、本番では
なかなかそこまで冒険は出来づらいもの。
でも稽古場なら(もちろん厳しい緊張感はあるのですが)失敗は許される。
そう思って、全員に遣り甲斐ある質と量の役を用意するのですが、それにプラスして
アテレコでも「台本を持たない」など、自分でハードルを足し、しかもそれを
飛び越えられる瞬間に立ち会える喜びは格別でした。
想像するしかなかった設定に自分を立たせて実際やってみてこそ分かること、たくさんあります。
自分を試して真剣に遊んで、たくさん失敗してもう一回もう一回と進んでほしいです。
その為の少人数制、相手役のいる個人レッスンです。
ヴォイス&アクターズ道場
道場生日記「声優実習で」(玉腰裕紀)より
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「ハードとソフトと・・・」
稽古場の大掃除も終わり、今日が仕事納め。
1月は4日から仕事でなんだかあわただしいですが、それでも年末、
今年の感慨があります。
今までの稽古場がビル取り壊しに伴い立ち退きとなり、
4月22日に池袋駅東口徒歩4分の新稽古場に移転しました。
108㎡になり、シーンスタディ用でアトリエ公演も出来る稽古場と
アフレコやナレーションを本番と同じ流れでレッスン出来る音声ブース稽古場の
二つの専用稽古場が常時自由に利用出来る養成所になりました。
ハードだけでなくソフトももちろん大切。
レッスンしながら自由にプロの芸能案件にも挑戦出来るシステムが整い、
美輪明宏氏演出の「黒蜥蜴」はじめ多くの舞台にレッスン生が出演、
声の仕事や顔出しのTV出演も相次いで嬉しい年になりました。
年末年始はBS五局開局15周年特別番組
「バック・トゥ・ザ・21世紀~気づけば未来があふれてた~」。
五つの章に分かれ、それぞれがドラマ仕立ての二時間番組で、
「仕事」、「女性」、「怪物」、「東京」、「時間」というテーマ別の番組の内、
第一章「仕事」に松井聖香さん、
第二章「女性」に清水雅子さん、
第五章「時間」に田染尊章さん、田村哲也さん、森広高さんが出演しています。
今年5月にレッスンを開始するまで全く演技経験がないメンバーもいて、
初めてのTV出演が決まり主人公に延々説教(?)する台詞の多さに
本人は驚いていましたが、台詞がお腹に落ちるまで徹底して稽古場で
リハーサルした甲斐あって、本番ロケは予定より2時間近く巻いて終了。
堂々と演技を披露してくれて大変嬉しかったです。
僕自身が若い頃、どうしたら芸能活動が出来るようになるのか皆目分からなくて
実体の無い話しに騙されたり、お金を取られてしまったり様々な経験をしてきました。
今だったらあの時に自分がどうすべきだったかよく分かります。
ギャランティについても、レッスン生だからという考え方ではなく、
プロダクション所属俳優と同額。ジュニアランクで来た案件で撮影1時間で終わった場合でも
出演者手取りが一万円を優に超える金額を渡せている現状を嬉しく感じています。
過去に別の養成所やプロダクションを経験してきたメンバーから
驚かれるのが秘かな(?)喜びです。
それらセールスポイントをもっと発信していくべきだと思いつつ、
毎回のレッスンにエネルギーが向いてしまいつい後手後手になるのが反省点。
でもそれほど毎回のレッスンが内容・展開とも手応えがあり楽しくて、
メンバーの伸びしろを感じることが毎週何よりの楽しみになっています。
良いレッスンにするため常にあれこれ考えることで
自分自身の伸びしろを実感出来た2015年でした。
ヴォイス&アクターズ道場
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情報公開の制約があり、なかなか紹介出来ないのが歯がゆいのですが
レッスン生の映像出演、舞台出演相次いでいるのが嬉しいです。
公開出来る出演情報をトップページ窓にアップしました。
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初見で感じる自分の日本語の傾向に対し、作家の感性の体現にどう近づくか。
作家が文字では書かなかったニュアンスを読み解く楽しさがあります。
道場生日記「課題の終盤」(松野司)
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「目標と足かせと」
舞台・映像・声優の芸能案件が毎週入って来る中、
道場を主宰していて公平感を絶えず気にしています。
芸能案件の情報提示は道場生全員に平等に。
以前撮影参加したスタッフから指名でスケジュール確認が来た場合を除き、
基本的に作品のオーディションには誰でも参加出来ます。
ただ実際にレッスンに毎週熱心に参加しているのに
芸能案件に挑戦することに消極的な方について不思議に思っていました。
興味ありやりたいと普段話しに来てくれるのに、いざとなると。
TV出演も舞台公演も強制することではないので無理強いなどしませんが、
「この案件、キャラクターがピッタリだし演技的にもイケるのに・・・」と
思うこともしばしば。
芸能デビューしてもすぐにレギュラーの座を掴んだり、
経済的に安定出来ることはなかなかありません。
だからこそ仕事や学業との両立しやすさも道場の変わらぬテーマとしていて、
芸能案件に挑戦しやすい環境にしているのになぜだろう、と。
そうした生活の都合とは別に、芸能案件に二の足を踏みがちな方の傾向として
「今はまだ・・・」という方が多いです。
僕自身、ずっと演技の道に進みたいけれど、容姿にも実力にも自信がなく、
いつかいつかと思い続けていたから彼らを笑うつもりは毛頭ありません。
それどころか、いざ出演のチャンスが来ると
「自分なんかまだまだだから・・・」と尻込みしてしまう気持ち、よく分かります。
そして、途方もないことに思えた撮影・舞台出演のチャンスを結局、
同じレッスンを受けているメンバーが掴んだのを知ってから
「やっぱり受ければ良かったです。」と言いに来る気持ちも、実によく分かります。
真面目な人ほど、もっと演技が上手くなったら挑戦しよう、
もっとメンタルが強くなったら挑戦しよう、
もっとダイエットに成功してから挑戦しよう、など
今はまだ・・・と自分でルールを作りがちです。
目標として具体的に「これが出来るようになったら」を決めることは
モチベーションアップに繋がり賛成しますが、
目標のつもりで自分で決めたことが、いつの間にか
自身を縛る足かせになってしまっているのは勿体無い。
「いつかきっと」のいつかは自分で決めるしかありません。
ましてやそのマイ・ルールが
もっと演技が上手くなったら
もっとメンタルが強くなったら、と
自分自身なんとも明確な判断がつかないこと基準にしてしまうのは惜しいです。
純粋に表現者でいたいと求める人ほど、いつまでも自分に満足など出来ないもの。
だからこそもっともっとと向上出来る。そのエネルギーを逆噴射してしまい、
自分を押さえ付ける足かせにしてしまうことはありません。
芸能案件に挑戦しやすくするにはどうしたら良いか。
漠然と基準なく自分を責めることのないように、
レッスンでは、今の演技のどこが良かったかと
ここはこうした方が気持ち・意図が伝わるのではを逐一具体的に伝えていくこと。
マネージメントでは、平等なチャンスの提示と、
ギャランティ支払の充実と透明さ、一度言ったことを引っくり返さない対応。
それらの実行を心がけています。
その上で、別に撮影や舞台への参加はあくまで自由参加。
書類選考のみでもオーディション有りでも、キャスティングされれば
全力で表現者でいなければならない責任があるからです。
マイ・ルールに縛られず安心して飛んでほしいです。
ヴォイス&アクターズ道場
http://yuichisato.com/
僕は神奈川出身ですが、それでも東京に出て演技をするハードルは高かったです。
福岡から僕の指導に価値を感じ上京してくれ、紹介した芸能活動も好評で再び声がかかり、
レッスンやマネージメントを担当する冥利を感じました。
道場生日記「自分自身」(いのいみーこ) http://yuichisato.com/
「キャラクターの交流」
こういうキャラクターを演じたい。漠然を具体化する細部の工夫、
声と身体の距離感の取り方を感情の衝動で演じた後の演技の微調整の実施が大事です。
思いつきや偶然を 新鮮に何度でも繰り返せるのが目的です。
って言葉で書くと小難しいですね(苦笑)。つまりは「生々しい交流が気持ち良い演技」です。
道場生日記「キャラクターの交流」(秋山直登)
http://yuichisato.com/
「夢見る頃はいつまで」1
夢見る頃というのはいついつのことを指すのだろうと思うことがあります。
一般的には10代後半のことなのだろか・・・
多くの人が俳優・声優になりたくて夢見る絶対数が多い時期もその頃な気がします。
30、40、50で夢見ちゃいけないのか。
僕の場合で言うと、今まで生きて来て今が一番演技をしていて楽しいし、
自分の中では今が一番演技が上手いです
(って言葉にすると傲慢に聞こえてしまうかも知れないけれど、
具体的ポイントを挙げて、この実感を説明出来ます)。
自分自身の本番の楽しさと同じか、あるいはもっともっと
今の僕はヴォイス&アクターズ道場を主宰することに生き甲斐を感じていて、
その大きな柱の一つが、
「年齢やそれまでの経験値に関係なく演技を楽しんでほしい。」です。
演技を始めたい時、望み通り始められた人の方が世の中圧倒的に少ないでしょう。
僕自身、役者になりたいとはっきり自覚したのが6歳でしたが、
実際に行動に移せたのが17歳の時でした。
誰にも言えなかった時間が長かったです。
ジャンプしたい時、思うように飛べる条件が整わず、機を逃してしまう。
人生はそんなことの連続で出来ています。
女性で結婚・出産・子育てで人間的に成長し、演技に幅も出てきたのに
休業後、劇団で戻る場がなくなってしまい、そのままズルズルと廃業してしまうケースを
僕はたくさん見てきました。
若い頃、ぶっちゃけあんなに尖がっていた女優さんが、出産・子育てを経て
包容力、味わいが増し人間味がまろやかになり、台詞術もいろいろな声の自然な発声を
獲得し、格段に演技が味わい深くなった・・・・・にも関わらず、
それを披露する場がなくなった。勿体無いことです。
男性も人生経験を積むことで獲得出来る気持ちの持ちようや
人前で出せる声の種類の多さなど、加齢が演技に与える好影響は多いです
(つづきます)。
ヴォイス&アクターズ道場
http://yuichisato.com/
「演技と記憶力」
ヴォイス&アクターズ道場演技レッスンは、「相手役のいる個人レッスン」。
質も量も濃いレッスンを希望するだけ受けられるのが特色ですが、
レッスンしていて誰もほぼ必ず凹む通り道が、台詞覚えに関する自己嫌悪です。
どんなに台詞覚えが良いと云われている俳優でも台詞覚えに苦労したことのない人はいません。
今まで3,000人以上の俳優と会ってきましたが、そんな人は一人もいませんでした。
「どう話すか」、俳優の仕事は基本的にこれです。
作家が書いた言葉を、あたかも自分がその場で思いついたかのように「思わず言う」仕事。
演技力の括りの中には確実に記憶力も含まれます。
覚える、という作業さえなければ、ある程度以上表現力のある俳優にとって、
舞台でも映像でも声の仕事でも、現場で演技するのはそれ自体ご褒美のようなものです。
ちゃんと準備が出来ている時、本番に向かう足取りの軽いことよ・・・
ドラえもんに一つだけお願い出来るとしたら、という番組での答えの1位はどこでもドアでしたが、
俳優に同じ質問をしたら1位は絶対ダントツで暗記パンです(笑)。
台詞覚えでは誰もが苦労しますが、鍛えることは出来ます。
それぞれの傾向に合わせて意識するポイントは違い、鍛え方も異なります。
覚え方の傾向は大きく分けて二通りあって、文字で覚えるタイプと絵で覚えるタイプ。
文字タイプは文字通り演技しながらアタマの中で本のページをめくるように文字が浮かぶそうです。
人によっては行が変わる、ページをめくる瞬間に一拍置くのがクセになる人もいるくらい
音読感の強い台詞回しになる傾向があるタイプです。正確な言い回しがぶれないのが長所です
(つづきます)。
ヴォイス&アクターズ道場
http://yuichisato.com/
「夢見る頃はいつまで 2」
道場では現在13歳から52歳までの方々が演技を磨いています。
1レッスン2,3名での開催も多く、相手役のいる個人指導レッスンです。
休学も自由なシステムなのは、現役のプロダクション所属者や劇団員もいて、
映像・声・舞台のレギュラー本番で一時的にレッスンに来られない時期が出た時、
休みやすく、また本番が終わり自身の課題を感じ演技をメンテナンスしたくなったら
レッスン復帰しやすい環境にする為でした。
実際この制度はレッスンと併行して芸能活動の機会が持ちやすく有効に機能していますが、
休学制度のもう一つの良かったと感じているのは、結婚・出産など
人生、生活の大きな変化と演技への情熱のバランス取りにも大いに役立つという点です。
24日(日)は結婚・出産・育児で忙しいメンバーが3人揃えることになったので、
3人の時間に合わせて、通常レッスンとは別の時間帯に約4時間みっちり演技をしました。
専用稽古場ならではで、時間を気にせず心ゆくまでやりましたが、あっという間の4時間でした。
結婚もですが、女性は出産、育児の過程でその方自身の感性が伸びやかになり、出せる声の種類も
自然と増える方が非常に多いです。相手役の気持ちを動かしたい、自分を分かってほしい、
相手役との距離感を声で計っていく、気持ちを察する・・・・・・演技というものが行う実際の要素を
新しい命との日々の付き合いの中で実践しているのですから、当然声の表情が豊かになり
身体性が高くなります。
初見の舞台戯曲の演技立ち上げは役の目的、どうしたいかを確認しつつ、即興性も取り込み
自由に状況が変わっていくメリハリの実現を感じての半立ち稽古でした。
海外TVドラマのアフレコ実習は、女性キャスト3名の駆け引きと感情的な口論の日本語再現を
英語の原音を聞きながらだと陥りやすい落とし穴について具体的に例を挙げながらリハーサル。
長い場面を本番収録も6回して、プレイバックごとに変化が上手くいったポイントをチェック、
キャラクターの性格のどの面を強調したいかを、具体的にこの台詞のこの言い方を変えると
印象がこう変わる・・・と何度も収録出来る利点を活かしたレッスンが出来ました。
育児でなかなか外出もままならないメンバーの希望する、宅練用の台本も
声・顔出しとも何百といつでも閲覧可能な状態で稽古場にあるので、自由に選んでもらいました。
やりたい気持ちは変わらずあるのに、外出もままならず演技から遠ざかりかけていたメンバーが
久しぶりの実演に最初は自分を奮い立たせるように、でもすぐに積極的に自分を解放して
相手役から飛んでくる感情の球を思わず打ち返す、こんな声あんな声を次々聞かせてくれる様子は
道場の扉をいつでも開けておく意義と喜びを改めて感じさせてくれるものでした。
目がキラキラしているのを見て、こちらが元気をもらった気がします。
年齢や未経験であること、
経験はあっても環境の変化や諸事情で演技から離れた時間の長さ、
そういったものに「演じたい」という気持ちが負けてほしくないといつも思います。
夢見る頃はいつまででも、自分で線引きしない限りいつまででも夢見ることは可能だし、
芸能活動と演技レッスン両面でそれをサポート出来る場であることで、僕自身いつまでも夢見ていたいです。
ヴォイス&アクターズ道場
http://yuichisato.com/
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