マンホールのUFOにのって 公演情報 マチルダアパルトマン「マンホールのUFOにのって」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    開演前、毛むくじゃらの謎の着ぐるみの男(大垣友〈ゆう〉氏)がアコギを爪弾き出す。やたら巧い。その後、開幕すると舞台上手に座り、鍵盤楽器を奏でる松本みゆきさんと劇伴を生演奏。
    前半は高橋留美子調のラブコメで、冴えない大学生の主人公へちま(宮地洸成〈ひろなり〉氏)がやたらめったら癖のある女の子にもてまくる展開。へちまの彼女の遥(小久音〈さくね〉さん他)は自称(?)宇宙人で、複数の役者が交替制で演じていく。UMA研究会会長の若葉(早舩聖〈はやふねひじり〉さん)、レディースの渚(御飯ゆかりさん)。
    不思議な遥に夢中な優しいへちま。彼女から預かった大切なガチャガチャのカプセル。絶対に開けてはいけないそれを到頭開ける時が来る。
    遥&猫役の小久音さんが可愛かった。

    クライマックス、大垣友氏のオリジナル曲『マンホールのUFOにのって』が炸裂。これが胸を打つ名曲で、この舞台はこの一曲を奏でる為にあったことが分かる。全てのシーン全てのエピソードがこの一曲に凝縮されていく素晴らしい演出。

    昔凄く仲が良かったが喧嘩別れした奴と、何十年振りかに思わぬ場所でばったり再会。流れで飲みに行って久方振りに矢鱈盛り上がり、御機嫌で店を出て「じゃあな」と二人別れて行く。そしてお互い共もう二度と会うことはないことを知っている。そんな舞台だった。
    「寂しがれたのさ、君が傍にいた。ばっちり世界は幸せに溢れてんのな。」 The ピーズ 『手おくれか』

    28日から隣の「駅前劇場」でも劇団の別作品を同時公演。日程が合えばこれも行きたかった。是非観た方が良い。

    ネタバレBOX

    後半は15年後の遥(松本みゆきさん)と、ナマケモノとへちまのカサブタから採取したDNAを交雑して誕生した“えにし”(大垣友氏)の物語。えにしはアコギを肩に掛け、人語を解す。喋れるチューバッカのような存在。遥は自らへちまに別れを告げ去って行ったものの、ずっと彼のことが忘れられず引き摺っていた。遥の親友でもある元レディースの伝説の総長、紫(宍泥美〈ししどろみ〉さん)が帰郷して来る。(芸名は宍戸留美のパロディーか?)。紫と「喫茶さざなみ」のマスター(久間健裕〈たけひろ〉氏)との恋模様。えにしの独り立ち。マンホールはきっとワープゾーンで、望んだ場所に連れて行ってくれる筈。へちまとの再会。

    中学時代、屋上で小さなUFOを捕まえた遥はそのまま落ちていく。『ラピュタ』の飛行石を手にしたシータのようにゆっくりと。そこで紫と出会う。UFOに乗っていた宇宙人は紫に恋をする。遥はUFOをガチャガチャのカプセルに入れ、自分が他人とは違う特別な存在であることの証明として隠し持つ。大学に入り、へちまと付き合い出し、へちまにカプセルを預ける。二人の関係が終わる頃、遥に促され到頭カプセルを開けるへちま、中には何もない。矢張り自分は特別な存在でも何でもないことを認めた遥は大学を辞め、へちまの前から姿を消す。実はUFOはとっくの昔にそこを抜け出ており、宇宙人は人間型に擬態し「喫茶さざなみ」のマスターとなっていたのだった。

    何人もの役者で演じることにより、遥はへちまにとって掴みどころのない女の子に見えることを巧みに表現。遥の行動言動は全て思春期の厨二病のように思わせて、きっちりとSFでもある。胸に残るラブ・ストーリーだった。

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    2021/12/25 14:46

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