最新の観てきた!クチコミ一覧

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レオポルトシュタット

レオポルトシュタット

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2022/10/14 (金) ~ 2022/10/31 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

重厚な物語だが、こういう演劇は観る前に家族・家系関係が頭に入っていないと誰が誰やらわからなくなるので注意が必要。冒頭の場面で名前がドーッと出てくるが、ピアノの音が重ねられているので少々聞き取りにくい。しかも、急ぎ足というか、時代の進行がちょっと速い気がした。丹念にやれば上演に3時間以上かかっても不思議でないような時代範囲だが、2時間20分ということで、これはオリジナルの通りなのか、それともセリフや場面をカットしているのか?

舞踏 天狗藝術論

舞踏 天狗藝術論

大駱駝艦

シアタートラム(東京都)

2022/10/21 (金) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

江戸時代初期の禅僧・沢庵宗彭(たくあんそうほう)が柳生宗矩に宛てた手紙、『不動智神妙録』には“剣禅一如”が説かれている。人殺しの技術論が思想に至る“武士道”への転換点。殺しの技術と禅の目指す仏の道を同一と論じた。田村一行氏は「水上の箶蘆子(ひさご)のごとく」の一節に衝撃を受ける。
同様に江戸時代中期の戯作者・佚斎樗山(いっさいちょざん)が記した『天狗藝術論』、今作はそれをモチーフに創作。
『不動智神妙録』には「稽古は四季のように巡る」と書かれている。螺旋のようにループしながら少しずつ先へと歩を進めていくのか。

「空っぽになり、外側に目を向ける」
「自分は外側のもので作られていて、外側に実態がある」
「自我ほどつまらないものはない」
「動くんじゃなくて動かされるんだ」
「いかに空っぽになって動かされるか」

例えるならタイムスリップした先が古代日本の山奥の集落。篝火に照らし出されたこの宗教的祝祭を、夜風に吹かれ大木の陰から怯えながら覗き見てガクガク震え上がっているような興奮。
凄くいろんなことについて考えさせられた一時間余り。白塗りの彼等は愛すべき白猫を思わせる。
これを観れる歓び。

松田篤史氏は肩などに入墨があるので判別し易い。谷口舞さんの呆けた笑顔。
夢を見ていた男は小田直哉氏か?痙攣ダンスは観ているだけでどっと疲れる。自分は整体に通っているので鋳態(出演)の方達の身体が心配になった。相当な酷使。

ネタバレBOX

美しい竹林、ポカンと宙空を見上げる人々。侍が刀を振り上げて人々を連れ去る。首を掴まれた子猫のように連れて行かれる面々。一人だけ言いなりにならない男がいて、侍はそいつを気に入って刀を振らせてやる。

修行が始まる。禅で云うところの魔境を表現しているような。魔境とは、禅の修行中に神仏と一体化したような陶酔感を得て、自我の肥大により悟りを錯覚した状態。麻原彰晃なんかのイメージ。煩悩を打ち払い打ち払い魔境に到り更に打ち払い打ち払い。ビートたけしの痙攣ダンス。ゾンビが踊るEXILE。『少林寺』のような光景。宙空からの縄を掴んでブランコのように回転する侍。
兎に角退屈をさせない工夫に満ちている。常に何かをしていなければ。常に何かを表現していなければ。安っぽい世俗との結託が逆に力となる。

盥で水浴びをする女達を竹林から覗き見る男共。
女達が赤子のように抱きかかえる金の玉、胡蘆子(コロシ)=瓢箪。生々しいエロスの表現、悦楽。
情欲の煩悩を乗り越えた男達は自分達の境地に高笑い。もう胡蘆子には何の価値もない。
そこに現れる天狗、皆怯えて逃げ去る。一人逃げなかった侍は天狗の面を剝ぎ取ってみせる。正体は剣術に明け暮れていたあの男だった。
逆に背後から無数の天狗が湧いてきて男は慄く。
クライマックスの曲がTHE MAD CAPSULE MARKETSの『TRIBE』のイントロっぽくてカッコイイ。

ふと気付くと全ては男の見ていた夢であった。金屏風に描かれた竹林。
すると皆がポカンと宙空を見上げる。天狗が現れた。冒頭に繋がるループする世界。
テノヒラサイズの人生大車輪2022

テノヒラサイズの人生大車輪2022

BALBOLABO

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2022/10/20 (木) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

テノヒラサイズの人生大車輪,何度観ても面白い,大満足の芝居です。パイプ椅子だけで見事に情景を表現しています。何度と書きましたが,正確には2.5回目です。1回目は下北沢駅前劇場で東北大震災の日に観劇していました。もちろん途中で中止となり,面白くこれからの展開がとても気になったところで途切れましたので,大変モヤモヤしましたが,数年後に中止分の招待をいただき,最後まで観劇することが出来ました。そういうことで個人的にとても思い入れのある芝居ですが,やはり出来は素晴らしく,他の方にもおススメの芝居と思っています。

ザナドゥおじさん

ザナドゥおじさん

大統領師匠

「劇」小劇場(東京都)

2022/10/19 (水) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

細部の芝居までしっかり感がありテンポも良かったので集中してみられたし面白かったと思う

ネタバレBOX

作者が初長編ということでしたが正直長編である必要性は感じなかった。

事前精算と当日清算の取り扱い。会場時の入場の仕方などの分かりにくさは下北沢の場合期待していないのでまあ

台本が売り切れたのことだが売れた方がいいのは別としてただただポジティブに理解すべきなのかともおもう

面白かったけども着想と役者さんスタッフさんの力がほぼほぼで台本的にはあまり「面白い」とはならなかったです

演出が出演していたのは足りなかったからなのだろうかもしあれだけ情報量を話す役が足りなかったのであればその機会に大幅に書き直した方が良かったのではと思う

まあ、千秋楽はほぼ完売っぽいしオノレガオカシインジャナイ?と言われれば その通りですね
テノヒラサイズの人生大車輪2022

テノヒラサイズの人生大車輪2022

BALBOLABO

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2022/10/20 (木) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初見でしたが前半の伏線を見事に回収していく展開に納得です。折りたたみ椅子をいろいろな舞台装置に見立てていくのも見事!
魅力的な俳優さんばかりで他の舞台も見たくなりました。

アイ・アム・ア・ストーリー

アイ・アム・ア・ストーリー

シベリア少女鉄道

シアター・アルファ東京(東京都)

2022/10/12 (水) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

「シベリア少女鉄道」通称“シベ少”
コリッチができるず~っと前から賛否両論の噂(クチコミ)が駆け巡っていた超異色劇団
その絶賛と酷評のふり幅の大きさは、現物を観ていなくても感想だけでご飯3杯はいけそう
遂に初シベ少、自分はどっちか? そしてどんな仕掛けが待ち受けているのか・・・

開演前の作・演出家さんの前説からしてもう異色な事だらけ
当日パンフ 何これ、ど~ゆうこと

終演後の観客のこんなざわめき方、見た事ない
なるほど、演劇界の無法者ですね(笑)

ネタバレBOX

どうやら設定とかネーミングの響きから、とある有名作品のパロディーではないかと察したのだけれど、自分はその作品を見た事がない
しまったなぁ これはハンデになるのでは、と思いきやそうでもなかった
連続テレビドラマにありそうな“ほのぼの感”と深夜アニメにありそうな“クセの強さ”をミックスしたミスマッチ感が独特だけれど、それも味となって うん、面白い!
シーンごとに登場人物がどんどん増えていくけれど、プロットの作り方が上手いのか、積み重なって拡がっていく感じもあって うん、中々面白いですよ
でもこのままのわけが無いよね、絶対何かやらかしてくる
そんな思いが強くなってきた頃、それはちょっと出しから始まった
ちょっと出しから段々顕著に、そして露骨に表現し出した
う~ん、このやり方というか笑わせ方、好きじゃないです(苦笑)
笑い声は会場のあちこちで起きていたので、これはもう完全に好みの問題だけれど、自分には合わないなぁとちょっとガッカリ
でも、その延長線に全く予想できないモノが待っていたのでした
なんだ、この現象(?)は、ちょっとブルッときて・・・こわ面白い
それは段々顕著に、そして露骨に強くなっていっていくのでした
あっぱれなるクレイジーっぷり(笑)
そうか、ここに繋がる為にあの苦手部分必要だったのか、そうか、そういうことかー

初シベ少、自分的には★★★★4つ
ガ~ン、全然振り切って無いじゃん
いや、これは均等な星4つではありません、プラスとマイナスが激しくせめぎ合っての星4つ、全然普通じゃないのです

瞼の母

瞼の母

江戸糸あやつり人形 結城座

ザムザ阿佐谷(東京都)

2022/09/29 (木) ~ 2022/10/05 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

前回「変身」に続き結城座を観劇。初観劇は「変身」の前年、襲名披露記念「十一夜 星の輝く空に」芸劇ウエスト公演だったが、やはり糸あやつりには小サイズで、しかも今回のザムザや「劇」小のような「見下ろせる」劇場が相応しい。
長谷川伸の最も著名な作品「瞼の母」を、流山児祥演出は母および主要女性役に伊藤弘子を配し、他の役に人形+人形師を配する形とした。冒頭、任侠物に似つかわしい演歌調の歌を伊藤に歌わせ、景気の良い始まり。
主人公・番場の忠太郎、彼が助ける半次郎とその母・妹、半次郎を追って来た二人の敵方子分が繰り広げる序盤のくだりの後、幼い頃行き別れた母の面影を追う道行が描かれる。「母かも知れない」と観客が期待する登場の仕方をする女性三役は伊藤が演じる。最初が路傍で商いをする老いた女、行き別れた息子がいたが、別人であった。そして大店「水熊」の前で、店から叩き出される女おとら。この女から、店の女主人おはまが、昔別れた息子の事を始終話していたが最近はとんと口から出なくなった、との証言を得る。水熊に仇する男の出現で番頭丁稚共々、神経をとがらせている所、忠太郎があっけらかんと訪ねて来たらしく表でひと悶着。執拗に粘るとの報告を受け、おはまは自ら口一つで追い返す算段で招き入れる・・。忠太郎の証言は記憶と合致していたが、息子が九歳の折に亡くなったと風の噂で耳にして以来、忠太郎の妹に当たるお登勢一人に愛情を注いできたおはまは事実を受け入れられず(また渡世人風情との付き合いがお登勢の将来に影を落とすとの気遣いもあり)、忠太郎をゆすりたかりの一人として追い払ってしまう。だが兄を想うお登勢の声に目が覚め、方々を探すが見つからず諦めて去る。その原っぱに身を潜めていた忠太郎は、母妹とは相見えず、瞼に焼き付いた母の面影を思いながら再び放浪に出る・・。
上演台本を書いたラサール石井の弁の通り、ほぼ原作をなぞって終幕を迎える。石井氏は歌の歌詞を書き入れている。これに朝比奈尚行(時々自動)が曲を付けているのだが、「瞼の母」を異化する要素がこの時々自動的アプローチ。ただし「任侠物」をやる大衆演劇の色彩を意識したのだろうと想像される曲調は、石井があまりいじれなかった原作が描く最後の「涙」には異化を施さず真情豊かなメロディーを投入してほしかった、というのが私の感想。演じ手の動きをつぶさに覚えていないが、終始奮闘の伊藤弘子がちょっと締まらないラストを閉じねばならなかったのも、処理としては気になった。王道で良いのではないか、と思った。

ひとはなれていく

ひとはなれていく

箱庭円舞曲

浅草九劇(東京都)

2022/10/19 (水) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/10/21 (金) 15:00

2007年から観てる劇団だが、本作も箱庭らしい丁寧な会話劇だった。(2分押し)112分。
 海に近いシェアオフィスの30年。慣れる人、変化する人、さまざまな人の絡み合いが、ちょっとした笑いと少しの嫌な感じと、ほんのりした人間への信頼とともに描かれる。セリフから時代の変化が分かる脚本も巧いが、劇団員とベテラン客演があいまって、いつもの箱庭らしい独特の雰囲気が沸き上がる。ザンヨウコの佇まいがいい。

アイ・アム・ア・ストーリー

アイ・アム・ア・ストーリー

シベリア少女鉄道

シアター・アルファ東京(東京都)

2022/10/12 (水) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ドタバタ劇でした。1日2公演の時は演者さん大変ですね。
面白かったです。

オルガ・トカルチュクの『宝物』

オルガ・トカルチュクの『宝物』

シアターX(カイ)

シアターX(東京都)

2022/10/19 (水) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ポーランドとの所縁を温めるシアターX独自の上演企画。
ノーベル文学賞受賞(2018年)の女性作家オルガ・トカルチュクの作品との事だが、アフターミーティング(シアターX主催公演では上演後会場との交流を行なう)で知った所では、この作品はかつて発表した小説(連作短編の一つらしい)ではあるが、本国で近年これをTVドラマ化するために脚本化したものをプロデューサー上田美佐子が入手、伊在住の井田邦明が演出した。
戦後間もないポーランドのある地方の一家の日常。が、主人公の娘クリシャが夢の中で自分に呼びかける男を探して旅に出る・・。占領から解放された人々の貧しさと酷薄な現実をベースに、寓話性を粉末でまぶした味わいがあり、短編小説らしさがある。ストーリー自体よりも、人々の生活風景と心象風景に、何か惹かれるものがあった。
美術が簡素ながら作品世界を過不足なく満たし、ピアノの生演奏は場面を象徴するクラシック曲を印象的に提示して、作品にマッチしていた。

ネタバレBOX

余談。ポーランドと言えば・・と自分との接点を探してみると、まず何と言っても映画。まず名作と言われるアンジェイ・ワイダ初期、抵抗三部作の一つ「地下水道」(モノクロ)は鉄板として、リアルタイムで観た「悪霊」に心酔。当時若手だったクシシュトフ・キエシロフスキの「殺人に関する短いフィルム」「トリコロール」三部作のどれか一つを公開当時に。そしてロマン・ポランスキー。本国で撮った「水の中のナイフ」「袋小路」等は割と最近になって観たが、わが映画鑑賞史的には「チャイナタウン」が断トツ。古い名作「尼僧ヨアンナ」は名のみで鑑賞の機会がない。小説では勅使川原三郎を通してブルーノ・シュルツを知った程度であった。私の中で大きかったのはある論考で、地勢的に大国の干渉や占領時代を経験したポーランドは朝鮮半島と共通するものがあり、底辺から物を見つめる目線が人間社会の本質の理解に影響し、それらは芸術作品に反映している、といった趣旨が記されていた。私のポーランド観のベースになった。
境遇が人格や思想を規定する、という事であるが、今ふと思い出したのは沖縄辺野古の座込み運動を揶揄した某氏(これはひどいというしかないが某氏の信奉者は意外に多いようで)。氏の言動には「下から見る目線」というものが全くない事に思い当たる。結果、偏狭と言うしかない思考の中で、論拠と言えるものは突き詰めれば「好き嫌い」しかない、という状態に無自覚になる(主張の根拠というものは究極「好き嫌い」の次元でしかないと思うが、論者ともなればそれなりに説明できる論拠を持とうとし、それが普遍性に近づく担保となる)。正邪より好き嫌いが優位に来た場合、「議論の無意味化」をもたらし、多様な意見の衝突の場は、いつしか同一意見を確認する場(少数意見の持主は少数派である事を忌避して沈黙する事になる)へと変質して行く。これはファシズムそのもので、日本はその完成形まで折り返し地点を超えたと私は思ってるが、権利意識の減退は若い世代になるほど加速している感がある。美徳のはき違えは身体感覚に刷り込まれ、改良には彼らの人生の長さをかけるしかない(私も親と時代から受けた洗脳を脱するためには長い時間が必要だった)。従って教育を変え、次世代に託す態度が必要だが、この教育の方向性も数十年かけて「権利より義務」「公権力への絶対視」「管理主義」へ一歩ずつ漸進して来た。押し返した試しがない(新しい教科書をつくる会編纂の歴史教科書の採択運動が地方自治体で起きたりもしたが、これは科学的知見の問題で自然な流れで採用例希少となっている)。
沖縄に対する本土人の差別意識が解消される契機は、国が沖縄に手を差し伸べ態度を改めること、以外には考えにくい(自ら認識を改めるなんて事は教育の現状では起こり得ない)。
話は飛躍しまくったが自分の中ではなぜだかさほど違和感がない。ご静読感謝。
いびしない愛

いびしない愛

ばぶれるりぐる

こまばアゴラ劇場(東京都)

2022/10/13 (木) ~ 2022/10/17 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

劇作家協会新人戯曲賞の最優秀賞を取った作品がようやく東京公演が実現。こまばアゴラのラインナップを見て秋を楽しみにしていた。それだけの事はあり、よしよしと劇場を後にした。

SessionYoshiya・語り

SessionYoshiya・語り

かわせみ座

プーク人形劇場(東京都)

2022/10/18 (火) ~ 2022/10/22 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

㊗創立40周年公演。
「かわせみ座」公演は、たぶん初めての観劇だが、人形と人間が織りなす壮大・深淵な物語に上演時間を忘れるほどだ。が 少し気になったことが…。何か違和感のようなものが残ったが、帰り際にスタッフに確認して納得した。

アンコール…薄暗い中で 白い羽が舞台空間を自由自在に飛び回る、その優美で幻想的な光景にウットリする。そして谷川賢作さんが これでお仕舞いと告げる。舞台には演じてくれた人形が並んでいるが、そのうちの一体が登場していない。何故という疑問、それが少し気になったので、思い切ってスタッフに聞いてみた。毎回内容が異なり、操演する人形も違うという。登場しなかった人形は「森の妖精」というらしい。あぁ、人形にも名前というか役割を表す名があったことを改めて思い出した。人間同様、一体一体に個性や役割があるのだ。谷川さんが内容・粗筋のようなものは用意していないと説明していたが、せめて今回観(登場し)た人形の名を知ることが出来れば、想像力に羽ばたきが出来たかも知れない。そう、当日パンフにあった「何もない舞台が、果てしない空に海原に、そして森になる。あなたの想像力の翼で、軽やかに宙を舞い、身をゆだねたゆたう」ように…。
(上演時間1時間30分 途中休憩なし)

ネタバレBOX

上手に姿・形の違う人形が(吊り)並んでおり、下手は演奏スペース。観た回 パンフレットでは、谷川賢作氏(ピアノ・作曲)、高瀬”makoring"麻里子さん(うた、朗読)、大坪寛彦氏(ベース)となっていたが、もっと多くの役割を担っていた。というかご本人も楽しんでいるように見えた。その様子が観客にも伝わり、公演全体が優しく温かい雰囲気を漂(ただ酔)わせていたような。

名前は分からないが、童女・一角鬼・木馬・少女・(狐顔の)龍のような・熊(ぬいぐるみ)・老女・河童・アバター女(ネイティ)・箱の少年・天使(全て自分のイメージか人形の姿から勝手に命名)が、山本由也さんに操られ次々と登場する。「操られ」と言うと語弊があるかもしれない。薄暗い中、人形に光が照らされ、命(魂)が吹き込まれたかのように動き出す。勿論、本体だけではなく手指や足先の細かな動き、目が開き表情が作られる。例えば童女であれば、可愛らしい仕草や飛び跳ねるような動きをする。それは他の人形にも同じことが言える。そして光が消えると眠りに入るかのように元の場所へ戻っていく。

当日の演奏者は、単に楽器の演奏や歌を歌うだけではない。人形との掛け合いをすることによって、物語の世界を広げ深堀するような役割を果たす。歌であり語りでもある。演奏は谷川さんのシンセサイザー、大坪さんのベース、そして高瀬さんは歌と小物アンサンブル(楽器)で色々な効果音を奏でる。勿論 3人のハーモーニーは見事で、人形の操演と演奏のコラボレーションを楽しんだ。谷川さんが悪ふざけをしたと言っていた 河童の操演、酔った動きに合わせた某日本酒メーカーのCMソング、良し悪しはあっても人生に酒はつきものか?そう考えれば、(順序不同であるが)登場する人形を人間の人生に準えた物語であったのだろうか。

箱から出てきた小人サイズの少年、舞台だけではなく(最前列=指定席の)観客の頭を撫でたり、寛いだりするといった客弄り(サービス)に笑いを誘う。何となく正月や祭で獅子舞に頭を噛まれたり、頭を撫でると知恵が付く縁起物を連想した。その表現は人形操演という見事な演技(技術)だけではなく、いかに観客が楽しみ喜んでもらえるのか、を考えたもの。
次回公演も楽しみにしております。
オルガ・トカルチュクの『宝物』

オルガ・トカルチュクの『宝物』

シアターX(カイ)

シアターX(東京都)

2022/10/19 (水) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 あと2回公演が残っている。22日14時、23日14時である。観るベシ!

ネタバレBOX

 今日は少し、前回書かなかったことを書いておこう。ピアノ演奏は無論生で、作品がポーランドのオルガ・トカルチュク(2018年ノーベル文学賞受賞)唯一の脚本ということもあり、演奏される曲は総てショパンの作品である。ショパンに詳しい人なら何故、「革命のエチュード」があれほど激しい曲なのかも充分理解していることだろうし、ポーランドが2世紀に跨る長い間、国土を失っていたことも、その間劇場と教会内のみでポーランド語の使用が許されたこと、このような歴史があるからこそ、未だにポーランド演劇は社会性、政治性が作品に顕著に見て取れることも。この傾向はポーランドのみならず、チェコや、ハンガリーにも見られるが。
 何れにせよ、日本の事大主義に則って作られる多くの作品とは根底が全く異なる。皆、命賭けである点が異なるのだ。この「宝物」でもポーランドが味わってきた苦く地を這うような歴史の頸城が背景にあるのは無論のことだ。然し日本人に彼らの味わってきた苦悩を具体的に理解することは不可能だろう。事大主義で凝り固まっている典型的日本人なら分かるハズが無い。原理的に理解できないのだ。
「宝物」は極めてポエティックな作品である。踏み潰され、蹂躙され、差別され地を這いながら血を吹き青空をその上澄みで染めてきた彼ら・彼女ら、そしてその子供たち、孫や曾孫たちが殆ど総てを奪われることによってアイデンティファイの何たるかを知り、以て自らの血と汗と苦悩という形の思考を通して到達した地平で、こう問うことを誰も止められない。曰く、我らは何処から来て、何処へ行くか? 我ら、ヒトとは何か? この根源的な問いを真っ直ぐに問うことで断片化された生を今迄とは異なる方法で問い、再び何らかの出会いを齎す為に夢を夢見る。そのような存在の裸形をこそ今作は垣間見せていると言えよう。
テノヒラサイズの人生大車輪2022

テノヒラサイズの人生大車輪2022

BALBOLABO

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2022/10/20 (木) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

理由も分からずに監禁された!という集団心理と、個々が背負っているターニングポイントが絶妙に織り交ざった攻め攻めのエンターテイメント
ひとりひとりのエピソードが演じられる毎にパズルのピースが見えてくるのだけれどそれと同時に、そうなると犯人は誰、どうやってこれらのピースが収束していくの…と思うところがどんどん増えていくし、脱出の方も進展をみせてますます引き込まれていくという仕掛け
とにかく生の迫力が良い
演技力だけでなく身体能力とかリズム感といったパフォーマンス力も必要だろうし、こんなに面白く賑やかに転がっていく疾走感は中々味わえない

登場人物7人全員が主役と言って良いほどに重要で、それぞれが主張しサポートしあいながら様々な組み合わせで物語の大車輪を回すという見事なバランス力
『テノヒラサイズの人生大車輪』という経歴は、きっと演者としての勲章になると思えるのでした

黄金のコメディフェスティバル2022

黄金のコメディフェスティバル2022

黄金のコメディフェスティバル

シアター風姿花伝(東京都)

2022/10/21 (金) ~ 2022/10/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/10/21 (金)

価格3,500円

21日19時半開演のグーチーム
劇想からまわりえっちゃん『黄金時代』
東京ハイビーム『ゴーストよ、こんにちわ』
の45分×2本立て(途中休憩10分)を拝見。

初日ゆえ詳細は伏せるが、攻め口は異なるも、2作品ともエモーショナルな作風で、心の琴線に触れまくり!(『ゴーストよ…』が触れたのは、琴線ではなくバイオリンの弦だけどw)。
心地よい時間を過ごせたことに感謝。

なお、演じ手では
『黄金時代』では、先月、スタジオ空洞で拝見したばかりの玉一祐樹美(たまいち・ゆきみ)さんの諦観と切ない表情が
『ゴーストよ、こんにちわ』では、個人的には『マリアの首』(2021.10)以来となる、那須野恵さんの場面毎での表情の変遷が
強く印象に残った。

ネタバレBOX

【配役】
『黄金時代』
鵜飼(失意の前・応援団長)…岸本武享さん
男市(現・応援団長。鵜飼とは幼馴染)…中村猿人さん
えりこ(現・応援副団長。鵜飼のことを案じている)…玉一祐樹美(たまいち・ゆきみ)さん
京田(鵜飼を慕う応援団員)…ムトコウヨウさん
岡林(新人応援団員。鵜飼のことは知らない)…大岩根綾奈(おおいわね・あやな)さん
堂上・母(応援団の古株でパトロン)…石澤希代子さん
堂上(応援団員)…南大空さん
満脇(応援団員)…青木真美さん
根尾(応援団員。ビール好き)…佐々木タケシさん
祖父江(応援団員)…杉本惠祐さん
阿部(応援団員)…佐野晋平さん
めぐみ(ビール売り子)…梶川七海さん
柳(応援団員)…平林和樹さん
松井(楽天イーグルス?の応援団長?)…林廉さん 
     
『ゴーストよ、こんにちわ』
YURI(幽霊が見える)…黒田由祈さん
佐竹真理子(3年前に事故死した幽霊)…那須野恵さん
佐竹健一(真理子の夫。今はYURIの先輩で彼女にプロポーズ中)…藤村直樹さん
ゴーストA/B/C…藤村直樹さん
美咲(幽霊。YURIの妹)…木下采音さん
すず(幽霊。美咲の親友)…大石真由さん
さすらいのバイオリニスト…出井麻莉子 (バイオリン演奏)さん
マルコビッチ(実はYURI・美咲の…)…飯田南織さん 
コビッチ(実はYURI・美咲の…)…有泉穂香さん
天の声(声のみ出演)…近江知永さん
アイ・アム・ア・ストーリー

アイ・アム・ア・ストーリー

シベリア少女鉄道

シアター・アルファ東京(東京都)

2022/10/12 (水) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

シベ少、と略して語る兄貴の「伝説的」過去作品解説を印象深く聴いたのは7年近く前の事。自分の知る演劇とは違う世界の事として聞いていたのだが、気になり始めた。元来好奇心は強いが行動に移るのは遅く、一年位置いて赤坂REDで観たのが伏線仕込み90分、回収15分という勢いの代物であった。独自に確立された世界観が提示されていて、印象的だったのが俳優たちの演技。真情を演じつつどこか見る者に突っ込ませる余地を与え、徐々に壊れて行く塩梅が舞台を成立させている事が、私の発見であった。話自体は伏線回収を全て把握できなかったが中々面白いと思った。
二回目の観劇機会は程なく訪れたが私的には残念な出来。数年が経ち、今回新しい劇場で三回目のシベ少観劇となった。

ネタバレBOX

会場のせいか、声量に些か心許なさがあり、特に後半音楽が必須となり、音量バランスの点で勿体なかった(致命的という事ではないが舞台のパワー的にはもっと欲しかった)。
狙いは明確に分かる舞台である。こういう事を考え続けている主宰の執念には呆れ、もとい、感心する。もっともこれは「演劇を使って」遊ぶ舞台と言える。そう言い切ってしまうのが正解な気がする。
舞台の進行の不自然さから意図は早々と見切れてしまうので、プロセスをどう面白くするか、狙った部分が明瞭に伝わるように工夫するか、といった部分が割と大事そうである。壮大な(荒唐無稽な)展開の中には「人間を描いた」側面もあるにはあるが、そこが大きな狙いだとすれば少し別のあり方が考えられるのかな、と思う。従ってこれはとことん「遊ぶ」ための舞台である、となる。

「物語」を少し紹介すると・・ある無医島に若い医師がやって来た(前に居た医師の後任として)。彼は人々に好かれ、彼に思いを寄せる女性もいる。椅子を持ち込んで待合室で休む婆さんもいる。これを取り巻く村の人々の人間模様の断片が、順次描かれる・・夫を亡くして毎日祠に祈っている女/人々が行き交う場を提供する居酒屋のママ/島興しをもたらす大人物を歓迎する人々/転向して来た女の子、彼女と睦まじくなる野生児的男の子/若い医師が元居た都会の医学会に身を置き彼を連れ戻しに来た女医/などなどまだ色々)。これらの場面が各々の短い展開を見せ、くるくると転換して行く。
当然、役者は役を兼任しているのだが(最初の温厚な医師をやった野口オリジナルがもう序盤から頭にハチマキの村の職人風に扮して笑いを取る)、やがて素早い展開の中で出オチしたり、衣裳替えが部分的だったり、息を切らして出てきたり、誰それがもうすぐ来る、と言われた役の者が「いや、誰それは何何の用で来れない」と言ったり、苦し紛れに「そうだ、何何」と用事を思い出したように退出したり、次第にあからさまに「役替わり」遊びの様相となる。そんな中、一人「母を亡くした息子」の役をやる青年が、序盤の登場以来、登場場面がなかなか訪れず、他の役をやるのでもなく(彼が一つの役しか与えられていないのか、タイミングが合わず他の役をゲットできなかったのか、あるいは振られている別の役の出番が訪れないだけなのかは、不明)、役替えが苛烈になるにつれ、居ても立ってもいられない様子で(彼がいないはずの場面に)出て来始める。
彼の鬱屈がついに高まり、ある役者が兼任する別の役が登場できず困っているタイミングに、ついに彼は役を「奪う」挙に出る。
予想される展開における観客の関心は、彼の登場に対し周囲がどう反応するか、だ。「一瞬の唖然」が答え。これにより彼が予め配役されていない役をやった、と推察できる。ただ、彼が不公平に扱われている、という事では無さそうである。いずれにせよその行動は「その時だけ助っ人に入った」という事ではなく、「役が奪われた」事になっているのがミソ。
味を占めた彼は次々に他の役を演じて行くが、他の役者たちも戦々恐々とし、「後私に残っているのはこの役だけ。これだけは死守する」といった塩梅。この「役略奪」の展開が加速し、「千と千尋」のカオナシみたく(恐らくパロってると思う)、衣裳のみならず役者も自分に吸収して巨体化する。残った者とこの巨体化した怪物との闘いとなり、一人また一人と敗北(巨体に同化)していく・・。

役者が役をもらう事、役者にとっての「役」とは何か、についての揶揄的な劇展開が頂点に至るのだが、これを現代の「役割」観、承認欲求と自意識の肥大化のメタファーと見るのも正しいと思う。が、そのテーマを掘り下げる芝居と思って見てしまうと、一つの事を繰り返し説明しているだけの単調な劇となってしまう。従ってこれは役者が役を与えられ、演じる形態としての「演劇」を茶化している劇、と見るのが正解だろう。もちろん、この芝居のフォーマットで役者がどれだけ弾けるか、を楽しむ劇でもあるが、私の好みとしては、「別の役に移れず困っている」素振りが、噛み砕きすぎ、親切すぎ、であり、興が殺がれる感がある。もっともそうしなければ判別できない数の役があり、意図が伝わらない時間が生じてしまう可能性もあったかも知れぬが、それでもシレっとやってしまうのがシベ少では?と、門外漢だが思ったりもする。
SessionYoshiya・語り

SessionYoshiya・語り

かわせみ座

プーク人形劇場(東京都)

2022/10/18 (火) ~ 2022/10/22 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

人形の巧みな演技を通じて、果てしない空に海原、森が見えるかのようでした。

ネタバレBOX

人形が演じる道具としてではなく、人形その自身が生命を持って演じているかのようでした。生の音楽演奏もとても効果的に、盛り立てていた印象でした。濃密な時間でした。
テノヒラサイズの人生大車輪2022

テノヒラサイズの人生大車輪2022

BALBOLABO

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2022/10/20 (木) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

観劇前はもっぱらパイプ椅子を使ったパフォーマンスに注目、期待をしていました。
実際に見たら、椅子使いは期待通りかそれ以上に見事。 
そしてストーリーの見事さに魅了されました。素晴らしい劇です。
演技も素晴らしかった。
これきっと、俳優としてやり甲斐とかやり応えとかあるんだろうなあ。

ネタバレBOX

別れさせ屋の雇い主は知りたかったなあ。
みんな大好きだったっしょ!

みんな大好きだったっしょ!

劇団癖者

駅前劇場(東京都)

2022/10/19 (水) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/10/21 (金) 14:30

95分。休憩なし。

みんな大好きだったっしょ!

みんな大好きだったっしょ!

劇団癖者

駅前劇場(東京都)

2022/10/19 (水) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/10/20 (木) 14:30

初見のユニット。ベタと言えばベタだけど、面白い!観て損はない。(2分押し)87分。
 女優しか出ないというので観に行ったのだが(^_^;)、予定調和的ではあるが深みもあって楽しい舞台だった。平成の渋谷ギャルサーNo.1だった「自由慈愛(フリージア)」のメンバーが令和に同窓会をする。すっかり落ち着いたメンバーだったが、そこに20年間ギャルをやっていた「かなぼぼ」が現われ、卒業イベントをしたいと言う…、の展開。なぜ卒業イベントを、という物語を回想しながらギャルサーの展開を見せて、最後は…、というあたりはベタだけど、ベタにはベタの良さがあると思わせる物語は見事だった。ギャルがそのまま、というのは、ありそうだけど観たことがなくて、その意味で新鮮だった。平成と令和を行き来するために暗転が多いのは、已むを得ないけれど、もうちょっと工夫が欲しい気がした。

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