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「カレル・チャペック〜水の足音〜」

「カレル・チャペック〜水の足音〜」

劇団印象-indian elephant-

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/10/07 (金) ~ 2022/10/10 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/10/10 (月)

価格4,720円

10日13時開演の千穐楽の舞台を拝見(135分)。

旧・チェコスロバキアの国民的作家の半生の背景である世界情勢は、今、まさにウクライナ・ロシア間で…さらには我が国も決して他人事ではないリアルな現実として、観客の一人一人に突きつけられていたのではないか?
しかしながら、そうした世界情勢の中にあっても、作・演の鈴木アツトさんが訴えたかったのであろう、個々の民族・政治体制に拠らず、自立した地球市民的な考え方には強い共感を覚えた。

なお、演じ手では、そんな作者の理想を具現化した人格であると個人的に感じていた、アレナ役の山村茉梨乃さんが大変印象に残った。

【追記】
”その後”のカレルの兄・ヨゼフやヤン・マサリクの最期を知り、改めて、考え込む羽目に陥った。

ネタバレBOX

【配役】
カレル・チャペック…二條正士(にじょう・まさし)さん
ヨゼフ・チャベック(カレルの兄。画家。作家)…根本大介さん
フランティシェク・ランゲル(カレルの親友。軍医。作家)…岡田篤弥(おかだ・とくや)さん
オルガ・シャインプフルゴヴァー(女優。後にカレルの妻に)…今泉舞さん
ヤルミラ・チャプコヴァ-(ヨゼフの妻。仏語の翻訳家)…岡崎さつきさん
ギルベアタ・ゼリガー(独語の教師。”民族対立の象徴”的存在だが、実は凄惨な体験が…)…勝田智子さん
トマーシュ・マサリク(チェコスロバキヤ共和国大統領)…井上一馬さん
ヤン・マサリク(トマーシュの息子。外交官。政治家)…柳内佑介さん
アレナ・チャブコヴァー(ヨゼフ、ヤルミラの娘)…山村茉梨乃さん
アンサンブル…
河波哲平さん、佐藤慶太さん、佐藤勇輝さん
星野真央さん、堀慎太郎さん、松浦プリシラ亜梨紗さん
なくなるカタチとなくならないキモチ

なくなるカタチとなくならないキモチ

一般社団法人グランツ

駅前劇場(東京都)

2022/10/07 (金) ~ 2022/10/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/10/10 (月) 14:00

座席1階

東日本大震災と原発事故で避難を強いられ、避難指示解除と同時に戻って再開した福島県楢葉町の障害者施設を運営する女性をモチーフにした舞台。知的障害者の俳優たちが所属する横浜桜座のプロデュース公演で、主人公の女性を歌手で俳優の南野陽子が主演した。

南野陽子の小劇場での公演を初めて見た。丁寧で明瞭な発声でとても好感が持てる。小劇場の舞台ではやたらとシャウトしたりオーバーな発語をする俳優が多いと感じていただけに、まるでメロディーでも聞いているようなスムーズでさわやかなせりふが心に染み入った。役柄が障害者施設で利用者たちに相対する落ち着いた人だから、まさに見事な演じぶりだと言わざるを得ない。それに加えてアイドル時代をほうふつとさせる笑顔がよかった。
彼女に引っ張られる形になったのか、ほかの俳優たちもしっかり役柄の個性を演じていて完成度は高いと思った。実際にあった話を下敷きにしていて、震災と原発事故による避難では障害者たちはその障害ゆえに苦難を強いられた。そうした事実をしっかりと描きながら、舞台に重苦しさを感じなかったのは俳優たちが足が地に着いた演技をしたためだろうと思う。
ラストシーンがよかった。桜座のメンバーたちも含めた総出演で展開したメッセージの数々はとてもいい。
障害の有無を超えて社会的な課題を考えていけるこのような舞台が、もっと増えることを願う。

朗読劇 無宿の寵愛

朗読劇 無宿の寵愛

株式会社K'sLink

ザムザ阿佐谷(東京都)

2022/10/09 (日) ~ 2022/10/11 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、朗読劇だが 力作といった印象である。
また楽しみに出来る劇団と出会えて嬉しく思う。

幕末の動乱期、人斬り以蔵と恐れられた「岡田以蔵」の半生を力強く語る。それは単に台本を読むだけではなく、音楽・音響、照明といった舞台技術との相乗効果も見事に発揮。なにより役者陣の熱演が物語に緩急をつけ、巧みに その世界観に引き込む。朗読劇ゆえ、殺陣等の動きこそ観られないが、表情の豊かさ、土佐弁での喋り、そして全員和装(紅一点の万姫サンは日本髪)で、外見にも気を配る。勿論、舞台美術も意味ある配置で、武家社会を端的に表している。

以蔵は、足軽という身分(1人だけ裸足)ゆえ、学がなく泥臭く地べたを這いずり回るかのような描き方であるが、不思議とその世界観は格調高い。彼の心情を激白させるが、そこには疑うことを知らない純心さ。それ故の悲哀が浮かび上がる。
(上演時間1時間30分) 

ネタバレBOX

舞台セットは、中央奥を少し高くした平台(山内容堂)、その下手側に中央より少し低い平台(武市半平太)がある。中央と上手に障子戸が立ち 和空間を表出する。下手に洋楽器があり、場面に応じて生演奏を行う。登場人物は概ね8人(箱馬の数)。一人で複数役を担う役者がおり、それによって幕末という動乱期に生きた人々(志士達)を活写する。役者陣の熱演が、この朗読劇の醍醐味そのものである。特に以蔵役の積田裕和さんの目力は、鬼気迫るものがある。

登場人物は、岡田以蔵、山内容堂、武市半平太、坂本龍馬、平井周二郎、井上佐一郎、土方歳三、そして紅一点で語りと岡田以蔵が惚れた なつ である。なつの語りで状況が丁寧に説明されるから、人物の朗読が始まっても困らない。朗読する時に立ち上がり、そこにスポットライト。全体的に薄暗い中で 特定人物への照射は、その角度によって他の人影と重なり暗殺といった光景を観せる。

物語は土佐藩士・吉田東洋が武市半平太の指示によって暗殺されるところから始まる。半平太は思惑もあって、足軽という身分低き岡田以蔵に目をかける(寵愛)。その恩義に報いようと、京都で人斬り以蔵と恐れられる存在になっていく。最初の暗殺は同じ土佐藩士の井上佐一郎(土佐からの下横目)、その絞殺場面が下手の壁に大きな人影となって覆い被さる。見事な照明効果の演出である。また音響は生演奏と音楽を流す方法で情景を印象付ける。場面によって洋楽器の演奏、和楽の音楽を流すといった使い分けが実に効果的であった。台詞(心情表現)によってはエコー効果も効かせる。

学(がく)がなく、ただ半平太に言われたことを実行する。坂本龍馬から時代の趨勢を聞かされるが、それでも半平太の言葉を盲目的に信じる。そこに悲しいまでの妄信を見る。京都の小料理屋の女・なつ は、以蔵にとって安らぎの存在となっている。淡い恋心のような、そんな”愛”も感じられるが…。
素性の知れない武士と親しく話すようになるが、それが新選組副長・土方歳三である。その会話は、敵同士でありながら暗殺談義をするような光景。以蔵は歳三に対し、同じ血の臭いを嗅ぎ取っていたのかも知れない。一方、半平太は山内容堂の逆鱗に触れ切腹する。その後、以蔵も斬首されるまでを描く。無駄死にとも取れる様な「岡田以蔵」の半生、それでも一人の幕末異端志士として力強く描いている。
次回公演も楽しみにしております。
たなびく黄昏

たなびく黄昏

浪花グランドロマン

ウイングフィールド(大阪府)

2022/09/30 (金) ~ 2022/10/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

こじれまくる3人姉妹が、がみがみ 大して変わらないことを回りの平穏を壊して思いを大声て言ってしまう。父と結婚した母 何も言わなった亡き母親 家族 親戚 送る気持ちは同じ。がみがみとそれ以外は平和な家族 家族の姿 めんどくさいですが、それぞれにあるのかも。

ラストシャフル 2022

ラストシャフル 2022

東京ストーリーテラー

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2022/10/06 (木) ~ 2022/10/11 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/10/08 (土)

もう後がない崖っぷちのカップルが一人のおじいさんと出会い、商店街の草野球チームと出会い
再生していくこの物語は、今の混沌とした世の中にあって忘れていた、何か大切なものを教えて
くれた様に思う。出演者の皆さん、全員素晴らしい演技で心に沁みました。【A/B鑑賞】

ネタバレBOX

途中の歌の場面、良い曲なのに歌詞が少し聞き取りづらく勿体なかった。
前半と後半で雰囲気がガラッと変わるが、後半始まってからの久美と恭平の喧嘩の場面が秀逸。
最後に重吉じいちゃんに自分の父親を重ね合わせながら語りかける恭平に泣かされた。
『ハムレット奇譚』

『ハムレット奇譚』

劇団五期会

ABCホール (大阪府)

2022/09/30 (金) ~ 2022/10/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

シェイクスピアの四大悲劇の『ハムレット』 母ガートルードが目指した物は、優しさ 国民への想い 平和 ハムレットは最後に、この国を託したのは。悲劇の中ひとり生き残ったホレイショ―は見ていなかった、観ていた道化 すべてがもう少し時間をかけて話せば、この悲劇は回避できたんだ、こちらの背景の方が腑に落ちます、面白かった。

ヴェニスの商人

ヴェニスの商人

イエローヘルメッツ(Produced by GMBH)

かなっくホール(神奈川県)

2022/08/20 (土) ~ 2022/08/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

前身の子供のためのシェイクスピアのファンです。
新しい方も加わりながらいつもの演者が出られて、嬉しいなと思いながら拝見しました。

コミカルなアレンジで見やすく楽しい気分にさせてくれながらも、シャイロックの苦悩や裁判の緊迫感を感じさせてくれる良い舞台でした。
一人が複数役を兼任・椅子と机のシンプルな舞台装置という以前からのスタイルを踏襲しながらも、子供のためという縛りがなくなったために、シェークスピア原作にある差別表現や下ネタがぼかさず表現されるようになり、個人的には見応えが増したと感じました。

シャイヨの狂女

シャイヨの狂女

劇団つばめ組

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2022/10/06 (木) ~ 2022/10/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

少し内容難しかったです。悪い人をやっつけたんだろうなとは思うのですが、その人たちも救われた?華やかでエンターテイメント的ではありましたが、内容はあまり入ってかなかったです。次回を期待です

車窓から、世界の

車窓から、世界の

iaku

新宿シアタートップス(東京都)

2022/10/01 (土) ~ 2022/10/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

アゴラで観た初演はiaku観劇何作目だったか、「面白い!」と思った記憶があったので、今回足を運ぶ事にした。リーディングという事で何か趣向を期待したが割と普通の読みであった。アゴラの舞台は長い閑散としたホームの美術が見事だった事を思い出し、想像の翼をもがれたように序盤はもどかしく感じたのだが、恐らく今回作者が甦らせたかっただろうテキストの後半のやり取りでは、ドラマに入り込んでいた。こういう話だったか、という感じ。シリアスである。関西地方のとある新駅。ト書きの解説に、住民の要請で出来た「要請駅」の失敗例で利用客が少ないとある。この駅のホームから、中二の女子3人が電車に飛び込んだ。二人は死に、一人は重体で病院の治療室にいる。雨が降るこの日、3人が小学生時代所属していたガールスカウト主催のお別れの会がある。喪服で登場した若い女性教員と私服の若い男。恋人らしい。そこへ同じく喪服を着た女性二人は一人がPTA副会長、一人がガールスカウトでスタッフとして働く女性。電車は事故で遅れており、行き先の同じ2組はいずれ会話を交わすが、屋根のないホームの端のベンチに茫然と佇む若い男を気にして、カップル男が駅員を呼びに行く。やがて現れる駅員、その後やって来る例の若い男と、登場人物は計6人。(舞台上にはト書き読みと合わせて7人が居る。)
若い男は漫画家志望で、実は三人と接点があり、彼は描いた漫画を三人に見せていたのだが、その内の一人が漫画のストーリーに自分と男の関係を重ね合わせているらしい事を察知し、空想を諦めさせるために描いた漫画の続きを見せた所、その翌日に事件が起きてしまったと告白する。そこから、自死の責任問題が一しきり話されもするが、事の責任のありかより、不分明でありながら厳粛な事実を残された者の側に何が問われたのか(と理解すべきなのか)に問いは変質して行く。
現在ネット上で顕著な、個人の行為に対して即断罪、締め上げに走る言論が根本的に見落としている物事の多面的な理解の余地を、この戯曲は示唆する・・とまとめるのは平板過ぎるか。だが時事イシューを巡るネット言論は深刻な病みを抱え、私はこれを参照したテレビラジオ放送、ましてや政治はあり得ん、というより質の低い言論に数が多いというだけで一目置いてしまう振る舞いの奇妙さを思う。

嘘ぎらい

嘘ぎらい

『OYUUGIKAI』製作委員会

本所松坂亭(東京都)

2022/10/05 (水) ~ 2022/10/10 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、珠玉作。
嘘が嫌いな主人公・理を 一役3人が違う世代で紡ぐ心象劇。オムニバスを長編に書き直しているため、多少違和感はあるが、それでも一人の男の心の彷徨を上手く繋いでいる。物語に頻繁に出てくる宮沢賢治の小説「銀河鉄道の夜」の一節を朗読し、物語の雰囲気というか世界観を抒情豊かにしている。主人公の心の旅は小説そのものであり、生と死を見つめるもの。

チラシにも書かれている「私はここであなたを見てる。俺は君を忘れてる。という嘘のお話」が、始まりであり結末でもある。その観せ方が、冒頭と終わりを回帰させる展開、つまり旅の始まりであり終わり。夢(心)の中で悩み苦しんだ末、(現実の)生を謳歌する決意が出来た といった後味の良さにしている。
(上演時間1時間10分)【星チーム】

ネタバレBOX

舞台セットは、大きさが異なる 通り抜けできるアーチ型支柱のような後景。ほぼ中央にテーブルと椅子、上手と下手に同じような小衝立が縦 横に向きを変えて置かれている。テーブルの上にあるランタン風の照明器が橙色の光を放つ。全体的にスタイリッシュといった印象だ。

物語は、理の部屋に元恋人・守宮鈴(池澤汐音サン)と理の妹・末廣明音(高宗歩未サン)が心配して訪ねてくるところから始まる。
 暗転後、理が十代か二十代の頃、鈴に告白し付き合いだすことになる。デートの初々しさが微笑ましく、人の優しさが全面に出ている。観ているこちらの方が恥ずかしくなる。しかし、何時しか鈴からの連絡が滞り、突然(引っ越しで)会えなくなる。

 理が三十代の頃、3年間同棲した有賀紘子(堀有里サン)と別れる。将来の約束を果たせるか否か、責任を負いたくないと言う彼の言葉。紘子がしたいとおりにすれば、という一見優しい態度だが、真に彼女と向き合おうとしない。傷つくのが怖く本心を表せない。
 紘子と別れた後の数年後、外で星空を眺めている理に見知らぬ女が話しかけてくる。今日プロポーズされて嬉しい、が ビールを飲んで少し酔っている。見ず知らずの人だからと言い、自分の妹の身の上を話し出す。その話を聞き愕然とする理は…。彼女の名は守宮渚(木下彩サン)、鈴の姉であった。自分だけが幸せになっていいのか、そんな葛藤を抱えているかのような語り方である。同時に見知らぬ人と言う台詞があったが、実は素性を知った上で話したのではないか。理にも幸せになってほしい…そんな思いで接触したのではなかろうか。嘘ぎらいに、優しい嘘をついたと思いたい。

会話の途中で 理は何度も「うるさい!」と怒鳴る。傷つきたくなく、干渉もされたくない。また 鈴はいなくなる直前、「大丈夫」と理に言う。しかし、その言葉は嘘で強がりであった。嘘なんか言わなければよかった。後悔は人生につきもので、それを乗り越える勇気が必要だと。
「銀河鉄道の夜」ではジョヴァンニが友人 カムパネルラと旅をするが、その辿り着いたところは別々の場所。ジョヴァンニは現実の世界に戻り、カムパネルラは消え去ってしまう。この2人に準えた 理と鈴の物語は美しくも悲しい。
印象的なのが、何かと面倒を見てくれる妹・明音も含め、理が対話する時はピアノがずっと奏でられる。その優しい音色に癒される。
次回公演も楽しみにしております。
「カレル・チャペック〜水の足音〜」

「カレル・チャペック〜水の足音〜」

劇団印象-indian elephant-

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/10/07 (金) ~ 2022/10/10 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

カレル・チャペックはもともと好きな作家であり興味はあったが,それだけではなく,戦争の足音,その時代の中,彼をめぐる家族や友人との人間関係…彼らの心情が見事に表現されていて,深みのある作品に仕上がっている。これは観るべき価値のある一作。おススメします。

How to stop falling in love

How to stop falling in love

劇団スクランブル

スタジオ「HIKARI」(神奈川県)

2022/10/07 (金) ~ 2022/10/10 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/10/09 (日) 18:00

100分。休憩なし。

かえるの諸事情

かえるの諸事情

劇団かえる

STスポット(神奈川県)

2022/10/09 (日) ~ 2022/10/10 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2022/10/09 (日) 14:30

55分。休憩なし。

住所まちがい

住所まちがい

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2022/09/26 (月) ~ 2022/10/08 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

一言でいうと「不条理コメディー」の範ちゅうに入る作品なのかなと思う。
笑っちゃう部分もあるんだけど、議論の内容が錯綜しつつ、途中で結構難解になったりも
するので、単調で眠気を感じるパートがあることは否めないかなと。

塩野七生と宇野千代の箇所には笑った。小ネタがイチイチウケる(笑)

ネタバレBOX

登場人物は以下。本人の性格を反映しているのかは不明。

ナカムラ(仲村トオル):小さな会社を経営している人物。作品舞台をゲストルームとし
フミカなる女性と密会するために来たとする。非常に気が短く、かつ「神は信じてこなかった」と
言いつつ、かなり迷信を信じる部分もある。

ワタナベ(渡辺いっけい):元警部で現在は警察絡みのシークレットサービスに勤める男。作品舞台を
練り歯磨きを取引する会社だとし、その担当者と待ち合わせしていると主張する。冗談と悪ノリが
大好きで「失敬、失敬」が口ぐせ。

タナカ(田中哲司):文学系の教授。作品舞台を最近引っ越したばかりの出版社だとし、自身の本のゲラを
取りに来たのだと語る。不合理かつ超常的なことを信じておらず、何事にも合理的な説明を求めようとする。

長椅子、雑多に物が置かれた机、小さな冷蔵庫がおかれた建物の7階にある1室を、それぞれが「ゲストルーム」
「メーカーオフィス」「出版社」だと言い張り、全く違う住所を口にする。それだけでなく、冷蔵庫からは
取り出す人に応じて、「コーラ」「オレンジジュース」「暖かいコーヒー」果てにはなぜか「洗剤」まで出てくる。

いったいこの部屋は何なのか、どうしてそれぞれ違う住所を求めて来たのに同じ部屋に着いてしまったのかを喧々
諤々で脱線込みの議論する中、この場所が「この世」と「あの世」の間にある、いわば「最後の審判のための
待合室」なのではないかという話に発展し、ナカムラがいきなり部屋の四隅に塩を盛って柏手を打ち始める(笑)

ここまでで分かるように、3人のそれぞれ環境が異なる中年男性がひょんなことからよく分からない1室で一夜を
明かす羽目になる……という設定こそ単純なのですが、3人の意味があるのかないのか、議論なのか雑談なのかも
あいまいなやり取りでほぼ2時間を消費するので、見ている側としてはさすがにしんどいかな。

かなり工夫されて笑いどころも役者陣の演技込みで用意されてるんだけど、「神」とか「生死」という形而上学的な
(かつ欧米の舞台ではしばしばみられる)ディスカッションを大々的にフィーチャーした演劇はやっぱ文化の違いを
感じる。

あと、部屋の不思議を延々時間を尽くして議論するわりには、いきなり部屋の床から出現退場する謎の女(朝海ひかる)に
誰も疑問を抱かず、「彼女は我々を裁きに来た神なのか、否か」を話し合い始めるところには笑った。いや、そこじゃない(笑)。
たぶんここはそのズレにツッコミ笑いするパートなんだろな。

2時間弱ひたすら言葉を交わし続けて、翌朝を迎えたところでいわく「ムダな話」を辞めて3人家路に帰っていく……という
結局何かを得るとかそういうことはない物語なんだけど、3人とも「家の扉に鍵がかかっていて入れない」ということで
またワンルームに引き寄せられるように戻ってきてしまったのは、あれは何かの象徴?
ガラスの動物園

ガラスの動物園

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2022/09/28 (水) ~ 2022/10/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

戯曲に目を通して臨む、と決めていたが、自宅にあった文庫本が散逸。図書館各所も全貸出中、最後は新刊書店大手に二か所寄ったが置かれておらず、この公演のせい? 等と妙な推測をしてしまった。
代わりにネットに出ている「あらすじ」を読んだり、以前この作品の戯曲の性質について書かれた文章を思い出しても、いまいちどんな作品なのかピンと来ず、演劇界で著名すぎるこの作品が、とりあえず演劇史的には「現代の精神状況を表現した」(ゆえに同時代性を感じた多く人から支持を得たと思しい)ことが推察されるのみであった。
結果的にはこの演目の舞台を初めて目にして、合点した事は多々あった。

米国を中心とする「西側」諸国の爛熟、全世界的にも科学技術文化メディア等が急勾配で発展した。「戦後」という時代はやはり不可逆な、特殊なものだと言える。その起点で蠢動のような変化があり、国を問わず、芸術家はその変化を察知して作品を成した。「ガラス・・」が描く欠損家族、それを捨てた息子の罪(父がそうであった、とあるのでこれは原罪に近い)。この風景は、戦前ではなくやはり戦後という時代に発見された風景である気がする。何がそう思わせるのかはうまく言えないが(外面的な状況よりも内面に焦点化しているからでは、と取り敢えず考えてみる)、母も姉も、病的であるからこそ、美しく、いじましく、懐かしく、切ない・・。この感覚は、「回想」が可能ならしめるものである、と思う。

この作品の演劇史的な貢献は、回想という手法で(演劇に限らずだが)ドラマ構築の一つの定型を示したこと、ではないか。
回想する主体であるトムが、観客に語りかけるナレーターで、物語を描写する。横内謙介の秀作「ホテル・カリフォルニア」をわざわざ挙げるまでもなく、ストーリーテリングの主要なフォーマットであるが、「ガラス・・」がその原点と言えるのはその完成度ゆえ、なのかも。(今思い出したが戦前の作であるワイルダーの「わが町」もナレーションで回顧する語り口で、「発見」と言うのは大袈裟に違いないが、ただ語られる内容という点では、やはり大きな違いがありそうである。)
この作品で語られているもの(トムが敢えて語ろうとしたもの)は、そもそも何なのか。
刑罰に問われない「内面の罪」は、甘味さを伴う事があるがそれは回想という中においてである。己の加害性にシクシク胸が痛もうとも、(隣国の民族の「恨」のように)ある意味で生きる「原点」となり、いきいきと生きる「実感の源」になる。己を厳粛な思いに立ち返らせるもの、それが己がふと犯した罪の記憶であり、それは真の意味での「生きる価値」をそのままの形で自分に保証する。即ち「悔い改めて進む」道・・キリスト教の影がそこに落とされていると仮説する。
だが、身を貫いた「生きる」実感に応えて、その後の人生を生き直すケースは稀で、多くがそれまでの習い性、怠惰に流れるのが常。だがその事は埃に塗れた自分の中に再び輝きを見出そうとする時に、再び現われ、「怠惰であった己」の罪が、逆説的だが己を照らし、再び「別の道」が示される・・。

もっとも、今回上演された「ガラス・・」は、(戯曲の原形を推測しながら観劇したところでは)原作にあったノスタルジーの色彩を殺ぎ、ドライな後味にした、と見えた。イザベル・ユペール演じる母は「病気」の要素よりも、逞しさ(ラストに見せた落胆は、その喚き散らす様子が「絶望を断ち切る生命力」に見える)があり、トムの姉は原作ではいじいじと傷つきやすい引っ込み思案な所、現代の引き籠りのように救済回路を見出していて、それなりに自宅での生活を送れている・・。ガラス細工の動物への執着はさほど病的に見えない。ジムへの恋に破れた後、彼女は自分の世界で生き続けるのではないか。
この演出は、何となくの印象ではあるが、この作品の「感動」の形である所のノスタルジーを補強する典型的な(同情を誘う)弱者像を避け、境界を跨いで存在する「個性」が一つ屋根の下で同居する様、を示したかったのかも。これもうまく言えてないが、いじましい家族たちは、過去という墓に葬られず、今も生きているという臨場感を示したかったのかな・・という。
想像が飛躍し過ぎかも知れないが。

ネタバレBOX

余談だが・・当日になってチケット予約無効と気づき、劇場に連絡したところ、残席3つ有り、当日予約。その際、電話で席選択をしたが、中央最後方はやめ、やや後方下手端寄り2つの内、中央寄りを選んだ。だが、毎度の事定刻にどうにか滑り込み、席を探した所、数字で当たりを付けた近辺で一つ空いているのが最も端の席、番号が15とあり、私の席番は18。何かの間違いが生じたと踏んでそこに座ったが、少し前列の少し内側に小さく空いたエリアが見え、気になり始めた頃に「手品」が始まった。・・正しくは3列前の数席内側が私の席だったのだが、実は数字は端15とし、内側に1ずつ増えて行く配置であった。紛らわしい数字の振り方である。もう少しクリアに見えたかも知れないのに・・とも思ったが、体力的には固定した姿勢がきつかったので端席は有難かった、と思う事にした。
実際、俳優の表情はよく見えない距離であったが、身体の動きと舞台処理により舞台全体としては雄弁に物語が語られ、受け止める事はできた。
字幕を読みながらの観劇だが、この点では前方席より条件は良かったかも知れない。ただフランス語の抑揚というのは独特で発語に込められた微妙な感情は読みにくい。その点ではやはり表情を見たいというのはある。痛し痒し。
「カレル・チャペック〜水の足音〜」

「カレル・チャペック〜水の足音〜」

劇団印象-indian elephant-

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/10/07 (金) ~ 2022/10/10 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 タイゼツベシミル!! 拝見して居て本質的に現在、我々が体験していることと同じではないか! との感覚に何度も襲われ慄然とした。華5つ☆ 本日10日、13時楽。残席あり、必見!

ネタバレBOX

亡くなった石垣 りんさんから何度も戦前の心象風景に似て来たと御懸念を伺ってきており、自分自身も戦争に行き、復員できた伯父等から様々な話を聴き特攻の生き残り(出陣直前に敗戦)の叔父、特高の大尉であった伯父からも話等を聴いていたから、りんさんの御懸念にも同調できたのだったが、チャペックの非凡で本質的な想像力と、人間として在ろうと決意して揺るぎなくそれを通した人ならではの妥協の無い慧眼が見定めた本質に慄然とさせられたのである。鈴木アツト氏は、このチャペックの本質を見る目を継承したのであろうか。実に見事な脚本に仕上げ、役者陣の演技、アツト氏の演出、舞台美術、照明、音響効果も良い。観客に対して欲を言えば20世紀初頭から第2次大戦に至るヨーロッパの歴史を予め知っておけば尚良いが、知らずともこの劇を注視していれば自ずと理解る。 
アリの街のマリアとゼノさん

アリの街のマリアとゼノさん

エンターテイメントユニット自由の翼

浅草九劇(東京都)

2022/10/07 (金) ~ 2022/10/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

1950年代、まだ戦争の傷跡が生々しい東京の下町 台東区・隅田川言問橋のたもとに実在したバタヤ(廃品回収業)部落、アリの街が舞台。物語は、そこで社会奉仕活動を続けた北原怜子(さとこ)さんとポーランド出身のゼノ修道士を中心とした実話を舞台化したもの。今の世に当時の時代背景を描いて、どこまでリアルに伝えることが出来るか。そして描かれているような尊い教えと活動を強く訴えると、宗教への過度な依存といった印象、偏執した啓蒙劇といった捉え方をされる危惧がある。その微妙な感情というか感覚を回避するための観せ方、それが演劇×生演奏×ダンス×歌といったエンターテイメント作品にした理由のように思える。彼女の足跡を忠実に描いた評伝劇、その時代背景は、今の日本におけるコロナ禍、世界に目を向ければ侵攻といった状況に重なる。特に国内では自主自立と共助を強く意識させる内容だ。

公演は約3年の時を経ての再演になるようだが、今 上演する意味は何か。当日パンフに主催挨拶として岩浦さち さん(アリの街実行委員会/自由の翼)が、「再び『戦争がもたらすもの』を考えたり、『現代を生きる私たちの精神的な糧になる何か』を追い求めたりするときに、お客様の『道しるべになるヒント』が落ちているかもしれない」と記している。慈愛に満ちた内容が、どれほど今の社会に伝わるか。28歳で夭折した社会活動家がいたこと、その活動を知ることが出来たこと、その人生について大いに学んだ。
(上演時間1時間30分 途中休憩なし)

ネタバレBOX

舞台セットは三角屋根、中央に少し高い台。上手に「蟻の會」と書かれたリヤカーがある。シンプルな作りにし、踊るスペースを確保する。三角屋根の上に生演奏をする来夢来人(ライムライト)のメンバー。楽器はベース、クラリネット、サックス、パーカッション、ギターである。

物語は、北原怜子(升野紗綾香サン)がアリの街に通い出した頃から始まる。彼女は浅草にある姉の家に転居した際に、“ゼノ神父”ことゼノ・ゼブロフスキー修道士(松本義一サン)と知り合い、通称「蟻の街」のことを知る。「蟻の街」は小沢求(柳橋龍サン)、松居桃楼(中込博樹サン)がまとめ役となって結成された廃品回収業者の居住地である。リサイクルが推奨される現代とは違い、廃品回収業は「バタヤ(屋)」と呼ばれ、他人から蔑まれた仕事だった。他人から物を恵んでもらうのではなく、蟻のように力を合わせ、自分たちで生きていく自主自立した暮らしである。その例を復員兵夫婦の困窮を通して時代背景を描く。

個人的な見どころとして、偽善だと指摘されたところ、二代目マリアが現れ自分の存在に迷う、この2シーンが印象的だった。
第一…怜子の慈善活動を、街の世話人で文筆家・松居桃楼は偽善だと指弾した。松井は怜子に、自分たちは家で美味しいものを食べ、たまに子供たちに美味しいごちそうを振る舞う。そんなものは自己満足に過ぎない。子供たちはまた貧しい日常に帰っていく。「助けてやる」という気持は、助ける人が上で、助けられる人が下なのだ。真の同情は上も下も関係なしに、肩を並べて、一緒に悩み、一緒に苦しむこと。現代に通じる社会福祉…介護や看護、医療にも同じことが言える。
厳しい指摘は、彼女の行動が傲慢としか見えなかった。そして示された聖書の一節に心を打たれた。「主は富んでおられたのに、あなたがたのために貧しくなられた。それは、あなたがたが、キリストの貧しさによって富む者となるため」。
怜子は自らバタヤとなり、蟻の街の人たちと共に廃品回収業に勤しむ。怜子は傲慢から解き放たれ回心したのである。また彼女の行動によって、子供達の教育環境は段々と整えられていく。

第二…病気療養のため、一時「蟻の街」を離れるが、その間に 二代目蟻の街マリアが現れる。自分の居場所を失ったかのような怜子に ゼノ修道士は、自分はあくまで道であり、人が通った後は何も残らない。人は当たり前に通り過ぎ、道の存在など気にしない。無償の奉仕とはそういうものと教える。怜子の行動は世界に発信され賞賛の声が多く届くが、その名声に甘んじることはなかった。やがて療養のため「蟻の街」を離れるが、死期を悟ると「蟻の街」に再び移住し、その地で夭折(28歳没)した。彼女の半生を忠実に描いているようだ。

物語が重くならないよう、歌い踊る(バレエダンスのような)シーンを挿入し観(魅)せる工夫をしている。また生演奏が雰囲気を盛り上げ、心地良い印象を残す。
次回公演も楽しみにしております。
桜か雪の散るか降る

桜か雪の散るか降る

劇団身体ゲンゴロウ

王子小劇場(東京都)

2022/09/28 (水) ~ 2022/10/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/10/02 (日) 14:00

小道具と大道具の中間ぐらいのアイテムと役者の体を使っての動きが、この劇団ならでは。非常にユニーク。見る価値大有り。最後の締めくくりでもう1度見たいと思いましたが、悲しいエンディングだと難しいですね。物語も、単なる昔の合戦物を超越した普遍性があって、全般的に見応えがありました。

アリの街のマリアとゼノさん

アリの街のマリアとゼノさん

エンターテイメントユニット自由の翼

浅草九劇(東京都)

2022/10/07 (金) ~ 2022/10/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/10/09 (日)

価格3,500円

9日17時開演の千穐楽を拝見(90分)。

2018年6月に同じ浅草九劇で『アリの街のマリアとゼノさん』
2019年7月に北(ほく)とぴあのドームホールで『風の使者ゼノ』
と過去2回も観ているので、アリの街の人々に献身的にその身を捧げ、病に倒れて早逝された”アリの街のマリア”北原怜子(きたはら・さとこ)氏をめぐる一連のストーリーは十分承知しているはずであった。
にもかかわらず、脚本が整理された?のか、今回、改めて…いや、過去2回以上に、自身の不甲斐なさを恥じるとともに、心洗われる思いがした。

その原因の一つと思われるのが、二度目の北原怜子役となる升野紗綾香さん。
久しぶりに拝見する升野さんの表情・声・所作…とりわけ療養先からアリの街に半年ぶりに戻ってみて、自身の役割が他の人間に”奪われていた”ことを知ったあたりのシーンでの、ある意味、聖女ではない・人間らしい葛藤のさまを表現した、魂の演技には強い感銘を受けた。

90分ほどの舞台だったが、ホンマに良いものを”魅”せて頂いた。感謝!

ネタバレBOX

【配役】
北原怜子(さとこ)…升野紗綾香さん
北原肇子(ちょうこ。妹)…佐藤天衣さん
松井桃楼(とおる。アリの街に住む劇作家。仏教徒)…中込博樹さん
小沢求(アリの街の会長)…柳橋龍さん
丸岡明宏(アリの街の住人。通称”ジョン”)…斉藤可南子さん
夏川樹(元・消防司令部?勤務。今はアリの街の住人)…石原嵩志さん
夏川利恵(アリの街の住人。樹の妻)…岩浦さちさん
シスター・カルラ(修道女。カトリックの”偽善”の象徴)…mizukiさん
塚本恵子(二代目”アリの街のマリア”)…mizukiさん
前田明子(アリの街の住人)…mizukiさん
東京都職員…石原、岩浦、斉藤、佐藤、mizuki、柳橋
ゼノ修道士…松本義一さん
今度は愛妻家

今度は愛妻家

サンライズプロモーション東京

よみうり大手町ホール(東京都)

2022/10/07 (金) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/10/09 (日) 13:00

いろんな劇団が上演している名作のようですが、私は初めて見ました。ずっと笑って最後はホロリ。

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