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マンホールのUFOにのって

マンホールのUFOにのって

マチルダアパルトマン

OFF OFFシアター(東京都)

2021/12/22 (水) ~ 2021/12/30 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

はるかちゃん、どんな人かなと楽しみにいきました。
チョッピリ変わっていて可愛いい。
女性から見ても、魅力がありました。
男性も、はるかちゃんに振り回されている姿がほほえましかった。
ほっこりとしていて、観たあとも温かい気分になれました。
会話も、ひとことひとことが、よく考えて練られて作られているのに感心しました。
脚本がいいと思いました。

はらいそ少女解脱教

はらいそ少女解脱教

早稲田大学劇団木霊

劇団木霊アトリエ(東京都)

2021/12/23 (木) ~ 2021/12/25 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

廃墟を舞台にした不思議な物語。
雰囲気はとても良い。
シュールな感じ。
寺山修司を思い起こすような...
早稲田なので、やはりその流れを継承しているのか...
奥が深そうな作品。
私は、純粋に雰囲気を楽しみました。
設定がおもしろく、良かったです。

ハムレット

ハムレット

西荻窪芸術センター

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2021/12/22 (水) ~ 2021/12/27 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

#三村聡 #大久保美智子
#中川佐織 #星善之
#高島領也 #喜多京香
#塚瀬香名子 #鶴澤津賀寿
#竹本京之助(敬称略)
古典を上演する時、「丁寧に忠実に上演する」ことと「それでは新鮮さを欠いてつまらない」という考えに分かれる傾向にあることは理解している。最近では後者が多い気がする。温故知新の精神は、まず丁寧に忠実に作ってみて、そこからのステップとして様々なトライがあればイイと常々思う。
今作は配役にひと工夫されている。目当ての塚瀬香名子さんの姿を存分に味わえてこの上なく嬉しい。以前に学生と作る演劇公演で彼女が『ハムレット』に出演されたのを拝見しているが、それとは全く違う楽しみを味わうことができた。いろんなカンパニーで上演された本作を観てきたけれど、王子が愛する女性に向ける叱責、罵詈雑言、尼寺へ行けと繰り返す視線の先に、こんなにも強く母への憎悪と、肉欲や煩悩への嫌悪が感じられた公演は無かった気がする。理解していることだったはずなのに、ハッとさせられた。さらに、悪や不正を憎む正義の印象が強かった王子に、他者(フォーティンブラス)と自分を比較して嫉妬し、己を嘆く人間らしさや弱さを立ち上げたのも塚瀬さんの功績と言えるだろう。
衣装への試みも興味深い。西洋の貴族と和装が混在する意図についてずっと考えを巡らせている。
王殺害の回想にアレを運び込んで活用するのもユニークで滑稽さが生まれた。カブトムシのヘラクレスも面白い。
しかし、野鳥の会の如く王子が双眼鏡で覗くのが母のベッドという演出ならば、悪趣味であり本作品の王子像にそぐわないと感じるのはワタシだけだろうか。ましてや母と叔父の情事をあんなに露骨に作る必要性があったのかも疑問である。かつてこの作品でそんな演出を観たことはなく、いい大人が困惑した。
最も違和感を感じたのは三味線と浄瑠璃。そこに人形浄瑠璃に似せた表現まで被せて長々と……。残念ながら唄われた大切な説明台詞は、その抑揚が邪魔して耳に入らなかったが、それは唄い手のせいではない。
演出の冒険は、まぁそういうものだから、そうなのだろう。むしろ脚本に誰がどんな手を加えたのかは演出以上に興味をそそられた。ボローニアスが異国へ旅立つ息子に話す三つの教えには手を加えていないのだろうか。分かりやすくて感心したが、本に変更が無いのなら演出と俳優の手柄だ。来春、家を出る双子の娘たちに何て言えばいいだろう……そんなことを今から考えている。

#31.5『パブリック・リレーションズ』

#31.5『パブリック・リレーションズ』

JACROW

雑遊(東京都)

2021/12/21 (火) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/12/25 (土) 14:00

2013年に初演した作品をダブルキャストで再演だが、初演は観てない。Aチームを観劇。とても面白い。90分弱。
 JACROWの2代路線である、企業モノ(もう一つは、社会事件モノ?)のきっかけになった作品だということだが、とてもよくできている。起業したPR会社の立ち上げシーンから始まり、7か月後、テレビ局に食い込もうとするPR会社の人々とTV局員の群像劇。序盤を除くとワンイシューになったことで短めの戯曲となり、非常に分かりやすい作品になったと思う。役者陣も、劇団員のみのバージョンだったこともあり、確実な演技だった。谷仲はどうしてあんなに一見嫌なヤツができるんだろう。2ヵ月で3本の芝居に出た福田の落差にビックリ。

THE BEE

THE BEE

NODA・MAP

ナレッジシアター(大阪府)

2021/12/16 (木) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/12/23 (木) 18:30

役者が慣れたせいなのか、スゴイことになっていた。75分。
 東京公演の初日を観たが、非常に緻密に演じられる必要がある脚本で、冒頭にアクシデントがあったこともあって、役者にある種のカタサがあったように思えた。それが、初日から50ステージほどを経て、役者が戯曲を自家薬籠中のものとしたのか、余裕がでてきたように思えた。反復・繰り返しを丁寧にこなしながらも遊びがあって(おそらくアドリブではなくて演出)、笑いの場面が多かった。筋が分かりやすく、笑いもありつつ、メタファーも入って、最後は緊張、という、芝居の初心者にも勧められる舞台になっていた。大阪の客は貪欲だということをよく聞くが、よく笑い、しかし、終盤の緊張は味わい、カーテンコール6回という豪華さだった。
 初日に観て、どうしてももう1回観たいと思ったのだが東京でチケットを取れず、大阪まで来たが、それだけの甲斐があったと言うもの(^_^)v。

マンホールのUFOにのって

マンホールのUFOにのって

マチルダアパルトマン

OFF OFFシアター(東京都)

2021/12/22 (水) ~ 2021/12/30 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

不思議な舞台なんだけど、妙な日常感とユーモアがあって、観終わったあとは何だかしみじみ。レディースの渚ちゃんが可愛かったっす。

私の心にそっと触れて

私の心にそっと触れて

メメントC

新宿スターフィールド(東京都)

2021/12/16 (木) ~ 2021/12/22 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2021/12/21 (火) 08:30

ベテラン俳優の演技に圧倒
それに尽きる。

空間、間合い、テンポ、同じものを若手がやろうとしても技術的にも人生経験的にも太刀打ちできないだろうというものを見せつけられた。

2時間40分はなかなか長かったので、初めて演劇を観る方には心構えが必要かもしれない。

マンホールのUFOにのって

マンホールのUFOにのって

マチルダアパルトマン

OFF OFFシアター(東京都)

2021/12/22 (水) ~ 2021/12/30 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

開演前、毛むくじゃらの謎の着ぐるみの男(大垣友〈ゆう〉氏)がアコギを爪弾き出す。やたら巧い。その後、開幕すると舞台上手に座り、鍵盤楽器を奏でる松本みゆきさんと劇伴を生演奏。
前半は高橋留美子調のラブコメで、冴えない大学生の主人公へちま(宮地洸成〈ひろなり〉氏)がやたらめったら癖のある女の子にもてまくる展開。へちまの彼女の遥(小久音〈さくね〉さん他)は自称(?)宇宙人で、複数の役者が交替制で演じていく。UMA研究会会長の若葉(早舩聖〈はやふねひじり〉さん)、レディースの渚(御飯ゆかりさん)。
不思議な遥に夢中な優しいへちま。彼女から預かった大切なガチャガチャのカプセル。絶対に開けてはいけないそれを到頭開ける時が来る。
遥&猫役の小久音さんが可愛かった。

クライマックス、大垣友氏のオリジナル曲『マンホールのUFOにのって』が炸裂。これが胸を打つ名曲で、この舞台はこの一曲を奏でる為にあったことが分かる。全てのシーン全てのエピソードがこの一曲に凝縮されていく素晴らしい演出。

昔凄く仲が良かったが喧嘩別れした奴と、何十年振りかに思わぬ場所でばったり再会。流れで飲みに行って久方振りに矢鱈盛り上がり、御機嫌で店を出て「じゃあな」と二人別れて行く。そしてお互い共もう二度と会うことはないことを知っている。そんな舞台だった。
「寂しがれたのさ、君が傍にいた。ばっちり世界は幸せに溢れてんのな。」 The ピーズ 『手おくれか』

28日から隣の「駅前劇場」でも劇団の別作品を同時公演。日程が合えばこれも行きたかった。是非観た方が良い。

ネタバレBOX

後半は15年後の遥(松本みゆきさん)と、ナマケモノとへちまのカサブタから採取したDNAを交雑して誕生した“えにし”(大垣友氏)の物語。えにしはアコギを肩に掛け、人語を解す。喋れるチューバッカのような存在。遥は自らへちまに別れを告げ去って行ったものの、ずっと彼のことが忘れられず引き摺っていた。遥の親友でもある元レディースの伝説の総長、紫(宍泥美〈ししどろみ〉さん)が帰郷して来る。(芸名は宍戸留美のパロディーか?)。紫と「喫茶さざなみ」のマスター(久間健裕〈たけひろ〉氏)との恋模様。えにしの独り立ち。マンホールはきっとワープゾーンで、望んだ場所に連れて行ってくれる筈。へちまとの再会。

中学時代、屋上で小さなUFOを捕まえた遥はそのまま落ちていく。『ラピュタ』の飛行石を手にしたシータのようにゆっくりと。そこで紫と出会う。UFOに乗っていた宇宙人は紫に恋をする。遥はUFOをガチャガチャのカプセルに入れ、自分が他人とは違う特別な存在であることの証明として隠し持つ。大学に入り、へちまと付き合い出し、へちまにカプセルを預ける。二人の関係が終わる頃、遥に促され到頭カプセルを開けるへちま、中には何もない。矢張り自分は特別な存在でも何でもないことを認めた遥は大学を辞め、へちまの前から姿を消す。実はUFOはとっくの昔にそこを抜け出ており、宇宙人は人間型に擬態し「喫茶さざなみ」のマスターとなっていたのだった。

何人もの役者で演じることにより、遥はへちまにとって掴みどころのない女の子に見えることを巧みに表現。遥の行動言動は全て思春期の厨二病のように思わせて、きっちりとSFでもある。胸に残るラブ・ストーリーだった。
The Merchant of ZIPANG

The Merchant of ZIPANG

劇団五期会

ABCホール (大阪府)

2021/12/03 (金) ~ 2021/12/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

安定の大人の演技の役者さん
ストーリーが私には前半はしっくり来なかった…
それぞれの役割が分かりにくかったのか感情移入できませんでした^^;
休憩後の内容はしっかり楽しめました。

マンホールのUFOにのって

マンホールのUFOにのって

マチルダアパルトマン

OFF OFFシアター(東京都)

2021/12/22 (水) ~ 2021/12/30 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白かったです!

東京の一日

東京の一日

青年団若手自主企画 宮﨑企画

アトリエ春風舎(東京都)

2021/12/16 (木) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

■95分弱■
いくつもの場(一場、二場とかの「場」)が一つの舞台上にて共存する宮﨑流がさらに進化し、本作は4、5個の場が同時進行。全ての場に共通するのは、劇中人物たちが、なくなったものを探していること。
その喪失感をじわじわと観客に共有させ、客を感傷へといざなってくれるこの作風、好き。
ただ、東京でなくとも成立しそうな話ではあった。
アフタートークも観覧。主宰の宮﨑さんはとても穏やかで、クリエイター気取りの尖り方をしてないところに好感。

ネタバレBOX

何を言われても「しないほうがいいのですが」を繰り返し、住宅展示場に住み着く男のくだりが秀逸。『バートルビーズ』の翻案としてとてもよく出来ていた。
オサエロ

オサエロ

KKTプロデュース

テアトルBONBON(東京都)

2021/12/22 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

熱の籠った演技に感動しました。

ネタバレBOX

迫真の演技で、臨場感がとてもありました。戦時中の光景が目の前に迫ってくるようでした。特攻隊の気持ちが痛いほど伝わってきて胸が締め付けられる想いになりました。始まりの老人の動きがぎこちなかったのが気になりましたが、最後のシーンのたたみかけるようなシーンは、ずしんと心に響きました。
雪やこんこん

雪やこんこん

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2021/12/17 (金) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/12/24 (金) 13:00

冒頭の吹雪のシーンがやけにリアル。女座長と芝居小屋の女将、役者たちの丁々発止のやりとりの中に、日頃の会話で利用したい言い回しが多数。

硝子はオバサン

硝子はオバサン

演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2021/12/22 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#奥田努 #小野健太郎
#姜暢雄 #力徳旺 #田中佑果
#綾野アリス #和田真季乃
#日高ボブ美 #山村涼子
#山下直哉 #長尾純子
(敬称略)
人生はピリッと辛い。でも、だからこそ愛の甘さを知る。優しさと愛ある厳しさに温まる冬の夜になった。大好きな長尾純子さんは艶やかさを存分に発揮して、劇中ばかりでなく客席の全てのオトコを虜にする。一滴の憂いをスポイトした笑顔に何でもしてあげたくなる。煙草を許せる女性は桃井かおりさんだけなワタシも、カウンターで虚空を仰ぎながらため息を着くように煙を燻らす後ろ姿に見惚れながら胸を痛める。この色気に男どもは骨抜きにされるとイイ。
良いスナックには素敵なママだけではなく、匹敵するスタッフがいる。綾野アリスさんが演じるミユが、美しさも勿論だけれどその存在で店の質を示す。かつてママに言われたことを語るだけで、彼女が乗り越えたり抱えたりしているものを感じさせる。そして辛口でありながら、その振る舞いは粋である。ショットグラスを煽る姿に痺れた。カウンターの隣に座りたかった。この人の次回作も観てみたい。
初めて拝見した公演でウェディングドレス姿が眩しかった和田真季乃さんは、健気な姿で一石を投じて作品を動かす。こんな人が職場に居たら恋せずにはいられない。
日高ボブ美さんはいつだって唯一無二の存在感。ちょっと残念な感じのある役どころを見事に成立させ、その上で心根の美しさを立ち上げて見せてくれる。笑いとペーソスを全身に蓄えた最強の俳優の一人。
男たちは一様にヤキモチ妬きでダラしない。まるで自分を見るようで辛いのだけれど、なんだかチャーミングなところも見せてくれて救われる。強くあらねばと自分に言い聞かせてみる。

横幅のある演技エリアに組まれた高さのあるセットが二つの空間を立体的に構築する。積み木を組み合わせたような美しさで、観やすくて、客席のどこからでも楽しめるはず。入場は到着順だし、だから、今からでも遅くない。クリスマスに人の温もりを味わいに足を運んでみてはいかがでしょう。

恐怖が始まる

恐怖が始まる

ワンツーワークス

テアトルBONBON(東京都)

2021/12/09 (木) ~ 2021/12/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

数年前に初演を観ているのに、しかも、こんなにショッキングな内容なのに、筋を全く覚えてなかった自分に驚愕。終演後の、東京新聞の記者を招いたトークは時間がたりないくらい。

『水』/『青いポスト』

『水』/『青いポスト』

アマヤドリ

新宿シアタートップス(東京都)

2021/12/16 (木) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「青いポスト」観劇。二本立て公演が多い劇団だが制作的にもこれが合っているのだろう。思い出せば昨年の二本立て「生きてる風/豚に真珠..」の後者も観ていたのだった。こちらは「生..」を観るつもりで予約し、都合が変って日時変更したら演目も変わりall女子の「豚」の方を観たという顛末だったが、今回も蓋を開けるとall女子芝居。
主役と身内以外の人物たちは関係性も判らないが(もっとも判った所で..という感もあるが)、芝居の勘所はフィクショナルな設定の成立の度合と、視覚的・美的仕上がり具合、という点では、久々に見たアマヤドリの群舞は相変わらず(苦手なやつ)ではあったものの、型のレベルは高くその分だけ仕上がり良く、つまりは劇的な高揚を舞台にもたらしていた。

ネタバレBOX

今作は4年前初演の再演という。恐らく、架空の町の設定は初演時より今が入り込みやすい。新型コロナは様々な事を露見させたが、その一つに確実に含まれるのは人間の愚かさだろう。事態が急を要しただけにそれとのギャップによっても、またそれに対応する人々の行動の変容によっても、忘れっぽい日本人でもさすがにこの変化は認識される所となった。自分らの代表を選ぶ選挙とは真逆に、「悪い人」を一人投票で選び、「消される」というルールが受け入れられている町。この設定は、事前調べで一位とされている姉を持つ妹の「行動」を通して、人間を論じる芝居のための設定だ。だから「論」そのものに意義を感じなければ、荒唐無稽なだけで無意味な設定は自滅する。だが今作はミステリー仕立て(ヒントを小出しにして観客に物語全体が見えるジグソーパズルを作らせる)である事と共に、今に通じる終末的な空気と、その中で殆ど無力に等しい人間の「可能性」を見ようとする視点を感じるところがあった。
リアルに想像すれば「悪い人」を一人選ぶ、という制度がその目的(悪を排除する)を正確な意味で遂げることは考えにくい。悪の「行状」が民主的手段で決まる事はあっても、悪である「人間」を民主的手段で炙り出せるかは甚だ怪しい。刑事事件を裁くように厳格な基準と調査によってその「悪」は認定されねばならないが、この投票に限っては悪の「基準」はどうでも良く、ただ人に選ばれれば彼(彼女)が悪である、いや悪かどうかもどうでも良く、ただ選ばれれば消される、というルールがある、という事だろう。もっとも人々は無目的なルールを受容するほど鉄の心は持てないからそのルールは「悪を排除するため」だと信じている・・そこまで作者が描いているとすれば、「悪法も無批判に受け入れる」法の奴隷と化した日本人への批判的視点を持ち込んでいるのだろうか? まあそれは無いだろう。自分の判断基準を持たない大衆の投票で一人を「消す」というルールは、このルールが存在する事によって「人から恨まれない、妬まれない、目立たない、能力においても突出しない」という行動様式を人々の間に蔓延させることが目的だと考えれば、効果は絶大で、極論すれば今の日本はそういう世の中かも知れない・・てな事を作者も考え巡らしたかも知れない。

脇に逸れた。そんな事より、この設定を敷いた上にどんなドラマが乗っかっているか、が本題。
人から誤解もされやすい姉が、自分の店で社会の風紀を乱すような客商売をして当局から睨まれ、店をつぶされた、という出来事があり、「悪い人第一位」という前評判が立っている。冒頭姉は妹に傍若無人な行動をとった、という事で妹に責められているが、姉は言い訳をしないため、観客は「ひどいやつ」と姉を見る。が、妹の抗議=お婆さんから「二人に」ともらった一袋のチョコを全部一晩で食べた、というその理由がその後の説明(姉が悪人第一位となってえらいこっちゃ)で判り、姉が妹思いで率直な性格である事が次第に判って来るのだが、この過程は観客に「一度悪く見えていた人間を見直す」プロセスを辿らせるもので、作者のここは計算勝ちである。
次なるは、この状況に対し、妹がある行動に出たらしい、というもので、これは噂レベルでしか語られず、妹本人の口からは語られない。
もう一つルールに補足があり、投票の順位について、工作を行うなどの不正は裁かれ、第一位の悪人の代りに裁かれる、というもの。このルールは「悪を排除する」目的からすると煮え切らないルールで、何が不正かの認定も難しいはずだが、ここも「ドラマ」のための設定という事で、ドラマ本体に目を向けよう。
投票には「事前投票」というのがあり、恐らくは上位に絞り込まれた者の最終決戦投票がある、と読める。で、芝居ではこの事前投票で、妹が一位となる。ショックを受ける姉。妹も家族ぐるみで評判が悪いので一位になる原因が何かあったのかも・・と観客には想像させるが、問題はその次で、実は妹は何か工作をしたのではないか、というもの。そして現に妹は人々に印象操作をさせるメッセージが書かれた紙を配るよう郵便屋に頼んだのだ、と郵便屋が証言する(それに応じた事は罪にはならないらしい)。だがこの証言も妹の計算の内ではないか、という噂も流れる。こちらの噂が本当なら、妹は自分の行動が「不正」と判定される事を誘導したのではないか、という仮説が成り立つ。
最終投票で一位が決まると、一定の期間が過ぎてその人間は文字通り「消える」という。最終投票の後、妹が姉の窮地を救うために自己犠牲的な行動をとった、という美談を感じ入ったように姉に告げる。その時姉は初めてその可能性に思い至り、必死で妹を探す。妹は見つからず、結局彼女の不審な行動のナゾは解けずに終わる。
姉は語る。投票によって「消される運命」にある事を自分は覚悟しており、最後に演説でこう言ってやろうと毎日考えていた。自分に対する誹謗が如何に浅はかで誤ったものか、他人の言葉に踊らされ、乗せられ、信じるしかできない愚か者どもに罵倒を浴びせて消えてやろうと。。
閉塞した社会、人の評価が自分の幸福の基準である社会で、社会の犠牲という特別な存在になろうとしていた姉に対する妹の感情は、実は・・・。
一方、似た物同士で仲のいい姉妹という側面も芝居では見せる。
自己犠牲か、それとも英雄の称号への憧れかは不明のまま、解釈を観客に委ねられる。
だが謎の「解」がどちらであろうと、一つ、妹はある行動によって事態を変え、(真相不明であれ)人々の行動変容を誘導した。事態は変えられる・・ただし自分の命と引き換えにしてでなければ叶わない。
自爆テロは今の日本でも起き得る。浅間山荘事件は陰惨で許し難いが、引きで見れば社会の病みが生み出したものなのではないか。
改革の意志が既得権(大人)によって拒絶され、それが当然視されている社会で僅かでも変容をもたらそうとすれば、自分の将来を棒にふって犯罪に走るか、命を最終手段としてこれを有効に使うことを考えるのは、若者にとっては健全な思考かも知れぬ。
『水』/『青いポスト』

『水』/『青いポスト』

アマヤドリ

新宿シアタートップス(東京都)

2021/12/16 (木) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

青いポスト 観劇
最高でした。アマヤドリさんの芝居って,脚本の素晴らしさもあるんだけど,最初から最後までドキドキが多く目が離せなんですよね。群舞も芝居に良いアクセントと表情を加えています。

私の心にそっと触れて

私の心にそっと触れて

メメントC

新宿スターフィールド(東京都)

2021/12/16 (木) ~ 2021/12/22 (水)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

こういう芝居に遭遇するたび、「芝居に敵うもんはなか」とドヤ顔したくなる。体内物質の分泌が促進され、血行も良くなり尻の痛さを忘れる。良い事づくめである。
劇場観劇を諦め、配信を選んだが、正直音声はよくない(録音マイクが舞台から遠いのだろう、ノイズレベルかなり高い)。見始めて一瞬しまったと焦ったが、意外やすぐ芝居から目が離せなくなり、休憩を挟んで終いまで演劇的快楽を味わった。
・・という事で、公演は終了し後は配信しかないが、自分的には配信でもお勧めである(ただし「巻き戻し」せずに鑑賞するには音量の上げ下げが必要かも。)

主催がメメントCと山の羊舎とあり、メメント→山下悟氏へ演出依頼したのだろうと勝手に想像していたが、実は山の羊舎の企画であるようだ。舎の主たる活動は別役実作品の上演で(それも年一回あるか無いか)、2015年別役フェスでの「後ろの正面だあれ」は私に別役実世界の魔力を見出させた一つだったが、このささやかなユニットが昨年上演した「メリーさんの羊」(山の羊舎の前身が「メリーさんの羊を上演する会」という一風変わった集団)に、女1役で出演した民藝・白石珠江が今作での妻役。その夫である認知症を発症した元医師(奇しくも認知症にも通じた脳外科医)と共に実にハマり役であった。
舞台は基本、老夫婦宅のリビングらしい場所で、介護事業所のスタッフや夫婦付き合いの長い旧友、新たな夫(二番目)連れの娘といった訪問者が夫婦の「現在」に絡むが、やがてかつての同僚で職場を追われた元医師(現看護師)や、難病を患い僅かな希望にすがるように治験に同意したピアニストの登場によって「過去」が顔を覗かせ、老医師の現在を形作っているだろう人格の構成要素が見えて来る。そしてそれらは同時に、医師自身の手(脳)からこぼれ落ちて行くものとしても描写される。
この芝居が醸し出す面白さの源をうまく説明できないが、久々に嶽本女史の書いた言葉のユーモアと力強さに触れた。

能楽堂の甕の中には涙の海が広がっている

能楽堂の甕の中には涙の海が広がっている

早稲田大学舞台美術研究会

早稲田大学学生会館(東京都)

2021/12/24 (金) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

台詞がおもしろかった。めりはりがあり、ある意味、はまっていた。

ネタバレBOX

奥行きのある舞台、細部にまでこだわった演出、とてもよかった。
はらいそ少女解脱教

はらいそ少女解脱教

早稲田大学劇団木霊

劇団木霊アトリエ(東京都)

2021/12/23 (木) ~ 2021/12/25 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

メッセージが強く伝わってきた。迫力のある劇だった。

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