戦争で死ねなかったお父さんのために
一般社団法人深海洋燈
中野スタジオあくとれ(東京都)
2022/12/01 (木) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
戦後30年、戦争に行けなかった父親(いわいのふ鍵)に、突然赤紙が届く。そこから始まる、歌とお色気たっぷりのノンストップショウ。地下の狭い劇場を歌ったりすごんだり。つかこうへい美学の「男のロマン」的長セリフが彩る。
戦争にいけなくて差別されいじめられた悔しさを土台に、戦地でのアバンチュールの妄想や、軍隊ごっこ、出征ごっこがナンセンスの限りに繰り広げられる。女優陣の早替わりに次ぐ早替わりのパフォーマンスが見事。腰巻き姿の現地女、曲線の見事なレオタード姿、中国服の香港、満州の馬賊等々。少尉の警察官(荻野貴継)のキリッとした将校然とした姿も良かった。
ほどける双子
クレネリ ZERO FACTORY
梅ヶ丘BOX(東京都)
2022/12/02 (金) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/12/02 (金) 18:00
座席1階
大岩真理の劇作は、グッドディスタンスの「月に座る」がとてもよかったことで今回も期待して劇場へ。本多真弓の一人芝居。劇作の面白さと本多真弓の指先まで震える絶妙な芝居に魅了された。
赤ちゃんをベビーシッターに託して夫婦がオペラに出掛けるという設定で物語はスタート。最初はドレスアップして出掛ける妻を演じるため、ここが軸になって展開するかと思いきや、本多の芝居はベビーシッターに移り、そして…。
「女性に生まれたからには切り離せない事柄が、書いた当時の自分にまとわり付いていて、いろいろな断片と絡まり」と大岩は書いている。舞台を見ると、その意味が分かるような気がする。いろいろな断片を生々しい混沌として、それを本多が次々に演じていく。その断片が客席に突き刺さって怖いような気持ちになる。
1時間の短編だが、十分に堪能できる。繰り返すがこれは劇作の面白さだけでなく、本多の演技にも負うところが大きい。本当に指まで震えているのを目撃した。梅ケ丘BOXという小劇場の空間が震えたと思う。
残念だったのは、この劇場ゆえの外部の音だ。ちょうど交差点の近くにあり、バイクや車の音が劇中の音に混じる。まったく関係のない音なら気にする必要もないが、劇作の要素としての音だと思っていると外の騒音だったりして。やはり、下北沢の小劇場で上演すべきではなかったか。
アベベのベ 2
劇団チャリT企画
駅前劇場(東京都)
2022/11/30 (水) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/12/02 (金) 15:00
久しぶりにチャリTを見た。前作のアベベのベを見ておけばよかったと後悔した理由は二つある。今回のチラシにある「風刺か?冒瀆か?」に釣られてしまったこと。つまり、前作の方が強烈ではなかったか、という後悔。もう一つはやはり、安倍元首相が存命中に見ておくべきだったという後悔である。
チャリTの強烈な風刺力を知っていたために過剰な期待をしたのかもしれない。亡くなってしまった人を風刺するのはやはり、難題なのかもしれない。結論から言うと、冒瀆ではありません。風刺でないかというとそこまでではないが、かなり穏当な作品という感想だ。
舞台は安倍元総理が夕刻、演説をする予定地近くのコンビニ。埼玉県の大宮というところがおもしろい。都合が悪いと簡単にシフトを抜ける学生バイトに「店長候補」は頭にきている。この人、大学時代にコンビニでバイトをして卒業後に就職をするもやめてしまい、またコンビニに戻ってきた。と言っても正社員ではなく、バイトなのだ。こんな設定が安倍政権も引き続き踏襲した新自由主義的な施策の落とし子だと言えなくもない。
奈良の銃撃事件、宗教2世の話など、今風の時事ネタも入ってはいる。しかし、安倍政権に向かって「こんな世の中に誰がした」と異議申し立てをするような場面は、店長候補にため口をきく男性バイトと店長候補の迫力満点のけんかの場面くらいだ。この男性バイト君が叫びまくるせりふが、ああ、そうだそうだと共感できるところだろうか。
勝手に期待して申し訳ないのだが、「風刺か?冒瀆か?」はちょっと誇大広告。でも、コンビニバックヤードの群像劇としては秀逸だ。冒頭で出てくる廃棄弁当の山は、さもありなんという感じでおもしろい。コンビニ同士の競争もリアリティ満点だ。やっぱりチャリTはおもしろい。
回人回 父母と三姉妹
回人回製作所
シアターウィング(東京都)
2022/12/02 (金) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
触れただけ
SPIRAL MOON
「劇」小劇場(東京都)
2022/11/16 (水) ~ 2022/11/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/11/20 (日) 14:00
三人芝居・二人芝居・二人芝居の短編三本。
そう思って観ていたせいもあろうが何度か観たらまのだのテイストを感じつつ秋葉演出なのでSPIRAL MOONの味わいもあってまさにいいとこ取り。さらにラストシーンの美しさよ!
また、手話通訳付きの回だったが、3編それぞれに付け方が違うのも興味深かった。
なお、3編の中ではコミカルな2編目が一番好み。
アベベのベ 2
劇団チャリT企画
駅前劇場(東京都)
2022/11/30 (水) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
コンビニ店員さん達の世知辛い日常生活の中にうまいこと世相を盛り込んだ「アベベのベ」は2016年版を拝見していましたが、はたして 今作もしっかり面白かったです
ファーストインパクトの分、前作の方が有利ではあったものの時代背景が変わって、描かれるは2022年7月 安倍元首相が銃撃された、あの日
舞台上に存在するコンビニ店特有の人間関係から生まれる会話と、おそらく日本中いたるところで取り交わされた類の会話、この二つが混ざり合った末の不協和音の様な流れ
シニカルな目線で描かれる日常に思わず笑っていたのに隠れていた狂気がひょっこり見えてしまった様でゾクッとします
衝撃が走った日、あの時感じた事を今一度振り返ってみる感慨深さ
もちろんそれも肝ではありましたがコンビニ内での人間ドラマ性めっちゃ強し、
あれから5カ月、このコンビニ店の現在にも思いを馳せてしまうのでした
真夜中の影法師
十七戦地
ギャラリー&クラフト杜(東京都)
2022/12/01 (木) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
本来、真夜中に影法師を見ることはないが、そこに現代的な問題の数々を絡ませて 表現し難い世情を浮き彫りにした公演。厳密にいえば「現代」ではなく「今」を鮮明に切り取った珠玉作。
コロナ禍の三蜜には注意が必要だが、この公演の物語の緊密な繋がり、濃密な会話、そして綿密に計算したかのような舞台環境が素晴らしい!
物語は説明にあるように大括りでは、父が倒れ遺産を巡るトラブル、主人公夫妻が経営するギャラリーを巡る中傷誹謗、そしてコロナ禍におけるアートイベントの開催が危ぶまれる、といった問題が次々と起こる。それが個別の問題でありながら密接に繋がっていく巧さ。登場人物はわずか5人、それぞれのキャラクターと立場を立ち上げ、登場しない人物の姿や意見まで代弁するかのような濃密な会話。そして先に記してしまうが、セットはほとんどなく 素舞台と言ってよい。しかし、この会場ギャラリー&クラフト杜<もり>の構造・・客席正面にある 大きな一枚硝子窓を通して外景が見える。借景を活かした演出が、現実の世界と舞台と言う虚構の世界を巧く融合させている。まさしく虚実綯い交ぜの極みを観せる。
副題「芸術とお金、あと色々」は、芸術文化の世界、もっと言えばコロナ禍における小演劇界の実情をまざまざと見せるようだ。同時に表わし難い不安、焦燥そして今後も透けて見える。その”ぼんやり”とした感覚こそ、真夜中に薄く見えるかのような影法師を暗示している、と思う。
(上演時間1時間)追記予定
少女罰葬
劇団亜劇
アトリエファンファーレ高円寺(東京都)
2022/11/30 (水) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「罰葬」という言葉が何を表すのか、それが物語の肝になっている。そのまま解釈すると、犯した罪〈罰〉を葬ることになるが、描かれている内容からするとニュアンスは違う。少しネタバレするが、表層的には訳ありな全寮制の女子高イメージであるが、ここは異世界である。舞台美術は怪しげな雰囲気を醸し出し、物語の概観を表している。
ラストの解釈は 観客に委ねたかのようで、受け止め方によって印象が異なるかもしれない。同時に気になることも…。
(上演時間1時間40分 途中休憩なし)
夜明けの寄り鯨
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2022/12/01 (木) ~ 2022/12/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/12/01 (木) 19:00
iakuの横山拓也の書き下ろしを大澤遊の演出で上演する。横山らしい作品だが、ちょっといつもと違う感触もある。97分。
和歌山県の捕鯨で有名な(太地町がモデルの)港町を訪れた真知子は、25年前の大学生の時にこの町を訪れた時に消えた友人の男性が書いた手書きの地図を元に、その男性についての記憶を辿りつつ探す。出会ったサーファーの若者に励まされ、記憶を辿るが…、の物語。回想シーンを交えるなどの丁寧な物語作りで知られる横山だが、嫌な人が出ない、という特徴が今回はちょっと違って、鯨に関する議論の部分で紗里がちょっと嫌な人になっていたように思ったけれど、それは私の価値観からで、多様な考え方を提示する、横山らしい劇作だったなと思った。美術が素晴らしく、終盤は照明と相まって美しい舞台を作っていたと思う。
テアトリアンナイト
演劇実験室◎万有引力
座・高円寺2(東京都)
2022/11/30 (水) ~ 2022/12/02 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
第二夜《地下水道をいま走り行く暗き水のなかにまぎれて叫ぶ種子あり》
昨夜も観るべきだったと痛切に後悔。どうでもいい舞台を選んだ自分を責めた。これぞ自分が観るべき世界。
髙田恵篤氏が現れ、挨拶をするとステージを降り、無人の一列目センターに腰を下ろす。そこから始まるJ・A・シーザー氏(歌&ギター)のLIVEと寺山修司作品の名場面の切り抜き。ピンク・フロイドの初期衝動。背景に映し出される天井桟敷の鮮烈な日々。小山由梨子さんのソプラノのコーラスが効いている。個人的にはパーカッションではなく、強いドラムのリズムが欲しかった。ゲストの根本豊氏が語る『奴婢訓』世界ツアーの思い出。伊野尾理枝さん(世界中誰もが知っているTVから這い出してくる貞子役!)の貫禄。髙橋優太氏と三俣遥河(みつまたはるか)氏の定番の掛け合い〈寺山問答〉。毛皮のマリー役の飛田大輔氏の美しさ。下男役にステージに上がる髙田恵篤氏。森ようこさんのコミカルな舞踏、よくもあんなに動けるものだ。
『巴里寒身(スーザン・フェリア、サジャよ永遠に)』が今回の核。『奴婢訓』世界ツアー、貧乏旅行。電熱器と鉄板だけを命綱に食材を炒めては口にする日々。小銭稼ぎに大道芸宜しくジャパニーズ・アングラで盛り上げるも、成果は電話を掛けるコイン一枚。芸術も糞もなく、皆ただただ腹が減っていた。シーザー氏の異国の女との仄かなロマンス。蚤の市で仕入れた仔犬が鳴いている。
「パリさみ パリさみ パリさみさみさみさみさみ」
キング・クリムゾン、筋肉少女帯、言葉と想像力だけを武器に新たな世界を創造していくルサンチマンの系譜。
J・A・シーザー氏と高田恵篤氏の間に“世界”は存在す。
少女罰葬
劇団亜劇
アトリエファンファーレ高円寺(東京都)
2022/11/30 (水) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
カーテンコールであかりちゃんが本編とは全然違う(いや、違わないのかも)キャラで「解釈は皆さんにお任せします」というような事を言っていましたが、まさにそんな感じです。
「少女罰葬」というタイトルと・・・以下ネタバレ
チケットがあまりに小さくて無くしてしまいそうでした。
簡単で良いのでキャスト表が欲しかったです。
長い墓標の列
明後日の方向
王子小劇場(東京都)
2022/11/22 (火) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/12/01 (木) 13:00
価格4,000円
個人的には、今年観た小劇場系の中でかなりの当たり!!
表面的なリアリズムを排した舞台美術・衣裳・小道具(スマホやPC)・キャスティングによって、かえって台詞の内容や起こっていることの意味がよりダイレクトに現代の観客に伝わります。逆に、この戯曲を今の日本でト書きの指定通り従来のリアリズムで上演するというのはあまりに楽観的すぎるかも。
(アンケートに書ききれなかったこと、ネタバレBOXにだいぶ書きました↓)
マジの宅急便
カラスカ
シアター・アルファ東京(東京都)
2022/11/30 (水) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
アベベのベ 2
劇団チャリT企画
駅前劇場(東京都)
2022/11/30 (水) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
思ったよりマイルドなブラックユーモアだったが面白かった
コンビニが舞台で様々な事情のバイト達が繰り広げるコメディ
店長候補白川と昼間バイト上田のケンカのシーンはなかなか迫力あった
無情
MCR
OFF OFFシアター(東京都)
2022/11/30 (水) ~ 2022/12/07 (水)公演終了
ハーツ・ハート・ハード!
イノチガケ
ステージカフェ下北沢亭(東京都)
2022/11/29 (火) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
- うやむや -
COoMOoNO
ギャラリーLE DECO(東京都)
2022/12/01 (木) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
豊かな時間-
久保佳絵さんと新宅一平さんがとにかく可笑しい。
とても敷居が低いコンテンポラリーダンスと生演奏、そして演劇との融合。お勧め。
どっか行け!クソたいぎい我が人生
ぱぷりか
こまばアゴラ劇場(東京都)
2022/11/24 (木) ~ 2022/12/06 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
共依存症の話である。舞台は広島の小さな地方の都市の母子家庭の家族物語だが、見ているうちにいまこの社会に瀰漫している世界が広がっていく。岸田戯曲賞を受賞した作品は見ていないが、正当な演劇の伝統も感じさせる新人の爽やかな初見であった。現代版・「欲望」のブランチである。
夫と別れた母44歳(占部房子)は娘(林ちえ)を引き取って暮らしている。別れた夫のことは気になるが知りたいような知りたくないような。密かに弟(富川一人)に聞いたりしている。弟が妻(岡本唯)とともに姉の近くに住んで、なにかと面倒を見ているのは、この姉には、ちょっと病的な依存症があって、霊的な存在や占いを信じて生活の指針にしてしまうからだ。娘を溺愛して、大学三年生になっても手元から離せない。占部房子演じるこの母の造形が、新鮮で、まずこの舞台の第一の見どころだろう。こういう人物は、今の社会のどこにもかなりいるが、今までは都合のいい脇役でしか舞台に出てこなかった。
この舞台はそれを正面に据えて、今の社会の鏡にしている。
この母の誕生日。娘は、母のためにイヤドロップを買ってきた。冒頭で、二人の共依存が日常の一コマとして描かれる。母の働く場の若い労働者(阿久津京介)や弟夫婦を招いての誕生日パーティ。娘の自立や、弟夫婦が交通事故にあう事。近所で起きた同年齢家族の殺人事件の噂話、父が実は死亡していたことなどをめぐって、家族関係が微妙に変わっていくのを面白く見せる。ダレない。
最近の若い演劇人も劇団も、威勢よく踊ったり歌ったりしたり、したり顔でスローガンを叫んだり、自分本位の身辺雑記をやって見せたりするだけでは、やっていけないことが分かってきて、芝居でリアルを求めるようになった。この新人福名里穂もこの家族の表現はリアルで、かつ、新鮮、面白く見られる。先に言ったように、見ている間は笑っているが実際はこういう人間関係の不調は今この社会に上から下まで溢れているのだ。占部房子はそこをユニークに演じる。新劇系のうまいとされている女優なら出来る役だろうが、愛嬌もある独自の世界を開いて、この女優らしい実績を一つ積んだ。占部以外のよく小劇場で見るが俳優たちも、役を把握して的確に演じている。
人物の配置はいいのだが、この後物語の推移が、普通の運びであるのが物足りないが、ここをユニークにすると、普通の社会の話でなく共依存症の病気の話になってしまうのでやむを得ないところだろう。
昨年の岸田戯曲賞と言うのはよくわかった。だが、このタイトルは下手だなぁ。
高野聖
エイチエムピー・シアターカンパニー(一般社団法人HMP)
ウイングフィールド(大阪府)
2022/12/01 (木) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
満足度★★
まずランタイムが短い…50分で、この値段は…
セリフはほとんどなく、身体表現というか、滑稽な動きで何が言いたいのか…(言いたいことがないのかも…)
コスパ悪すぎます😒
シーラカンス・アピアランス
朝倉薫演劇団
シアターブラッツ(東京都)
2022/09/27 (火) ~ 2022/10/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
通常の台詞以上に心に感情が届くビートワードを全編にわたって使用された、野心的な演出をされていたミュージカルでした。
永野希さんの演じられたシャーリーの、魅力的で重厚なまでに複雑な女性の芝居の凄みに圧倒されました。彼女の生は永遠に私の心に残るでしょう。
またビートワードのミュージカルを観たいと希望しています。