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老獣のおたけび

老獣のおたけび

くちびるの会

こまばアゴラ劇場(東京都)

2022/09/03 (土) ~ 2022/09/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「象」に変態化していく一人暮らしのお父さん。
客演 中村まことさんの魅力がフル稼働
その凄味ある怪演っぷりに思わず笑ってしまったり、思わずビビッてしまったり

これって古い価値観の権化だった老人の不条理な末路にも思えるし、本人的には変わっていく姿に無自覚だったところから認知症を思わせるところもある。
この現象を「人前にはとても出す事ができなくなった父親」と置き換えて観ても興味深いのだけれど、とにかく着実にお父さんは象(老獣)へと

渋々東京から駆け付け、唖然とする次男(本作の主役)そして彼の恋人。
父の希望に叶った生き方をしてきたはずの長男。
父が暮らす家のお隣さん親子(まだ異変に気付いてない)
決して多いとは言えない登場人物なのに、それぞれの反応・言動から滲み出る人間性が観るに充分なほど多岐にわたっていて、じっくりと味わいのある物語になっていくのでした。

ネタバレBOX

お父さんの家にしょっちゅう出入りしていた隣んちの若者
彼の立ち位置と観察証言が何とも言えず心くすぐりました。
どこか憎めないというか、心に柔軟性めっちゃある(笑)
皮肉にも実質的にお父さんと心通わせていたのは血の繋がらない彼だったのでしょうか。
でもまあ次男にも救いの光が見えて本当に良かった、ず~っと辛そうで可哀想だったので。
これがハッピーエンドなのかは複雑なところではありますが…

軸とも言える設定に「何故ここまで他者には相談できないのか」「何故責められる道しか用意されていないのか」といった疑問を挟まないようにする自己暗示がちょっと必要ではあったかも。

OKiNaのオ・キ/ひかりごけ

OKiNaのオ・キ/ひかりごけ

双身機関

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2022/09/03 (土) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2022/09/04 (日) 11:00

能楽の「翁」が基との事がチラシに書いてあり、祝言曲?・・・と思って見に行かせてもらいました。
でも、会場に入ったらちょっと違った雰囲気が............
それぞれの出演者が祈りの心理状況で作られた動きで舞われていたんだとは思うけど、少ない言葉もよく聞き取れ無いため、理解に苦しみ難しかった。
でも音楽の担当の方が、沢山の楽器で、それぞれの特長をいかした演奏で、場面・心を表現されたのが素晴らしく、音の世界に吸い込まれ、情景を感じることが出来た様な気がして嬉しかったです。

「歴史小説家・霧島蒼龍シリーズ外伝 / 霧島隆子参上 ちょっとAC(交流)しちゃいます。」

「歴史小説家・霧島蒼龍シリーズ外伝 / 霧島隆子参上 ちょっとAC(交流)しちゃいます。」

SPPTテエイパーズハウス

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2022/09/01 (木) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

観客を意識した丁寧でわかりやすい物語の作り方,好感が持てます。ストーリー展開には偶然過ぎてあり得ないだろうというのもありますが,それでもホロリとさせられてしまいました。このシリーズどこまで行くのか,それも気になるところです。

誰がために

誰がために

Lumeto

OFF OFFシアター(東京都)

2022/08/31 (水) ~ 2022/09/05 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度

Bチーム
うーん。役者の力量がバラバラになってしまっていて、シーンの熱のバラツキが、、。板倉愛実さん(劇団主催の方、Aチーム演出)と宮越麻里杏さんの出ているシーンは熱量も高く、安心して見ていられてとても良かった。お二人以外が、とある事件の前と後の、空気感が全く変わっておらず違和感。観続けるのが厳しかった。お話が面白かっただけに。
Aチーム
こちらは、、Bチームを先に観たから良かった。各々の役の独白の多いお芝居のため、初見なら話を追うのを諦めてしまうくらい熱量が低く、客席(一番後ろ)まで届いて来なかった(敢えて言えば子役の方が、がむしゃら頑張っていらしたので、可愛げや説得力がありました)。元々独りよがりな俳優が集まったのか、演技経験の浅さや集中力の弱さがあるのか分かりませんが、板倉さんが演出をつけきれていなかったのではないか、と少し勘繰ってしまいました(出演のBチームでのお芝居が良かっただけに)。

ネタバレBOX

どちらのチームも言えるのですが、父親?役は、あんなに浅くていいのだろうか。自殺を考えるほど追い詰められてた本当の人間に到底見えなかった。あの存在がお話のとても大事なベースラインだと思うので、後半がフワフワして観るに辛いものがあった。他の多くの演者さんにも影響してしまっているのでは?と思いました。
空蝉

空蝉

あやめ十八番

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/09/01 (木) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

第一幕75分休憩10分第二幕75分。
落語を知っていれば尚楽しいのだろう。
『死神』、『地獄巡り』なんかが出てくる。
タイトルの『空蝉(うつせみ)』は『源氏物語』ではなく、蝉の生き死にの判断基準を死神が教えるエピソードからだろう。脚が開いている内は死んでいない。本当に死んでいたら全ての両脚を内側に交差して閉じてしまう。現世に生きて在る人間達、本当に生きているのか最早自身にも判断が付かない虚無の中。

第一幕は台詞が聴き取り辛かった。沢山の登場人物のそれぞれの設定と細かな関係性がよく分からぬまま、ぼんやり観る感じ。これだけ生バンドで陽気なドタバタなのに、自分の見える範囲だけで5~6人熟睡していた。何かや誰かに感情移入する切っ掛けがあればもっと話に入り込めた筈。登場人物全員を詳しく描き込んでいる為、本筋が見えにくい。
地獄のチェックインカウンターのグランドスタッフ役・中野亜美さんが最高。長身に喪服姿。彼女が出る度、パッと明るくなる。いや今作も最高だった。早く主演で観てみたい。そう思っている人はかなりいるのでは。
庄司ゆらのさんのラップも凄かった。
MVPは死神お玉役の金子侑加さん。人差し指を立てて四方を指差すドリフっぽいダンスの振り付けが可愛い。最早バーチャルアイドル。彼女と緒方卵白の物語を中心にした方がまとまる。

ネタバレBOX

第二幕は開幕からぐっと中に入れた。盗っ人が死神に惚れられ、緒方卵白と名乗る町医者になるまで。卵白役の丸川敬之氏はイケメンの小島よしおみたい。死神お玉が凄く良くてまるで高橋留美子の描くキャラ。二人のおままごとのような夫婦生活が美しい。金子侑加さんは今回出ていないのかと思っていた。終演後彼女だったと気付く。マジかよ!やられた!
第二幕は客席の熱度も上がり、物凄い良い雰囲気で舞台に集中。

江戸一番の薮医者・緒方卵白の練った頓服が地獄に9時間だけ行ける不思議な薬、反魂丹(はんごんたん)となってしまう。最愛の女房・お梶(大森茉利子さん)を亡くし、失意のどん底に沈む魚屋・新八(林明寛氏)は地獄で再会することができた。これが噂を呼び、反魂丹を使っての『地獄ツアー』が大流行。そんな中、噺家の名跡を巡って大酩亭一門は謀略を巡らしていた。

閻魔大王の右腕役の島田大翼(だいすけ)氏がオリラジのあっちゃんに似ていた。

ドリフ・リスペクトの痛快ドタバタ。多分もう一回観た方がずっと面白く感じる筈。千秋楽だった・・・。
コーリングユー

コーリングユー

快快

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2022/08/26 (金) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

快快を一言で言えば「全く読めない」、製作と思考のプロセスが「想像がつかない」。こりっち的には第2回アワード第一位を岩井秀人作品をアレンジした舞台で受賞とのこと。
自分の初見は2018年アゴラにて、メンバー3名による奇妙なパフォーマンスにはトークゲストの岩井氏が「あれ何?」とガチ突っ込みして笑いが起きていた。その後KAATで多田淳之介の「再生」を岩井演出バージョンで上演、後藤剛範や元メンバー中林舞も加わり、私的には「再生」初体験で衝撃であったが、快快の正体は依然不明。
身体表現に傾倒したグループではあり、集団制作を行なう集団のようで一つのポリシー、才能がリードする製作でないため、構成メンバーによって変容すると思われる。今回の作品も海のものとも山のものとも、であったが、詩人・鈴木史郎康を扱うというので鋭い方向性はありそうと踏み、足を運んだ。
多彩な局面が飛び出てくる。休憩を舞台上で行なうが、客の姿は見えない体でやるので成立している。アゴラで観た時と同じ3名プラス上手側でキーボードと機材で音を出し続けている女子の4名で作る舞台はまるで子供の遊び時間のよう(即ち永遠)であるが、詩人から作り手が受けたもの、授かった何ものかをじんわりと伝えて来る。それは「現代」が、あるいは現代を生きる自分が、時間と共に失って行くもの、あるいは負わせられて行くものからの「解放」を示唆する。史郎康の言葉を言う天の声(雑音混じりのラジオから聞こえる女性の声)が、宇宙との交信のよう。・・人は人生を線で捉えるが、過去は一切なく、未来もなく、現在という点だけ。
延々と続く時間を象徴する舞台上の大きな三角形の上で、演者は移動したり止まって何かをやったりする。時にそこを下りて歩いたり、三角形の中にある水場(浮き輪が浮いている)や、電話ボックス。演者の衣裳も含め風景としてはリゾート地。電話ボックスの使い方が面白い。開幕してのっけに誰か(多分史郎康)に電話をかけ、今から舞台やるんだけど大体○○分位、受話器置いとくから聴いてて、途中眠くなったら寝てもいいし・・半前説的な台詞で始まる。で、電話ボックスだが、途中何度か演者が置かれた受話器を手にとって電話の向こうに話しかけるのだが、相手が実は認知症かのような仄かしがチラと過る。この仕込みによって、聴く者は、折節に読まれる言葉が「詩人の言葉」とも「痴呆老人の言葉」とも解し得ることとなる。すなわち、一詩人という存在を超えて行く。聖書にある預言者(神の言の媒介者)は詩人と同義と言われるが、権威が認める者だけが詩人であるとは限らない。
さり気ない工夫の数々、ディテイルに知とユーモアが潜み、相変わらず快快という集団の正体は判らぬが遊び時間を存分に堪能した。ラッキー。

SHINE SHOW!

SHINE SHOW!

Aga-risk Entertainment

シアター・アルファ東京(東京都)

2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/09/01 (木) 14:00

進行中のイベントに次々と襲い掛かるトラブルを解決しようと奮闘する運営スタッフ、という典型的なショウマストゴーオン系のコメディにしてアガリスクの真骨頂? そして題材に選んだイベントの活かし方/アレンジの仕方が緻密・巧妙でさすがというか絶品。
休憩前にこれでもかと言わんばかりにトラブルを積み重ねておいて、休憩後の後半でそれまでのあれこれを使ったりもしつつそれぞれが解決「されてゆく」のが「あれをそう使うか!」や「その発想はなかった」など多彩かつ鮮やかで飽きさせないどころか感服。
さらに劇中で生歌を披露する方々の歌の巧さよ! 天は二物を与えずじゃなかったのか?(笑)ってくらい玄人はだしで見事。(うちお一方は別の意味で巧い……以下ネタバレBOXへ)]

【9月6日付記】
前半の各人とその事情・背景紹介はそれだけ見ても見事な精密加工の部品という感じで、後半ではそれらが組み合わされてさらにスゴい完成品になるような……それって個々でも戦闘できるが合体すると超強力になるアレに似てないか?
敢えて言おう本作は戦隊ものの合体メカであると。(真顔)

ネタバレBOX

本作に限らず設定が音痴の役を演ずる役者が劇中で歌うことがあるが、わざと音を外して歌うのは実はかなり難しいのではないか?
σ(^-^) だったら伴奏につられてほぼ正しい音程にしかならないような気がする。
銀河鉄道999 THE MUSICAL【4月14日、4月16日公演中止】

銀河鉄道999 THE MUSICAL【4月14日、4月16日公演中止】

『銀河鉄道999 THE MUSICAL』実行委員会

日本青年館ホール(東京都)

2022/04/08 (金) ~ 2022/04/18 (月)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

何度も上演されている作品なので、ストーリーは置いといて・・・演出に抜けがないというか、広大な宇宙の広がりが感じられない。ハーロックの登場シーンで満月が両サイドかけている図などはちょっと頂けない。舞台に高さがないせいもあるが、狭苦しい宇宙だなという気がしてならなかった。ずっと演じている星野鉄郎役の中川晃教氏、代役となった花總まりさん、トチロー役の藤岡正明氏、演技にも歌にも見せる要素タップリであった!

「歴史小説家・霧島蒼龍シリーズ外伝 / 霧島隆子参上 ちょっとAC(交流)しちゃいます。」

「歴史小説家・霧島蒼龍シリーズ外伝 / 霧島隆子参上 ちょっとAC(交流)しちゃいます。」

SPPTテエイパーズハウス

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2022/09/01 (木) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

このシリーズ初めての観劇。リアル劇と劇中劇的な歴史フィクションドラマが同時に楽しめて嬉しい。勉強になりました。

空蝉

空蝉

あやめ十八番

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/09/01 (木) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

浮世離れした、内容と展開でしたが面白く楽しかったです

『Q』:A Night At The Kabuki【7月29日~31日公演中止】

『Q』:A Night At The Kabuki【7月29日~31日公演中止】

NODA・MAP

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2022/07/29 (金) ~ 2022/09/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初演の時、都合が合わず泣く泣くリセールに出したが
今回は無事に観劇することができた。今年は一番最初に観劇しようとしたが
公演中止になり、絶望したがチケットのリセールのなんとかなった。

野田秀樹の戯曲は相変わらず、ぶっ飛んでいるのであまり
感想を読まずに観劇したほうがよい気がする。

途中で、「このくされ〇〇〇!!」の部分は何をしたかったのかよくわからないw
少し空気がピりついたような、個人的には過激な発言するねぇ~、うえ~い。

フェイクスピアとQの戯曲本も購入。

『OH!Myゴ-スト』

『OH!Myゴ-スト』

東京ハイビーム

あうるすぽっと(東京都)

2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ダンス部編観ました。笑えて泣ける、青春やりの残し救済コメディ、堪能しました。

あのひと

あのひと

 StageClimbers

新宿眼科画廊(東京都)

2022/09/03 (土) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

3人の姉妹弟+αの会話劇。いや~リアルに感情移入してしまいました。中高年の独り身の兄弟は一緒に暮らすのがいいやら悪いやら。相互依存に陥っているのも何かコワい。

空蝉

空蝉

あやめ十八番

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/09/01 (木) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

舞台セットが墓石なんて洒落が効いてて生演奏もオツで あやめ18番らしいかなと。ちょっと残念だったのが熱が入りすぎてか台詞が聞き取りにくいところがありましたが面白可笑しく楽しませていただきました。

憫笑姫 -Binshouki-

憫笑姫 -Binshouki-

壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/08/17 (水) ~ 2022/08/23 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ステージ上で誰もが走る!飛び回る!カメラワークがぐるぐる回る!
特殊な小道具は布だけ、これが舞台作品でありながら映像作品のような観劇体験を生むのですが、これが生で見られる幸せときたら…!
もちろん演出だけでなくストーリーや演技でのそれぞれのキャラ立ちが素晴らしく、目がそれぞれ左右別に動いてもう二揃いはないと全部が見きれないのでは…などと考えてしまうくらいには舞台上でキャラクターがいきいきしていました。
次から次へと展開されるパワーのある演技に圧倒されて自然と手に力がこもって、終わるころには膝に乗せてた帽子がぐしゃぐしゃになっていました笑
終演後のトークコーナーも漫才のようなテンポの良さで非常に楽しかったです!

ネタバレBOX

特に好きなのがケイレブ団長に稽古つけてもらった女官たちのシーンと、満を持して登場するミラ姉さん!
団長が旗を翻した瞬間に現れるミラ!この一連の流れが嫌いな人おらーーーーん!!!と主語が大きくなってしまうぐらい好きです…!
コスモス/KOSMOS

コスモス/KOSMOS

サイマル演劇団+コニエレニ

シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)

2022/08/25 (木) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

「狂人と尼僧」が秀逸だった同ユニットの今作は、テキストの解読が難しかった。(と言っても毎度難しいのであるが、、)
時計の秒針を鳴らしながらの上演という(お馴染みの)演出が、観る自分の胆力もあって催眠効果になったか・・。テキストを読んで観劇に臨むか、パンフに梗概が載っているとか、必要ではないのだろうか。
抽象性の高い舞台は観慣れてはいなくとも面白がれる自負だけはあったが、今回は自分はあと何がほしかったか、抽象舞台の成立の要素は何か、つらつら考える事になった。発語者の感情表現、的確な物言い、そこではないか。
テキストはこうした作品(サイマル演劇団の得意とする)の例に漏れず、モノローグが主であり、出演者同士の(役人物の)関係性を知らせる台詞情報は薄く、冒頭近くに最小限の説明が為された感はあるが、それで事足りるはずはなく、ドラマの発展の中で通常はそれらが明瞭に浮かび上がるものであるが、その説明には殆ど字を割いておらず、人物個々にしゃべらせたい事をひたすら喋らせているといったような・・。常連の葉月結子の突出感(おどろおどろしさ)は、ヒントの少ない舞台にあっては有難く、それは意味的な情報をもたらすというよりも、心情表現自体がもたらす快楽である。言語を嚙み砕き征服し、己のものとして吐き出す事が出来ているから、だと思う。台詞を追いかけている演技の段階(モノローグではそれが許されそうだが)では、あの声は出せない。役者的にはその声は役の中心からしか発せられない、という事であるならば、役をどう捉えるかも大きな課題で、テキストを提示する、という役割だけでは舞台として自立しないのだろう。役者の役割は大きい。「人のせい」にする訳ではないが、役の「心」が見える演者が一人増えれば、もっと立体的に見えたのかも・・等と想像を逞しくする。
舞台のビジュアルはよく、演出の手の内に自分がある感じがするし、言葉を発する役者の力量は否定しないのだが・・。

毛皮のヴィーナス

毛皮のヴィーナス

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2022/08/20 (土) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

二人芝居。内容にも拠るが全編ダイアローグで成立する二人芝居を泳ぎ切るだけでアスリートに送る声援と同じ種類の拍手を送りたくなる。一人芝居にも感服するが、二人の方が不確定要素が混じり(いや厳密には一人芝居もそうなのかも知れぬが)、正しくライブ。取り組み甲斐のある題材を剛腕という印象の溝端淳平、ミューズの高岡早紀がポテンシャルぎりぎりを出し切る激しさで好演。戯曲はマゾッホ作品を脚本化した青年が(他に演出できる者がいないという理由で)演出をするオーディションに、遅れて入ってきた女優とのやり取りである。
劇中の戯曲の場面を演じる役者としての二人、素に戻ったときの二人、を行き来するが、「役を変わって」と言われて逆の役をやる場面もあって、人格としては一つなのだが、憑依する演技によって、素の自分(たち)にその影響を及ぼし、二人の関係性をも侵食して行く事で「今誰なのか」が必ずしも判別できなくなる様相。他者を演じることはそこに自分を見出す事でもあるが、この戯曲は眠れるマゾッホ性を見出していく二人という「変化」により、この戯曲総体としてマゾッホ文学=常識の解体(の危険性?)が図られている。ある性嗜好の発見・理解から人間の本質に迫るアプローチと言えるか。対等でなく主従の関係を求め、服従する事に快感を覚える背徳性(「服従するに値する」相手が現われなければ実現しないが)は、人権思想の否定に繋がりそうなタブーな世界観だが、どの時代にもタブー領域は先見性とも言える。(これと似た物として思い出すのは、「人間とは忘却によって辛うじて救われている」、と述べた思想家が居たが、これは「歴史を忘れてはならない」という正論に土砂を掛ける手強い論理である。)
この視点に即して、今舞台では戯曲が何を狙ったのか、というあたりが必ずしも見えて来なかったが、スリリングで楽しく、演技としては指定されている動き(例えば帰ろうとして帰らずに戻る等)を十二分に正当化し、臨場感ある流れを作る様は見ていて気持ちよく、ノリで行くタイプが高岡、計算しているのが溝端、という印象ではあった。
「貴婦人の来訪」で実力を見た五戸演出の、こちらも成功作となった。

銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜

東京演劇アンサンブル

池袋西口公園野外劇場 グローバルリング シアター(東京都)

2022/08/26 (金) ~ 2022/08/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

池袋西口広場、以前はどんな場所だったっけ・・・変ってしまうと中々思い出せないが、かつてここは秋季開催の演劇祭FTトーキョーの会場になる事もあり、忘れもせぬインドネシアのグループが竹で組んだ巨大な「船」で行なった無言のパフォーマンス、その後、広場の奥側に作られた恒常的なステージ(今もある)に組んだ客席から、広場を縁の方まで広く使った豪州だったかの障害者と作るグループ(昼日中飄々としたパフォーマンスが微笑ましかった)、そして今年何年目かの「東京演劇祭」の初年、野外劇「三文オペラ」等等。
野外劇と言えば「夏」、のセオリーに則り、今回は東京演劇アンサンブルの往年のレパートリーが装い新たに出現した。
広場奥の常設ステージには盆に乗った岩場(客が乗る=銀河鉄道を表す)から、後部座席辺の円形の台まで一直線に道が延びる(高さは70cm位か)。広い空の下、会場自体が物語のスケール感に相応しい「装置」となっている。ジョバンニは学校からの帰り道、草の上に寝ていていつしか「銀河鉄道」に乗っている。ジョバンニの日常のこと、すなわち、カムパネルラやザネリ、父のこと、牛乳を取りに行く事などは道中、あるいはラスト、最小限の台詞で説明される。物語の大部分はカムパネルラと銀河の旅程で見る様々な不思議な場面だ。
「歴史の歴史を掘る」博士、鳥を採って押し葉にする鳥獲り、人間界からやって来た船舶事故で溺れた姉弟とその家庭教師のお話、赤く燃えるサソリの話・・。新演出としてはサソリが炎のように踊る踊りは以前見たのと振りが変わっていて、見ると振付に三東瑠璃の名前。そして出色は、スペーシックなイメージの映像が新たに加わって場面転換で流れる。これが何とnibrollの高橋氏によるもの。
一度は長い上演期間を経て終了したアンサンブルの「銀河」、今回はこの会場仕様の誂えという事かも知れないが、一度も洗った事のない寸胴に入ったソースが、新しい素材を加える事で常に新鮮に(作品の本質を変えず)蘇ることを改めて発見できた。

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2022/08/17 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「ガマ」
戦争六篇の大千穐楽観劇(5篇観た、残る「帰還不能点」は昨年観劇)
本作に拍手、そしてこのような厳しい状況下、他の公演が軒並み中止に追い込まれる中、細心の注意を払って8月18日からの長丁場で六篇上演しきったことに大拍手
日本にとって沖縄とは何なのか?
いまだに続くこの重たい問いに正面から取り組みつつ、生きることがいかに困難で貴いものなのかを訴える
照明はランプだけでステージはずっと薄暗い
ガマの暗闇が表現される
キャストはみな表情が凄い
ランプの灯りがそれを増幅する
キャスティングも素晴らしいが、前半は相変わらず先生役の西尾さん上手いなと感じる
苦悶する表情が素晴らしい
後半圧倒されたのは大和田獏
うちなんちゅの老人役だが、うちなーぐち(良くは分からないものの感じとして)が完璧で、老人らしいある意味達観した飄々とした雰囲気を醸し出していた
そしてラストの白旗を掲げた清水さんを先頭に皆で歩き始めるシーン
大和田さんの挙げた両手の先は微妙に震えている!
最後尾の青木さんのまだ意を決しきれない表情も素晴らしい
紅一点の清水さんは皇民教育に染まった少女の決然とした態度を良く表していた
「帝国臣民」「聖戦貫徹」といった言葉が飛び出す
「私たち沖縄県民はどうやったら日本人になれるんですか」
「友達は皆日本人として立派に死んでいった」
などという台詞は心臓をえぐる
そんな彼女を(あるいは兵士たちも)生かそうとする先生と老人
それを後押しする少尉(岡本)
場内2時間余り物音ひとつしない
最後の老人の「命は宝だから」という言葉の重み
いつになったら「沖縄県民かく戦えり」は報われるのだろうか
いつも思うのだが、劇チョコの舞台の転換に用いられる重たい音楽は効果的だ
セットもシンプルだが効果的
トリプルコールになった
当然だろう
最後に退きかけたあとの二人の団員の肩を抱いて連れ戻して挨拶した西尾さんの顔は晴れ晴れとしていた

舞台「ドロシー」

舞台「ドロシー」

ドロシー

草月ホール(東京都)

2022/08/31 (水) ~ 2022/09/09 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

開演前、スポットライトでほんのり照らされた立派な舞台セットはセピア調に染まり「これからオズの魔法使いの大アドベンチャーが始まるよー」と言っているみたいだった。
いざ開演、ライトアップされると、目の前には全く異なる印象の光景が
え、騙されたっ!
いやいや、事前にあらすじに書いてあるし・・・そう、ここは廃墟となった遊園地の機械室
どうやら この「え、騙されたっ!」感が全体に張り巡らされた胆なのではないかと

素性を全く知らない者同士、呼び名は「オズの魔法使い」の登場人物、問題をクリアーする毎に垣間見えてくる素顔、案外良い奴かも、いや おかしいでしょ、やっぱり裏切り者が・・・
無邪気な笑いとブラックユーモアを交錯させながら謎解きを進めて行く銀行強盗犯たち。
あぁ、これは完全に「決して、結末は外で話さないでください」のやつ


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