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act#015『夢を盗みて』

act#015『夢を盗みて』

STAR☆JACKS

ABCホール (大阪府)

2022/06/17 (金) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ほんと素敵な舞台でした。
ほぼ3時間の長丁場。飽きさせることなく、ストーリー・演出・殺陣・ダンスパフォーマンス・プロジェクター効果、どれをとっても素晴らしかった。
誘って連れてきた友人も、「東京公演もせず、大阪だけで終わっちゃうの?これだけクオリティの高い舞台なのに、もったいない」との感想でしたよ。
次回公演も楽しみにしています。

ゴンドラ

ゴンドラ

マチルダアパルトマン

下北沢 スターダスト(東京都)

2022/06/15 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「黄色いゴンドラ」ヘルパーさんにこの態度では私なら担当変えてもらいたくなりますね。見かけも相待って危なそうじゃないですか?でも彼女は鈍いんだかなんだかあまり気にしていなさそう。噛み合わなかったり、途中で話が斬られてしまったりですが、現実の会話でも結構ありますよね。それをわざわざ書くというのにはあまり出会いませんが。観覧車を人生(あるいは恋)に例えるのはすごく共感できます。私も集合住宅の窓の一つ一つが(特に夜は)気になるたちです。
他のゴンドラも気になります。キャストが変わるとどうなるのか。見てみたいですね。

いきなり!エンプティ!

いきなり!エンプティ!

にちようび企画

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2022/04/29 (金) ~ 2022/05/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

千秋楽観劇。
絶望の淵の2人がホームで出会い…
偶然か?必然か?かけ違えたボタンは?
二重三重四重に巡らされた伏線が見事に回収され、何故か弁当で涙が…

素晴らしかった!
今まで脚本を買った事ないが、スピンオフも読みたくなった!
良かった!



と、言うことで…
今まで、脚本を買った事かなかったのに、買ってしまった!
A5サイズで全578頁。
内、今回の脚本は125頁で、残りはスピンオフ・小説という、大ボリューム!
読み応え半端無し!
GWはこの世界に浸りました。

ゴンドラ

ゴンドラ

マチルダアパルトマン

下北沢 スターダスト(東京都)

2022/06/15 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

『黄色いゴンドラ』

凄い才能。ウォン・カーウァイの登場時みたいな。触れるもの皆黄金に変わり、未だ誰も観たことがない作品世界の扉が開かれる。
よくある設定の三人芝居なのだが、辿り着く到達点に驚く。一体ここは何処なんだ?数十分の観劇(しかも初日2000円!)で相当参った。これは是非観に行った方がいい。コメディとしても秀逸。

山本直樹のエロ漫画みたいな開幕で、東京から田舎の実家に帰ってきた無職引き籠もり駄目男(坂本七秋〈ちあき〉氏)が寝たきりの父親の訪問介護のヘルパー(小久音〈さくね〉さん)に恋をする。その女性は天然?というかかなり頭が悪く、会話もなかなか成立しない。これシナリオなの?と驚く程、自然に間の抜けた噛み合わない会話のラリー。駄目男の叶わぬ恋模様かと思いきや、全くそんな話ではない。宇宙論だ。

ネタバレBOX

小久音さんは若い頃の宮崎美子を薄幸そうにしたような美人。会話のセンスが抜群で、これを書いた作家は天才だ。「ん?」の使い方。
坂本七秋氏は典型的な駄目っぷり。「ああ、これは駄目だな・・・」と誰もが哀しげに溜息をつく。その駄目さ加減が段々と笑えなくなり、みんな己の分身のように愛おしく感じていく。
ズレた二人の間に理性として突っ込みを入れるファミレス勤務の妹(富山華佳〈はるか〉さん)。飼い犬はダークネス号(ダーク)、カワウソはウソツキ(ウソちゃん)。地に足の着いた現実に生きている者の声を聞かせてくれる。

多分キーになる話が母親に関する“何か”なのだろう。「妹と並んで乗った観覧車、向かいの席の母親の顔が逆光で思い出せない」と主人公は語る。「貴女に母に似たものを感じた。だから一緒に観覧車に乗ってくれませんか」と。
妹も「母の死の時、兄が私を守ってくれた・・・」と涙ながらに“何か”に触れる。それはマクガフィンで存在しないものなのだろうが、この物語の底流に流れ続けている。

『ブロック宇宙論』とはそもそも時間など存在しないと云う理論で、「過去・現在・未来が今全て同時に存在している」と云う考え方。この考え方だと仏教で云う因果律が成立し得ない。主人公は自分を駄目にした“因果律”にがんじがらめになっていたが、ふとそこから自由になる。ほんの少しだけ。
短編『気高きジュエル』

短編『気高きジュエル』

劇団グラスホップ

イカロスの森(兵庫県)

2022/04/30 (土) ~ 2022/05/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

千秋楽観劇。
暗黒の世界で垣間見る人の温もりが優しい2つの短編。
泥棒やら怪しい商売やら、妖しい感じのお話でしたが…良かった!
卒業の4年後で集った劇団さん、好きな役者さん多数、応援してる。

■琥珀の蟻
地に這いつくばり、懸命に生きる兄姉弟分の絆が眩しく清々しい。

■瑠璃の林檎
命張って勝ち上がった者達が、窮地で見せる本音が優しい。

act#015『夢を盗みて』

act#015『夢を盗みて』

STAR☆JACKS

ABCホール (大阪府)

2022/06/17 (金) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

派手なオープングから心掴まれた!
ストーリーも泣かせます。

ABCホールの舞台を所狭しと動きまわって殺陣を魅せる!
久しぶりのエンタメを堪能!
最高でした!
拍手が止まりません。
楽しく贅沢な時間でした^_^

『橋の下のガタロ』『川向う』

『橋の下のガタロ』『川向う』

劇団未来

未来ワークスタジオ(大阪府)

2022/05/27 (金) ~ 2022/06/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

『橋の下のガタロ』
嫌われ者ガタロと村娘せつとの友情にほのぼのしつつ、言われなき差別、友との別れに涙!

『川向う』
川向うの部落との合併に揺れる村で、結婚に反対する母に娘は…
いつまでも変わらない社会を嘆きつつ、親子の力強さにエール送りたくなる作品。

いずれもマイノリティへの差別を扱った演目でしたが、演技に裏打ちされた、見応えのある公演でした。
感動した。良かった。

創立60周年おめでとうございます。
今回の記念公演No.1に続く、記念公演No.2も期待してます。

電鉄

電鉄

第2劇場

大阪大学(豊中キャンパス)(大阪府)

2022/04/23 (土) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

楽日観劇。
彼岸と此岸を繋ぐ電気鉄道。
そこに乗ってはいけない乗客が…

ルールや固定観念に縛られずに生きる事の大切さを指し示す?!感動巨編じゃなく、ポップな感じに(半ば強引に)背中を押してくれる。
新歓公演らしい、前向きな公演でした。
理由がバカバカしいけど…愉しかった。

「なんとかなる」 やったった【ver】どもならん【ver】(二本立て)

「なんとかなる」 やったった【ver】どもならん【ver】(二本立て)

春風

イズムスタジオ(大阪府)

2022/04/22 (金) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

『なんとかなる どもならん【ver】』中日観劇。

本番2日前、2日前に窮地を乗り越え、完本した筈が…
未完の本を手に練習を始める劇団員。本番は明後日だぞ!

どもならん状況、怒りは沸点を越え、きしむ不協和音!
人の不幸は蜜の味、パニックコメディ、愉しかった。

「なんとかなる」 やったった【ver】どもならん【ver】(二本立て)

「なんとかなる」 やったった【ver】どもならん【ver】(二本立て)

春風

イズムスタジオ(大阪府)

2022/04/22 (金) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

『なんとかなる やったった【ver】』中日観劇。

本番4日前、行き詰まった脚本家は、5人の知人を呼び寄せ…

幻の脚本家がツボでした。海苔が良い。
個性的な女性たちの戦い、愉しかった。
弾語りギターの調べもしみる。
最後、筆を走らせるシーン、ホッコリして良かった。

小さな空間でのアトリエ公演、結構好きです。

無人有人

無人有人

劇団ちゃうかちゃわん

大阪大学(豊中キャンパス)(大阪府)

2022/04/21 (木) ~ 2022/04/23 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

千秋楽観劇。
自販機にまつわる3つのしっちゃかめっちゃかオムニバス!

■ハッピーヱンド
アンデスの奥の手前、各種飲物の自販機を…

■悪魔の契約
悪魔と天使の攻防の末…

■夜勤、追憶、チーズケーキ
代替業的な…で、もはや混沌!

若干、支離滅裂気味だが…
有象無象でいと楽し。愉しー。

虹の境界線

虹の境界線

中央大学第二演劇研究会

シアターブラッツ(東京都)

2022/06/16 (木) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

劇場での学生さんの演劇であり
いろいろと技術的な感じは特に言することは無かったけどー
話が学生さんらしいサラダデイズな感じで
いま一つだったかなぁと感想
タイトルに関わるネタも作中には見つけられなかったし・・・
次回に期待かなーと思ったデス

ネタバレBOX

サイコパスみたいな作品世界風に
自分の才能とかがDNA検査とかで判明する世界で
音楽に才能が無いと通知されつつも
音楽で身を立てたいとあがく無職の彼氏さんが
仲間の成功とか確執とか友情とかにもまれてく話
うむ 王道でありきたりだなーと感想
いやもう サイコパスな世界みたく
本人が反社会的な行動も言動も無いのに
検査で将来の反社会活動が予測されました=で
社会からデリートみたいなイッチャッタ世界でも構築すればよいのに・・ねぇ
温いです~セントールの悩み みたく根っこはデスだが
表面はぬる~い感じと狙っても とかも思えたデス

で主人公の彼は
就職を目指すも~音楽関係という
何というか無難な路線狙ってーの60分の作品でした
あかあか

あかあか

ゆうめい

川崎市アートセンター アルテリオ小劇場(神奈川県)

2022/05/28 (土) ~ 2022/06/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/05/29 (日) 13:00

画家だった祖父・俳優の父・劇作家の息子という作者自身の三代をモデルにした「私戯曲」系。
冒頭から「音声解説」と自称する父のナレーションが流れ、以降も随時舞台上での出来事を補足説明する手法が独特にして効果的。ヘタに説明台詞にするより開き直って(?)こうした方が潔いしワカり易いという。
また、「弟兄」でも使ったキントーン(バーがないセグウェイ)の登場にニヤリ。

【cocktail:Gypsy】-カクテル:ジプシー-

【cocktail:Gypsy】-カクテル:ジプシー-

竹内尚文プロデュース

エビスSTARバー(東京都)

2022/06/17 (金) ~ 2022/06/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

舞台の中にバーを作るのではなく実際にバーの中で演劇を創る意味を感じられる作品です。たくさんの伏線のある作品なのでいろいろネタバレになってしまいそうだから、あんまりしゃべれないのですけれども・・・。キャスティングに妥協がなくて、どの役もこの人しか考えられない方が演じられています。芝居を観ることはありますが、自分が芝居の中にいるような感覚はなかなかに味わえないと思うので、見るのを迷っている方がいましたら背中を押して差し上げたいです。

本谷有希子の『マイ・イベント』

本谷有希子の『マイ・イベント』

劇団、本谷有希子

サイスタジオコモネAスタジオ(東京都)

2022/06/17 (金) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

公演2日前に上演を中止をして、代わりに急遽本谷さん本人が一人芝居を演じることに。
最初、映像をバックにした朗読から始まったので「なんだ、朗読形式でこのまま最後まで行くのかー」とがっかりして、でもまぁ急場しのぎだから仕方ないか…とあきらめていたら、さにあらず。五反田団のような手作り感溢れるセットを立体的に使ってきっちり仕上げてきた。臨場感あって引き込まれた。

どこまでが黒田大輔さん&安藤玉恵さん上演用にこしらえたもので、どこからがひとり芝居用の特別仕様なのか、分かる術は最早ないけど「ここは黒田さんだったら」「このシーンは安藤さんなら」などと、どうしても想像してしまった。とても面白い脚本なので、いつか黒田&安藤版を観てみたい。

ゴンドラ

ゴンドラ

マチルダアパルトマン

下北沢 スターダスト(東京都)

2022/06/15 (水) ~ 2022/06/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

赤いゴンドラ観劇。回りくどい話し方をする兄にイライラしながらもヘルパーさんのちょっとズレてる感じに癒されました。兄思いの妹が一番大変だなと。話が進むにつれ、兄の変化が良かったです。

ネタバレBOX

実際に兄のような人がいたら担当変わってもらうなと思います。
小刻みに戸惑う神様

小刻みに戸惑う神様

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2022/06/15 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

開幕と同時に既視感。ジャブジャブサーキットで観たやつじゃん。題名で気づかなかったの?と自問。「いや最近は一度中止になってタイトルだけ知ってる公演多いし」と自答。妙な形の初SPIRALMOON体験になってしまった(と言っても、はせ作品だから観に行った訳でもあって、仕方ないのであるが)。
しかし芝居はジャブジャブ版より緻密な演技・演出で、はせ作品特有の「如何にも伏線/如何にも回収」、いやそこまで求めてないよ的意味深場面や台詞が、この舞台では漂白され、じんわりリアリティさえ醸して来る。(幽霊は別にして)現実にあったら「奇譚」の類が、あり得る話であるかのように収まり、(死者の面影、ではないが)舞台も余韻を残した。

恭しき娼婦

恭しき娼婦

TBS/サンライズプロモーション東京

紀伊國屋ホール(東京都)

2022/06/04 (土) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

衝動買いでチケットを取って観劇したが、体調すぐれず(が原因で)3、4場あたりで寝落ち。フレッド父(町議員)と娼婦リッジーの会話の最後あたりで覚醒した。後の展開から推せば、空白の間にリッジーが「言いくるめられ」、後に良心の呵責に悩む原因となる出来事が発生している。
「どう言いくるめられたのか」が抜けており、終演後も不十分感が残ったので後で戯曲に目を通せば・・
なかなかの中身が詰まっていた。わあわあと台詞が鳴っているのは聞こえていた(言葉の意味が全く入って来ないが)ので、少しの間かと思えば、三場がまるごと抜けていた(二場の途中で眠り、四場の終り頃=長議員の言葉にリッジーが言いくるめられる場面で目覚め、休憩となった)。

という訳で、戯曲から、舞台をある程度再構成して照合してみた。演出が何等かの狙いを定めて舞台を取りまとめた印象はあるが、それが何か。。
古典と言える小編(同作者の「アルトナの幽閉」の半分程度の尺か)の栗山演出舞台の印象は、かなり大雑把に言えば、栗山氏の自発的な仕事というより「請負仕事」、奈緒の持ち味をどう生かして「恭しき娼婦」を成立させるかに腐心したと見受けた。

冒頭、ミュートでつぶしたトランペットが鳴り、時刻不明の外明かりに目覚めたシュミーズ姿のリッジーをけだるく彩る。娼婦リッジーの「生態」に照準が当たるドラマかと思わせる。
が、これ以降「娼婦」が焦点化される事はない。娼婦である事による必然の展開はあるが、彼女が娼婦である事により「何者」であったのかが炙り出されて来るようなドラマではなく、黒人差別が猖獗を極めるある土地の「真実」を伝えるのに娼婦である必要はなく、(戯曲の問題なのか演出の問題なのか)どちらを軸に据えたドラマなのかがくっきりとは伝わって来なかった。

ネタバレBOX

主人公のリッジーは天涯孤独の身で、一日前にこの町の駅に降り立ち、この部屋を契約した。普通ならこの娼婦が新しい町で商売を始める事になったいきさつに関心が向きそうだが、作者は観客の関心をそこに止めず、事態の推移へと振り向けさせる。

冒頭の彼女がけだるさを振り払い、掃除機でガーガーと掃除を始める。そこへ男が訪ねて来る。窮迫した様子で彼女に救いを求める台詞から、彼は「黒人」であるらしい(この時点ではこの作品がサルトルの母国フランスの話だと思っていたので、黒人=アルジェリア人で民族独立に絡む話だと想像してしまった)。
彼は昨夜、列車だか駅で白人女を強姦したという嫌疑で追われる身となった黒人の一人だという。列車に居合わせたのがリッジーであったので、彼の無実を証明してほしい、というのである。
売春婦の身でしかもこれからこの町で暮らそうという矢先の厄介事は御免だと、彼女は断るが、既に絶望的な事態であると彼は嘆き、裁判になったら証言してほしいと泣きつく。リッジーは「分った」と返事をする。ここでの彼女は口先だけでなく彼の言葉に少なからず説得された要素がある。(ちょうど逆の事が、同じ日の後に起きる。)
男が出て行った後、リッジーはシャワールームのドアに「もういいわよ」と声をかける。一夜を過ごした客、フレッドは先の黒人の「事件」と無関係ではない事がその後判る。フレッドは町議(戯曲では上院議員)の息子であり、地元では名士の家柄。従弟が黒人の片割れを酔って銃殺したというのが実は前夜の事件であった。
ここでの伏線は、フレッドが予想外な事にリッジーを気に入ってしまった事。家柄ゆえに女性経験の乏しかった男が、初めての女性に熱を上げるケースにも見えるが、彼はこの町ひいてはアメリカの歴史を担った家系の末裔であり、やがて政界に進む宿命に自負を抱いている。家系を重んじるフレッドは、リッジーが黒人「事件」に関係している事を知っており、それで近づいた訳でもあったが、「心」を奪われた(らしい)事が彼の計算外であったと後の場面で判明する(そのように装っているだけ、と解釈する事も可であり、リッジーの目線ではどちらに解釈しようが結末は同じである)。

私が見逃した三場は、警官が訪れ、黒人を匿うことに釘を刺し、あった暴行を正直に証言せよと迫る。だがそこには「結論ありき」の強引さがある。そこへ姿を現わすのが、先のフレッドの父である。老獪な彼は、「嘘の証言をさせるつもりか」と警官らを牽制し、彼女に「正直に」発言する事を勧める。だがその後、巧みに彼女の態度を変えさせる。彼女の弱点(家族がいないこと)に突け込み、彼の妹すなわち銃殺したフレッドの従弟の母親のはリッジーに感謝し、花束を贈るだろう事、きっとリッジーを家族同然に扱うだろう事を芝居心たっぷりに喋くるのだが、リッジーの脳裏に自分には手の届かなかった「家族」の風景が花咲き、思わず「証言書」にサインをしてしまう。直後、我に返った彼女は町議を呼び止めるが時すでに遅し、というのが「まるめこまれ」の場面であった。

(続きはまた。)
『器』/『薬をもらいにいく薬』

『器』/『薬をもらいにいく薬』

いいへんじ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2022/06/08 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

一度短編をチラ見した程度で、実質初観劇のユニット。完売のため当日並べる日を選んで「薬」を拝見した。
観客の忍耐力を当て込んだ間合いたっぷりの場面と、絶妙な跳躍とのバランス、状況の全てが判らなくともふいに胸を突く台詞があったりと、好感触であった。全体のバランスという事では冒頭、中程、終幕で流れる「如何にも・らしい」ラジオ番組が良い背景になっていた(声:松浦みる/野木青依)。放送は一方通行で完結しているがだが、ドラマのトーンと微かに近似性があり、ミクロな世界に「世間」という裏打ちを与える。
主要人物を演じた三名は「だんだん見えて来る」人物像を形象し、引き込まれるものがあった(特に「全部見えちゃってる」ハヤマのキャラ)。

ネタバレBOX

ラジオ番組を織り込んだ典型と言える秀作は、自分としては20年前に黒テントが上演した「メザスヒカリノサキニアルモノ、若しくはパラダイス」という松本大洋による書き下し。これに楽曲を提供した荻野清子がラジオパーソナリティを演じ、夢うつつを行き来するような芝居を締め括る。
真似が絶対に出来ない奇跡のような舞台(と自分は思っている)は、ラジオというアイデアに依る所大で、今回の「薬・・」もラジオの貢献を思う。
朗読ユニットさざなみ第二回日本公演in東京

朗読ユニットさざなみ第二回日本公演in東京

朗読ユニットさざなみ

金王八幡宮(東京都)

2022/06/19 (日) ~ 2022/06/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 何れの演目も作品への深く的確で繊細な読み込み、解釈、そして演者の力量を示して見事である。(華5つ☆)僅か2日間、3回のみの公演だったのが残念。尚ネタバレに書かなかったが、中国で愛唱される「茉莉花~ジャスミンの花~」の歌唱と演者が出した中国の話から出来たとされる熟語を当てるクイズ等も間に催された。

ネタバレBOX

朗読ユニットさざなみ第二回日本公演in東京 2022.6.19 14時 金王八幡宮
 公演は渋谷の金王八幡宮の和室二つの間にある襖を取り払い、演者は社の庭から登場、板部分は庭に面した廊下を使用。和室と廊下の間は障子でし切られているが、登場時に間髪を入れずに開かれ敷居には点綴された光の帯。第一部では下手に朗読する役者、上手にフルートとギターの生演奏を担当する演者。天気も良く庭の緑が映えて気持ちが良い。下手裏には一枝に一重と八重の花が混じって咲くことで有名な金王桜が生えている。この桜の名の由来である金王丸は、鎌倉幕府を樹立した頼朝が金王丸の名を遺す為に鎌倉から移植させたと伝えられる。
 さて、朗読をする役者・中瀬古 健くんの紹介から始めよう。Covid-19の影響で現在、ユニットの相方は中国在、健くんは中国に戻れない状況が続いている。今回演出をなさった望月 六郎さん主宰のドガドガプラスに出演していたので御存知の方があるかも知れない。因みにこの夏、7月30日~8月5日まで「金色夜叉・改」を、また8月19日~8月25日まで「春琴SHOW!!」を浅草東洋館劇場で連日19時から開演し、中瀬古くんも出演予定だ。実に華のある役者なので観劇をお勧めする次第である。以下本日の演目、間に10分の休憩を挟んだ公演で上演時間は100分弱。
 しょっぱなは、宮沢賢治の「どんぐりと山猫」朗読:中瀬古健 演奏:夜ヒル子 以下同
 賢治童話に登場する様々なキャラクターの声音を総て別の音域、声調、テンポで表現し而も賢治が多用するオノマトペもこの役者の想像力の働きによって実に納得のゆく音として造詣するので臨場感が物凄い。一郎はオルフェウスの如く詩人の特権である物や動植物すらをも魅了し精神感応を為すことができた為、ヤマネコやリス、樹々や草などとも会話を交わすことができるが、その人類の夢が恰も現在するかの如く立ち現れるから凄い。
次に中国唐代の女流詩人・杜秋娘の「金縷曲」を新宮出身の佐藤春夫が訳した「ただ若き日を惜め」を中国語と日本語で朗読。
 更に佐藤春夫が幼い女の子の様子を描いた『「の」の字の世界』を朗読。これは面白い作品でうたちゃんは、賢い子なのだが絵本等を与えても字を読まずに自分で勝手な物語を創作してしまい全く文字に関心が無い。これでは文字を覚える訳が無いと最初に「の」の字を一つだけうたちゃんと関連づけて覚えさせ、本でも新聞でも「の」を発見させる。うたちゃんは文字のみならず、カタツムリや庭で見つかったミミズが偶々「の」の字の形になっていたことから「の」という形に見えるもの・ことは総て「の」というコンセプトで統一し思考し始める。このことの面白さ、奇天烈、困りごと等が夜ヒル子さんの歌にも載り健くんの朗読と響き合いながら展開する。
休憩(10分)
第二部
 思えば日清日露以降日本は諸外国と戦争ばかりしていた。そんな年中戦争の時代に最も日本の為す戦争を冷徹に観ていた作家が居る。それが太宰治であろう。その太宰の「葉桜と魔笛」の朗読である。金王桜を下手裏に控えながら、中性的な雰囲気を持つ美形俳優の中瀬古くんが為す朗読は狂おしいほど切なく哀しい。太宰の独特の文体、読者と作家だけしか居ない世界を朗読を通して実現することのできた稀有な公演と言えよう。
 尚、第二部で楽器伴走は無い。

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