最新の観てきた!クチコミ一覧

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にぶいちの失明

にぶいちの失明

山田ジャパン

新宿シアタートップス(東京都)

2022/11/03 (木) ~ 2022/11/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

軽いノリや随所に笑いがあるが、内容は実に重いスポーツ事故。事故による、それぞれの環境の変化や登場人物達の葛藤が狂おしい程に伝わる。加害者、被害者とは単に言えない事故で、それぞれの心情を簡単には推し量れない。個々の言い分や考え方はどれもが分かるだけに観ていて辛くなる程で、役者さんも皆熱演で素晴らしい舞台でした。

Machi Note マチノオト

Machi Note マチノオト

演劇ユニット思考動物

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2022/11/03 (木) ~ 2022/11/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

未見の団体…「Machi Note マチノオト」は「街ノート」と「街の音」というWミーニングのタイトル、そして街の風景を撮った写真が美しいフライヤーに興味を持った。その直感は見事に当たり、面白く そして考えさせる内容であった。

コロナ禍を正面から捉えた物語であり、このようにストレートに表現した公演は初めてである。コロナ禍の光景を地域(コミュニティ)ラジオ局の放送を絡めながら点描する。物語は大きく4つの話を交錯させ、その街に生きている人々の暮らしを繊細に紡いでいく。演出は丁寧で、例えば もりかつ亭の引き戸の音と喫茶店の開き扉の音(ドアベル)を違えるなど実に細かい表現をする。そこに観せるといった工夫を感じ好感を持った。

少し気になったのは、演劇という「額縁」の中を観ているようで、生活臭というリアルさが弱く 十分伝わらないのが残念なところ。演技力の問題なのか、行儀(整理)よい展開なのかはっきり分からないが、何となく客観的な観せ方に止まっていると思う。もっと突っ込んでコロナ禍に起きた出来事=今まで経験したことがないような事をリアルに描いてほしかった。物語でも密閉・密集・密接という三蜜を避けるような場面ー市民文化祭ーがあったが、従来の緊密・親密・濃密という人付き合いも大きく変化した。街の人々のリアルな思いがもう少し感じられれば…。

それでも、コロナ禍における街風景の変わりようは解る。未見の団体であったが、思考する姿勢は志向をうかがわせる好公演であった。
(上演時間1時間50分 途中休憩なし)

ネタバレBOX

舞台美術は、上手にラジオ局放送ブース、下手には もりかつ亭のカウンター、中央は2つのテーブル席、そして近くに入口を表す暖簾が掛かっている。勿論、カウンター席にはコロナ感染防止用のアクリル仕切版が立ててある。

ラジオパーソナリティ柴崎あかり が街の人々をゲストに招き、時々のトピックを聞き紡いでいく。次のような話がオムニバスではなく、同じ地域、コロナ禍という同じ状況下で並行または交錯して展開していく。そこには特別な人々ではなく、庶民の暮らしが描かれている。ただ新聞やTVで紹介されたような出来事を表層的に並べた、といった感が拭えないのが残念なところ。

第一話は、もりかつ亭とイベントヒーロー〈カーブマン〉の話。
イエロー、レッド、ピンクの衣装を着た3人組は、イベントでよく見かけるヒーローショーで街興しに一役買っている。イエローは、亡父が遺してくれた もりかつ亭2代目、レッドは彼の幼馴染、そしてピンクは小学校教師だ。イベントも減り、もりかつ亭も営業時間の自粛で経営が厳しい。

第二話は、街〈皆川市民〉文化祭をめぐる話。
コロナ感染防止の観点から開催を見送ろうと主張する人々、一方 Zoomや展示といった工夫で市民交流を図りたい人々の対立を観せる。どちらの主張も正しく、街の活性化に対する思いと苦慮が描かれる。新しい取り組みは苦手で抵抗感がある。もしかしたら、コロナ禍が発想の転換を推し進めたかも知れない。

第三話は、小学校(教育現場)におけるコロナ禍の影響。
中央のテーブルを離し、職員室の机に見立てる。子供達(人形操演)へは、クラブ活動(太鼓の練習)の中止、六年生を送る会では密にならないように、といったコロナ以前とは違う取り組みを強いる。子供、教師とも精神的な負担は大きい。

第四話は、かぶ農家ー地域生産・地域消費による生活防衛の話。
コロナ禍との直接的な関係は弱いが、もりかつ亭の食材に繋げる巧さ。2代目は、父の味を踏まえつつ、自分の(独自)味を模索している。同時に、テイクアウトといった営業努力を描くことによってコロナ禍へ繋げる。単にコロナの影響だけではなく、よく聞くシャッター商店街を意識した街の活性化を描くことによって、物語に広がりを観せる。

演出は、フラダンスやヒーローショーという動き、ラジオ番組で流す音楽、そして先に記した人形操演等、多彩な観せ方で観客を飽きさせない。全体を通して 真摯な印象、優しく心温まる公演であった。
次回公演も楽しみにしております。
ラビットホール

ラビットホール

劇団昴

Pit昴/サイスタジオ大山第1(東京都)

2022/10/28 (金) ~ 2022/11/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

小竹向原のサイスタジオコモネは二度訪れたが大山駅傍のサイスタジオ大山(Pit昴)は初めて。遠い土地(しかも大山駅下車は鬼門)の初訪問は臆するが、行ってみれば駅近でアクセス良しであった。
同作は今年2月のKAAT公演(小山ゆうな演出)を既に観て「満足」だったので迷う所であるが、戯曲の良さに鑑み観る事にした。昴では以前見逃した「八月のオーセージ」(これもケラ演出版を観て気になっていた)が好評だった事も頭の隅にあった。パンフを見るといずれも田中壮太郎氏演出であった。
実はこの人の演出作品を一度観たい、というのも念願ではあった(2020年3月日本工学院演劇科卒業公演は氏の演出舞台、初の工学院、しかも見逃してい川村毅作「エフェメラル・エレメント」という事でワクワクの三乗だったがコロナで流れたのは今もって悔しい..!)。
舞台は期待に違わぬ逸品であった。緻密で鋭さがあるがどこか大らかな要素もある。舞台はこの劇場を横に広く使い、長い楕円の盆に乗せた格好、客席はその楕円に沿って囲む形で一列に並び、隅の方だけ二、三列という組み方。中々の臨場感である。
大きな劇場での小山ゆうな演出版との違いは、もちろん第一には起用俳優だが、例えば、難しい「感情の動線」を要求される妻役の感情表出の仕方は、演じた役者の数だけ正解があるのかも(昴はあんどうさくら、KAATは小島聖)。
KAAT公演が優れていたと感じた部分もある。この戯曲が優れているのはこれを書き込んだ事によるとも言える繊細な場面で、その人物の造形あるいは見せ方(相手役にどう響いているのか)の点でKAAT版は
飲み込みやすかった。ただ、儚く痛々しい人間模様をより赤裸々に彫り出したのは昴版であったと思われ、全体のバランス上の問題であったかも知れぬ。

にぶいちの失明

にぶいちの失明

山田ジャパン

新宿シアタートップス(東京都)

2022/11/03 (木) ~ 2022/11/13 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

グッバイ ロビンソン

グッバイ ロビンソン

トツゲキ倶楽部

「劇」小劇場(東京都)

2022/10/26 (水) ~ 2022/10/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/10/28 (金) 14:00

全地球的に特殊な状況に陥ってしまった世界の中でも仕事やら何やら「日常生活」を続ける人々……が、彼らにはそれぞれ悩みや迷いがあり、な物語。
公表されているあらすじからSF系かと思いきや実はしっかりした人間ドラマ。そして「ひたすらポジティブ」な落としどころとその後の幕切れが何ともステキ。
また、劇中の「あの設定」は実はイマの世の中の「アレ」の隠喩ではないか?と思って大いに納得。
今を生きる我々へのエールと提言、しかと受け取りました♪

今貂子舞踏公演「彗星」

今貂子舞踏公演「彗星」

舞踏カンパニー倚羅座

アバンギルド(京都府)

2022/11/03 (木) ~ 2022/11/07 (月)公演終了

満足度★★★★

舞踏を初体験。観るもの全てが凄かった。半分以上が外国人で、最後はブラボーの連呼。アート🎨なんだろう‼️

如月葵芸能事務所

如月葵芸能事務所

株式会社ALL GREEN

シアター・アルファ東京(東京都)

2022/11/03 (木) ~ 2022/11/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白かったです!
ストーリーが分かり易く、肩肘張らず楽しめる作品でした。
役者さん達は個性的なキャラクターを好演していて、みな良い味を出していました。
笑いあり、涙あり、感動あり、芸能界の裏を覗けた気がしました。
楽しい時間を過ごしました。大満足でした!

Heart of Stone

Heart of Stone

DANCETERIA-ANNEX

大倉山記念館(神奈川県)

2022/10/24 (月) ~ 2022/10/27 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/10/26 (水) 15:00

やっぱりダンテリは演出、脚本が唯一無二で面白い。他では観ることの出来ない舞台があると思う。
毎回の公演が、さらに楽しみになってきた。

猫、獅子になる

猫、獅子になる

劇団俳優座

俳優座劇場(東京都)

2022/11/04 (金) ~ 2022/11/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

30年以上引きこもっている人間は、
引きこもった瞬間から時間が停止している、
私の弟も引きこもりみたいなもので現在や未来の話はせず
いつも過去の話ばかりする。
そういう意味では中学の頃の台本をいつまでも持っていたり、
過去の苦しみに囚われているのはなんとなく納得できる。

しかし、30年以上も引きこもっている人間に演じてもらおうという考えが
どうしても理解できない部分もあった。最後のあの偶然も決め台詞を言わせるためには
必要不可欠だったのだろうか。

ムサシ

ムサシ

ホリプロ

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2021/09/02 (木) ~ 2021/09/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

帰ってきたという感慨と
蜷川演出の方が好きだったという正直な思い

一流の役者がはしゃぐのを観るのは楽しく懐かしさはあったが、そこにどれほどの統制があるのか
縄で繋がれる場面は初演の方が断然面白いし、長くても持っていた
客観視されたなかでの遊び心がこの作品に必要なのではないか

踊らぬサロメ、きみがすき。

踊らぬサロメ、きみがすき。

あんよはじょうず。

王子小劇場(東京都)

2022/05/18 (水) ~ 2022/05/22 (日)公演終了

実演鑑賞

黒壁へのタイマー投影での始まり方
ギャラリーでスポットライトを役者が使うラスト
シンプルだが、劇場を効果的に使っていた

RENT レント

RENT レント

キョードー東京

東急シアターオーブ(東京都)

2022/05/18 (水) ~ 2022/05/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ストーリーは一世代前のステレオタイプな価値観に思え、普遍性がうすいように感じた

しかし、名曲SEASONS OF LOVEはやはり素晴らしい。52万5600分という1年をどうやって数えようかという歌詞は、問題を抱えている人にとっての人生のかけがえのなさをというテーマに力強く迫り、作者が急死したことにもリンクし複合的に作品を支えている。

仮面音楽祭

仮面音楽祭

藤原たまえプロデュース

「劇」小劇場(東京都)

2022/11/02 (水) ~ 2022/11/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

歌って踊って手拍子ありペンライト振りのお祭り演劇も演劇ファンとしてかしこまらず、リラックスして観る事ができたのがよかったし、客席と舞台が一体となって盛り上がったのが、なによりもよかったです。

通し狂言 義経千本桜

通し狂言 義経千本桜

国立劇場

国立劇場 大劇場(東京都)

2022/10/01 (土) ~ 2022/10/26 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

A,B,Cプロに分けてのスケジュールや、開演前の映像など見やすい気配りが感じられた。

特にBプロがよく感じた。
菊之助のいがみの権太は、小気味良く、最期の息絶えだえの台詞にはとても引き込まれた

ジャージー・ボーイズ

ジャージー・ボーイズ

東宝

日生劇場(東京都)

2022/10/06 (木) ~ 2022/10/29 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ブラックチームを観劇。役者さん同士の掛け合いも歌もとても安定していた。

演出が素晴らしかった。開演してすぐの映像と音楽によるワクワク感で高揚した。

カメラを使った演出はもちろん、上下構造や、人物があるシーンを見ているように配置するのも見事だと思いました。その場にいない登場人物同士が、演出の処理によりうまく繋がっていました。


これからご覧になる方は、開演前の着替えや客席が映されるカメラなどを楽しむために10分ほど前には客席に着くことをおすすめします。

サド侯爵夫人

サド侯爵夫人

遊戯空間

銕仙会能楽研修所(東京都)

2022/11/05 (土) ~ 2022/11/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

三島由紀夫の台詞や世界観を役者が体現していたと思います。発声佇まいも素晴らしかったです。

一方で能舞台であったのは挑戦的だと思ったのですが、そのことによってこれまでのこの戯曲の上演を越えられたとは私には思えませんでした
けれど、大切な試みだとは思います

「カレル・チャペック〜水の足音〜」

「カレル・チャペック〜水の足音〜」

劇団印象-indian elephant-

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/10/07 (金) ~ 2022/10/10 (月)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

「国家と芸術家」シリーズ三部作、の最終作。・・と書いたが(何処かでそう目にしたと思って探したが行き当たらず)、ケストナー、藤田嗣治、ジョージ・オーウェルの続き四作目。
劇場が狭かった前二作から芸劇へ。それに題材がカレル・チャペックという事で今回は劇場で観たい!と思っていたが結局、3度目の配信鑑賞となった。
配信についても、前二作に比べ映像が断然良く、見返す事なく一回の視聴で台詞が聞き取れ、前方席での観劇気分を味わえた。
だがもっと驚いたのは舞台の完成度、テキストの深さ、巧さ(執筆の神が味方したかのような..)である。
チャペックと言えば「山椒魚戦争」を書いた著名な作家の一人であるが、演劇への関心から知り直した人物でもある。劇場で観た彼の戯曲「R.U.R」(ハツビロコウ)「母」(コットーネ)はいずれも「戦争」に触れた品だったが、本作もチャペックが執筆に生きた第一次大戦と第二次大戦の戦間期が舞台となり、大戦後誕生した民主国家チェコがやがてナチスの台頭した大国ドイツに翻弄される軌跡と密にドラマが進む。
舞台はチャペックと兄ヨーゼフの家族=妻と幼い娘が住む家。若いチャペックがフラれたばかりの初恋の女性、彼女が交際する事になる新国家の大統領の息子、大統領本人、チャペック兄弟の親友、それにこの世ならぬ謎の女が訪れる。家族の葛藤と克服、逃れる事のできない国家と歴史の状況の中で精一杯生きる人間たちの人生が美しく刻まれていた。
配信では避けていた☆5を付けた。

物理的な圧力に晒された人々が、勝ち取った自由を手放さざるを得ない現実に直面する光景に、つい重ねてしまうのはわが国の事。日本は敗北を喫しつつあるが、これに関する報道は殆どなく、今どういう覚悟をせねばならないかを考える契機は希薄である。
カレルと周囲の人物たちは苦境に悶えながらそれを克服する精神、歩き方を手にし、生を全うしようとする。早晩朽ちて国もろとも凋落させるだろう効用のなくなったシステムを温存し、「改革」のポーズだけを取ってその場をやり過ごす(その実やり遂げようとしているのは売国的な政策)我が国の中枢を、「それ」としてありのままに見る事・・舞台がくれた勇気を、今以上にゲンジツを見る態度に向けるよう促されている気が個人的にしている。

イヌの仇討

イヌの仇討

こまつ座

紀伊國屋ホール(東京都)

2022/11/03 (木) ~ 2022/11/12 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

8000円という高いチケット代を払うのはこまつ座だから
安心して観劇できるだろうと思っていつも購入している。

井上ひさしの脚本は今回もよく満足のいくものでしたが
会場内に携帯電話抑制装置がないため、通知音がよく鳴っていたのが残念。

演者の方で体調が悪かったのか、台詞が飛びまくっていた。
舞台は生ものだから仕方ないが、何回もそういう場面があると集中力が途切れる。

仮面音楽祭

仮面音楽祭

藤原たまえプロデュース

「劇」小劇場(東京都)

2022/11/02 (水) ~ 2022/11/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
「仮面音楽祭」らしく、受付やプロデューサーの藤原たまえさんが、仮面を頭に付けてお出迎えしてくれる。まずは、祝祭の雰囲気作りをするといった配慮が愉しい。
可笑しくて 大いに笑った。この面白さを 自分の拙文で表現しようとしても無理だぁ。
常態と狂態が混じり合った混沌とした世界、そこに足を踏み入れた男女が巻き起こす抱腹絶倒の物語。快と楽の迷路の果てに見えた光景は…。

劇団ポツドールの「愛の渦」のような見知らぬ男女による一夜の狂乱だが、「愛の渦」のような性欲ではなく、何方かと言えば性抑であり生欲という 前向きな人生を思わせるラストだ。結局名前も分からず別れていく、そこに大都会 東京の哀愁を観るようだ。
(上演時間1時間45分 途中休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台は、相席酒場「ミラクル」という合コン専門店。中央にソファとテーブル、その上にはカラオケのリモコン、上手奥に別場所を表すクッション、下手に部屋ドアがある。シンプルであるが、物語を描くには十分なセットである。面識のない男女が出会いを求めて夜な夜な集まってくる。

男女各4人の客と店員2人の計10人の歌とダンスで綴る人生の悲哀であり応援歌のような公演。ラストはしみじみと余韻を残す秀作。面白いのは人物造形で、(心に仮面を付けたような)お互いの素性を知らない 個性豊かな人々が、いつの間にか自分の悩みや苦労を語り出す。知らない者同士(役名はなく 男女とも1~4、店員も1~2である)、遠慮しつつ様子見の会話(常態)であったが、店員が勧める 銘酒「飲んだら危険」というアルコールを飲んだら、一転 泥酔した狂(嬌)態になる。

序盤、同棲しているカップルが、それぞれ相手に内緒でこの合コンに参加し鉢合わせをするという波乱の幕開け。この修羅場が圧巻で見どころの一つ。お互いが顔に水をかけたり頭から流したりと、体を張った演技をする。気まずい雰囲気から、それぞれの人間性ー本性へ、その化けの皮が剝がれていく。裏表がないのは、山田瑞紀サンが演じる流しのタンバリニストぐらいか。彼の短パン衣装や風貌・タトゥーが強烈で、一瞬にして空気(感)が変わる。

人生は傷つくことの繰り返し、それを何度も乗り越える。別れ話に准えて、人生は何度でもやり直せるは、リストラされた男や非モテ男への励ましか。江上剛の小説「人生に七味あり」〈うらみ・つらみ・ねたみ・そねみ・いやみ・ひがみ・やっかみ〉の人生七味唐辛子を思い出す。それが人生に深い味をつけ、人間味を増していく。それこそが、人間の祝祭〈生存〉を意味しているよう。
勿論、歌はその場景に合った選曲をし、情感たっぷりに歌い上げる。
次回公演も楽しみにしております。
私の一ヶ月

私の一ヶ月

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2022/11/02 (水) ~ 2022/11/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度

新国立劇場で「私の一ヶ月」を観劇してきました。
役者さんの演技など表面に出てるものの効果が素晴らしかったから、私の残念な気持ちも強いのかもしれないけれど、この話、脚本の設定の一部に「大学図書館の閉架書庫」「(中途採用の)職員」が出てくる点、誤解を招くセリフや状況があります。

大学図書館の学生アルバイトに対して職員が「時給の発生する休憩」と告げる、導入部の台詞は衝撃的なほど、現実の大学図書館の状況とかけ離れています。

お芝居としてはそれなりに飽きない構成だったけれど、脚本の設定がなってない。
中途採用で、司書資格しか持ってない人が正職員になれるほど甘い業界ではないです。
お芝居としてはたぶん、ほかに良いところもあったし、本の流通に対する問題意識、人間どうしの交流過程、「司書ってもっと評価されていい職業だと思ったんだ」という台詞もあったんだけど、とにかく設定がこれではいろいろ失敗しています。

コロナ禍で停滞して苦境に立たされた演劇界の脚本家が、大学図書館の職員に嫉妬して、わざとねじ曲がった表現をした可能性もあると、残念に思いました。

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