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『The Pride』【7月23日(土)公演中止】

『The Pride』【7月23日(土)公演中止】

PLAY/GROUND Creation

赤坂RED/THEATER(東京都)

2022/07/23 (土) ~ 2022/07/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/07/26 (火) 14:00

座席1階

sideAを鑑賞。セクシュアリティがテーマの舞台だが、結局のところ、問われているのは人間としての生き方なのだろう。激しい会話劇の末に、自分なりに得た結論だ。

登場するゲイカップルのうち、オリバーは真っすぐだ。フィリップは女性と結婚していてバイセクシュアルなのだろうが、激しく揺れ動く胸の内をオリバーの前で吐露する場面が出てくる。その二人の間を取り持つような形になっている女性、フィリップの妻であるシルビアが、物語のカギを握るような形で舞台は進行する。

sideAのシルビアは、元宝塚星組トップスターの陽月華。これがsideBの福田麻由子が演じるとどうなるだろうかと想像したが、まったく違う雰囲気になるような気がする。陽月の演技は切れ味鋭いナイフのようなイメージで、それは出演者だけでなく客席にも向けられた刃のようでもある。

セクシュアリティを語るとき、やはり決め手になるのはその人らしさ、ある意味で人間の尊厳である。舞台でも出てくるが、LGBTQは倒錯者という認識を持たれ、それは今でも変わらない。人間としての生き方、尊厳を勝ち得なければならないというマイノリティーの苦悩は、せりふの端々にあふれ出ている。

役者たちは皆、この難しい舞台を見事に演じきっている。この舞台から何を感じるかは、おそらく千差万別なのだろう。

風のサインポール

風のサインポール

劇団俳優難民組合

下北沢 スターダスト(東京都)

2022/07/22 (金) ~ 2022/07/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/07/22 (金) 19:00

 真夜中のベンチに男が1人。
その傍には床屋のクルクルが立て掛けてある。何故ここにあるのかは分からない。
そこへもう1人の男がやってきて、パチーン!とぶつかった瞬間からへんてこな攻防がはじまり、劇が始まったが、いつまで続くとも分からない男2人の、噛み合わず、一方通行な会話が続き、そのうち床屋風の男がもう一人の男に向かって、あなたは熱海の盗塁王だと言い出して、強引にその方向に持っていこうとする滑稽さや、シニカルさ、勘違いによる笑い、そして最終的に使われなくなった野球場にいたもう一人の男がかつて、甲子園の盗塁王であった可能性が強まっていき、最後はベンチの横においてあった床屋の壊れたクルクルが誰が新しい電池を入れたでもないのに、一人でに回りだす展開には呆気にとられ、闇の中で妖しく回る床屋のクルクルが不気味に点滅する光景に不条理さと同時に、急に恐ろしくなり、気付くと、身体が強張っていた。終わった後しばらくの間は、余韻が残って、劇場の椅子から立ち上がれなかった。

 劇団俳優難民組合の公演は、前にも、別役実作の劇を見たことがあるが、今回も、独特な間や、急に興奮して大声を出すところや、不条理でナンセンスで、最後には何となく不穏で恐怖を呼び起こす終わり方になっていて、それが劇団俳優難民組合の特徴でもあり、良い意味で、別役実に多大な影響を受けていると感じた。役者の台詞術や、急に興奮するタイミング、あえて、あんまり相手の顔を見ず、相手に合わせてるようで、合わせないやり取りも含めて、よく出来ていた。

岸田國士戦争劇集

岸田國士戦争劇集

DULL-COLORED POP

アトリエ春風舎(東京都)

2022/07/05 (火) ~ 2022/07/19 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/07/10 (日) 15:00

【動員挿話】
仕えている軍人から日露戦争出征への同行を求められた馬丁とその妻を中心とした物語。
男尊女卑傾向が強かった当時にあれだけ主張する妻が痛快だし、それだけ夫を大切に想っているのが顕れて素敵であり、数年前によく観た岸田作品との共通項か?

【かへらじと】
冒頭部分と後半の演出が印象深く、青空文庫で戯曲を読んで独自のものと確認。
さらに抽象的な舞台美術により二幕ものを幕どころか暗転もなく通して見せたことも知り、これが演劇/演出の面白さだなと再認識。

ピーチオンザビーチノーマンズランド【7月25日~31日公演中止】

ピーチオンザビーチノーマンズランド【7月25日~31日公演中止】

キ上の空論

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2022/07/22 (金) ~ 2022/07/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

AとBの両方おすすめですっ!
個人的にBチームをリピートしたいと思っていたのですが、
コロナで中止、本当に残念でならない。

ドキドキしていた

ドキドキしていた

情熱のフラミンゴ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2022/07/23 (土) ~ 2022/07/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2022/07/25 (月) 14:00

名前は知っていたが初見のユニット。不思議系不条理劇とでも言おうか。105分。
 会話が成立しているようで実は不条理。唐突に照明が落ちて暗転するという特徴的な演出。ザワザワする。

マイウェイ~帰郷~瞼の母編

マイウェイ~帰郷~瞼の母編

M COMPANY

小劇場B1(東京都)

2022/07/20 (水) ~ 2022/07/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/07/24 (日) 14:00

価格4,500円

マイウェイ 初演から追ってきました。ネタバレなし。
再々演は配信で。今回の続編、楽しみにしていました。素敵で楽しい関西弁の人情劇、マコトとサクラの兄妹と、その周辺の温かい人たち
全員とすぐにまた会いたくなるし、心から幸せを願います。最高の、シリーズものになる予感。続編を観終わってすぐに観たくなる。
コロナ禍での、笑いと感動ありがとうございました!!

ピーチオンザビーチノーマンズランド【7月25日~31日公演中止】

ピーチオンザビーチノーマンズランド【7月25日~31日公演中止】

キ上の空論

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2022/07/22 (金) ~ 2022/07/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 今となっては貴重なBチームを観劇。
 理解に役立つヒントがいろいろなところにちりばめられていて、途中でおおまかな構造が分かるように組み立てられているなと思いました。動きがあるところに至るだいぶ前から舞台上に配置されている理由など、理解しきれていないところも多々あるのですけれど・・・
 

ネタバレBOX

 最初に受けた鮮烈な刺激は後の行動に深く影響を及ぼしてしまうものなのでしょう。星野が目にした「そのとき三崎は笑っていた」という心象は鮮烈なものでした。
 ラストシーンと免許証のエピソードから、二人は同じ姓になっていることが推察されます。二人は、相互理解に成功したのでしょうね、高校生のときには嘔吐するほどその状況を許容しきれなかった三崎だけれど・・・
 舞台の中にはいろいろな人がいました、タブーになることが異なる面々が。(ある意味、私が一番苦手な人は、いい人そうに見える「蒼くん」かなぁ・・・君こそサタンだ、なんてね。)
 自分の常識とは異なることを求める星野を許容すること(諦めかもしれませんが・・・)を三崎ができるようになった背景には、そんな星野であっても好きということに加え、星野の性癖を生じさせた原因が三崎自身の行為だったということもあったように思われました。
 「好き」っていう感情は、理屈で割り切ることはできなくて、「笑っていた」など、ときに曲解から、タブーを侵すような「人でなし」な行為を相手に求めてしまうものなのかもしれません。「人でなしの地」において、棲み分け、許容し合うこと、それが「愛」・・・なのかなぁ・・・

 ちなみに、演じていた役者さんは嫌いではないし、この作品が嫌いということでもないのだけれど、私は、キョウのような人は好きではありません。星野は嫌いです、高校生時の笑いながら「出て行った方がいい(だったかな?)」などと尋ねているところは、至極、気持ち悪い。大人になって、陽から陰みたいな、異質な感じで、更に気味悪くなっていて、嫌悪感すら覚えます。

 役者さんの熱演を否定するわけではないのですけれど、私的には、この内容であれば、服ははだけなくてもテーマの表現はできたように思います。星野は相手に接触しなくても、ベッドの下でそれが見えなくてもよい(・・・映像化したいようなので見えた方がよいのでしょうけれど・・・)性癖でもありますし・・・こう思うあたりが、私の「お子ちゃま」なところなのでしょうね・・・

 ・・・役名、間違っているかもしれません。だとしたら、意味不明ですよね。間違っていたら、ごめんなさい。
TSUYAMA30-津山三十人殺し-

TSUYAMA30-津山三十人殺し-

PSYCHOSIS

ザムザ阿佐谷(東京都)

2022/07/14 (木) ~ 2022/07/19 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

他界後に漸く目にした高取英氏の戯曲の舞台、流山児事務所に続いて二作目は戦前に起きた猟奇事件を題した演目。阿部定事件と絡めている。朧ろな記憶で私は何故か津山事件の年代を敗戦直後、阿部定は大正時代(エログロと重ねていたようで)と勘違いしていたが、実際は阿部定事件が1936年、津山事件が1938年と近い。津山事件は犯人が徴兵検査不合格であった事と関係していたので、戦時中なのが自然だが、映画の影響だろうか、夫が出征した家の多い村で夜な夜な夜這いに出かける(誘われる)主人公が最後にブチ切れて殺戮に走るまでに「敗戦」が挟まったと記憶が塗り替わった模様(映画の原作は西村望「丑三つの村」)。阿部定の方は大島渚監督「愛のコリーダ」の生々しいフィルム画面が思い出される。
無関係な二つの事件(一つは岡山の内陸、一つは都東京)を撚り合わせる手捌きに、作家性を感じた。最後に二人(都井睦雄と阿部定)は対面し劇的シーンで幕を閉じる。
見ながらそう言えばこれにモメラスの松村女史が出ているはず、と思い出し、目で探した。当たりを付けた役がそれであった(後で答え合せ)が、中々鬼気迫る立ち姿であった(自分が見たのは素の姿とある舞台映像のみ)。
俳優の動きに目を奪われるのがこの舞台の特徴。同じ制服を来た女子隊が幾組かあって人物識別は難しいが、役者一人一人の存在感があり、俳優名を見て納得した所でもあった。
月蝕歌劇団の団員が立ち上げたユニットであり演技の表現形態は高取氏のテキストが要求する所なのだろう、「こういうのあるな」と懐かしい感覚に見舞われる部分もあった。
高取戯曲を中心に取り組んで行くという。現代の息を吹き込む新たなユニットの今後の発展形に期待。

BLACK RAIN

BLACK RAIN

赤い猫

サンガイノリバティ(東京都)

2022/07/21 (木) ~ 2022/07/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

なかなかの作品、見応えありました。
刑事とヤクザ役の高倉、興信所のモリマリコ、被害者のおじを騙る朴、腕あるよな。
舞台演出も作品に溶け込んでいた。

ランボルギーニに乗って

ランボルギーニに乗って

劇団鹿殺し

あうるすぽっと(東京都)

2022/07/08 (金) ~ 2022/07/18 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

なるほどそう来たか・・・この時代だとディアボロだと思うのだがフライヤーのランボルギーニは新しい様だ♪
と言うか最近の車は国産でも良く解らないのだが(笑)♪
ドタバタで進んで行くのだが最後にはホロっとした♪

ことし、さいあくだった人

ことし、さいあくだった人

藤原たまえプロデュース

シアター711(東京都)

2022/07/14 (木) ~ 2022/07/18 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

どんなさいあくなのかと思ったら・・・みんな大殺界だと言う事で・・・男女のゴタゴタとか職場のゴタゴタとか・・・ただただ面白かった♪

『The Pride』【7月23日(土)公演中止】

『The Pride』【7月23日(土)公演中止】

PLAY/GROUND Creation

赤坂RED/THEATER(東京都)

2022/07/23 (土) ~ 2022/07/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/07/24 (日) 18:00

side-Bチームを観た。ゲイカップルの過去と現在(?)を巡る壮絶な会話劇。(5分押し)81分(休み11分)57分。
 1958年、シルヴィア(福田麻由子)は同僚のオリヴァー(岩男海史)を夫のフィリップ(池岡亮介)に紹介する。2人はゲイカップルになる。2008年、オリヴァーは同棲していたフィリップと別れ、シルヴィアの救いを求める…。同じ名前を持つ2組のゲイカップルを時代を越えて登場させ、それぞれの時代の「標準」の違いを見せる。時代の違いは当パンやチラシを読んでいないと分からないが、演出上はシルヴィアのキャラクターで区別される。セリフ量も膨大で、やや長い芝居だが(当初は休憩込み2時間20分と言われていたが、初日あるあるで休憩込み2時間30分)、役者陣も好演し長さを感じない。舞台美術と、特に照明が秀逸。
 若手中心のside-Bを観たが、10歳程度年長のside-Aも観たくなってしまった。

岸田國士戦争劇集

岸田國士戦争劇集

DULL-COLORED POP

アトリエ春風舎(東京都)

2022/07/05 (火) ~ 2022/07/19 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

戦争にまつわる「動員挿話」以外の岸田戯曲に関心。勿論「動員挿話」も楽しみであった(私の中での出色は青年劇場のそれで、併演した秋田雨雀作「骸骨の舞跳」との合せ技で剛力な舞台であった)。
二人組の漫才のような一本「戦争指導者」(現代の漫才ノリでやるのでオチない)を挟み、一時間の「かへらじと」が上演される。これは1944年作、岸田國士の「戦争協力」期間に書かれた唯一の戯曲という。これをDULL-COLOREDは心情たっぷり心を込めた芝居にした。
戦争協力「せざるを得ない」劇作家が、質の高い作品を目指して物した戯曲でも、戦死した青年の武勲の理由を「忠君愛国」からズラすのには限界があり、虚しい努力と悟らざるを得ない代物であった。
谷賢一氏は本域でこの戯曲を舞台化し、男たる者の本懐を遂げた主人公を称揚する上官、隣近所、家族を登場させる。これが、居心地悪い事この上ない。

戦死の報を受けた家族の元に、戦地で彼が所属した部隊の上官だった者が負傷した足を引き摺りながら、彼の死に様を語り聞かせるために訪れる。異例の事である。
死に急ぐかのように敵前に突進し、一度目は戦果に繋げ、二度目は倒れた我らが戦士の行動に、実は幼い頃自分の遊び道具の弓矢で片目を失明させた親友の思い(兵役への志願)を肩代わりした意味を見出すのは、親友本人である。恐らくはその父、戦死者の母も・・。主人公はかねがね自分の妹がその親友と双方思い合っていて、親友が引け目を感じている事も知っており、妹をもらってくれと説得もするが、いじけた親友は自分が「真っ当」と評価されるのは徴兵検査で甲種合格して戦争に行く事しかない、という典型的な落ちこぼれ根性の体現者で、頑なにいじけている彼を見て、兄は妹に彼を諦めるよう告げもする。だが、上官の話の中で、無謀な行動に対する部隊長からの質問に、主人公が「自分一人分の命ではない」事を告げたという。親友はこの話を聴いて慟哭するのであるが、親友の父は息子にかわって英霊の母に、娘をもらえないかと申し入れる。つまり一つの命の犠牲が、国家のためでなく一つの命(夫婦の誕生)を生み出す因果に転換したのが、岸田國士の「苦肉の策」だったのであり、たとえ戦争協力を公言した身でも、「作品」が「国のための死」の称賛の手段に堕する事を許せなかった、と想像されるのである。
しかし、作品自体は戦争が否定されていない点において、一つの武勲を生んだ「裏話」の域を出ておらず、戦中の価値観が充満し、こういう風景が再び日本に訪れるかも知れないが、満更でもないな、そこにもドラマはあるのだ、と思わせる。
ウクライナ侵攻が、日本の防衛理念転換のエポックになろうとしているが、なるほど、兵役対象年齢の男性が出国禁止となっているウクライナに、よりシンパシーを覚える日本人は、「巻き込まれた戦争」に殉じる「物語」を抵抗なく受け入れるのかも知れない。本作はそのイメージトレーニングの意味を持った。これがダルカラ谷賢一氏の意図であったのかは聞いてみたい。
貴重な戯曲紹介ではあったが願わくは的確な注釈なり演出を施されたかった。

ネタバレBOX

コロナにより赤組の初演が後にずれ込んだ。白組を見て、その一週間後に赤組を観た。
こなれたせいもあろうけれど、白組に軍配。「動員挿話」の捨吉とその女房の関係、捨吉の主人への恭順と正直(女房には敵わないと告げる)、翌朝態度を変えた捨吉と女房のやり取り、この二人の造形は、二組とも見事、正解を打ち出したが、白組が細部にわたってリアルで信じられ、それだけに悲痛な最後に苦しくなった。

「かへらじと」では、白組は戯曲に沿った、時局協力な内容ながら人物の形象が深いので芝居としては観られる(何だかなぁと思いながらも、である)。ただ一回目だったせいか人物判別があやふや。赤組は戯曲紹介にとどまった感がある。この演目では「その他大勢」の出演が多いようで、録音を多用し、それがため「作り物っぽさ」が醸されていたようにも思うが、谷氏的には異化効果を狙ったのだろうか。
この戯曲を相対化するには、如何にも戦前な庶民の会話をカリカチュアして発語させ、武勲を語る上官を、ソ連軍侵攻に市民を置き去りにして撤退した満州の軍人をイメージさせる形で描く。その位の事はやって良いように思ったが・・。赤組の軍人役の東氏はその線を探ろうとしたようにも。

しかしこの国は経済的敗北も、人権やメディアリテラシーその他の指標の低さも、直視したくないさせたくない事のために「今は大変」気分が演出され、有事体制に繋げられようとしていると見える。
まさかと思っていたが、テレビがメディアの責務としての参院選挙の話題提供を殆ど行わなかった事を見ても、無理筋を通す事態もあり得ることに思えて来る。
戦争、あるいは戦争を理由にした人権制限、管理・監視体制、情報統制・制限の時代は、割と近いかも知れない。昔はこんなしょぼい国、出たいな、なんて思った事もあったが(中学生の頃ね)、そんな事はもう叶わないし、国を憂うるなら逃げるべきでない、なんて事を劇団印象「ケストナー」のケストナーを思い出しながら考える昨今である。
きゃんと、すたんどみー、なう。

きゃんと、すたんどみー、なう。

やしゃご

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2022/07/07 (木) ~ 2022/07/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

数年前の初演を観た。普段は(余程好きになった演目でなければ)二度観ないが、障害者を描いた部分について難じた者として、「どう変わったか」を見届けねばと半ば義理で観に行った。(その後のやしゃごの健闘からの期待も。。)
結論を言えば、全体としてナチュラルに抵抗なく見る事ができた。脚本そのものの骨格は変わらないが、台詞のニュアンスや演技が、初演では(自分の目には)はっきり露見してみえた綻びを、巧く均していた。
それによって強調されるべき部分が微妙に変り、作品としての質は高まった。
ただし「均した」という表現を使ったように、初演に感じた本質的な疑問(違和感)は、払拭されたわけではなく、これは戯曲の問題として付きまとうのだろう。終盤の部分も初演と同じだが、強調点が変ったせいか、不要に思えた。
今回観ていて首肯できたのは、(造形が難しい)障害を持つ男女の演技である。「障害(者)」をテーマに描く作品では障害者当人の表現は一つの挑戦となるが、(戯曲の問題は別として)、今回は人物の造形と場面の成立を嬉しく見た。特に男性の軽度知的障害を持つマサシは俳優の存在を忘れさせた。

ネタバレBOX

葛藤の源である「障害」と、家族の和解の物語だ。
次女の引越し(転出)の日、という設定が良い。
三姉妹が住まう家には、軽度の知的障害を持つ長女ユキノがおり(父母は早くに亡くなっている)、夫と住んでいた次女ツキハの転居を、今日知らされたユキノは、初対面の男性を怖がる事から引越し業者と対面したショックもあって、パニック状態らしく、業者の男女二人(付き合っているらしい)が待ちぼうけを食っている。
引越し業者は次女の夫の同期が社長をしており、後でトラブって応援に登場する。三姉妹と近しい女性漫画家がとことんマイペースで自分のネタ集めに周囲を巻き込む。長女の通所する施設のメンバーであるマサシ、その施設の自信なさげな担当者も登場し、舞台となる居間(向こう側に縁側、小さな庭と塀と勝手口まで見通せる)が、セミパブリックな場所と化している。
特に引越し業者らが当家の問題(障害者を抱える)への第三者の視線を与え、語らせているのが良い。

さて当事者を描く困難として、やはり引っ掛かる部分がある。
例えば長女ユキノが、同じ通所施設のメンバーであるマサシと結婚する、と言い出して家族は大騒ぎするが、やはりこの動揺は不自然だ。
最も「変わらない」のは、一見極大の「個性」を持つ知的障害者の方である。彼らはその変わらなさをもって、周囲の理解を勝ち取る。家族はどのように長女に接して来たのか。限界はあったにしても早く死んだ母は愛情を注ぐ努力をした人柄だった事が窺える。
どちらかと言えば「変化」するのは周りの方で、「結婚したい」発言は長女の「変わらない」性質の一つの表れだとまずは捉えてその意味は何かを理解しようとする、というのが第一。結婚は軽度の知的障害者が素朴に持つ願望であり、「結婚なんてできるわけない」と本人に言って聞かせる三女の姿は、本当は理解している何かを「判らない」と突っぱねている姿に見える。つまり、三女が業を煮やし、沸点に達したと考えるならスッと通る。現実には知的障害を持つ者同士のカップル、夫婦はいる。
障害者観は変わらねばならない、という認識から発すると、ラストの「マサシの死の予感」情報は不要で、三女が死んだ母との会話の後、長女の結婚もありと態度を変える「変化」の表れとして(長女に)白粉を塗って上げる部分も、世の女性の「結婚式への憧れ」を長女に投影したもので(長女はそれを楽しんではいたが)ユキノが求めているのはそれなのか、という疑問は残る。その前までで十分語られるべきは語られたと感じられたので、もっと前に芝居を切り上げればというのが正直なところだった。しかし作者は「和解」を明確な形にしたかったのだろう。

細かな部分になるが、明日通所先で会えるマサシの背中に永久の別れのように泣き叫ぶユキノ(瞬間的に感情が激するある種のパニック状態、という場合であれば、長い付き合いの家族は「今はあの状態だな」と一過性のものである事と悟るはずで、一緒になって大騒ぎするのは不自然)。
結婚する、という事が二人にとって具体的に何を意味するか、を確認せずに三女はムキになって反論し始めるのだが(だから劣った者に対して常識を振りかざす鬱憤晴らしに見えてしまう)、仮に結婚の形かマサシが今日からユキノの部屋で寝起きする事だ、とする。しかし両親のいるマサシがその事を告げていない事は、果してユキノの「つもり」とマサシの「つもり」は同じなのかと訝る余地がある。仮に二人の気持ちが純粋だとしても、話を詳らかにし、二人(あるいはそれぞれ)の言う中身が何か、によっても対応の仕方は微妙に変わってくるものだろう。
二人の演技は、二人が分かちがたい結びつきを築いているらしい事を伝えていたが、不明な領域は広い。
マサシは主張をした後、周囲の否定を受け入れたかのように去って行く。ユキノはそのマサシの「転換」を受け入れ難く叫んだようにも見える。
ただ蓋然性から言えば、描かれているマサシは抽象レベルの概念を否定されてその概念ごと何かを諦める、という事はしないように思われる。仮にそれが出来るなら、相当程度の理解力がある事を周囲も判っているか悟るであろうし、マサシの覚悟の深さを周囲は想定して対応するはずだ。あるいは、探る事はするだろう。周囲の鈍感が描かれたのだとしても、舞台上のマサシから、また知的障害を持つ人達の存在から、最も見出しにくいのは「死」の気配であり、それに繋がる「諦め」も然りである。
マサシを送っていった次女の夫から、最後に電話が掛かって来る。マサシが車道に向かって走り出し、車にはねられたという。先の事で言うと、この時に自殺というイメージが浮かぶテキストになっていたかと思う。(作者は可能性の範囲にとどめているが。)
「変らない」事への信頼こそが彼らの財産であるその事から考えて、自死の線は現実とは思えないが、しかし真相はどうあれ周囲には傷跡を残す(結婚をあからさまに否定してしまった事が原因に思えてしまう)。
つまり障害を持つ者の存在のリアル、よりはそれを取り巻く「我々」を問う、作品の趣旨である。だがそれは「誤解」である可能性がある、と私は水を差したくなる。障害に対する私たちの認識の投影は、別の投影を許す。投影は、理解とは真逆の態度だ。
三女の目にだけ見える母が、後半現われて、「自分のやりたいようにやりなさい」と告げる。三女は母が早く死んだお陰で、長女が姉妹に押し付けられたと思っており、我慢強く、結婚した次女よりも自分を「犠牲に」して長女の面倒を見て来た格好だが、母を前に漸く今、本音を漏らす。一人ぼっちである事=異性関係の不幸の影に、長女の存在がある・・そう観客も理解しがちになるが、果たしてどうか。もし三女に人生の転機が訪れた時、障害を持つ姉を「手放す」選択も突きつけられる事だろう(手放した場合施設に送るかグループホームに入れるかといった話が出てくるが、その時彼女が「遠慮」して他に助けを乞わなかったのなら、それは彼女の人生設計と価値観からの選択だったのである)。
母も、「あなたのやりたい事をやりなさい」とだけ言うが、自分の人生を姉のせいにするな、と読み替えるも可能である。

障害を扱う細部にはどうしても引っ掛かりは出てくるが、ドラマの構造は初演より明確になり、描写もリアルさを増し、面白く観た。
風のサインポール

風のサインポール

劇団俳優難民組合

下北沢 スターダスト(東京都)

2022/07/22 (金) ~ 2022/07/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

階段を上っていくと2階のカフェを過ぎたところから「立ち入り禁止」の虎テープが
思わず「ここでいいんですか?」と尋ねる
狭いスペースの薄暗い狭いステージにはベンチと床屋のサインポール、手前にはやはり立ち入り禁止のテープ
懐かしいラジオのコマーシャルが流れている
開始はまあ「不条理劇」と言っていい
途中からだんだんと風の床屋と熱海の盗塁王(現窃盗塁王)の素性が明かされて行くにつれ不条理劇的要素は薄れていく
ふたりの声の大きさの変化の幅が半端ない
最後にサインポールに灯りがともって廻り出すところはとても印象的だった
もらった劇団コースターを持って行くと今後の公演は何度でも500円引きというのは初めてだな

ピーチオンザビーチノーマンズランド【7月25日~31日公演中止】

ピーチオンザビーチノーマンズランド【7月25日~31日公演中止】

キ上の空論

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2022/07/22 (金) ~ 2022/07/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白かった。めっちゃ良かった。誰かにとってきっと"救い"になる舞台だなと思う。異常性・性癖・リビドーの話。なぜか共感できるとこがあってジーンとしちゃった。普通と異常は紙一重。哀しくて美しかったな。今観れて本当に良かった。

ピーチオンザビーチノーマンズランド【7月25日~31日公演中止】

ピーチオンザビーチノーマンズランド【7月25日~31日公演中止】

キ上の空論

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2022/07/22 (金) ~ 2022/07/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

A せっちゃんはクールでビューティでした。
出演者交代とかもありながらも上演できていることがよいことだ。

明日ハレルヤ

明日ハレルヤ

diamond-Z

荏原文化センター(東京都)

2022/07/21 (木) ~ 2022/07/23 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

なかなかの力技での明るいコメディでしたが
リアリティには欠けてた感が強かったけど
職場の雰囲気とか人間関係の微妙なところは上手に表現されていたなぁ と

ただ商品開発では正しいと思っての社内試食ですけど
実際に購入するのは=お客さまーですよね
試食とかは小さく会社内でやらずに外に意見を求めるのがーって思った
まぁ社長とかが神の舌でも持ってて
社長が認めれば世間でも大評判で商品がジャンジャン売れるという
ジンクスでも持ってるなら別だけどねー

ネタバレBOX

白衣の着こなし方とかに個性が出ていて
それはリアルにらしさが出ていて好ましかった~♪

女ったらしの子供を産んでしまう謎と
息子がモロッコで娘になってしまうのが
何とも・・・とかは思いましたわ
冷凍室は普通に中からは容易に開けられるようにしてるんで
それを開かない・・としたのも・・・リアリティが・・とか感じたっす
風のサインポール

風のサインポール

劇団俳優難民組合

下北沢 スターダスト(東京都)

2022/07/22 (金) ~ 2022/07/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 板上はホリゾント近くの中央にベンチ。その直ぐ上手に床屋のサインポール。どういう訳か、ベンチの下、真ん中辺りにホームベースが在って違和感を醸し出している。
 明転すると野球のユニフォームのような衣装を着た男が正面を向いて腰掛けている。男の横にはラジカセ、腰には黒く小さな小物入れを付けている。出捌け導線は上手客席側の通路と併用。

ネタバレBOX


 当パンを拝見すると大きな声を出すおつむのよろしくない者達が、世の中を仕切り仕切られている者達も大声で仕切る愚か者も真実を求める者の価値が見えず、掛かるが故に真実を追う者を馬鹿にする。というようなことが書いてあり、そのメゲルような状況の中で大抵の人は愚行に走り、いつしかその愚かさに気付いて成長してゆくのではないか? との視座が提示される。だが、大声で何かを偉そうに謂う者達の声に基本的に真剣に相手をしても始まるまい。言葉は静かに聞き取り得る限りの声で語られるのが理想だ。大抵大声を発する者達の発言自体が、内容の貧しさを隠す為であることを知る必要があろう。
 ところでベンチシリーズvol.1は別役さんの「いかけしごむ」であった。Vol.1の面白さは、例えばフランス語のabsurdeに「馬鹿げた」、或は「不合理な」という元々分かり易い訳語を当てるより漢語の難しい「不条理」という訳語を当てたがる滑稽に掉さしているような点に在るのかも知れない。別役さんの作品創りはそもそもこのように現実の持つバカバカしさを極めて鋭く独特の論理で批判解体した上で自分の思考・創造の過程でメタ化した台詞の面白さにあると言えよう。「いかけしごむ」には、製作者の論理的な思考があり、その思考や証言に矛盾が無いにも拘わらず、発想の突飛故論理的整合性や発明者の言動を信じることができない男の追及がある。即ち常識とされる在りきたりの発想しか出来ない者にとってこの発明者の言動は単に容認できない言動に過ぎない。観客は、そこで起きる事象を観ることによってこれら諸関係の在り様を正確に捉えることができ、このケッタイな発明と常識がぶつかり合った結果を知るのである。シナリオはそのように書かれていたと考えられるから、其処にセンチメンタリズム等が入り込む余地は無い。入り込めるのは、関係性を俯瞰した時にしみじみ見えてくるペーソスまでだろう。
 話題は少々飛ぶが川柳にこんな作品がある。‟あきらめましょうと どうあきらめた あきらめきれぬとあきらめた“ このようなメンタリティーは庶民の実感に極めて近く同時に多くの類音を用い、やんわり情に訴えることで成立していて、別役作品のようなドライなタッチとは質的に異なる。それゆえにcreativityでは劣るもののシンパシーを感じやすい作品として成立しているのだと言えよう。
 それに対して今回のvol.2は、台詞が余りに生であるように思う。或る意味素直な応答なのだが、捻りが無い。つまり作品の作り方としてベタな感じがするのを否めない。別の言い方をすれば人間の情や生きるということへの執着を何とかアウフヘーベンしようとするもののそれを実現する為の明確なヴィジョンも方法的な論理構築も未だ根拠を持てずにいるようだ。その原因として考えられるのは、我ら人間の位置が確定できていないことだろう。例えば地球という環境の中に存在するウィルスから総ての動植物に至る生態系の何処にどのように存在しているのが人間なのか? を考えてみるのも良いかも知れない。
雨降る正午、風吹けば

雨降る正午、風吹けば

SUPER NOVA

王子小劇場(東京都)

2022/07/13 (水) ~ 2022/07/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

私のこの作品の観劇後の気持ちは、「生きたい」「みんなも生きろ」でした。そんな作品です。
生死や家族について考えさせられます。
泣ける作品が好きな人にはおすすめです。
私は感動して泣きました。
私は春組を観劇しましたが、
俳優さん達の熱意がとても伝わってきました。
緊張感がある繊細な演技に心を打たれました。
感動できてレベルの高い演技も観れる素晴らしい作品ですのでおススメです。
大阪公演も観に行く予定でいます。

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