アルビオン
劇団青年座
俳優座劇場(東京都)
2021/05/21 (金) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/05/24 (月) 14:00
イングランド人というものは、いつも強がりだ。
世界の公用語としてNo.1の地位を占める英語は、かつて国内での公用語をフランス語に奪われた時期があったらしい。シェイクスピアの作品に見るイングランドは、たまーに勇猛果敢あるいはひどい跳ね返りが出てきては、フランスに戦争を売り、勝利を挙げその軋轢を取り払う。しかし、そんな海外での戦果の陰で、いつも内憂が起こり、いつの間にかまたフランスの軍門に下るか、その勢力にひれ伏すかを繰り返す、かなりなヘタレ野郎だ。
「大英帝国」などと、日本人が賞揚し憧憬するイングランドはエリザベス1世以降のものだ、だからか、この国の貴族、元はヨーロッパのはずれの偏狭な島国でしかなかったという強いコンプレックスを抱き、自分の弱みを見せまいとえらく強気に出る傾向がある。そうそう、まさにジョン・ブルのように。そこには諦念や無常の価値意識は存在の余地を持たない。それを見苦しい老体の足掻きと思うのか、武士は食わねど高楊枝的な粋とみるかは(少なくともジョン・ブルの容姿にその美学は毛頭ないが)、人それぞれだろう。
風を切れ2020
演劇企画ユニット劇団山本屋
ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)
2021/05/26 (水) ~ 2021/06/01 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
知らない世界=今回はヨット競技=セーリング
色々と勉強になりました(^ー^)
ぴちぴちと元気の良い舞台であり
なかなかに熱かったしょうぶのシーンも堪能できた
2時間20分の作品
アカシアの雨が降る時
六本木トリコロールシアター/サードステージ
六本木トリコロールシアター(東京都)
2021/05/15 (土) ~ 2021/06/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
同僚が「笑って笑って、最後泣いた」と、絶賛するので見に行った。70年代、ベトナム反戦運動の青春へのオマージュ。おばあちゃんが認知症になって、自分を20歳の女子学生と思い込み、ベトナム反戦運動に熱心に取り組む。よかった。大学のキャンパスで、学生誰彼かまわず、反戦運動への参加を話し込むのは戯画的。かつての学生運動への揶揄のようにも取れたが、おそらく、作者にそんなつもりはなく、あれは本人たちは一途でも、はたから見ると迷惑で滑稽というものなのだ。息子がアメリカ人に化けて、それでも「日本語で日本語で」、というあたりは爆笑ものであった。
見ながら、現在の若者たちはなぜ立ち上がらないか、「沈黙は罪」なのにという気がしてくる。そこからさらに、今からでも遅くない、「この闇の向こうには輝く明日がある」と励まされる。
引用されている「二十歳の原点」を見て、読みたくなってしまった。非常に文章が良い。詩情がある。私は「二十歳の原点序章」しか読んだことがなく、その印象は、なにか幼い感じで惹かれなかった。高野悦子も「序章」から「原点」へ、数ヶ月、1年の間に急速に成長した気がした。
おばあちゃんの20歳騒ぎだけでなく、息子の会社での急の取引先からの打ち切りのしうち、孫の父、母へのアンビバレンツな心情と、重層的なシナリオも、作劇上のヒントがあった。シンプルな作りなので、作劇上の構造がよくわかった
ロミオ&ジュリエット
ホリプロ/東宝/TBS/梅田芸術劇場
赤坂ACTシアター(東京都)
2021/05/21 (金) ~ 2021/06/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ロック調のミュージカルに、現代を舞台に、エネルギッシュなダンスシーンが見どころの、若者向けのロミジュリ。キャピュレット家の家族関係を、原作以上に彫り込んでいるのも、奥行きが増した。キャピュレット夫人の意外な告白には驚いた。
ジュリエットの乳母役の原田薫が、ユーモラスとお茶目さがあって、彼女の歌うシーン「あの子はあなたを愛している」は、若さと悲劇のエネルギッシュな舞台の中の、無垢な献身を見せる一服の清涼剤であった。自由を謳った「世界の王」も、カーテンコールでも歌われたが、いい曲だった。
最後のロミオとジュリエットの死の場面は、背後に、十字架とキリストの磔刑像が大きく配されて、二人の死が、単なる愛の死ではなく、争い合う人類のための贖罪の死に高められていた。キリストの死と重ねられていたわけである。残された親たちの歌う歌にも、「神はなぜ二人を見捨てたのか」という言葉がある。これもキリストとダブル。カトリック国フランスらしい演出だと思った。一番のテーマ曲の「エメ」は、おそらく「アーメン」である。こんなところにも、演出の宗教的強調がある。
約3時間5分(休憩25分)。
東京ゴッドファーザーズ【5月2日~5月11日公演中止】
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2021/05/02 (日) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
前の口コミを見ると、評価が割れているようだが、私はすごく楽しめた。ちなみに今敏のアニメは未見です。それでも、ホームレス三人が、互いに喧嘩しながらの、捨て子の赤ん坊の親を探してのロードムービーは十分面白かった。オカマのハナの松岡昌宏が出色。ホームレスのギンちゃんのマキタスポーツのうらぶれた感もよかった。競輪選手と嘘をついていた見栄と寂しさもよくわかったし、娘との再会シーンも素直にジンと来た。夏子の突っ張ってみせるけど、本当は素直で優しい思春期の女の子の感じもよく出ていた。赤ん坊の母親役の池田有希子の、ちょっと心を病みかけた、余裕のない必死さもリアルだった。
「歓喜の歌」が要所要所で流れてテーマソングのよう。最後の大団円は第九のオケと合唱のフルバージョンで高らかに歌い上げるのに、素直に感動した。みんな幸せになれてよかったと、素直に温かい気持ちになれる、「大晦日の奇跡」ともいうべき舞台だった。
舞台を立体的に使う演出がうまくいっていた。上下だけでなく、細長い島式舞台の左右中央で3つのシーンが同時並行したのも、面白い。平田オリザ式同時多発会話ではなく、隙間補い合い型の、互いに少しずつタイミングがずれていて、どのシーンの会話もクリアに聞こえるというタイプは初めて見た、気がする。
終わりよければすべてよし【6月12日~6月13日公演中止】
彩の国さいたま芸術劇場
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)
2021/05/12 (水) ~ 2021/05/29 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
スピーディーな展開に、吉田鋼太郎のフランス王の圧巻の貫禄と、横田栄司の哀れでコミカルな従者パローレス。十分楽しめました。イタリアの娼家の娘(だが、純潔な処女)ダイアナと、傲慢なバートラム(藤原竜也)のシーンを、戯曲ではまだベッド・イン前の駆け引きのところを、ベッドでのやり取りに演出したところが、男と女の欲望とバカしあいの内容にふさわしかった。女が活躍する舞台で、男は愚かでダメな奴ばかりというのが、(芝居ではよくあることだが)おかしかった。
曼珠沙華が咲き乱れる舞台を、吊り物の上げ下げで、場面転換させる美術も良かった。
マスターピース~傑作を君に~
TEAM NACS
EX THEATER ROPPONGI(東京都)
2021/05/12 (水) ~ 2021/05/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ご存知チームNACSの五人が、映画のシナリオライターグループと、彼らが缶詰になった熱海の旅館の仲居グループと、男女それぞれの一人二役で笑わせてくれた。とくに安田顕の仲居が、本当に声色が女性みたいで、男の女装とは思えない。近眼の友人は、安だとはわからなかったと言っていた。大泉洋のシナリオ作家との恋が盛り上がる、その結末がサイコー。枕投げのドタバタシーンも笑えた。笑いの渦まく舞台だった。
同じ旅館に、あの黒澤明のチームも止まっていると知って、やる気のない彼らが、突如奮い立つところも面白い。
自り伝5・再び京都編
平石耕一事務所
シアターX(東京都)
2021/05/13 (木) ~ 2021/05/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
安藤昌益の諸国行脚を描くシリーズ。今回は、京都で発生した感染症のまんえん防止の陣頭指揮に立つ。数学の得意な娘が、実は琉球のお受けの娘で、幕府が命じた薩摩藩の木曽川普請の測量、施工管理をやっていたという裏がみどころ。幕府の暦が不正確で、日食を予言することで、その権威を失墜させて、敵を取るとか、権力が仕組んだヒニン部落への民衆の襲撃を、機転を利かせて空振りにさせるなど結構な展開を詰め込んでいる。かなり説明的になってしまうが、意外な治験が次々現れて、勉強になる。琉球に対する薩摩藩の人頭税の苦しみまでふれていた。途中休憩あり、2時間半くらいだったと思う。
フェイクスピア
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2021/05/24 (月) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「無限+36年」、三日坊主の「8月12日」、その他とヒントはちりばめられていたのに、「その時」が来るまで、全然わからなかった。戦争とかかわる作品がつづいたのに、今回はちがったのも意外性を高めた。白石加代子、高橋一生、橋爪功、現代日本の名優たちと、井上ひさし亡き後、現代日本の最大の劇作家野田秀樹が組んだ舞台。期待に違わぬものだった。客席では多くのすすり泣きが漏れていた。舞台終盤のモブシーンは、手に汗握らされた。脱帽。
JACROW#30『鋼の糸』
JACROW
駅前劇場(東京都)
2021/05/26 (水) ~ 2021/06/01 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
体育会系営業部の千葉鉄と、自由闊達(という名のぬるま湯)のFSS営業部が、鉄鋼再編で合併し、それぞれの社員が、昇進と左遷、天国と地獄、をみていく。社内の派閥の絆=しがらみや、出世競争、腹のさぐりあいと意地の張り合いは、誰もがどこかで見に覚えのあることなので、身近に感じられる。だからあまり説明がいらない。そこで2つの営業部の社風の違い、ミナト自動車の仏資本参加入りとコストカッター社長の赴任、2つの鉄鋼会社の業績の逆転から、対等という名の吸収合併など、どんどん話が進んでも十分ついていける。上司と部下の浪花節的絆と切り捨て、その逆転と、波乱万丈の会社員人生の悲喜こもごもを楽しく見られた。
結果を出すために頑張るのか、働き方改革で無理はしないのかの対立も、結果がすべての男社会で、当然残業覚悟でやると思ったら、あに図らんやワークライフバランスの主張が優勢。私は寂しい気がした。古いわけではない、やっぱり成果を出すために脇目もふらず突っ走ることに生きがいを感じると思うのだ。
一緒にみた女性は(結構キャリアウーマンなのだが)「完全に男社会の話でへどがでそうだった」と。それだけ芝居がリアルだったということで、これは褒め言葉です。ひさびさの男のロマン全開の浪花節的ビジネスドラマ。2時間、満喫しました。
舞台の奥に、素通しで見られる廊下を作って、部屋を出ていくときに底を歩きながらの姿が見えるのは、非常に効果的だった。部屋の外での素顔や、焦り、諸々の感情を付け加えて、まさに舞台に奥行きを与えた。
フェイクスピア
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2021/05/24 (月) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/05/29 (土) 18:00
NODA・MAP1年半ぶりの新作は、昔の遊眠社に似たテイストの作品で面白かった。
ふんだんに盛り込まれた言葉遊びが生き生きと展開され、ただただ笑っていると、最終盤にシリアスな流れになるという流れは、古いファンにとっては堪らない展開である。高橋一生が主演ということになっているが(実際に力演なのであるが)、今年80歳を迎える白石加代子・橋爪功コンビが実質的な主役だと思った。白石は出番が多いわけではないが、重要なセリフを発する。アンサンブルや舞台美術も見ごたえがある。ここ数年の作品で最も私にフィットしたNODA・MAPである。
おかめはちもく
Nakatsuru Boulevard Tokyo
サンモールスタジオ(東京都)
2021/05/16 (日) ~ 2021/05/23 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★
背信を鑑賞。中津留作品だけに政治物ではあるが軽妙さもある独自なカテゴリー。小飯塚女史のキャラがこのカテゴリーにはピッタリである。
実は第一回配信日をライブ鑑賞したのだが疲労で後半をそっくり逃し、ラスト10分で復活したが、2日間のアーカイブ期間にも見直しできず。上演後の短いアフタートークにて、「初舞台」の二人が登壇。一人は「どこかで見た事のある演劇関係じゃない人」、その正体は以前物議を醸した若手女性議員、もう一名はT1PROJECT主宰(作・演出)友澤晃一氏が実は一度も俳優経験のない御仁であったと知った。
この度全配信回のアーカイブを約一か月間配信で売るというので宣伝にまんまと乗って再度観た。
「そう思って」見ると、前衆議・上西小百合氏は、周囲のベテラン演技陣には及ばないながら声量もあり、若手与党市議の憎まれ役を務めていた。
芝居は地方テレビの報道現場を舞台に、何年か前に起きた議員らの不正事件の波紋を現在の日本の国政に絡め、報道のあり方、報道人の姿勢を問うもの。おかしな論理が報道現場で通用してしまうのが、不自然に感じられない。それだけ現状では日本のジャーナリズムが後退している証なのだろう事をやんわり伝えて来る。現実と重ねれば絶望的な話ではあるが、どことなく喜劇臭があって救われる。
獣唄2021-改訂版
劇団桟敷童子
すみだパークシアター倉(東京都)
2021/05/25 (火) ~ 2021/06/07 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
新・すみだパークスタジオ倉へは二度目の訪問(二度とも桟敷童子の観劇)。新館の特徴はステージが奥深、客席の段も多い(と見える)。天井高め、最上段にオペブースが組まれ劇場全体にフェードアウト感があるのに対し、旧スタジオは横長で最上段は背中が壁、天井も迫る感じだったから閉塞感即ち一体感もあり、客席とステージも間近。前回、今回と最上段から観たことで、長い旧スタ時代に完成されたとも言える桟敷童子舞台の検証の機会となった。
前作『花トナレ』は千秋楽、今回は初日を観たが、アングラの系譜を辿れる桟敷童子の「テント」に劣らぬ熱量が、新スタジオの最上段=「巻き込まれ感」圏外まで直接には届かず(地球が最適距離なら火星位か)、俯瞰の目線になるが、それでも前回の『花トナレ』は一個の有機体にも似る劇団の即応力(観客や場の空気に対する、また「同時代」に対する)にただ感服し、抑制から滲み出る純度がコロナ下の一つの理想形にも思えた。
今回、「そこまでではなかった」との感想はまだ初日のせいか、客演率の高さ(主役も客演)のせいか・・。人間どうしても比べてしまうが、同じ回を観た知人は前作に比べて大満足だと笑顔をこぼしていた。
詳細後日。
となりのしばふはあおい
劇団ラパン雑貨ゝ
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2021/05/28 (金) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★
こんな状況下でなくても休みの関係で見られなかった舞台が配信とはいえ見ることができた、何らかの形で配信という選択肢は残って欲しいと個人的には思う。
引きの定点固定かと思っていたので複数台のカメラを使って要所要所切り替えていたのは配信の価格からいっても嬉しい誤算。芝居自体は6人という少人数の会話劇で小劇場にちょうど良いスケール感。良い塩梅にバサリ切るところは切りあくまで三兄弟の話を中心に据える思い切りの良い構成も観やすくて良い。
滅多滅多
柿喰う客
本多劇場(東京都)
2021/05/21 (金) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
初めての「柿喰う客」だったが、速くて切れ目のないセリフに、始まって30秒で理解することを諦めた。
綿密に書かれた脚本の下、良く訓練された動きに周到に用意された照明と音響があって何か優れたパフォーマンスが行われていることは分かるのだが、そこから欠片もつかむことはできなかった。
滅多滅多
柿喰う客
本多劇場(東京都)
2021/05/21 (金) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
価格5,330円
30日14時開演の千穐楽を拝見。
早口過ぎるセリフがなかなか聴き取りづらかったせいで、五輪瑠呼ちゃんは⚪︎⚪︎で、アレ?伊笠真白も実は既に…といった具合に、ストーリーは正確に把握出来なかった。
だが、この息継ぎの間もないような高速のセリフ回しや、緻密に計算しつくされた上での一挙手一投足から体育会的集団行動的な振付、ムービングスポットライトの乱舞に、爽快感を覚える程に只々圧倒された75分。
演劇というよりも、熱狂的なライブコンサートを観終えたような気分。
外の道
イキウメ
シアタートラム(東京都)
2021/05/28 (金) ~ 2021/06/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
本来なら2020年上演予定だったが、コロナ禍で中止となった本作。
WIPなどを挟んで、満を持してのリベンジとなりました。
コロナの影響で考える時間が増えたせいか、以前にも増して哲学的、
スピリチュアル的になっており、主に安井順平さんが繰り出すギャグ的
せりふ回しや動きがないと突拍子もなさすぎる話になってきてる気がする。
「少し不思議」の中で繰り広げられる、人間のどうしようもなさの描き方が
好きなんだけどな。
僕らが歌をうたう時【無観客配信公演】
芝居処 華ヨタ
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2021/05/21 (金) ~ 2021/05/23 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★
大阪での上演を配信で拝見。宮本研の本作は観たことがなかったが、9人の登場人物を役者5人で演じることでの、人物や役を入れ替える演出があり、この辺はアーカイブでも確認できたのでありがたかった。昭和30年代に書かれた戯曲で社会人演劇集団内の葛藤と希望を描きながら、現在の「公演を打つ意味」が浮かび上がってくる仕上がり。
ライオンキング【東京】【2023年1月22日昼公演中止】
劇団四季
四季劇場[夏](東京都)
2017/07/16 (日) ~ 2021/06/30 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
チケット記載4列目が最前列。
ヤングシンバ役の中谷謙介君が生き生きとしていて素晴らしい。子役が輝いている舞台は良いものだ。二度目の観劇だが、劇団四季は席がかなり重要。体験型アトラクション要素が高い為、前の方だと見えるものが違ってくる。只今馬鹿売れ中の『アナと雪の女王』の演出も凄いことになりそう。貴種流離譚の一種なのだが、己が何者なのかを自覚する覚醒の物語、京劇要素満載。
ヒヒのシャーマン、ラフィキ役の福井麻起子さんが裏主人公。客席の子供達も彼女の一挙手一投足に夢中。歌声はゴスペルだ。「お前のなかに生きている (リプライズ)」が胸に来る。
名曲「終わりなき夜」を熱唱するシンバ役永田俊樹氏。ずば抜けた跳躍力による肉体讃歌。「求める時は必ずいると貴方はいつも誓った。僕は一人貴方を求めその言葉を待ち続ける。」
蝶のやうな私の郷愁
ひなた旅行舎
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/05/26 (水) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
延期された公演の中でも観たかった一つ。期待は裏切られず大満足。変哲のない夫婦の日常の刹那性と永遠性。のっけから永山演出の読み解きに感覚動員され、松田正隆作品である事を忘れていたが正に松田作品。
二人芝居の出演者の一人は2018年永山氏による東京レジデンス作品「島」にも出演していた日高氏、そして“我らが”多田香織女史(KAKUTA)。子のない夫婦の一つの関係の図は、過去に規定されつつ現在に縛られつつたゆたう。何気ない生活の断面が、黒い舞台の中に儚く切なく映えて美しい。
日常の場面をかたどる俳優の演技は、陥りがちな定型にハマらず、生き生きと時間は過ぎて行く。俳優両氏に敬意を表する。
さて永山氏の演出には抽象表現がさりげなく多用されるが、読み解きが追い付かない事がままある(「島」でもその経験をした)。本作のラストも何か大切な事が示唆されていそうであったが、「何」であるかは判らず。ただしこの舞台の醍醐味はその時間経過にあり、謎解きの比重は高くなく結末は何にも置き換えられる(解釈を完全に観客に委ねている)感も。
特段の「幸福」エピソードもないこの夫婦を、作者は一つの理想として描いたのだろうか、と永山演出のこの舞台から想像した。