最新の観てきた!クチコミ一覧

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化粧二題

化粧二題

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2021/08/17 (火) ~ 2021/08/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

有森也実、内野聖陽のコンビによる再演だが、前回よりも数段感動した。前半は、子どもを捨てた女座長の意地と強がりを押し通す。後半は母に捨てられた過去を持つ座長の話。母に「捨てられた」と思って、自力で頑張ってきたが、その頑張りこそ、母が辛く当たった狙いではなかったかと思い至る。母の愛に気づく物語。

内野聖陽が好演、力演。この男座長の話には、井上ひさし自身の母への思いが色濃く投影されていることに今回、初めて気づいた。「井上ひさし前芝居」の解説を見ると、扇田昭彦は、初演でいち早く気づいたようだが、私は今まで見てきて、とんと気づかなかった。「(母への)希望をすててしまえば、驚くほど元気になるもんなんですよ。から元気ですが」という座長のセリフは、井上ひさしの自伝的小説「あくる朝の蝉」の「孤児院は、他に行くところがないとなれば、あんないいところはないんだ」と重なる。

【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「エイトリング」PESTRiCA 2021.8.12 19:30
ブラボー!

ネタバレBOX


 エイトリングという大道芸は初めてみたが、亀戸の大道芸フェスで演じたらバズった。というのはよく分かる。ジャグリングの1種だそうで、ドーナツのように中空の円形の薄い板を用い様々な幾何学模様を空中に作り出す。その手腕が余りに見事なので恰も何の支えも無くリングたちが空中に様々な文様を描き出す手品ではないか? との錯覚を起こす程だ。ハシブト烏の嘴のような大きな嘴の付いた面を付けハットを被りウエストが締まり裾が広がった長めの上着に黒いパンツ、黒靴。背中の側には丁度腰の辺りに大きなネジ巻が付いていてゆっくり回転している。
 PESTRiCAという名前の由来は、ペストが大流行した時に医療従事者が感染予防対策として用いたマスクの名に由来しているそうだ。最も感染症に目に見えないウィルス等が関係しているなどということは分かっていた訳ではないから、用いられたマスクにも殆ど効果は認められなかったらしいが。
 閑話休題、舞台では最初に述べた普通のリングの他に暗闇にした舞台で電飾を施した器具を用いた演技もあり、こちらは点滅の妙も加わって極めて美しく幻想的な演技を楽しむことができた。捌き方はこちらも上述の如く見事なものであった。
【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「あらい汎のピエロマジック」2021.8.11 19時5分
“マイム詩集”と称して朗読主体の演目。

ネタバレBOX


「汎」という漢字のサンズイは海を表し、凡は凡庸、即ち特に優れた所もなくありふれたもの、全体として海を漂うありふれた物をイメージしているのだと言う。とどのつまり l’épave だ。読まれたテキストは宮澤賢治の「雨ニモマケズ」である。この作品は賢治の作品歴では後期の部類に入る。度重なる不幸や父との断絶、理解されぬ天才故の孤独を抱えて詠まれた作品或は覚書だと思われるが、それが現行のような形で現れた時、寺山修司は、欺瞞の最たるものとして毛嫌いした。大抵の人は己の不甲斐なさを慰めるものとして受け入れるのであろう。或る意味、その虚しさを抱え込む人々の哀れが籠る「詩行」ではある。
 今回老いた道化は、余り身体を酷使しないで済むような演技形態を演じられた形に求めたと言えよう。但し落魄そのものを描くような鬼気迫るものでは無論ない。この辺りが凡庸の凡庸たる所以である。朗読の合間にいくつかの手品を挟み一応、ピエロの演じる作品という体裁を整えた。
 然し乍ら、賢治は法華経に帰依し、法華経によって世人を救おうと夢見た。その為、父との確執が殊に甚だしかったことは、研究者の指摘する所である。父は浄土真宗を奉じ、父子の論争は絶えることが無かった。こんな知識を持って今作を観ると矢張り、落魄をこそ演じて欲しかったとは思う。最大の理解者であった、妹・トシを既に失くして久しかったのだから。

丘の上、ねむのき産婦人科

丘の上、ねむのき産婦人科

DULL-COLORED POP

ザ・スズナリ(東京都)

2021/08/11 (水) ~ 2021/08/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

男性キャストが女性役、女性キャストが男性役を演じるBキャスト版を拝見。思っていたよりもすんなりと入り込めたのは、もちろん役者陣の技量もあるだろうが、産婦人科という場よりも、各夫婦やカップルの事情が主体だからか。とはいえ、単なるオムニバスではなく、各エピソードが対比できるような形にもなっていて、自分の子供のときはどうだったかなと改めて考えさせられた。

丘の上、ねむのき産婦人科

丘の上、ねむのき産婦人科

DULL-COLORED POP

ザ・スズナリ(東京都)

2021/08/11 (水) ~ 2021/08/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/08/17 (火) 14:00

妊娠や出産の前の夫婦や恋人が複数登場することで、世の中を多角的に見ている作品。50年前の様子と50年後の様子が加わっていることで、さらに奥行きが増していたと思います。

丘の上、ねむのき産婦人科

丘の上、ねむのき産婦人科

DULL-COLORED POP

ザ・スズナリ(東京都)

2021/08/11 (水) ~ 2021/08/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

Aキャストを観劇
ねむのき産婦人科に集う人々。
ねむのき産婦人科を舞台に複数の夫婦やカップルのやり取りが同時進行で行われるのかと思っていたら、エピソードごとに場面(各自宅が舞台である事が多い)が分かれていたので非常に観やすかったです。
描かれるのは7組、ボリューム満点。

単純に短編が7つ。というのとは違って、こちらのカップルの直面している問題が別の夫婦ではそれとは対極と言える悩みに苦しんでいたりする皮肉さなど相まって微妙に絡み合っていたように思えるし、総括的なラストパートも印象的でした。

男性は妊娠できないのだから、どうしても女性の気持ち(生理的な事も含めて)が理解できない。というもどかしさに時には笑えたりするもヒリヒリする痛みを感じる方が圧倒的に多くて
それでもお互い歩み寄ろうとする気持ちが延長線上に・・・
コロナ禍をひと時忘れて、妊娠をテーマに舞台上で生きる人々の人生に想いを馳せる、そんな時間を頂きました。

ネタバレBOX

いくつものエピソードを観ているうちに、格差社会・女性の社会進出などを背景とした「現代」が悩みを生み出していて、やっぱり古き良き昭和の時代が生きやすかったのかなぁと考えたりしていた矢先での7組目夫婦のエピソード。
一番エグイじゃないか!
ガツンとやられた気分でした。
てんしごと

てんしごと

劇団WAO!

国立文楽劇場(大阪府)

2021/08/14 (土) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

観てきた!
この作品で福祉ネイリストという仕事を初めて知った。
こんな風に、今ある本当の物語を語る劇団は素晴らしい!
沢山の人にみてほしい!

丘の上、ねむのき産婦人科

丘の上、ねむのき産婦人科

DULL-COLORED POP

ザ・スズナリ(東京都)

2021/08/11 (水) ~ 2021/08/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/08/16 (月) 19:00

【B】を鑑賞しました。面白かったです。

ネタバレBOX

特に二人の会話の場面に引き込まれる事が多かったです。
【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

「マリオネット・サーカス」8月14日10時45分 ヴィクトル・アントノフ
 操り人形遣いだ。想像できる通り操り人形は1つ動作や手順を間違えばそれで終わりである。何と成れば、糸が絡まって総てがワヤになってしまうからだ。彼のスピーディーで極めて正確な糸操りは神業だ。

ネタバレBOX


 数々の人形を用いて各々独立した内容の作品をオムニバス形式で見せてくれる。板上の構造は実にシンプルで目隠しの床まで届く布を貼った枠に、用いる人形を吊り下げておいて演目毎に人形を換え演じる。この枠の観客側に円形の布を敷きこの円の内側が基本的な舞台と見做されて演技が披露される訳だ。用いられる操り人形たちは、様々な文化圏の様々な衣装を纏い、各々の文化圏に対するヨーロッパ的認識を反映しつつその見事な糸操りによって命を吹き込まれる。難易度の高い技術を幾つも用いて操り人形が持ったポットから種を撒いた鉢に本物の水を灌ぐと薔薇が生え成長するとか、3体の人形による複雑でスピーディー而もアクロバティックな組体操を披露したりしてくれるが、ずっと独りでやって来たので宣伝に手が回らず知名度は低かった。だが最近では人形劇フェスティバルに参加し、その高い技術が認められ幾つもの賞を得たことで俄かに注目されている。
今回披露された作品は以下に述べるような少人数の観客を相手にする人形劇フェスティバルで演じられたようだ。
 オランダにマイクロフェスティバルと名付けられたフェスティバルがあるそうだが、このフェスティバルは地域の民家に各演者が陣取って公演を行う。観客は10人から15人位のグループに分かれて街中を散策しながら公演の行われる各民家を訪れ、そこで作品を鑑賞して意見交換や歓談の後、次の演目を演じている民家に向かい別の作品と出会うという形で開催されている。2018年に開催された第一回のA-hoj! 発想の原点の1つはこのフェスの開催コンセプトから発想を得ている。
【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

クラウンマイム「ふたり」2021.8.11 18:15 全体として華4つ星

ネタバレBOX


 老若2人のクラウンが出演。老いたクラウンは流石に身体能力も落ち動きに切れが欠けるが、若いクラウンと比較できるので悲哀感が生まれることも意識してこのような形で演じているのかも知れない。若い方はジャグリングやパントマイムらしいマイムが得意であり、老いた方は手品や説明過多を感じた風船芸、人生の苦みを感じさせるような台詞を吐くという形で老いの特性を活かしている。
 とはいえ、老いによる身体技術的切れが落ちている現状は矢張り覆うべくもない。この点もっと悲哀を強調した方が良かったように思うし、説明過多になる自分を批判する視座が欲しかった。若い方のクラウンは中々芸達者で魅せてくれただけに惜しい。
【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

「Little night tales」マティア・ソルツェ 2021.8.14 15時5分

ネタバレBOX


 スロべニア人だが、多くの名人形操り士を排出している名門プラハ芸術大学人形劇学部に学び優れたアーティストが集まるこの大学でも学生時代からその高く特異な才能を評価されてきた逸材。人形操りのみならず、作曲、演出でも高い才能を示しスロベニアのリブラナ人形劇場でも演出を担当する。因みにこの人形劇場はオペラ劇場にも比肩される程立派な劇場であり、スロベニアの人形劇は人形劇大国・チェコと同系統の人形劇でありソルテ自らの高い能力によってチェコの一流人形操りに勝るとも劣らぬ。今回到着したフィルムは彼の大学を卒業する頃に創られた作品だが、現在も尚、彼のレパートリー作品として演じ続けられる作品である。才能の枯れかけた作家が、観客のアイデアを参考にしながら作劇に挑む話だが、様々な観客からのアイデアを借用する結果しっかりした柱の無い作品になりそうになるが、それを何とか完成作に仕上げようと奮闘する内容だ。豊かな才能を持つ者の自由な発想が随所に見られる。尚用いられているのは指人形である。

【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

【会場が変更になります8.7】A-hoj!2021

プーク人形劇場

プーク人形劇場(東京都)

2021/08/10 (火) ~ 2021/08/14 (土)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

「人生」2021.8.11 16時
 スペイン出身のアーティスト・ハヴィエル・アランダ。

ネタバレBOX

彼は余り露出するのが好きではないタイプの人ということで、スペインでも余り知られてこなかったが、最近あちこちのフェスティバルで賞を数多く受賞し徐々に知名度を上げている。主に掌を用いてのパフォーマンスであるが、作劇も実にしっかりしている。笑いから入り7分ほど進んだ所から独自の世界観、本質に切り込んでくるあたり、当にシナリオ作法の王道を行っていると言って良い。
奇跡を待つ人々

奇跡を待つ人々

東京夜光

こまばアゴラ劇場(東京都)

2021/07/24 (土) ~ 2021/08/04 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ビミョーな芝居。タイムトラベルと不老不死と、地球絶滅を織り込んだすごーくスケールの大きい世界を、駒場アゴラの、ベッドしか大道具のない狭〜い空間で物語る異色の舞台だった。現実には戻りたくない、ヴァーチャル世界の住人の笹本志穂さんが、白いふんわりした衣装で、現実と非現実の間の不思議な存在をよく演じていた。

ネタバレBOX

自分の体験で感じたことを膨らませて芝居にするという作・演出の川和幸宏氏。この超現実SFをどういう体験から発想したのか、観劇後、ロビーにいたご本人に聞いて、その体験からの膨らみかたを意外に思った。
丘の上、ねむのき産婦人科

丘の上、ねむのき産婦人科

DULL-COLORED POP

ザ・スズナリ(東京都)

2021/08/11 (水) ~ 2021/08/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「家族八景」ならぬ「妊娠七景」。フリーターカップルから、中年女医まで7組の夫婦の、それぞれの妊娠の悩みと苦しみ(喜びはあまりない)。30組以上の夫婦を取材したというだけあって、それぞれの話にリアリティーと細部の意外性があって面白かった。

欲を言えば、「妊娠あるある」から、さらに常識をどこかひっくり返す飛躍がほしい。つわりに苦しんでいた大人しい妻が、実は激しいパンク野郎だったという「ロンドン・コーリング」と、サルトル「出口なし」へのオマージュを絡めた「スプレッドシート」に、男女を縛る「妊娠出産の常識」を爆砕する萌芽を感じた。

ネタバレBOX

男女入れ替えの回を見たが、なんかこそばゆいような、ゾワゾワする感じが最後まであった。そこがいいのだろうが。思った以上に、男優が演じる女役の存在感が目立った。ただでさえ、女性が主役の話なのに、それを体の大きい男優がやるから、一層目立つ。女優が演じることで、一層、男の存在の薄さ、しょうもなさを感じた。
瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった

瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった

おぼんろ

Mixalive TOKYO・Theater Mixa(東京都)

2021/08/12 (木) ~ 2021/08/17 (火)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

ソワレを生配信で観ました。音声が心配でしたが各人マイクをつけているのでバッチリ!!配信ものが全部このくらいの音声クオリティになってくれたら嬉しいです。
カメラが複数あるので、あ、これは私がマチネで観た位置に近いかなとか、このアングルは今日の席では絶対に見ることはできなかったなとか、このシーンでは別のところ観ていたとか色々気づくことができました。
23日までアーカイブがあるので、またゆっくり観ようと思います。

瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった

瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった

おぼんろ

Mixalive TOKYO・Theater Mixa(東京都)

2021/08/12 (木) ~ 2021/08/17 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

語彙力も文章力も乏しいのでうまく言えませんが、今日は今まで以上に良かった。
「いいね」チケットだったので、上乗せしようかと思いましたが、この回の配信も見ることにしました。

段差インザダーク

段差インザダーク

コメディアス

こまばアゴラ劇場(東京都)

2021/08/11 (水) ~ 2021/08/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

中々うまい線を行っていたと思うが、観客の心ない観劇態度で大いに邪魔をされた。しばしば話題になる「笑い男」が今日もいて、相手にしたくはないが、冒頭から「ちょっと先に笑いをぶっこむ」という本人だけは「してやったり」と快感だろう高笑いのせいで芝居の滑り出しを掴みそこねた。
が、それでも土台もしっかり作った芝居はすぐさま様相を現わし、和製インディジョーンズらが遺跡から重量級のお宝を台車で運び出そうとして突如現れた「段差」と格闘するお馬鹿芝居を追い始めた。
その後は男の笑いも気にならず芝居の道筋が辿られて行く。いい頃合いに新たな登場人物が加わって意外な展開をもたらす。冒頭から登場の三人の会話がほぼ「段差と台車」の試行錯誤だけに終始する所、新たな情報は新人物からしか持ち込まれない、という作りが潔いというか、馬鹿馬鹿しさに拍車をかけていた。
あと木乃伊の作りがうまい。包帯の裂け目(目の部分とか)を黒塗りしてあるのがちょいグロで笑う。
プチな笑いネタにももっと目を届かせたかった。

ネタバレBOX

愚痴の続き。
男が静かになったと思っていた後半、隙を見つけたかのようにボリューム満点の高笑いをぶっ込んで来た。
そこは笑いどころ、ではあったがその含意を読み取る時間には個人差がある。私はその笑いの直後「なぜ?ああそういう事か」と意味は分かったが、おかしみはかき消され「意味」しか届かない。作り手としてもその後の役者によるツッコミ台詞で観客が公然と笑える段取りであったと見る。つまり、速攻で、大声で笑うようなタイミングではない。
明らかに芝居を邪魔しており、作り手が提示する「作品」を多様に受け取る余地を狭める行為だが、日本人は大人しく聞き分けがよく寛容で、況んや劇場という場では尚更寛大でありたい。
だがそろそろ作り手と観客双方に損失を与える行為に対し、何等かの対応を考えた方が良いのでは。(本人は芝居を盛り立てている功労を自負しているに違いなく、そういう場面もゼロではない事は認めるが、差引きマイナスなのは明白。)
自分が狭量の部類である事を自覚するが、いつかこの人物の名前を掴み、予約の際にこの名前の予約がある公演は極力避け、開示を拒む制作担当にはこの人物が如何に他者の芝居の見方を「これ見よがしの笑い」によって狭め、それを喜びとしているかを説明し、できれば来場を丁重に断って頂くような対処を求めるつもりだ。
独り言(愚痴)にすぎぬが、宣言しておく。
雨花のけもの

雨花のけもの

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 小ホール(埼玉県)

2021/08/05 (木) ~ 2021/08/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ほろびての名は目の端にあったが未見。さいたまネクスト・シアターは蜷川氏の死後、「第三世代」等3つばかり観たに過ぎぬ。何をもって「最終」かは、説明されない所を見ると大方行政の事情だろう。
今回の舞台は、俳優たちの力を存分に証明し、若い作家の可能性も確かに感じさせる公演となった。
岩松演出は作品の世界観を余すことなく具現する空間、豪奢な装置、調度、衣裳を配し、有終の美を飾るに相応しかった。力作である。

ネタバレBOX

「人間をペットにする」という文字だけ見ればセンセーショナルであり、劇中もこれを「違法」とする外部の目が一瞬登場するが、「あり得なくない」風景に見えた。
「飼われる」側は、その「庇護を要する」性質において「飼う」者の目には魅力を放ち(女性にそれを求める男もいる)、飼い主とペットとの関係は小説では珍しくない倒錯の一形態に見える。現代に散見される人間社会や関係の構造の縮図に見えて来るのが不思議であった。
人間の束縛とそれへの反抗といった明快な図式では語れない(パンフで徳永女史が書いた「グラデーション」が言い得ている)人間と人間社会の相貌は、物事を単純化して描写し解釈したがる昨今の日本社会では異端だが貴重だ。
単純化は排除を生む。
本作の「愛すべき」世界観を体現したネクストの俳優諸氏の今後の活躍に期待したい。
Who’s it? 〜ニューヨークの日本人〜

Who’s it? 〜ニューヨークの日本人〜

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2021/08/05 (木) ~ 2021/08/10 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/08/08 (日) 14:05

 febLaboプロデュース「Who's it?~ニューヨークの日本人〜」を観ました。天真爛漫で、相当ハイな日系人女性、テンションが異様に高く、人の話を聞かないニューヨークのアパートの管理人の女性、売れない画家の男性、小さなギャラリーを営む信用ならない男性、ダンサーの女性、そして、アパートの一室に何時間前からいるのか見当がつかない、銃を手にして座っている日本語しか話せないヤクザの男など、一癖もふた癖もある登場人物たちが、それぞれ存在感を発揮していて面白かった。
 そして、役者と劇の登場人物たちが絶妙にマッチしており、且つ、役者の熱演ぶり、さり気ない所作から全身を使ってリアクションをしたりしていて、観ていて気持ちが良かった。
 ヤクザが銃を持っていて、英語禁止で、スマホは机の上に置かなければいけない危機的状況なのに、最初のうちはヤクザにビビっているが、途中から、思い出話や何で自分がニューヨークで暮らしているのかという理由を話し出したり、日本人がアメリカにおいて、差別される話、そして、ヤクザが金品目的や命を取る目的ではないことが途中からわかってきたり、アパートの住人の男性の一人が、大麻を大量に所持しております、それを元手に新たな事業を展開してカリフォルニアに移ろうと考えていたことが物語中盤でわかったりと、先の展開が読めず、それぞれの思惑が絡まり、勘違いや空回りによる笑いがあり、見る者を飽きさせず、先が読めないものだから、次はどうドラマが展開していくんだろうとドキドキハラハラしながら観ていて、次第に気持ち的に目の前で起こっていることが演劇なのか、現実なのか、その境界が曖昧になるくらい劇世界に引き込まれた。

丘の上、ねむのき産婦人科

丘の上、ねむのき産婦人科

DULL-COLORED POP

ザ・スズナリ(東京都)

2021/08/11 (水) ~ 2021/08/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

DULL-COLORらしからぬハートウォーミングな(他に想像のできぬ)タイトルが、一つの謎掛けである。
蓋を開ければ・・包摂を旨とする「ねむのき」のイメージそのまま。だが語られるのは「場」ではなく、医師も看護師も登場せず、場を訪れた夫婦(カップル)数組のエピソードが綴られていく。
「妊婦」という縛りが窮屈に感じない普遍性、「新たな命」といったありきたりな感動のパターンに収めない、不思議な手触りの舞台であった。
タイトルは「守り」でなく「攻め」。私なりの謎解きだ。

ネタバレBOX

男女入れ替えの回であった。当日の谷氏の説明を聞くまでこの趣向を知らず、当日は入れ替え版の初回と聴いて不安が過ぎった。全てカップルの話なので(周辺人物はほぼ女性で、男優が女装で登場という案配)、双方が逆をやるのだが、通常バージョンではこれが入れ替わるのだな、といった想像・想定をしながら見ていた。そう見てしまう時間が長い。という事は、違和感を解消・フォローしようと色んな想像をする余地があるという事。感情移入したり、ナチュラルな「現象」として芝居に見入る観劇にはなり得ない。
試みの限界について考える意味もあるだろうが、その中で不思議と納得させられる「現象」を見る時間もあった。男優がどうしようもなく男の身体と風貌を持ちながら、女を代弁する尊い使命を感じさせる瞬間である。女が男を代弁する事の方が難易度が高く見えたが、中には身体をニュートラルに、男を代弁して見えた場面もあった(もちろん男一般のイメージでなく特定の人物として)。
ジェンダーの考察より前に、役者の「演技」の考察へと導かれる。高校生がお婆さんを演じて成立する芝居もある。老優が少年を演じるという事も。性を違えた役を演じる事もそうであるし、動物を演じたり、逆に人形に人格を仮託するという表現は成立する。この謎は、深い。

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