最新の観てきた!クチコミ一覧

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物語ほどうまくはいかない物語

物語ほどうまくはいかない物語

wag.

小劇場 楽園(東京都)

2024/05/18 (土) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

良い空気感のある舞台だった、という感触が残っている。具体的に舞台風景を思い出すと、主人公の小説家志望を演った井上みなみの佇まいだったな、と思う。
結果仲良くなる女子同士の通い合いが、泣ける。その立役者に、どうしようもない男と自認する父が、なっている。
成功者の物語ではなく私たちの物語と思えた事が素直に嬉しかった、観客代表の弁。
役者としての功労者はKAKUTAの森崎健康。編集畑から営業畑に部署替えとなったとの別れがラストに来るが、中々な編集者振りを発揮していた事から、「あり得る事」とは言え「何故?」と追及したくはなった。(ドラマの都合上、である事は分かるが。)
ネタバレになるが小説家の「二人三脚」の設定の背景が解かれて部分は、風景が開け、人間模様を眺める旅であるドラマの醍醐味があり、うまいなと思う。
制約ある「楽園」の使い方もうまかった。

こどもの一生

こどもの一生

あるいはエナメルの目をもつ乙女

王子小劇場(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/16 (木) 14:00

1998年10月のG2プロデュース版を観てから四半世紀、ほとんど内容を忘れており「あぁ、そうだった♪」もありつつむしろ初見に近い感覚(爆)。で、かつてPARCO劇場で観た作品をこの規模の会場でということで装置のみならず演出・演技まで凝縮された感じ。
その結果、前半のゆるやかなコメディパートと後半のホラーパートの落差も際立ち、まさに脚本・演出・演技の三位一体、的な?
特に後半の「コワい夢を見ている」感覚が見事で、あれこれ各種ホラー系のパターンの原点的なものを本作も使っていると改めて気付いたり。
さて「フローズン・ビーチ」「こどもの一生」に続く第三弾は何になるのか? 早くも楽しみ。

ネタバレBOX

「○○してはいけない」とか「倒したと思ってもしつこく蘇る」とか、古今東西の怪談話の定番では。
物語ほどうまくはいかない物語

物語ほどうまくはいかない物語

wag.

小劇場 楽園(東京都)

2024/05/18 (土) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

物語作家の自虐コメディなのだが、むしろ環境から見た家族コメディになっている。
やっと編集者(森崎健康)に「かまってもらえる」ようになった三十歳ほどの女性本の作者(井上夏美)が主人公である。編集者にデビュー後初の作品を読ませなければならない時期になっていて、できあがった作品を父親(秋葉陽司)の手を借りて、完成するが読ませてみるとまるでダメ。ここから、姉や、同時出発の仲間のフーゾク体験を生かして伸びてきた作者(石川まつみ)が絡んで、あれこれと喜劇的展開になる。
父が家を出ていてが一年ほど前に戻ってきて、娘と共作するようになる、とか、父と編集者がラグビーの共通趣味があるとか、スジの展開では、編集者が最後に職場を変えることになるとか、父親ががんになって余命が少ないとか、最初にスジ売りした肝心の作家としてはどうなるんだ(生き方)という主筋を外した(うまく絡めていない)エピソードが多く、賑やかだが雑然としていてとっちらかっている。
もっと上手く転がして、最後は三十歳を迎える「今を生きる」女の哀感も面白くドラマにして欲しい。とにかくテーマを絞ることが肝心で、人物もエピソードも無駄が多い。(逆にそれがないと転がらない、としているところも見えある。そういう人の良さは演劇ではいけない)。
旧作をいじっている時期ではない。同世代では、少し上の横山拓也はこの時期を上手く乗り切って大劇場もこなせるようになった。経験は何より大事な時期だから乱作と言われてもいい、経験を積むことを期待している。新国立の「12月」やトップスのEPOCKMANの「漸近線」はなかなか良かった。ヴァンダインもなかなか素敵な冒険だった。しっかり頑張れ!


団地ング・ヒーロー

団地ング・ヒーロー

コケズンバ

サンモールスタジオ(東京都)

2024/05/21 (火) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」、略して「コケズンバ」。「東京AZARASHI団」内のおっさん4人組ユニット的な立ち位置で旗揚げ初日。脚本・演出の穴吹一朗氏、声優としても活躍中の魚建氏、怪異物蒐集家でもある渡辺シヴヲ氏、この中じゃ若手の迫田圭司氏。
これが前説の穴吹一朗氏の謝罪から幕を開ける。理由はぼかしたが渡辺シヴヲ氏が今日は出演出来ず、急遽代役として飯島タク氏が演ることに。前日要請を受けた飯島タク氏はスマホで台本をチラ見しながらこの修羅場を力技でこなす。小泉純一郎だったなら「痛みに耐えてよく頑張った!感動した!おめでとう!」と言うところ。役者それぞれ複雑な心境だったろうが、公演は素晴らしいものになった。

MVPは横山胡桃さん。今井未定さんっぽくもあり、今作の重要な役どころ。北原芽依さんとの互いに涙の修羅場シーンは必見。
北原芽依さんはヴィジュアル・クイーンの風格。大塚寧々を彷彿とさせる透明感と坂道にいそうな華。複雑な内面の辛い役を見事に演じ切った。
勿論、空みれいさんも素晴らしかった。
主演の魚建氏はそこにいるだけで味がある。服を着替えるだけのシーンで間が持つ力。

『オールド・ボーイ』の骨格に『アンブレイカブル』のスパイス。
変身出来なくなったスーパー・ヒーロー、「スーパー・グレート・フラッシュ」(魚建氏)は60を過ぎ、団地の管理人をしている。その団地に引っ越して来た女(横山胡桃さん)には果たさねばならぬ目的があった。

テイストはおっさん喜劇なのだが、シリアス・パートがかなり深い。クライマックスの女優3人の遣り取りは客席を唸らせる。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

「自分の心を救えるのは自分自身だけ」というメッセージが確かに伝わった。

※中学時代の虐めの復讐の為、北原芽依さんを追って引っ越して来た横山胡桃さん。彼女を殺して自分も死ぬ腹づもり。そこに割って入るのが自身も虐められた経験を持つ空みれいさん。今は大学で臨床心理学を学び、心の苦しみや悩みの回復法について学んでいる。「復讐しても心は晴れない。それよりも自分の心を救う方法を模索して!」大事なのは自分の心の救い方。そしてそれができるのは何処かの誰かではなく、自分自身だけだということ。それを聞いていた魚建氏も目が覚める。スーパー・ヒーローの存在意義を見いだせず、腐り果てていた日々。全ては自分の心次第だったこと。

迫田圭司氏の役が判り辛い。実の正体は悪の宇宙人的ヴィランを匂わせているのだが、ちょっとややこしい。(横山胡桃さんの背後に立つ伏線など)。
『ウィークエンド』

『ウィークエンド』

画餅

小劇場B1(東京都)

2024/05/21 (火) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

画餅『ウィークエンド』開幕。初日観劇。
ここにきて画餅の様式美のようなものがさらなる高みへと極まっていくのを感じる初日でした。何を何にと言われたら即答は難しいのだけど様々の配分や配置が絶妙で、その様式美の中で今回もやはり存在感抜群の俳優陣が次々沸かしまくる全員山場の痛快さたるや!
今回も沢山笑いました。

作・演出を手掛けながらの出演って、俳優としてというよりも作家として存在の意味付けがされてしまうことが多いのですが、神谷さんにはとてもいい意味でそれをあまり感じない。
切り替えなのか、切り離しなのか、そのあたりはわからないのだけど、とてもフラットにいち俳優として存在されていて、同時にご自身の演者としての強みや魅力がしっかり活かされていて、ソロプロジェクトを全うする推進力と俳優を輝かせるプロデュース力を感じます。(私は神谷さんの悲哀の滲む困った顔が大好きなので、今回はその表情がたくさん見られて、俳優神谷圭介ファンとしても大満足だった!)

内容としては日常へのニッチな視点に加えて、社会に対する疑いというか推奨されている物事に潜むバグみたいなものを拾い上げてドライブさせるような印象もあって、これは3回公演まではない感触でとても興味深かった!インタビューでの神谷さんの言葉をかりるなら、それもまた"日常的な違和感"なのかもしれないと改めて。

ネタバレBOX

母乳育児への妄信的な肯定とフェチズムや執着がこんな形で描かれている作品は後にも先にもなさそうだし、授乳を経験した者から見ても母乳外来やセミナーの独特の雰囲気や断乳に対する(自分由来というより世間由来の)謎の背徳感はリアルに根差していると感じました。
フェティッシュを害悪ととらえるか、マイノリティととらえるかという、結構ギリギリな境界を攻めた作品だけど、今世の中で起きている対立や分断ってたしかにこういう側面があったりするよなと思ったりもしました。今回の画餅の作品に社会的なものが意図的に盛り込まれていたのか、ただ私がそこに社会を見出してしまったのかはわからないけれど、大いに笑いつつも一つの変化として興味深く観劇しました。
団地ング・ヒーロー

団地ング・ヒーロー

コケズンバ

サンモールスタジオ(東京都)

2024/05/21 (火) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

真面目なヒーローがとても笑わしてくれました 楽しかったです

団地ング・ヒーロー

団地ング・ヒーロー

コケズンバ

サンモールスタジオ(東京都)

2024/05/21 (火) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白かったです!
笑いの中に、現代の問題も提示されている作品でした。
どんな展開になるのか?ヒーローは変身できるのか?と、どんどん惹き込まれ、あっという間に時間が過ぎました。
役者さん達は熱演で、それぞれのキャラクターの癖が強くて、可笑しくて涙が出てきました。
観劇後、何だか心が晴れるような良い舞台でした!

団地ング・ヒーロー

団地ング・ヒーロー

コケズンバ

サンモールスタジオ(東京都)

2024/05/21 (火) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

地味な作業服の登場であっても「あっこの人が元ヒーローのオジサンだ!」と一瞬で分かる
なぜなら公演ページにもあるフライヤーデザインを見ているから(笑)
実際に観るまでは過去にどんな活躍をしてきたヒーローなのか、今回の事件で一体何が起きたのか色々分からない所ではあるけれど(⇐ここはしっかり観てのお楽しみの部分)予想していたというか期待していた通りに、すっかりオジサンになってしまった元ヒーローのアイロニーや哀愁で思いっきり楽しませてくれました
声が何故か元仮面ライダー1号 藤岡弘さんの声と似ているのも妙に可笑しく味のある元ヒーロー

急遽、初日の回だけ団地の住人役のお一人が出演できなくなり、飯島タクさんが代役になるとの前説があってビックリしましたが、本当に本当の急遽だったみたい
こういうピンチに、困ったぞ!な部分はスパイスくらいのチョイ見せ、それを逆手に取って笑いに転換してやろうという心意気は本当に生きる勉強になります
劇団さんの歴史の中で語り草になるであろう公演回
語り草になり得るのは観客の拍手が鳴り響く最後まで、一致団結でやり遂げられたからこそ
主催 穴吹一朗さんが役柄としてMC的な役割も担っており大奮闘、代役の飯島タクさんを追い詰めるという暴挙に出ていました(笑)
実際の水面下ではかなり大変だったであろうと想像しますが、観客としてはただただ楽しんでしまうばかりで本当にありがたい
明日からは本来のメンバーでの公演(だと思う)
毎回ちょとずつ違った表情を見せてくれそうなタイプの舞台
間違いなく明日からもしっかり楽しめます

中之島春の文化祭2024

中之島春の文化祭2024

ABCホールプロデュース公演

ABCホール (大阪府)

2024/05/04 (土) ~ 2024/05/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

今年も開催頂き、超感謝💓
Cブロックを観劇💕

●ゲキゲキ/劇団『劇団』
石切10回?石油王?離婚?親権?心暖か😍

●三等フランソワーズ
元婚約者の闘病!2時間の恋?心暖か🥰

●Micro To Macrm
演奏告白&バイク👍

●ばぶれるりぐる
UFOとバンド?異色の組合せ愉し🤣

●THE ROB CARTON
デスキッチンお疲れ💦

中之島春の文化祭2024

中之島春の文化祭2024

ABCホールプロデュース公演

ABCホール (大阪府)

2024/05/04 (土) ~ 2024/05/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今年も開催頂き、超感謝💓
Bブロックを観劇💕

●桂紗綾アナウンサー
クノール愉し🤩

●十三クラブ
Family5なのに4人?でも5人?🤔

●喜劇結社バキュン!ズ
誕生日?
怪しい不条理、流石😆

●劇団SE·TSU·NA
流されたヒルコが😱
”空”好きでDVD買✌️

●カヨコの大発明
ルーカスからのNの逆襲?!
超~面白っ🤣

中之島春の文化祭2024

中之島春の文化祭2024

ABCホールプロデュース公演

ABCホール (大阪府)

2024/05/04 (土) ~ 2024/05/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

今年も開催頂き、超感謝💓
Aブロックを観劇💕

●ダイナマイトしゃかりきサ~カス
昨年とは異なり声だし📣参加。
たろうさんがいないのは寂しいけど、HARMONY良かった👌

●NICO×frogs
団子屋の交通整理、おばあさん、ガンバ💪
次回公演楽しみ💕

●空宙空地
夢のない夫と夢の国へ…流石の会話、愉し🤩
関西公演、楽しみにしてます💕

●ステージタイガー
恋人と二人三脚…やっぱスポ根✌️
流石、ステタイさん👍

●本若
狐と幕末や室町を体感の旅✌️?
劇団あるある、夢があって良かった👍

朗読劇 ヴィヨンの妻

朗読劇 ヴィヨンの妻

ミモザ

STAGE+PLUS(大阪府)

2024/04/27 (土) ~ 2024/04/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

初日観劇。
立ち回りつつ、入れ替わりながらの朗読劇、結構新鮮で、どうしようもなく退廃的世界にどっぷり引き込まれ、面白かった😆

死の匂い漂うの太宰治晩年作
夫「死にたい」
妻「私たちは、生きてさえすればいいのよ」
救われた気分☺️

OH!文化体育祭

OH!文化体育祭

劇団カオス

大阪公立大学杉本キャンパス 田中記念館(大阪府)

2024/04/28 (日) ~ 2024/04/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

千秋楽観劇。
生徒会からの「体育祭の文化体育祭への変更」提案に、体育会系が猛反発!
新聞部は事実を正しく伝えようとするが…

其々の思いのぶつかり合い、心ときめく青春の青臭さが、とても懐かしく、ムッチャ面白かった😆
青春って良いね🥰
良かった👍

去りゆくあなたへ

去りゆくあなたへ

劇団BLUESTAXI

ザ・ポケット(東京都)

2024/05/21 (火) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

すばらしかったです。話がわかりやすく2時間が短く感じられました。葬儀屋の美人社員さん、最後でなんらかの形で伏線回収するかな…と思ったらなかったですね^^ 兄弟の確執などすごくよく表されていてよかったです。あと、「劇団とは何か」いうことについてもあらためて考えさせられました。

オットーと呼ばれる日本人

オットーと呼ばれる日本人

劇団民藝

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2024/05/17 (金) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/21 (火) 13:30

座席1階

休憩を挟んで4時間近くに及ぶ3部構成の大作。1962年に木下順二の本作が宇野重吉の演出で初演されて以来、四演となる。劇団民藝の歴史を裏打ちするような作品だ。

ゾルゲ事件で死刑となった元朝日新聞記者であり、近衛内閣の嘱託という顔も持つ尾崎秀実(ほつみ)の物語。コードネームがオットーだった。尾崎がジョンスンと呼ばれていたゾルゲの名前を知ったのはかなり後になってからだったというし、当たり前かもしれないが尾崎自身もスパイであることを「略奪婚」までした妻にも打ち明けておらず、スパイというのはこういうものなのかと考えてしまった。

長編ではあるがとても興味深い物語であり、初見の自分はずっと食い入るように見てしまった。まるで大河ドラマを見ているような感じがした。コードネーム「スン夫人」のアメリカ人ジャーナリスト、「ジョー」というアメリカ帰りの日本人画家。ユニークな登場人物が多く、満州事変後の歴史を思い起こしながら、表裏のある人生を歩んだ人たちに何だか親近感を覚えた。
特に第一幕の上海編だが、登場人物たちは潤沢な資金でリッチな生活をしており、彼らが目指した共産主義も結局は庶民のためのイデオロギーではないな、と痛感させられる。政治の舞台とは、そういうものなのだ。

劇団民藝のDNAともいうべき作品だが、高齢者が圧倒的に多い客席にはこの長編は体力勝負でつらいところが多い。会話についていけず眠り込んだり、幕間の休憩で携帯の電源を切り忘れて第三幕ではあちこちで呼び出し音が鳴ったり。この名作を次世代にどうつないでいくか。前回の上演から20年を超えての再演だが、次の20年越しの再演はあるのか。客席と共に頑張っていかねばならないな、と劇場を後にした。

マンザナ、わが町

マンザナ、わが町

創造ユニットTaiyo

シアター711(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

大成功の旗揚げ公演だったと思います。

ネタバレBOX

九州の子守唄が耳を離れない。
それだけならまだしも、ついつい口ずさんでしまう。
ちょっと困っています。
さるヒト、いるヒト、くる

さるヒト、いるヒト、くる

ポケット企画

扇谷記念スタジオ・シアターZOO(北海道)

2024/05/03 (金) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「他者と向き合い歴史を問う姿勢」

ネタバレBOX

「私には、距離があります/その時、そこで、生きていなかった、という距離です」

 たまたま買った漫画本を読んだサト(中野葉月)は、そこに描かれていたある家族の戦争体験を読んだときに抱いた感覚についてこのように述べる。彼女は常日ごろ歴史の勉強に余念がないミタ(吉田諒希)とシル(さとうともこ)に詳しく話を聞こうとするが、己の行動に身勝手さを感じ及び腰になってしまう。自分たちもまた同じような気持ちを抱いていると二人に背中を押されたサトは、漫画を読んだときは言葉にできなかった衝撃を打ち明ける。困難を抱きながらも他者や歴史に向き合う姿勢は本作の主題である。

 サトはパートナーで劇団の主宰者であるリタ(田村咲星)とともに、木々や珍しいきのこが目に映える森のなかに暮らしている彫刻家のカナ(田中雪葉)とパートナーのヒロ(赤坂嘉謙)のもとに滞在している。元看護師のカナは仕事に疲れ、森のなかに移住して造形作家として活動してきた。お金はないそうだが満ち足りた様子の二人に、リタとサトは同じく芸術を志す者として共感を寄せているようだ。4人の会話の合間に時折遠くから自衛隊が訓練で出す大砲の音が挟まってくる。

 並行してiPadを片手に歴史の勉強しているシルとミタの対話が描かれる。シルが覚えているのはアイヌの英雄コシャマインが起こした和人への武装蜂起「コシャマインに戦い」の1457年や、松前藩の収奪に対して発生したアイヌ民族の蜂起「シャクシャインの戦い」の1669年、多くの屯田兵が動員された西南戦争の1877年に北海道旧土人保護法が制定された1899年と、道民の歴史にまつわる重要な年号である。この二人の世界に入り込んだサトは、やがて漫画に描かれていた物語について話しはじめる。道南に住んでいたある一家は、夫[赤坂嘉謙・二役]の旭川への招集を機に結婚1ヶ月で別居、妻[田村咲星・二役]は札幌に引き上げる。2年後に帰還した夫とともに幌泉に移住するも、夫は2度目の招集で釧路へ。子ども[田中雪葉・二役]とともに夫に会いにいった妻は、帰り道で幌泉が空襲に遭ったことを知り、帰還した街がめちゃめちゃになっていた様を目撃するーー。

 声高に糾弾するわけでも調べたことをそのまま劇化するわけでもなく、淡々とした日々の営みから公権力に翻弄され続けてきた道民の歴史を浮かび上がらせるこの物語は、我々観客の国家観へ静かに疑義を突きつける。取材を通して体験した迷いや対象との距離感を包み隠さず提示したことで、虚構と現実のあわいを描くことにも成功していた。そういった意味では演劇が本来持っている芸術性が生きた作品と言えるだろう。

 一杯飾りで二つの世界を並行して描き、やがて戦禍の物語を再現するという鮮やかな展開も本作の魅力である。俳優や照明、音響のチームワークがよく取れていたことの証左は、終幕で砲音とともにソーラン節を歌い踊りあげるという、力強くも皮肉な見せ場に結実していた。ショパンのノクターンが流れるなか穏やかに進んでいた森の中の対話が、風船を割る演出で急にシリアスなトーンになるなど、音の使い方がうまい。ただし空襲の描写で妻の心情を俳優が複数名で嘆く重要な場面は、破壊音が大き過ぎて私の席から聞こえにくく残念に思った。
 
 説明的な台詞がない点には好感を覚えたが、私自身に北海道の歴史やアイヌ関連の知識がなかったため理解が難しいと感じる描写があったのも事実である。その点で漫画の再現場面で一家の暮らす場所が北海道の地図上に灯されていたのは大助かりだった。また森の中の4人のやり取りを見守りながら歴史の勉強をしているシルとミタは、じつは像であるという設定も戯曲を読んで初めてわかったところである。「せんがわ劇場演劇コンクール」での上演を見越しており時間の制約があったからかもしれないが、より肉付けした内容をもっと長い尺で観たかったというのが本心である。
團菊祭五月大歌舞伎

團菊祭五月大歌舞伎

松竹

歌舞伎座(東京都)

2024/05/02 (木) ~ 2024/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「線の太い菊之助の政岡」

 五月恒例の團菊祭夜の部に菊之助の「先代萩」が出た。今回は一子千松に実子の丑之助が配役されたからか、実の親子という実感が強くなった。

ネタバレBOX

 命を狙われている若君鶴千代(種太郎)を守るべく乳人政岡が神経を払いながら茶道具でご飯を炊く「飯炊」は、空腹に耐えかねている鶴千代と千松の様子を伺いながら時に涙を浮かべて準備を進めるところが見ものである。様子を探りに来た千松を叱ったり、千松と勘違いして鶴千代を叱ったりして謝るくだりで緊張が緩むが、できあがるまでの間どうしても手持ち無沙汰に見えてしまうところである。ここは十八代目勘三郎が丁寧な手前と母性を感じさせてうまいところだったが、菊之助は淡々と仕事をこなしているように見えた。種太郎の鶴千代は気品があり、丑之助の千松はひもじさに耐える健気さが伝わってきてうまいものである。

 栄御前(雀右衛門)の入りになると奥から八汐(歌六)や沖の井(米吉)ら家中の女性たちが出てきて壮観である。雀右衛門の栄御前は強さはあるもの悪の感覚があまり感じられず、鶴千代へと毒入りの菓子を強引に薦めようとして政岡と問答になるくだりが今ひとつ盛り上がらない。そこへ突如千松が入ってきて菓子を食い苦しみ八汐が刺し殺すところは歌六が憎たらしく演じて盛り上がる。皆が奥へ引っ込みひとりになった政岡が千松に「でかっしゃった」と万感の思いをぶつけるところは、実父菊五郎に似て描線が太いところが菊之助独特であった。

 女たちの立ち回りのあとの床下は、右團次の男之助が豪快で手強く、團十郎の仁木弾正の目の大きさ、蝋燭でできた影が定式幕に怪しく映り見ごたえがあった。

アラビアンナイト

アラビアンナイト

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2024/05/04 (土) ~ 2024/05/18 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

文学座アトリエにて上演された『アラビアンナイト』。5/4〜6まではファミリーver上演につき、未就学無料、桟敷席&家族割アリというGWにぴったりだったこの公演。私は地方出張につきファミリー公演の観劇はできなかったのですが、5歳の息子と稽古場見学をさせていただき、後に10歳の娘と通常ver.を観劇しました。

アラビアンナイトは、愛する妻の裏切りをきっかけに心を病み、「これからは一夜毎に花嫁と結婚をして、その日のうちに処刑する」という残虐な心を持ってしまった王様と、物語の名語り手である大臣の娘・シャハラザードが結婚し、千夜にものぼる物語で王の心を溶かしていくというお話。その主旋律をベースに、マトリョーシカのように物語の中にまた別の物語が入っているという構造で、劇中劇文学、劇中劇演劇の金字塔とも言える作品です。

上演時間は休憩込みで2時間45分と割と長尺なのですが、本編を通して「シャハラザードはどうなってしまうの?」という緊張感と「物語の続きは?」という好奇心がしっかりと手を繋ぎ合っていることで中弛みを全く感じませんでした。これはひとえに演出の工夫と俳優の技の賜物ではないでしょうか。また、1時間15分毎に休憩を入れるというバランスは大人子ども問わず、誰しもにとってベストなのではないか、と想像しました。

親子観劇って「子が楽しめるか否か」にかかっているんです。そして、それは、「そうでないと(子が気になって)大人も手放しで楽しめないから)という理由も正直あるんですよね。子だけが楽しくても、大人だけが楽しくてももどかしい。そういう不安で劇場を遠ざけている人にこそ、是非この『アラビアンナイト』に出会ってほしい!と思いました。子どもの心を奪う演出が細部にわたっていくつも仕掛けられているだけでなく、大人が思わずうっとりするような演劇の魔法にも同時にかけられていく。(例えば、白布一枚で海に浮かぶ船の上へ、伝説の大きな鳥の卵やその翼の下へ導かれていく……。)なんというか、五感の何も置き去りにされてないんです。五戸真理枝さんの繊細な視点と俳優さん達の心技体が込められた演出、本当に魔法だった。そして、それはきっと、私たち観客のイマジネーションとの共作でもありました。隣で子が絵に描いたように目を丸くするのを、そのままハッと驚きの息が漏れるのを見て、知らないだけで自分も同じような顔をしているのだと知るようでした。

残念なことに、稽古場見学の日は後に予定が控えていた都合で最後までは観られなかったんです。
当然息子はこう言います。帰り道にも眠る前にも「あのお話の続きは?」と。 まさに劇中で妹が、そして国王が、物語の名語り手のシャハラザードにあと一夜、もう一夜と千にも昇る命懸けの物語をねだった様に。

これほどまでに「物語の力」を示す作品はないと思う位、小さな頃から『アラビアンナイト』の幻想的でちょっぴり怖い世界が大好きでした。だけど、改めて気がついた。「物語の力」だけじゃない、「物語を信じる力」によって一夜は千夜になったのだと。そして、それは演劇の魔法を信じることにも繋がっている気がする。そんなことを感じる景色の数々でした。大所帯だけど物語の中で一人一人が忘れ得ぬ登場人物を生きているのも、誰しもが等しく聞き手でも語り手でもある様なセリフの扱い方も好きでした。
最後に10歳の娘とのやりとりをネタバレBOXに綴ります。

ネタバレBOX

色々と分別のつき始めた5年生の娘との観劇では、幼い頃とはまた違った、娘個人の考えに触れることができるようになりました。この日も信濃町駅まで歩いて帰っている帰路で「王様の罪」について色々と話をしました。
私が「シャハラザードは勇敢で美しい心の持ち主で、それによって王が自分の罪深さに気づいたことはよかったけど、死んでしまった女の子達のことを思うと、王が、彼女や彼女の家族達が永遠に失ってしまった”愛する家族と幸せに暮らす未来”を描けることが苦しい。ママは王様の心の再生を手放しで祝福できない部分もあったんだよね」というようなことを話したら、娘が「罪を犯した人がその罪をまるで無かったことにして幸せになるのはよくないけれど、自分が悪いとわかったのなら、そこからほんとうの苦しみがつづくはず。間違いや罪を犯した人が一生幸せに暮らしてはいけない、一生不幸なままでいなきゃいけないというのは怖い、なにか違う気もする。しあわせなほど苦しみはおそってくる」みたいなことを言っていて、私は我が子ながら「お見それしました!」という気持ちになるなども(笑)。そうなんですよね。こういう時間が観劇の、物語の余韻の中の最も豊かな瞬間なんですよね。翌朝、最後まで観られなかった息子が口をとがらせながら「アラビアンナイト、最後まで見てずるい」と言って、その後「ぼくだって全部覚えてるもん。でもはなすのは夜だからね」と言っていました。いつだって線引きをするのは親の方で子はいつも軽々とそれらを飛び越えていく。子どものことを決してナメてはいない演劇と出会うと、そういうことをつくづく思いさせられます。
「子どもより大人の方が物事をわかっているなんてことは決してない」
そんな教訓を改めて握りしめるような観劇でもありました。
なかなか失われない30年

なかなか失われない30年

Aga-risk Entertainment

新宿シアタートップス(東京都)

2024/04/27 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

快作に次ぐ快作を新たに発表し続けるアガリスクがまた、オールタイムベストに追加されるような新作を世に放った。2024年の世に放ったその物語は、私たちがここまでくるのに当然通らずにはいられない1994年と2004年と2014年という時が内包されていて、それはもういくつかの、一見失われたようで、その実”なかなか失われていない”時代たちを巡るタイムトリップそのものであった。
舞台は、新宿の街のとある劇場跡地の雑居ビル(下はケバブ屋さん)(と聞いて、小劇場好きはもうあそこだ!とピンとくるだろう)ある時代は劇場であった場所はまたある時代はデリヘルの待合所で、そして、またある時は…と10年毎に遡るこの30年、実に様々なことが起きた。山ほどある風刺すべきポイントを決して逃すことなく、しかし今回も劇団名に違わず、とんでもないエンタメ満ち満ちの作品だった。

アガリスクの演劇の凄いところは「エンタメ要素が散りばめられている」のではなく、冨坂さんと俳優さん達の技巧が「数々のエンタメな瞬間を生み出している」ところ。会話の度にエンタメが仕掛けられては生まれていくその様に毎回惚れ惚れしてしまう。ちょっとここは思い切って言い切ってしまうけれど演劇に縁のない人、または抵抗がある人も本作ばかりは楽しまずにはいられないと思う。両親にも姉妹にも地元の同級生にも観せたい演劇だった(つまりGWにぴったり?!)

それでいて、『かげきはたちのいるところ』、『SHINE SHOW!』、『令和5年の廃刀令』などの作品群がそうであるように社会ともしっかり手が繋がれているところや、その劇場あるいは街で上演される意味があるところが本当に見事だし、鮮やかなんです。客席の反応も含め大満足な紛うことなきオススメの一作!
人によってオススメしたい作品違うからあまり言った事ないけど、こればかりはオススメ作品って言葉がしっくりくる。でも何一つ媚びてないし、むしろ極められていて語り甲斐もある。
私の中の"アガリスク、新作の度に代表作更新説"がまた濃厚に!

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