BELLA NOTTE
DANCETERIA-ANNEX
大倉山記念館(神奈川県)
2022/06/21 (火) ~ 2022/06/24 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
役者のレベルが格段に上がっていて、物語に入り込めました。
やっぱりダンテリの作品は素晴らしいです!
もんくちゃん世界を救う
U-33project
王子小劇場(東京都)
2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
お伽噺 桃太郎をベースにした寓話のようだが、話の展開は違うもの。何方かと言えば現代的な問題を前面に出し模索若しくは自省しているよう。しかし、まぁ理屈で考えるより観たまま素直に受け止め、楽しみたい作品。
「文句」という感情を切り口にして、発想の転換によって思考や物の見方が変わる、といった内容がストレートに伝わる。訴えたい内容は分かり易く、更に視覚的に面白可笑しく観せる演出の工夫、そして主人公もんくちゃん役の ゆでちぃ子。 さんの独特の雰囲気、それら全体をもって物語の世界観を醸成している。
さて、もんくちゃんが言うところの「世界を救う」とは…。
(上演時間1時間40分 途中休憩なし)6.26追記
ネタバレBOX
舞台セットは、奥を一段高くし、色違いの箱馬が置かれている。中央に花道、冒頭は桃の張物がある。上手 下手は敢えて非対称の張物絵柄。上手正面は雲、側面は高層ビル群、下手正面は太陽、側面は大木が描かれている。因みに箱馬の色は青と赤であり、格闘技のコーナーを表しているよう。
物語は、ストーリーテラー(絵本の読み手のよう)が話を分かり易く案内してくれる。おじいさんと きくちゃん(おばあさん)が、仲良く暮らしていたが、長年一緒にいれば喧嘩することもある。つい強い口調で詰ることもあるだろう。おじいさんは「文句」を別の言い換えが出来ないか考える。そこで知り合った もんくちゃんに「文句」集めを依頼する。斯くして もんくちゃんはピンクの上着を着て街に出かける。街には相手の意見に逆らえない人(犬井)、自分の考えがなく、言いなりになる人(猿渡)、誰とも関われない孤独な人(雉谷)がおり、その3人が抱えている心の問題が見えてくる。一方、鬼と称される人達は、高圧的に命じる(青鬼)、情実に訴え言いなりにさせる(赤鬼)、そして無視を決め込む両鬼として対峙(退治)させる。この構図は、社会問題にもなっているハラスメントを表している。それぞれの立場を鮮明にした戦い(ディベートみたい)が始まる。この時の観せ方が面白可笑しく秀逸だ(カーテンコールで表現に注意してとあり)。
ハラスメントを受ける人たちの特徴、文句を言われ傷つきたくない、優しいだけで自分の意見が言えない、自己表現せず自分の殻に閉じ籠ってしまう。「文句」=「意見」に置き換えることで違った印象を相手に持たれる。発想の転換によってネガティブがポジティブへ、といった表現が…。しかし行き過ぎた正論もまた怖い描き方をしている。鬼退治=仕返しが出来たことによって、今度は逆に苛めの側に立つ。負の感情の連鎖は止まることを知らない、人の弱さを露呈する。単純に「文句」を「意見」に置き換えただけでは世界は救えない。しかし意見を言わなければ、世界が(何事も)変わらないのも事実だ。「世界の終わり」を「世界を救う」へ導くことは並大抵のことではない。その問題を観客に投げかけているようだ。
演出は全体的にポップで、時に漫画調になる。描かれている内容は重く厳しいものであるが、そこは上手い演出とキャスト陣の演技で楽しんで観ることが出来る。公演は絵本と異なり、ストーリーテラーがもんくちゃんの代わりとして、物語に入り込む。困ったら他人に押し付けてしまう、そんなもんくちゃんの弱さを描くことも忘れない。
先の演出と相まって童謡 唱歌「桃太郎」が実に効果的な音楽として流れる(ピアノ)。
次回公演も楽しみにしております。
もんくちゃん世界を救う
U-33project
王子小劇場(東京都)
2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
文句でなくて意見を言えばいいんだけど・・・これがなかなか難しい
桃太郎のストーリーに引っ掛けた寓話となっていたがなかなか面白かった
もんくちゃんが天真爛漫でコケティッシュでかわいい
もんくちゃんとストーリーテラーの表情が良かった
ライティングが印象に残った
ネタバレBOX
なんか学芸会風のセットだなと思ったら、それがホワイトボード化して文句を書き連ねられるとは!
JACROW#28『鶏口牛後(けいこうぎゅうご)』
JACROW
座・高円寺1(東京都)
2022/06/23 (木) ~ 2022/06/30 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
JACROW得意の企業モノ。面白い。124分。
とあるアパレルメーカーのプロジェクトチームが開発したものを上司に否定され、さてどうしようと悩む主任(川田希)(ここまでで30分)。大企業に残ってプロジェクトを形にしようとするのか、独立して自分の思うものをそのまま形にしようとするのか、という2つの選択の、それぞれの展開をその後で2通りに展開する、まさに牛後か鶏口かの行く末を描く。会社の仲間という公的な側面と、家族と一緒の私的な側面が巧くミックスされ、それぞれの道もそれなりの説得力がある。川田が悩みつつ前に進む主人公を好演。ベテランの谷中恵輔は企業モノでは嫌な上司を本当に巧く演じる。すごいなぁ(^_^;)。
ゴンドラ
マチルダアパルトマン
下北沢 スターダスト(東京都)
2022/06/15 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
[黄色いゴンドラ]を鑑賞。
学力や知能は高いけど社会性が低く理屈っぽい無職の兄と社交性があり天然だけど頭と要領が悪く物事に疎いヘルパーさん、言葉は強いけどバランス感覚があり優しさを内に秘める妹の3人の物語。
それぞれの人物造形が巧みで物語に破綻がなく引き込まれる。特に小悪魔的に兄の心を揺らす小久音さんが当て書きのようにマッチしていた。約80分という上演時間も過不足なく丁度良かったと思う。
ネタバレBOX
ジャンポケ斉藤氏が最近「いじめられている側は一生忘れない。僕は一生恨んでいます」と告白していたことを思い出した。私自身も中学生時代にいじめにあったことがあるので、兄の「いじめは過去の出来事ではない。現在進行形で自分の中にある」というセリフにとても共感した。
ヘルパーさんがカバンから手帳を取り出す度にレシートやら何やらがバラバラと床に落ちるシーン、これだけで彼女がどういう人物なのかが分かって小さいけど見事な演出だと思った(そして私も「ちゃんとしまえよ!」と内心イライラした)。
小刻みに戸惑う神様
SPIRAL MOON
「劇」小劇場(東京都)
2022/06/15 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了
実演鑑賞
前回の「たましずめ」の時にも感じたことだが、なんだかふわふわしていて捉えどころがない作品だなという印象。何故だろうという疑問がぬぐえなかったので両作の作家、はせひろいち氏について検索してみた。すると今作のジャブジャブサーキットの公演時のはせさんのインタビュー記事が目に留まった。《最近、起承転結とか、観客を伏線とかで引っ張り込んでおいて、ここでこう見せよう、みたいなのが嫌で嫌で。》と語っておられた。そうか、それで合点が行った。私は起承転結があって伏線が張られて、回収されて...という「物語」に慣れ過ぎてしまっていたために違和感を覚えたようだ。長いこと観劇してきたつもりだが、今回、新鮮な驚きがあったと同時にこの作品の滋味を感じられなかった自分が情けない。
たぐる
ここ風
テアトルBONBON(東京都)
2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
愛すべきキャラクターが揃っていて、観ていてこういう芝居が一番楽しい。それに笑いのタイミングとセンスが絶妙で飽きさせない。(ふいに挟んでくる小ネタも外れなし)多数の人物が登場するシーンではにぎやかでスピーディーに展開、二人のシーンでは静かにスローで、と緩急も巧い。単なるコメディかと思いきや、終盤ほっこりしたり、しんみりしたり。お薦めです!
ネタバレBOX
亡き父が可愛がっていたイルカの化身の登場や、彼(久右エ門)が一花に(亡き父のコレクションである)貝殻の入った瓶を手渡す辺りはファンタジーの様相を呈しているが物語上の違和感を感じさせない。それはこの物語がすべてを許容し優しく包み込む力を内包しているからに違いない。
たぐる
ここ風
テアトルBONBON(東京都)
2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
しんみりときました。
ネタバレBOX
ほんとうに、自分が、その庭にいるかと錯覚してしまうような、いい雰囲気で話が展開していきました。やや難しくも感じられた全体の個々の人のつながりが、少しずつ明らかになり、つながっていくのは、興味深いのです。人のこころの温かさがしみじみとしみてくる感じでした。まだ、物語が続きそうな雰囲気の中で、これからどうなるの・・・と思わずにいられない中で、終わるのは、なんともいえません。燃焼しきれていないように感じる部分はあるものの、味わい深い感が出てきていいですね。
たぐる
ここ風
テアトルBONBON(東京都)
2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
約2週間前に体調不良で降板が発表された三谷建秀氏。代わりに脚本・演出の霧島ロック氏が浜辺のバーのマスター役を兼ねた。これが流石に何の違和感もないもので、三谷氏バージョンだったらどういう構想だったのか気になるところ。
東京から田舎の海辺の家に独り越してきた元女医・市橋一花(もなみのりこさん)。寺島しのぶを思わせる凛とした独身女性。元同僚(天野弘愛さん)とその息子(岡野屋丈氏)、元患者(はぎこさん)が遊びに来る。更にリョウと云う男に会いに訪れるフリーライター(岸本武亨〈たけゆき〉氏)や勝手に家に入ってくるイケメン久右ェ門(花井祥平氏)。彼女に密かに恋する地元の床屋(?)の斉藤太一氏。記憶喪失のインド人ジョニー役の香月健志氏は最高だった。
何の変哲もない数日間で綴られるのはまさに文学で、作家の創作意図の深さに驚く。誰もが誰かに赦されたがっていて、一体何をすればいいのか判りはしない。けれども何かをせずにはいられない。この物語の全体像が見えた時、観客はこらえきれぬ涙を零す。是非観に行って頂きたい。
ネタバレBOX
はぎこさんは男性役かと思った程ずけずけとした関西弁、痛快なキャラ。ウクレレも巧い。(弾く真似か?)
久右ェ門の由来は『オバケのQ太郎』と『ドラえもん』であろう。リョウが拘る娘に嫉妬し、貝の瓶を隠し沖に出たイルカ。そのせいで海難事故に遭ったリョウを救けられなかった悔い。
前半は設定が雑でキャラもイマイチ跳ねない。ワンシチュエーションに拘ると手詰まりになるのか。なかなか話が核心部に行き着かない閉塞感。それが後半、フリーライターの「自分は蜘蛛を殺したことがないんです。」から、一花が「カンダタ?」となって芥川龍之介の『蜘蛛の糸』に話題が飛ぶ。ああ成程タイトルの『たぐる』とはここから来ているのか!どうしようもなく駄目な屑が地獄の底から這い上がる唯一の希望、お釈迦様のお遊びの蜘蛛の糸。誰かの為に自分を犠牲にすることで少しでも己を浄化出来ないかと夢想。無論今更何をしたところで何一つ取り返せはしない。それでも心は痛み苦しみ何かをせずにはいられない。自分の罪が赦される道筋が何処かにないかと。足掻いて足掻いてのたうち回って死んでいく。パーゴラの下で皆が愉しげに一花とリョウの誕生日を祝う酒宴、それを見ていたのかいないのか、『真夜中のカーボーイ』のように死んでいくフリーライター。彼はリョウに自分自身を仮託して、蜘蛛の糸を手繰る方法論を探っていたのだ。
登場しない亡父リョウが舞台上に確かに浮かび上がる。
筋肉少女帯の『戦え!何を!?人生を!』が流れるよう。
もんくちゃん世界を救う
U-33project
王子小劇場(東京都)
2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
もんくちゃん世界を救う
U-33project
王子小劇場(東京都)
2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
本団体さんは何度か拝見させていただいていますが、少し不思議ででもなんだか心に残る。そんな感じで結構好きです。今回も、不思議な展開のなかで、でも分かりやすいお話が進んでいき、面白かったです。
何待ってんの?
ほっぺ向上委員会
新宿眼科画廊(東京都)
2022/06/24 (金) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
「星灯り〜2022ver.〜」
TEAM 6g
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
この劇団さん,何回か観ているんだけど,いつも思いに溢れて素敵な芝居を見せてくれます。最初から物語に引き込まれ,最後まで途切れることはありません。2時間超ですが,これはすごいです。いくつもの思いが押し寄せるこの観劇は,やはり実演鑑賞じゃないと味わえないんだろうなぁ。とにかくおススメの舞台です。
ネタバレBOX
ラストで客席天井にまで広がる星明りは感動さえおぼえます。
もんくちゃん世界を救う
U-33project
王子小劇場(東京都)
2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
もんくちゃん世界を救う
U-33project
王子小劇場(東京都)
2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
お伽噺「桃太郎」をベースにした作品だが、この噺をどう解釈するかが最初の関門であるのは自明だ。現代の思考傾向に照らせば鬼ヶ島の鬼たちとは、即ちかつて現為政者に連なるような勢力或はイデオロギーに敗れた勢力であり、負けたが故に被差別者として機能させられてきた人々の集団であると捉えられる。鬼即ち邪悪・凶悪であり、勧善懲悪説の悪者である。従って退治されるのは当然である。何故ならその者達は悪に過ぎないからである、と斯様な意識の下どんなに酷い仕打ちを「正義」から受けようが「正義」が批判の対象となることは無い。
上述のような立場から今作を観る者にとって今作は極めて哲学的な作品であると言わねばならない。その哲学が結果的に至り着いている地点は、少なくともサルトルが至り着いた主要な地平の内、最も大切な地平のレベルの1つである。(追記6.27 )華5つ☆
ネタバレBOX
板上の舞台美術は奥に高い段そのセンターから迫り出す突堤のような低い段。高い段の奥の中央に出捌け用のスペースをとって書き割が立てられている。下手の書き割には樹木や太陽が。またホリゾント、側壁にも樹木が描かれ自然を象徴している。上手の書き割にはビルディングに雲が。下手とシンメトリックにホリゾント及び側壁に人工を象徴するビルディング。書き割の手前には大き目の箱馬が1つずつ置かれ色はそれぞれ青と赤。オープニング場面では巨大な桃が突堤の根元真ん中辺りにデンと置かれている。
ちょっと変わっているのがストーリーテラーとして1人女優が登場することであるがこの演出はお伽噺の新解釈を提示する仕掛けとして作家が問題提起する姿勢を示しているようでもある。
さて今作では桃太郎に登場するキャラを3つの属性で示したが、誤解や誤認を避ける為各々の属性に従ってグループ分けしておこう。桃太郎≑もんくちゃん=A、鬼(自己主張できない者達を差別し隷属化して得意になっている者達)≑赤鬼・青鬼=B、犬・猿・雉≑犬井・猿渡・雉谷(優しさや引っ込み思案、自身喪失によって自己主張できない者達)=Cとする。
登場はしないが筆者が想定する為政者(地域内)=D,地域外=E。まず物語の具体的問題提起の主体となる鬼・Bの属性とされる凶暴性や力を背景にCはBに支配され鬱憤を募らせている。おじいさんは、リクルートしたもんくちゃんを旗印として負のエネルギーを集め変容を目指している模様である。文句を言うという一歩踏み込んだ行為を異見・意見を謂うという発想に切り替えた時、C達の反逆は成果を見せた。然し乍ら自らの主体を賭けて真に為すべきことを自分の頭で考えた訳でもなければ、自らその思考の奥の奥迄探索し究極の答えに辿り着いてそのような変革に携わった訳ではないCグループは、必然的に己の位置をも、また社会という人間存在の根底的基底にも触れることなく一種の暴発をしたに過ぎなかった。結果的にその批判は行き過ぎ、瓦解する。当然、Bらはフェイクや情報操作という手法を用い新たな攻撃を仕掛けてこよう。そしてC達己自身では思考というレベル迄到達することが出来なかった者たちは再び元のもんくのカオスに逆戻りするであろう。この経緯を観察していたAは、己の頭を用いて考えることを悉り遂にC達自身をも救い得る唯一の道を見付けることに成功した。その道とは、各々が自ら負った条件の下、その苦境の中で自らの行動、思考、状況や諸関係の検証を為し、その内面に還って自らの自由や生死の問題にも直面。この試行錯誤を経て遂に自由の本質と己の根源的欲求に気付き、自ら自身の選択によってしか成否は決定できないということの意味する所を悉る。このことによってしか、責任を負うことも恥じぬ行いとして自らを生きることも出来ないという人間存在の原義を実践し得る。それがタイトルに込められた世界を救うことの意味だ。
些末的なことを謂えば、Bたちも所詮雇われている弱者であるに過ぎず、恰も自分達の意志や知力でC達に憂き目を見せていると勘違いしているB達を差配しているD達が存在するのが現実であり、そのDを従えている力Eが存在している。丁度我らの味わっている日々の状況そのもののように。だが、今作の提起したAの結論はDにもEにも対抗し得る力なのである。
もんくちゃん役のゆでちぃ子さんが何とも言えないキュートな魅力を発揮しているのは、こういった真の強さを秘めているキャラからであるように思う。
絶対に怒ってはいけない!?
劇団チャリT企画
駅前劇場(東京都)
2022/05/18 (水) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★
チャリT企画特有の「テーマ追求型演劇」の匂いがしない公演だった。今作のテーマが「パワハラ」であった事と関係がありそう。「乱暴な態度・言動」なんてものはどこにでもあり、普遍的だ。映画界、また演劇界のパワハラ・セクハラが話題になっているが、時代の過渡期にあって、パワハラを単純な善悪論で解決しようとするのでは、本質的な解決と限りなくズレて行く気がしてならない。
正しさが蔑ろにされた不透明極まりない政界、霞が関をお上に頂きながら、そこだけスッキリと「善悪」が見え、ある者が批判の的になる状況は甚だ怪しい。
この芝居では、やはり劇団を率いるリーダーの態度が、最悪の結果を招く顛末である。だが断罪型の結論をうまくかわしていて、後味は悪くない。
ネタバレBOX
劇団が今度やろうとしている平和のためのリーディング企画の台本について、やり取りする場面が中盤にある。この中で「戦争」をウクライナ戦争にとどめず、米国による侵略以外の何ものでもなかったイラク戦争にも言及した元台本に対し、知名度の高い客演女優が注文を付ける場面だ。このイラク戦争が、「大量破壊兵器は見つからず、あの戦争は誤りだった。日本はこの戦争を支持した(実際自衛隊を派遣した、が誤りだったとは総括していない)」代物である事をしっかり台詞に入れ込むなどはやはりチャリT、抜かりない。
たぐる
ここ風
テアトルBONBON(東京都)
2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
中盤迄軽めに推移してゆく舞台の雰囲気は、世界中が右往左往してでもいるかのような昨今の情勢で日本人ばかりは相変わらず極楽蜻蛉のような風を装い、その実、内部に有象無象を貯め込み爆発寸前の有様を描いているようで興味深い。後半の展開は、劇団の特徴を示しおとなし目だがちゃんとシリアスも組み込んでくる演出がグー。(追記6.25 20 時)
ネタバレBOX
出捌けは下手手前に1カ所、上手中程に1、手前に1の都合3カ所。下手ホリゾントの壁には葉が茂りその手前に可成り大きなテント。その直ぐ上手に下段は単に階段とし上段には中央にテーブル、周囲に金属製の椅子数脚を置き夏のホテルの一角のような雰囲気を醸し出している。その上手壁際にキッチン等建物に通じる出捌け、これらの客席側が板部分である。
物語は中盤まで軽めのタッチで展開する。現在この屋敷に暮らすのは元かなり腕の良い医師だった一花。間もなく40歳になる。テントの住人は前日此処にテントを張ったフリーランスのライター・瀬能で旅に関するエッセイや御当地のおいしい料理、レストランなどの紹介記事を書いている。ここにテントを張ったのは去年この家の主と知り合って意気投合し、いつでも来て到着が遅かったら勝手に庭にテントを張って良いと言われていたからだ。ところがそう言ってくれた家主は既に亡くなり今住んで居るのは彼の娘にあたる面識のない一花、そこで「怪しい人が居る」と一花から電話を受けた役場の翼がやって来て、丁度魚を突きにゆこうと銛を出した所を一花に見咎められ、煮炊きの為に組んだ竈石を撤去していた瀬能と一騒動が起きた。そこへ一花の親友である明日美、その息子・純、一花に命を救われた鶴がやって来た。久しぶりに集った人々の間に巻き起こる恋の鞘当て、軽い嫉妬やフラレた失望等々が軽いタッチで展開して行き、更に浜辺で評判のレストランから記憶喪失症の店員・ジョニーがデリバリーにやってくる。が、外国人で記憶喪失というジョニーの日本語は、ハチャメチャ。理解し得ぬような変ちくりんな代物。それでも人が集まれば何だかんだと噂話や思い出話が出る。そのようにしてさまざまな伏線が敷かれてゆく。
他に浜辺のレストランのシェフ・島の得意料理はスクランブルエッグ、洋食のコックの腕前はこの料理の味で決まると言われるほど本当においしいスクランブルエッグを作るのは難しいといわれるが、この話題で彼が腕の良いコックであることが明かされる、因みにジョニーの作るカレーが絶品で常連の間ではジョニーカレーの人気が勝っており、2人のコックとしてのライバル意識も見もの。更にジョニーの記憶喪失事情についての詳細も挿入エピソードで明らかに。また、10日程前からサーファーパンツ姿の若くハンサムな九右ェ門という男がこの家に居ついている。彼はいつもサーファーパンツのみの姿で登場し料理が上手く性格も良いので女性、特に明日美には大人気である。そんなシングルマザーの母の恋愛モードに対する息子・純の反応が面白い。だが母の恋する九右ェ門、彼は何かを探していて時々ふいに居なくなる。また一花と彼女の父の誕生日は同じ日で、父と母が別れた理由、一花は父からは愛されていなかったのではないかとの疑念を持つが、父が存命中、心を許した人々とだけ一花の誕生日プレゼントを集めていたことが知らされる。最終盤、総てが収斂される中でで、父の一花への念、死因、九右ェ門の正体なども明らかになって幕。
たぐる
ここ風
テアトルBONBON(東京都)
2022/06/22 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
海のそばの家のパーゴラの下でお茶なんてできたら素敵と思って見ていました。
そんな家を残して亡くなったお父さんと娘を会わせてあげたかった周りの人たちや、娘に助けられた人との関わり合いが暖かくて良かったです。
幹夫が虫か何かをそっと捨てに、いや、運んで行ったなとは思って見ていましたが、蜘蛛だったんですね。
ネタバレBOX
「たぐる」は娘がお父さんの思い出をたぐり寄せる日々を過ごしているからと思っていましたが、なんと蜘蛛の糸をたぐると言う意味もあったようです。蜘蛛の糸を信じて蜘蛛は決して殺さないと言っていた幹夫ですが、あのラストが気になりました。
ゴンドラ
マチルダアパルトマン
下北沢 スターダスト(東京都)
2022/06/15 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
旧ユニットでは1、2度、新ユニットでは短編を一度観たのみで久々に池亀作のまとまった芝居を観た。丁寧な作りに少し感心。「為にする」要素を感じさせない台詞と自然な演技を楽しんだ。
ネタバレBOX
田舎に引っ込んだ男は父の介護をしており、就職もしていない。時々妹が夕飯を作りに来る。そして彼が関心を寄せるヘルパー。三人はゆっくりと進む時間の中で、徐々に、まるでそこに居る者同士が助け合わねばならない宿命でもあるように・・ゴンドラに乗り合わせた者同士のように・・見えて来る。別の展開へ進んでも良いのだが作者はこの男を見守り、エールを送る。突き放すが見捨てない、といった所か。距離感が良い。
ナイゲン(2022年版)
Aga-risk Entertainment
駅前劇場(東京都)
2022/06/21 (火) ~ 2022/06/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「自主自律」とは何かというガチガチに固いテーマを、徹底的に高校生目線でバトらせる面白さ!練られた脚本と巧みな展開、豊かなキャラクターに最後までぐいぐい惹きつけられた。議長と監査委員長の進行が素晴らしく、会議の2時間で登場人物たちの成長が見える。この文化祭に行ってみたいです!
ネタバレBOX
2006年の初演以来劇団も再演を重ね、また多くの団体によって上演され続けている
“演じたくなる脚本”に興味津々で初めての観劇。
これが本当に素晴らしかった。
●~○~●以下ネタバレ注意●~○~●
開演と同時に、生徒たちが次々と登場、
舞台上に並んだスクール形式の机を、コの字型の会議形式にしていく。
これから始まるのは伝統ある「ナイゲン」、内容限定会議だ。
県立国府台高校の「自主自立」も今は形骸化して、
唯一文化祭のための会議「ナイゲン」として生き残っている。
1年生から3年生までの合計9クラスの代表がそれぞれの発表を終え
「あ~終わった」感が漂う教室にとんでもないニュースが飛び込んでくる。
9クラスのうち1つだけ、学校が参加を決めたキャンペーンにのっとり
環境問題をテーマにしなければならないというのだ。
「うちわを配布し、定期的に打ち水をし・・・」というイベントを引受ければ
自分たちのクラスの出し物は実施出来なくなる。
焼きそばを、アイスクリームを、縁日を、演劇を諦めることになる。
クラスの期待を背負う9人の代表は、
生き残りをかけて壮絶なつぶし合いを始める。
ここからのつぶし合いの“ネタ”が秀逸だ。
“似たような店だから一方は無くなってもいいんじゃね?”
“1年生は先があるから我慢するべきじゃないか”
“時代劇で似てるから演劇ひとつ減らしてもいいんじゃないか”
“その場所で水とか使うのってダメなんじゃないの?”
等々の案が出て、その都度挙手によって採決がなされていく。
様々な思惑から、採決の度に潰されるクラスは変わって行き
会議は嵐の中の小船のように波にもまれ翻弄されていく・・・。
幼さとしたたかさをフル回転させた高校生の泥仕合が演劇的にどハマリ。
進行役「議長」と「監査委員長」が会議の要となっているが
やがて形式的な立場から、会議の行方を大きく左右する行動に出るのも面白い。
各キャラクターの豊かな造形が不自然さを感じさせない辺りが巧みで
時にオーバーな芝居も、ムキになると暴走するあの世代らしさが出る。
一体どう折り合いをつけるのかと思っていると、あの結末だ。
正論を吐く一人の反乱が会議を硬直させ、タイムリミットを目前にして
追い込まれたメンバーが必死になって手繰り寄せたアイデアが素晴らしい。
さっきまで潰しのネタに使ってきたワードが、一転して救いの神になる。
全員の気持ちが真っ直ぐ伝わって来て
泣くような話じゃないのに、議長の表情に涙があふれた。
みんな最初はチンタラしてたのに、この2時間で大きく成長した。
そして観ているオバサンも、今さらだけど成長したと思った。
素晴らしい脚本と全員熱演、ありがとう!