柔らかく搖れる
ぱぷりか
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/11/04 (木) ~ 2021/11/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#柔らかく揺れる
#ぱぷりか #初日
主宰 #福名理穂 さんの描く人物像は、物静かでソフトでありながら何処かが歪んでいて、常に疑心暗鬼で臆病に見える。それが市井の人たちの真実に思える。恐怖はいつだって隣にあって、でもそれを直視するのは恐いから、視線の隅に感じながらも存在していないと自分に言い聞かせる。無視する、或いは見て見ぬふりをする。それが身を守る術であり、生きる力なのかもしれない。戦うことを避け、楽な道を選んだ人の吹きだまり。共依存の世界がそこにある。
今作も家族の話である。大切に思っているのに……大切に思っているから、感情が波を打つ。家族だからこそ、無条件の愛があるからこそ、すれ違い掛け違えてしまうと厄介で、関係の修復が難しい。生きている限り、誰もが問題を抱えている。
父の死は、それだけで大事なわけだけれど、そこに纏わり付いている疑念を晴らそうとする者はいない。燻り続けるソレは、指に刺さった小さな棘よりは強い刺激で、喉に刺さった小骨未満の痛みで持続する厄介さだ。闇の中で砂利を踏む足音と、川へ垂れ流した小便に潜む悪意がジワジワとナメクジのように背筋をヒンヤリと刺激しながら上がってくる。
転換の暗転中に、長く水中へと引きずり込まれる。あの雨の夜以外は。その長さで、溺死する息苦しさの恐怖を疑似体験する。
それにしても、キャストが素晴らしい。前半を制したのは #岩永彩 さん。孤独と決別の決意が、その美しさから匂い立った。美しさを封印してダメ母を見せてくれた #廣川真菜美 さん。患者に興味を抱かない産婦人科医が可笑しかった #深澤しほ さん。憂いを帯びた横顔は、まるで劇画から飛びだしたようにカッコイイ #堀夏子 さん。そして、今作が初見の #桂川明日哥 さんから発せられる自然体の空気感に魅了された。
上演時間約90分。豪華キャストを贅沢に使った今作は見事な引き算で計算され、観たい知りたいシーンは観客の想像力で補完するよう構成されている。「物語」という大きな家にあるたくさんの部屋の入り口の戸を少し開けて、いろんな部屋の中を覗いて奥を想像するという感じが、なんとも演劇的で奥行きや広がりを感じさせてくれる。大事件がそこにあるのだけれど、誰もそれを詳らかにせず、その家族を柔らかく揺さぶっている。演劇を愛する全ての人に届いて欲しい作品がソコにある。
パ・ラパパンパン
Bunkamura / 大人計画
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2021/11/03 (水) ~ 2021/11/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
最初から笑えて、最後まで素直に楽しめる舞台だった。作家と編集者の松たか子と神木隆之介のコンビがボケとツッコミの役割を果たしていて、神木のツッコミで松の天然ぶりが笑いになる。二人の執筆活動と、作中劇「クリスマス・キャロル殺人事件」の登場人物たちの相互作用関係も、影に陽に演技に出て面白い。松たか子の作家の、創作の苦しさと八つ当たり、破れかぶれには作者の実感が感じられる。そこから飛翔して、見事に伏線を回収するラストの大団円は、最後まで書き上げた充実感が重ねられて、満足感も2倍になった。守銭奴スクルージの優しさを示したのも、ハートウォーミングであった。
廻る礎
JACROW
座・高円寺1(東京都)
2021/11/04 (木) ~ 2021/11/11 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
前回の田中角栄評伝劇もそうだが、こういう著名な歴史的人物を演じる場合、形から入るのが常道だ、今回の吉田茂も基本、よく似せているのが良い。吉田が首相就任を最初に辞退したときに、「それでも、てめえ男か」と内縁の妻のこりきが啖呵を切る場面がすごく良かった。思わず拍手が出た。あとは議論が続くので少々ハードな芝居である。
自主憲法制定派の鳩山、岸に対して、吉田は護憲派だったというのは、単純化してはいるが、多分そうだろう。憲法は変えずに警察予備隊=自衛隊をつくる、アメリカの改憲・軍拡要求には、要求を値切り値切り付いていくというのが吉田の敷いた路線だった。ただ、吉田の護憲は日米安保=米軍基地温存とセットだということがよく分かる。米軍基地撤去と自力防衛の改憲派に対し、再軍備反対(後に軽武装)の護憲派は日本防衛は米軍の力を借りる考えだった。これは憲法1条と9条がセットであるのと同じ、暗黙の了解事項であり、平和憲法が抱えるアポリアである。
この芝居に出てくる戦後を舵取りした宰相たちにくらべ、90年代の竹下登以降の顔ぶれの小物ぶりはいかんともしがたい。小泉純一郎は例外的な一種の傑物と思うが、安倍晋三に至っては。この芝居に、岸信介の長女と安倍晋太郎との縁談話が出てくる。それにしても、安倍晋三のような中身のない人間が戦後最長の政権記録を立てるとは。先の縁談を持ってきた佐藤栄作が草葉の陰で泣いていよう。
ぽに
劇団た組
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2021/10/28 (木) ~ 2021/11/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
いわく言い難い芝居だった。松本穂歌演じる決断のできない弱い女と、藤原季節演じる身勝手男の関係が軸である。「まじ?まじ?」「ていうか」「全然、いいから、いいから」等々、現代若者の口調をそのままコピーしたような会話のリアリティーが高い。最初はグダグダした会話でしまりがないと思ったが、地震の事件から、緊迫感がぐっとます。二人の会話も同じで、男の本能的な責任回避の責める言葉と、女の次第にすがりつくように変化していく心理を示す言葉が非常にリアルだった。
幼児れんの両親が、連のシッター活動を放棄した円佳を責める言葉も、同様にリアルだった。実際はもっと激するだろうが、感情を抑えに抑えて、それでも抑えきれない言葉に人を刺すものがあった。
平田オリザ、岡田利規の現代口語演劇の系譜にまた新しい才能が登場した。
マクベス 釜と剣
エイチエムピー・シアターカンパニー(一般社団法人HMP)
AI・HALL(兵庫県)
2021/11/05 (金) ~ 2021/11/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
舞台が芸術的で美しかった。深く心に残る。マクベスの水谷さんの声にはいつも惚れ惚れしてしまう、かっこよすぎる。マクベス夫人の高安さんの動き、すべてが美しい。渋いお姉さま方の中で、植木さん、がんばってました。しかし、2時間強、集中力が続かず、もっとしっかり観たかったと後悔が残ります。
7丁目のながふじくん
なかないで、毒きのこちゃん
シアター711(東京都)
2021/11/02 (火) ~ 2021/11/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
大好きな劇団の一つ。口コミが大変好評なので下北沢はかなり遠いけど観てきました。なんじゃ、こりゃ~!の連発。やっぱりここのは面白い!!
ロード演劇(?)的なテイスト+ミステリー+ちょっぴり下品なわちゃわちゃ感+ほろり=五つ星
スター誕生2
ミュージカル座
中目黒キンケロ・シアター(東京都)
2021/11/03 (水) ~ 2021/11/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
これ実話なのか?フィクションなのか?ナベプロをモチーフにしたような70年代芸能界内幕ミュージカル。歌手に憧れる少女達と錬金術の猛者達の物語。平尾昌晃や麻丘めぐみ、天地真理、キャンディーズ、久保田早紀、加藤登紀子を思わせる錚々たる面々。しかも全曲歌われるのは詞も曲もまさに当時物のそれっぽいオリジナル曲。スクールメイツ(タレント研修生のバックダンサー)の振り付けなど最高。清水義範のパスティーシュ(作風の模倣)作品に近い面白さがある。
楽曲や時代背景が面白く飽きない。枕営業やプロフィール改竄等もきちんと描かれている。流石に全員の歌唱力は文句の付けようがない。
浅丘るみ(大胡愛恵〈おおごまなえ〉さん)の熱狂的ファンである宮原健一郎氏が印象的。ファン目線の日本芸能史なんかも作れるのではないか?今作のキーパーソンでもある石川このみ役宮下舞花さんは爆乳を強調したダンスで観客は大受けだった。
語り手である作曲家のぎっちゃん(大塚庸介氏)の優しい目線と、恋人でもあった反戦運動家・赤木じゅん(田宮華苗さん)とのエピソードが心に残る。
10年分の短編集
匿名劇壇
ABCホール (大阪府)
2021/11/06 (土) ~ 2021/11/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
Aブロックを観劇しました★3本共面白かった~♪福谷圭祐さんが創造する短編の凄いのはその話を長編作品としても観てみたいと思わす設定の圧倒的な面白さだ★それを
「短編にするのは勿体無い」じゃなく
「短編にしたからこそ面白い」
クオリティの作品に仕上げるのは物凄い才能の証拠だ!
改めて10周年おめでとうございますm(_ _)m
24歳のフォーチュン!ウェディング
人間嫌い
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2021/11/03 (水) ~ 2021/11/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
女性達の結婚に対するリアルな思いが伝わってくる作品でした。
女性として、頷けるところが多々あり(頷ける所ばかり)とても面白かったです。
登場人物達は、こういう人って実際にいたなぁ、実際にいるなぁという感じ。
役者さん達、皆可愛かったし、演技も良かったです。面白かったです!
ちーちゃな世界
青春事情
駅前劇場(東京都)
2021/10/27 (水) ~ 2021/10/31 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
プラスなこととマイナスなことが交錯しあって、
でも、主人公の前向きな言葉に救われた気がします。
多少、ツッコミどころもありますが、良かったです!
面と向かって
劇団俳優座
俳優座劇場(東京都)
2021/11/05 (金) ~ 2021/11/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
芝居としてはおもしろく、よくあるパターンではあるが、いろんな話が暴露されて登場人物たちが言い訳でジタバタさせられ、思わず笑ってしまう場面もある。しかし、修復的司法というらしいが、その場で、事件の背景とは言え、あんなに広範囲の個人的な話や企業経営に属する事項を取り上げたりするものなのだろうか。
THE BEE
NODA・MAP
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2021/11/01 (月) ~ 2021/12/12 (日)公演終了
三人姉妹
劇団つばめ組
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2021/11/04 (木) ~ 2021/11/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
海外古典戯曲を上演し続けている 劇団つばめ組の「三人姉妹」、よくまとまっていると思う。確かに登場人物、特に三姉妹の性格や立場といった表現は堪能できた。しかし、その人物たちが描く物語への集約というか集中が弱いように思われたのが勿体なかった。人物描写がしっかり出来ているから面白いはず、その先入観の外にあった印象だ。
この戯曲は、表層的には帝政ロシア末期における没落家族、その三人姉妹の悲しい運命を描く暗い憂鬱な物語だ。人が持つ夢や希望が、時々の状況によって日常的な現実のなかで次第に萎んで枯れてゆく。他方では、単なる暗く悲しい物語ではなくて、悲劇を基調としつつも喜劇的な要素も取り込んだ、それこそ人間の悲喜交々を描いた人生劇でもある。その基調である悲劇的な雰囲気が弱く、惰性的に現状を受け入れるしかない、といった喜劇性も感じられない、無色透明感で被われていた。
この戯曲を現代日本で上演するには、コロナ禍での日常の暮らしにみる社会的な閉塞感を背景に取り込んで、今上演する意味があることを示して欲しかった。
(上演時間2時間)
マクガフィンのいない今日
劇団Pin to Hint
千本桜ホール(東京都)
2021/11/06 (土) ~ 2021/11/06 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
劇団EXPO2021参加公演。
深いトンネルの中で列車が緊急停止する。マクガフィンが現れたらしい。恐怖に打ち震える乗客たち。謎が謎を呼ぶホラー映画のようなテイストながら根底にあるのは乗客一人一人の人生の岐路。不条理な出来事とリアルな登場人物の苦悩がシンクロして不思議な感動を呼ぶ。
キャスト陣が皆滑舌が良く台詞が聞きやすく、良く練習しているのがわかる。
女性運転手役の金橋明加理の澄んだ眼が印象的だった。
クレプトキング
ENG
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2021/10/29 (金) ~ 2021/11/07 (日)公演終了
「楽屋~流れ去るものはやがてなつかしき」
道頓堀セレブ
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2021/11/05 (金) ~ 2021/11/08 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
売れた女優 プロンプター売れなかった女優の亡霊が3人になった
3人姉妹ができる。
台詞ひとつひとつに緊張感がある すごい
崩れる
アマヤドリ
シアター風姿花伝(東京都)
2021/11/04 (木) ~ 2021/11/08 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ずっと会話が続き面白く観られました
ちょっとこんな人いやだなと思う登場人物が何人か・・・
もう少し続きがあるならどうなるんだろうと気になります
音楽劇 百夜車
あやめ十八番
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2021/10/29 (金) ~ 2021/11/02 (火)公演終了
柔らかく搖れる
ぱぷりか
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/11/04 (木) ~ 2021/11/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/11/05 (金) 19:00
初見のユニット。不思議な感触の静かな演劇だった。90分。
父が亡くなっての葬儀の日。母・兄・姉(家を出て一人暮らし)・妹の家に、兄妹の従姉とその娘が一緒に住むことになる。その一年後の一周忌に向けての、この人たちと取り巻く何人かの、さまざまな出来事を淡々と描く。それぞれが問題を抱える人々だが、何となく普通に生きてる。何を言いたいのかが、何を描いているのか、よく分からないけど、感触は残る。久々に見た elePHANTMoon の菊池奈緒が健在なのが嬉しい。
黄昏川を渡る舟 ―甘寧と凌統―
ワイルドバンチ演劇団
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2021/11/03 (水) ~ 2021/11/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
主人公は甘寧(かんねい)、演ずるは東條瑛(あきら)氏。海賊出身で名を馳せた愚連隊が正式に名を上げようと仕官を試みるが誰にも相手にして貰えない。悪名高い江夏(こうか)の黄祖(こうそ)に仕えることとなるが···。アクションの動きはピカイチ。声に色気がある。
魅力的な武人、孫呉の凌操(りょうそう)、演ずるは米川塁氏。甘寧に討たれるも、孫呉に仕えるよう勧告。ハン・ソロのように死しても息子を見守っている。
彼の息子、孫呉の凌統、演ずるは髙木陵斗(りょうと)氏。奇しくも名前は同じくRYOTO。父を殺した甘寧を仇と狙う。那須川天心に似ているような。
曹魏の張遼(ちょうりょう)役は演出、殺陣兼任の古田龍氏。第二幕、最強の武人の彼が登場してから物語は一気に盛り上がる。
敵味方乱れ打ち、誰が誰と戦うやらの決戦シーンは往年のジャッキー・チェン映画を思わせる。『プロジェクトA』や『スパルタンX』、ツイ・ハークの『スウォーズマン』など。いろんな人間のいろんな思惑がアクションで絡み合うのは面白い。コメディも盛り込まれている。
登場人物の話す内容一つ一つに筋が通っていて感心。史実を曲げていない所も好感。余りにも余りにも膨大な台詞の量に役者は大変だ。
話は判り易く気軽に楽しめるのでお勧め。