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アンジェリーナ3:49

アンジェリーナ3:49

MCR

ザ・スズナリ(東京都)

2021/07/14 (水) ~ 2021/07/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/07/14 (水) 19:00

ちょっとダークだけど笑えて、最後は微笑ましく終わる。面白い芝居だった。
 悪いことでも平然とやってのけるトモ(櫻井智也)が「もうすぐ死ぬ」と言って、コーヒーショップでバイトするサエ(長谷川晴)に会いに来るが、話はどんどん大事になり…、という物語。巻き込まれる人々が、逆に人を巻き込む様子が面白い、と言うか、笑いを呼ぶ、櫻井節とでも言うべき展開で、セリフの切れ味も鋭い。櫻井言うところの「振り切れた」芝居を楽しむ90分。三澤さきの最初のセリフは特に笑えた。切ない感触を残すセリフもありながら、最後は明るく終わるのもいい。

反応工程

反応工程

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2021/07/12 (月) ~ 2021/07/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

演劇としてはメリハリが効いていて長い時間を感じさせない素晴らしい舞台だった。
ただし2021年の現代に公演する意義はよく分からない。演劇界では古典という扱いなのだろうか。

講演後に演出の千葉さんと俳優6人によるアフタートークがあった。司会はこういうときにはお馴染みの中井美穂さん。とくに素晴らしいコメントをしたりすることはないが、なんとなく辻褄を合わせて進行させていくのはプロの技だと感心した。

アンジェリーナ3:49

アンジェリーナ3:49

MCR

ザ・スズナリ(東京都)

2021/07/14 (水) ~ 2021/07/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/07/14 (水) 19:00

90分。休憩なし。

いのちの花

いのちの花

劇団銅鑼

練馬文化センター(東京都)

2021/07/13 (火) ~ 2021/07/15 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

実話を元にした舞台。青森県立三本木農業高校、通称サンノウに入学した五人の女子高校生の物語。
愛犬家、愛猫家の方々は観ておいた方がいい。かなり客席は落涙、全てが全て事実なだけに逃げ場がない。テーマは命について自分の頭で考え続けること。手話通訳付きのバリアフリー演劇である。

①記憶力がやたら高い娘(北畠愛美〈まなみ〉)
②いつもニコニコしている娘(髙原瑞季)
③ギャル(佐藤凜)
④眼鏡っ娘(青木七海)
⑤ソフトボール(中島沙結耶〈さゆか〉)…素振りが本格的。
この五人が寮生活を送りながら家畜の世話をする日々が綴られる。自らの手で屠殺、解体を経験させるなど“生と死”と真っ向から向かい合わせる教育方針。愛玩動物研究室の授業の一環として、動物愛護センターへ見学に行った時、衝撃の光景を目の当たりにする。

裏MVP は手話通訳の田中結夏さんで、六人目のメンバーであろう。只の手話ではなく、劇作に感情移入して一緒に作品を作り上げている。作中人物の一人として物語を伝えようとする熱演。彼女を観ているだけでこの作品の魅力が伝わる筈。終演後、聴覚障害の方達が満面の笑顔で語り合う姿を多数見かけた。全く凄い劇団である。

女子高生から愛護センターの獣医師から複数の役を自然にこなした佐藤響子さんが良かった。熱血教師役の池上礼朗(れお)氏も印象的。学校公演で場数をこなしているからか、演技レベルの標準値がかなり高い。

ネタバレBOX

ボタン一つで何十匹もの犬猫達が二酸化炭素ガスで窒息死。ボタン一つで焼却炉で焼かれ骨になる。その骨は事業系のゴミとして纏めて捨てられる。
その現実にショックを受けた主人公達。彼等の供養の為にも何かしてあげられることはないだろうかと思い悩む。そこで思いつくのが「命の花プロジェクト」。彼等の骨を貰い受け細かく砕いて肥料とし、マリゴールドの花を咲かせる。
『死んだ者に生きている者が出来る事は、大切に想うことだけだ。』、この言葉の計り知れない重み。

脚本の畑澤聖悟(はたざわせいご)氏は凄い、本物だ。かなり考え尽くしている。無惨に虐殺された犬猫の骨を砕き肥料にして花を咲かせても何にもならないだろう。そんなことは判っている、判り切っている。だが他に何も出来やしないのだ。何も出来やしないところから産まれたのが詩や音楽であり絵画や文学、若しくは宗教なのだろう。“無常”と向き合う人間の最後の武器は人生を賭した無力さなのかも知れない。
脱出病棟

脱出病棟

ショーGEKI

「劇」小劇場(東京都)

2021/07/08 (木) ~ 2021/07/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/07/14 (水) 13:30

110分。休憩なし。

ソルティーなんとかメモリー

ソルティーなんとかメモリー

劇団かもめんたる

駅前劇場(東京都)

2021/06/26 (土) ~ 2021/07/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

■約110分(カーテンコール込み)■
SF的設定を施して奇譚めかせてはあるが、話の骨格だけを見るならば、ちょっとひねくれた人情噺といった趣。人情なんて枠には収まらない、一筋縄ではいかない人間のありようを岩崎う大には描いてほしい。

ネタバレBOX

とは言いながら、宇宙娼館のくだりは多分にバカバカしくて面白かった。
あの日見た夢のつづき【LIVE配信】

あの日見た夢のつづき【LIVE配信】

劇団WAO!

SPACE9(大阪府)

2021/06/12 (土) ~ 2021/06/13 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

LIVEで見ました!
今までの演目と違い演技がメインで、笑い要素もありとても楽しませていただきましたー!

タイホしたい!/ホームレスホーム

タイホしたい!/ホームレスホーム

試験管ベビー

愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)

2021/07/09 (金) ~ 2021/07/11 (日)公演終了

実演鑑賞

『ホームレスホーム』の方、観せていただきました。
生活困窮者さんがねぐらにしている公園を訪れる人々に
いろいろと講釈を垂れてまわる話で
それなりに笑える要素も散りばめられてはいたのですが
肝心の生活困窮者さんが、どういう過程をたどってそこに至ったのか
全く語られていないため、言葉の遊びだけに終始してしまって
話が薄っぺらく深みが感じられなかったのがちょっと残念。
まあ、暗い話なんてどうでもいい、観覧者も全員参加型の
観て楽しければというのがこちらのスタンスらしく
最後はみんなで笑って踊って盛り上がって終わりたかったのでしょうが
・・・なんか引いちゃいました。

一九一一年

一九一一年

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2021/07/10 (土) ~ 2021/07/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

大逆事件からはすでの百年以上たっている。日本が近代国家としてようやく成立したばかりのころに起きた事件が、今なお、観客の心をうつのは事件がこの国の構造に深く根付いているからだ。その構造の上部構造にも下部構造にも触れた優れた社会劇である。
この国土に生きる観客は、現代の愚昧な政府の権力志向とちっとも変っていないなぁ、という悲しい詠嘆を超えて、心を打たれ、考えさせられる。
二十世紀初頭の社会主義思想の平民への衝撃は、近代国家ではそれぞれに受け止められていて、アメリカでは「赤狩り」が、ヨーロッパでは「ロシア革命」がしばしば芝居の素材になる。日本でも戦後大逆事件が解禁になってからは、いくつもの作品があるが、今回の作品はそれらとかなり趣を異にしている。世俗的な事件の経緯に沿ってはいるが、近代国家で生きるという事を、集団を率いる権力と、個人の生きる自由の対立に絞っている。そこがいい。
舞台は、東京地裁の予審判事、田原(西尾友樹)と潮(佐藤弘幸)が大逆事件を裁く大審院の予審判事として呼び出されるところから始まる。山縣有朋(谷仲恵輔)によって仕組まれ検察によって実行された政府転覆の事件への嫌疑で当時生まれたばかりの平民社関連の人びとがとらえられ、当時の法律でもせいぜい数年の禁固刑が最高の被疑者たちが死刑台に送られる。爆裂弾とか判決後の天皇による恩赦とか、劇場性もしっかり組み込まれたこの専制国家確立のためのドラマの一翼を担ぐことになる。ドラマは国民平等の近代法と、専制国家の政治の論理のはざまで、職として判事の務めを果たそうとする予審判事に対し、被告として唯一登場する菅野須賀子(堀奈津美)は毅然として人間の生きる自由を主張する。
2時間20分余り、休憩なしの舞台の前半は、国家が仕組んだ国家権力のドラマに巻き込まれていく平民の予審判事の苦悩が描かれ、後半は人間は自由に生きるという原点から全くブレない菅野須賀子との取り調べになる。これらの事件の素材や対立軸は現代の観客にも通じるようによく吟味されていて、全く飽きない(よくある時代物のように、メロドラマに媚びていない、ここもいい)。
ことに、菅野須賀子を演じる堀奈津美が自分の信念を鼻っ柱の強さで表現していて、今までに見たさまざまの菅野須賀子のなかでは異色の面白い出来であった。
今年のチョコレートケーキはコロナ禍でも大活躍で、今年の春の「帰還不能点」に続く日本の権力構造についての優れた舞台であった。権力をその中から見るというのは新しい視点で、そこに新しい日本観もあって、大いに評価できるが、観客としては、かつて「80’エレジー」のような、市民のなかに巣くっている権力ドラマもぜひ見てみたいと思う。
このコロナ禍でも、特に動員したとは見えない老若さまざまに入り乱れた観客でトラムは9分の入り。これからもっと混んでくるかもしれないが、芝居を見たという充足感のある舞台である。


一九一一年

一九一一年

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2021/07/10 (土) ~ 2021/07/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/07/13 (火) 19:00

大逆事件を題材にした、真摯で迫力ある群像劇。いいものを見せてもらった。
 10年前に上演されたものの再演だそうだが、初演は観てない。大逆事件が検察・判事たちによって、いかにしてでっち上げられたかを扱う作品で、実在の人物がいっぱい出て来るが、物語はフィクションという、いつもの同劇団の作り方が冴える。トラムという舞台の広さと高さを活かした美術が見事だし、言うまでもなく、同劇団に慣れた役者陣の熱演で、なんとも言えない「気持ち悪さ」(誉めています)に溢れた舞台だった。管野須賀子を演じた堀奈津美は5年ぶりの舞台だそうだが、紅一点ということもあって抜群の存在感だった。

一九一一年

一九一一年

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2021/07/10 (土) ~ 2021/07/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ネタバレ

ネタバレBOX

劇団チョコレートケーキの『一九一一年』を観劇。

1911年の大逆罪を問う内容だ。
近代国家へ突き進む日本。それに不自由さを感じる無政府主義者(幸徳秋水、菅野須賀子)らが真の自由を求めて、明治天皇(睦仁)の暗殺計画に進んで行くが呆気なく頓挫する。
関係者は逮捕となり、大逆事件として裁判が始まる。
若き判事(田原)が審理を担当するが、結果ありきに意を唱えるが屈してしまう。
弁護士(平出)の助言もあり、自分の立ち位置で何か出来る事がないかと試みようとするが、大きな壁に何も太刀打ち出来ないまま、裁判は終了するのである…。

事実の一部のみを借りてフィクションに作り変えていき、現代社会に重ね合わせる巧さこの劇団の特徴だ。明治時代の出来事とはいえ、まるで我々がその場に生きている錯覚する感じられる。
今作は若者が厚い壁に屈せず立ち向かう様を描きつつも、反逆者が求めた『自由とは?』『思想とは?』の本質を問うているのが見所である。
判事(田原)と無政府主義者(菅野須賀子)との審理中での会話には誰もが考えさせられる。
前作の『帰還不能点』に比べるとやや硬い出来にはなっているが、見応えは保証する。

大逆罪…1882年から1947年まで存在していた罪。刑法73条。
この法律の特異な点は、犯罪を企んだ時点で罪とされる点。刑罰は必ず死刑である点。そして通常の地裁→控訴院→大審院の三審制を取らず、大審院で一度だけの裁判で刑罰が確定する点である(劇団チラシより)
愛、あるいは哀、それは相。

愛、あるいは哀、それは相。

TOKYOハンバーグ

座・高円寺1(東京都)

2021/06/13 (日) ~ 2021/06/20 (日)公演終了

実演鑑賞

昨年の前作で出演した劇団で、座・高円寺の劇作家プログラムでの作品。震災がテーマで、同じ日本人でも地域によって気質だけでなく受け止め方が大分違うのだと感じた。

ネタバレBOX

日本という狭い国でも、関東(東北)と関西では震災の影響や考え方は異なる。東京から西に逃げてきた、など当時から言われていたように他人事にも思えた。根っからの悪人がいないのが重いテーマの中で見やすくもあるが、本の優しさや願いであるのかも。
猫を探す

猫を探す

このしたやみ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2021/06/25 (金) ~ 2021/06/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

■約85分■
●大学事務員の地味なアラ還男にもあった、女性がらみの蹉跌。それを可笑しみを滲ませながら丹念に描いていて、同じく若くはない男の一人としてしみじみ見入った。

「TABOO」

「TABOO」

TEAM空想笑年

王子小劇場(東京都)

2021/06/23 (水) ~ 2021/06/27 (日)公演終了

映像鑑賞

配信で観劇。マイクで拾い切れない音声もあったが、概ね楽しめた。
結構な殺陣の量で大変だったと思う

ネタバレBOX

演劇で白黒つけるという設定にもう少し必然性があればもっと良かったと思う
hedge 1-2-3

hedge 1-2-3

serial number(風琴工房改め)

あうるすぽっと(東京都)

2021/07/08 (木) ~ 2021/07/19 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/07/13 (火) 18:00

久しぶりに見た全員男の骨太演劇。
金融を舞台にしながら描かれているのは男の友情と裏切り。

ネタバレBOX

前半は涙が出るほどハートウォーミング
後半は衝撃的
いのちの花

いのちの花

劇団銅鑼

練馬文化センター(東京都)

2021/07/13 (火) ~ 2021/07/15 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/07/13 (火)

価格4,500円

13日19時開演回(110分)を拝見。

ネタバレBOX

青森の農業高校に入学した5人の女生徒が
家畜相手の日々の実習や
入学翌年に遭遇した東日本大震災
そして
動物愛護センターでの「殺処分」の体験を経て
「いのち」と向き合い
やがて自分たちなりの考えを実行する…
学園モノらしい朗らかな作風の中にも、作者の真摯な眼差しが随所に垣間見れる110分。

【配役】
マナミ…北畠愛美さん
ジュリナ…佐藤凜さん
リンちゃん…青木七海さん
ハルノ…髙原瑞季さん
チバちゃん…中島沙結耶さん
アカサカ先生…池上礼朗さん
動物愛護センターの獣医師…佐藤響子さん
オオタ先生/マナミの祖父…久保田勝彦さん
男子生徒…大竹直哉さん
男子生徒…野内貴之さん
反応工程

反応工程

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2021/07/12 (月) ~ 2021/07/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/07/12 (月) 19:00

戦争のもたらす理不尽と不自由を描く秀逸な作品。観るべし。
 宮本研の1958年の作品で、九州の軍需工場を舞台にしたベテラン職工から動員学徒までさまざまな人々の群像劇。2幕5場が昭和20年8月7日から始まり、2幕1場で8月10日まで行ったところで、非常に美しい場面転換で昭和21年3月5日で終わる。時期の設定が見事で、広島に原爆が落ちた日の翌日から始まることで冒頭から原爆が話題になる。敗戦後7ヵ月を経た最終場では、みんなのその後、的な展開となり、呆然とするエンディングへと繋がる。
 本来は昨年4月に上演する予定だったものを、同じスタッフ・キャストで1年3か月後に上演されるというのは凄い。単に、個々の人々の苦悩を描くだけでなく、戦争の末期でも企業は設けを考えている、という指摘など、強烈なメッセージを持った戯曲である。初日だったけど、役者陣も充実した演技で、見事な芝居になっていた。
 1幕1場30分、2場20分、3場35分、休憩20分の後に、2幕1場40分、2場20分、で2時間45分の長丁場だが、全く飽きない。

春の終わり〈青年座・那須凜主演!シアター風姿花伝 劇作家支援公演〉

春の終わり〈青年座・那須凜主演!シアター風姿花伝 劇作家支援公演〉

ENGISYA THEATER COMPANY

シアター風姿花伝(東京都)

2021/07/06 (火) ~ 2021/07/12 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

女優たちが生き生きと舞台上で語り、動き回る姿は観ていてそれだけで楽しいものだが、物語としては響いてくるものがなかった。群像劇では間々あることだが、人物紹介から各人にまつわるエピソードなども盛り込んでいくと肝心の作品のテーマが描き切れずに終わってしまうことがある。今作もシェアハウスにおける老女たちの友情はほのぼのするが、死生観がどれだけ伝わったかは疑問として残る。セットにブランコを取り入れたことやBGMとして流れるクラシックの名曲の数々は印象的。

森 フォレ

森 フォレ

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2021/07/06 (火) ~ 2021/07/24 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ベルリンの壁崩壊の年に不本意な妊娠をしたエメ(栗田桃子)から始まり、その娘、現代のモントリオールのルー(瀧本美織)が、古生物学者(考古学者ではない)ダグラス(成河)と、独仏国境地帯のストラスブールにおもむき、自分のルーツをさぐっていく。ルーに最初の手がかりを与える、疎遠だった祖母リュスを演じた麻実れいが素晴らしかった。赤ん坊のときフランスからカナダにつれてこられたあと、「約束」通り母親が来るのを待ち続けた苦しさ、結局かなわなかった悲しさ、そして母のことを伝えに来たサラ(前田亜季)との邂逅。ルーとのもあわせて、二人芝居の密度の高い語り、感情の動きがすばらしい

ココまでが1幕。全3幕。1871年に始まるケレール一族の愛憎劇は、近親相姦と父殺しの話で、ドイツ神話に取材したワーグナーの「ニーベルングの指環」のよう。当主の子(双子)を身ごもって、その息子と結婚するオデットの「あなたの子は代々呪われる」という言葉は呪いのようだ。一族を逃げた息子一家が閉鎖的に暮らすアルデンヌの森は、シェークスピアのアーデンの森とは違い、血なまぐさい惨劇の数々でいろどられる。こうした展開は、レバノン生まれの作者のヨーロッパ文明批判があるのかと思われた。欲望と血とエゴイズムの文明。神はいない

「岸 リトラル」の衝撃は忘れられないが、「森」は全く別の鋭角、作りの芝居であった。通常の芝居の2.5作分くらいの物語の錯綜が一つに込められている。

ネタバレBOX

呪われた血を受け継いだのがルーなのか、と思うと、3幕の対ナチス・レジスタンスのグループによって、この血は断たれ、新しい出発があったことがわかる。ヨーロッパ批判の作者も、レジスタンスの精神・自己犠牲の行動にこそヨーロッパ再生の可能性を見ているということか。
ここで不幸な血の連鎖は断たれていたのに、なぜエメのお腹の双子に、怪現象が起きたのか? ダグラスの持っていた骨との関わりは? という物語の発端の謎が、結局は置き去りにされてしまう。それとも私が見逃しただけか? 「悲劇喜劇」に戯曲が載っているので、見直してみよう。
結末でも、サラはなぜ嘘をついたのか? という新しい謎がおきる。なにも全てを説明し尽くさなくてもいいわけだが、ちょっと引っかかった。
母と暮せば

母と暮せば

こまつ座

紀伊國屋ホール(東京都)

2021/07/02 (金) ~ 2021/07/14 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

素晴らしい芝居だった。畑澤聖吾の戯曲は、笑いのを振りまきながら、涙なしには見られない生と死の葛藤へ。井上ひさしを超えたかも、と思った。そして富田靖子が。これほど迫力のある女優だったとは。「アイコ15歳」でデビューしたのがついこの前のように思えるが、女優としての成長に目を見張った。エアーおにぎりのばめんのほほえましさ、原爆症が現れてきて、もう生きていたくないという鬼気迫る嘆き、振り幅大きく圧巻だった。もう一度希望を持つラストも、富田の存在感で説得力があった。

一方の松下洸平も、死んでいるのに出てきてすまないというようなハニカミが最初あり、でも、最後は去らざるを得ない。死者らしい抑制した存在ぶりがよかった。かっこよくて現代青年らしいところはご愛嬌。

初演のときは祈りの場面がいくつかあったのを、今回は栗山民也の「今は怒りのときだ」と削ったらしい。気づかなかったが、たしかにクリスチャンの家なのに、「陰膳」など日本的風習はあっても、キリスト教的仕草はなかった。コウちゃんがヤソだと子供の頃バカにされたという話はあるが。小学校の先生に頭をものさしで叩かれてハゲができたが、その先生はヤソとバカにしなかったから、5年まで受け持ってもらってよかった、というエピソードも人間の多面性を示していた。

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