狂奔
多文化共生演劇ユニット「鳴蒲牢」
王子小劇場(東京都)
2022/11/02 (水) ~ 2022/11/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2022/11/03 (木) 14:00
初見のユニット。事実上の旗揚げらしい。悪くはないが何か残念。121分。
6年前、小学生が連続自殺未遂事件を起こし、その内の一人の少女が実際に自殺。その小学生の内の一人とその友人、彼らに救われた女子高生が、少女の自殺の真相を探る、みたいな話。一種のサスペンス仕立てになってはいるが、謎が完全には解明されなくてやや消化不良的に終わってしまう。余計と思えるエピソードがあり(トランスジェンダー,ジャーナリストの夫)、セリフのテキストの選択も私のテイストではない。暗転が多いのも気が散るだけだと思えた。
私の一ヶ月
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2022/11/02 (水) ~ 2022/11/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/11/02 (水) 19:00
丁寧に作り込まれた戯曲を、役者陣がしっかり演じる。116分。
舞台を3つに分け、それぞれの物語が関わり合って一つの物語になる過程は見事。上手と中央の物語の関わりはすぐ分かるが、下手と他の2つの関連が明らかになるに連れて、物語が展開を始める。説明セリフなしに、それを提示する筆力が見事である。3つの関連が明らかになる過程と、その後の変化の2つを楽しむ舞台である。作家・演出家による2年のワークショップを通しての創作ということで、丁寧に作られたことがよく分かる。タイトルが非常に活きてる。重たい話題だが、藤野涼子の役柄の明るさに救われる気がした。
作者の須貝は、2007年に箱庭演舞曲の役者として観てから、役者・作家・演出家として観ている人だが、一種のファンタジー的な戯曲を書く事が多いと思っていた。本作もファンタジーと言ってみれば言えなくもないな…。
バリカンとダイヤ
劇団道学先生
ザ・ポケット(東京都)
2022/10/15 (土) ~ 2022/10/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
10月18日午後、中野のザ・ポケットで上演された劇団道学先生旗揚げ二十五周年記念公演公演『バリカンとダイヤ』を観てきた。これは、知人の役者もりちぇが出演していた関係からである。劇団道学先生の公演を観るのは今回で2回目、中島淳彦の作品を観るのは初めて、フライヤーによると、出演者の中に他の公演で観て実力のある役者だなぁと感じていた関根麻帆、かんのひとみもいて、大変な期待を持って出かけたのであるが、その期待に十分応える充実した舞台であった。
登場するのは10人の女性達。その中心となる主人公は、夫を亡くして間もない石田智恵子(かんのひとみ)である。その智恵子の元を頻繁に訪れて世話を焼くと共に、智恵子の今後の生活のことを心配する3人の娘達。彼女たちも長女智子(もりちえ)は離婚直後で娘の智美(輝蕗)を抱えて別れた夫と新しい恋人の間で揺れ動いており、会社経営の次女恵子(関根麻帆)は会社の経営が上手くいかず豪勢なマンションに引っ越したと嘘を言い実は安アパート暮らしで亡くなった父親から多額の援助を受けていた。その援助金が後にちょっとした騒動の元にもなっている。そして三女の潤子(山崎薫)は演劇関係の男性とマンションで同棲しているが、その男性が亡くなった父親と年齢的に近いという周りから観ると交際を素直に喜んでもらえない状態にあった。更に、夫の死後がなくこれ幸いと嫁ぎ先の九州から妹の智恵子の元に転がり込んできた姉の多恵子(村中玲子)。こうした身内のドタバタに加えて、夫がアメリカ人のご近所の友人フジ子(柿丸美智恵)や彼女が連れてきた化粧品のセールスウーマン島原レイ(佐々木明子)、新興宗教の信者勧誘担当者江木俊子(高橋星音)に加え、智恵子の夫が通っていたマッサージ店のマッサージ師林文琴(横田美優)といった面々が登場。
舞台中央に智恵子の住まいの台所とベランダ、下手に智子の家のベランダと、恵子の住む安アパート、上手には潤子が男性と同棲している一軒家が配置されていた。
タイトルにあるバリカンは、智恵子が夫の頭を刈るときに使っていたもの、ダイヤは夫からの唯一高価なプレゼント。退職金やら葬儀の経費やらから始まった智恵子に残された現金と自宅の遺産相続を巡るゴタゴタが一段落した最後に、夫の遺書のような手紙と智恵子だけに残すと高額の通帳がバリカンを入れてあった箱の底から見つかったときの「いやっほう」という一声が、この舞台の締めくくりにピッタリだったのが印象的だった。
役者達は皆演技達者で見応えのある人物像を演じっ切っていたのはさすが。キャスティングの上手さを誉めるべきなのだろう。道学先生という劇団からも目が離せなくなってしまった。
憧れのサンパチマイク
Monkey Works
シアターサンモール(東京都)
2022/11/02 (水) ~ 2022/11/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
お笑い芸人さんと周辺の人達のそれぞれの悩みを描いた舞台。昨今、良くお笑いの方の舞台裏側等をテレビ等で見かけるが、本舞台もそれに通じており、実に良く描かれている。所謂、売れていない芸人さんにスポットを当てているため、重くなりがちでもあるが、随所に笑いが散りばめられており、また漫才のシーンも何回もあり、笑いが絶えない舞台でした。
Heart of Stone
DANCETERIA-ANNEX
大倉山記念館(神奈川県)
2022/10/24 (月) ~ 2022/10/27 (木)公演終了
Heart of Stone
DANCETERIA-ANNEX
大倉山記念館(神奈川県)
2022/10/24 (月) ~ 2022/10/27 (木)公演終了
私の一ヶ月
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2022/11/02 (水) ~ 2022/11/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
実に数年ぶり、新国立劇場の創作劇、久々のヒットである。
この作者は今春吉祥寺劇場でヴァンダインの本格ミステリの劇化を見ただけで、その時は、なんと大胆な!と思ったが、技術はしっかりしていたので期待して初日に行った。
地方のささやかな家族のほぼ二十年にわたる人生ドラマなのだが、現代の世相も、人間像も的確にとらえられている。脚本も演出も上滑りしていないところがいい。
演劇ならではの工夫がいろいろあって、それが膨らんで豊かな芝居になっている。
例えば、母が子に託す十数年前に一か月だけ書いてやめてしまった昔の日記。その日記をいま、娘が一か月書く。と言うのがタイトルの所以なのだが、そこに込められた人が生きていくことの喜怒哀楽の深さ!。日常表現からを重ねて、書き切っている。表紙の赤い小さな日記帳の小道具が心憎い。
夫が自死しているというのをさりげなくポッと出すタイミングの良さ。説明しないから生きている。その夫が残した最後の台詞もいい。なんだかよくわからなくなった、と言うような言葉だったと思うが、そういうさりげない言葉が人を動かす。ここでの母親の日常誰もがやる不愛想な対応も、実に!うまい。日々の生活の亀裂の深淵をさっと見せる。
本が最初平田オリザ風に始まるので、ヤダナと感じたが、その後は全くオリザとは似て非なる手法で、日本海側の地方の小さなコンビニを営む一家の話が、新幹線で、東京と簡単に往復できる今の時代を背景にじんわりと、時空も、異界の人も含めて広がっていくあたり、とても新人とは思えない出来である。
ドラマは、テーマとしては珍しくもない喪失の物語なのだが、現代の観客の心を打つように周到に出来て居る。母子を演じる村岡希美と、藤野涼子がいい。この親子とカップリングされるように置かれている中年を迎える男同士の友情の行方は、影が薄いが、物語にくっきりと陰影をつけているのは、この男たちの喪失の物語なのだ。ここは少しわかり良すぎるか、とも思うが、それはないものねだりで、次はもっといい芝居が見られそうで楽しみである。
入りは、いつもガラガラのこの劇場だが、意外にも8割ほど。客はよく知っているものだと感心。
ふにゃふにゃ、夕立、夏霞
The Stone Age ヘンドリックス
in→dependent theatre 2nd(大阪府)
2022/10/28 (金) ~ 2022/10/30 (日)公演終了
仮面音楽祭
藤原たまえプロデュース
「劇」小劇場(東京都)
2022/11/02 (水) ~ 2022/11/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
そうだよね、自信がなきゃ投げ銭方式にはしないよね、もうすごいっす!超絶面白い!
カラオケボックス的な相席屋で繰り広げられる男と女のラブゲーム
お店側の段取りから初対面にかけての何とも甘くて、しょっぱくて、ただれた空気感
かつては劇団ポツドールの独壇場だった分野だけれど本作も全然負けてない
そしてもうひとつの特色、歌の効果絶大、めっちゃ楽しい!
こんなに楽しいなら舞台世界と同じ 電車の始発時間が来るまでず~っと観ていたい
ただし良い子のみんなが観るのは、ちょっと早いかも
間違いなくクチコミで満員御礼になっていく公演
早い者勝ち、これを見逃すのは絶対に損だと思う
まなつぼし
東京ノ温度
サンモールスタジオ(東京都)
2022/10/19 (水) ~ 2022/10/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の設定と精神をベースに21世紀のイマの要素を取り入れた意欲作にして秀作。
原典から途中乗車してくる鳥捕りと兄妹が引用されるが、兄妹の翻案ぶりが現実で地球上で起きていることを踏まえていて秀逸。
また、原点のジョバンニとカムパネルラに相当する大切な人を喪う人物を二組登場させて一方は比較的原典に近く、もう一方は「ある意味で逆かつ新機軸」なことにも舌を巻いた。さらに終盤で明かされる本作における銀河鉄道の種明かし(?)もいかにも現代的で見事。
あと、原典に出てくるフレーズを何度か使い、最終的に主人公がそれに気付くのも原典ファンとしてたまらなくステキに感じた。
原典を好きであればあるほど楽しめるのではあるまいか?(もちろん原典を知らなくても楽しめるだろうが)
ラビットホール
劇団昴
Pit昴/サイスタジオ大山第1(東京都)
2022/10/28 (金) ~ 2022/11/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
傑作。
物語の悲痛さは、説明(あらすじ)から何となく(頭では)理解できるが、それを舞台でどう表現するのか。それも海外戯曲(翻訳)を…そんなことは杞憂であった。
舞台美術は、本当にその空間で暮らしているかのような精緻な造りであり、照明や音響といった舞台技術も上手い。しかし何といっても役者陣の熱演が凄い!台詞というか言葉に込められた真意、それを激情・激白する姿に感動する。瞬時に反応した台詞の応酬は、本当にそう思っているかのような、ゆずれない芯のある言葉となっている。家族という緊密な関係、そこに亡くなった子への想いを繋ぐ緊張した状況、共感必至の現代劇である。
(上演時間2時間15分 途中休憩含む)
左手と右手
小松台東
駅前劇場(東京都)
2022/10/29 (土) ~ 2022/11/08 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
乾いた鉢に水やりして葉が生き返ってくるような感覚をジワジワと味わっている。自分の左手を優しく包んでくれる右手。いいなあ。そして不器用な会話の間がたまらなく良い。「何もない」の響きが最初は複雑な感じだったけど、二人の生活がしっかりと根付いていることに気づいて感動です。
自分の回りの現実をどう受け止めるか。人が生きていく様をこれでもかと見せつける小松台東さん、堪能しました。
さくらんぼ畑
8.22企画
THEATRE E9 KYOTO(京都府)
2022/10/28 (金) ~ 2022/10/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
舞台の家具や衣装がいいですね!
シンプルですが黒の舞台に役者さんが映える色でコーディネートするセンス。
これだけで舞台の期待感は高まります。
今まで多くのお芝居を見てきましたがこだわりの感じる舞台は必ず面白い。
そして役者さんの演技が上手い!
チェーホフは難しい印象があるのでちょっと心配でしたが、力強い演技力に惹きつけられました。
久しぶりの京都での観劇、大人のお芝居を堪能しました。
待ちぼうけの町
劇団俳優座
シアターX(東京都)
2022/09/02 (金) ~ 2022/09/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
コメントを忘れていた。だいぶ記憶が遠くなったが、思い出してみる。ある漁師町の居酒屋のママが主人公、記憶喪失の男がやって来る。遭難しかけて助かったと言い、顔を布で隠している。記憶はなくしているが、元漁師だったのか手作業が器用で男たちの役に立ち一目置かれている。やがて祭りの季節になり、神楽舞(のような踊り)の助っ人に動員された男は、要役を見事に踊りここでも喝采を浴びるが、そうした諸々と、彼が絵を描いている事から、居酒屋のママは震災で失った(と思っていた)夫の影を見る。リアルに考えれば夫であった男は顔を隠していようと体格や輪郭、そして声で判別できるはず、であるが、まあそうならない事情があるんだろうと仮定して見続けた。若者たちの間でも色恋沙汰で賑わしい。そして「夫」と確信するまでは、ママは自分に言い寄る些か俗物のきらいはあるが誠実さも見せる中年男に靡こうとしている。
最終的に謎の男とママは遠い地で結ばれるが、これが単なる(震災を風景として利用した)ラブストーリーでなく、全編にわたって震災の影が人間風景に過っている。ディテイルには突っ込みたくなった記憶があるが、爽快なラストが払拭した。
欲望という名の電車
文学座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2022/10/29 (土) ~ 2022/11/06 (日)公演終了
ラビットホール
劇団昴
Pit昴/サイスタジオ大山第1(東京都)
2022/10/28 (金) ~ 2022/11/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白かったです。
劇場に入り、まず舞台セットの見事さに驚き、そして役者さん達の迫力のある演技に、目が釘付けになりました。
悲しみを抱える夫婦に感情移入しながら観ましたが、私の性格は夫のハウイーの方だなと思いました。
考えさせられる良い舞台でした。
どんな顔すればいいの@焼跡
チリアクターズ
スタジオ「HIKARI」(神奈川県)
2022/10/27 (木) ~ 2022/10/30 (日)公演終了
短編劇集「新江古田のワケマエ」
劇団二畳
FOYER ekoda(ホワイエ江古田)(東京都)
2022/10/29 (土) ~ 2022/11/03 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
A「そう言われると今年一番はあの日かな」C「アレクサンドライト」観劇。
そう言われると・・・は題材的には暗くなりがちなものが、出てくる人達が優しく温かく笑える場面もありほっこりしました。
アレクサンドライト・・・家族の会話が面白く終わり方も良かったです。
派手さは無いけど古民家をうまく使えているいい話でした。
クロノスタシス
劇団虚幻癖
ウッディシアター中目黒(東京都)
2022/10/26 (水) ~ 2022/10/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
今回もなかなか凄い虚幻癖らしい
ブラックファンタジーでした
新しい演出もあったりしてとても楽しめた!
虚幻癖さん作り出すブラックファンタジー世界好きやわ😃
衣装とビジュアルが最高で役者パワー熱量が最高でした
いい役者さんがいっぱいでした
今回はダンスヤバいぐらい素敵でした
次回公演は来年3月あるので楽しみに待ってます
左手と右手
小松台東
駅前劇場(東京都)
2022/10/29 (土) ~ 2022/11/08 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
タイトルから楳図かずおの『神の左手悪魔の右手』を連想するが全く関係ない。
何でだが分からないが中国映画の『ただいま』を想起。何か中国とか韓国とかの80〜90年代の暗い映画はこんな雰囲気だった。日本だと自主映画にこんなテイストが多かったような。
濡れ場のない日活ロマンポルノ、古いAVのドラマ、ピンク四天王のような空気感。嫌な事件が起こる前触れの息遣い。
宮崎県の田舎町、十代から付き合ったり別れたりを繰り返して来たアラフォーの男女(松本哲也氏と吉田久美さん)。今は男の自宅の古い一軒家で同棲している。そこに訪れる来客との会話の中からゆらゆら浮かび上がる二人の実存、たなびく白煙。矢鱈飲み物と食べ物が出てくる。
吉田久美さんは綺麗で絵になる。冷蔵庫から麦茶を注ぐ。
松本哲也氏の諦観とスーパーの駐車場で買ってきたたこ焼き。
嫌な社長役の佐藤達(とおる)氏も強烈。やり過ぎ位の下卑た目線。視線で女を撫で回す。
冒頭から終演まで目に映る光景は変わらないが、二人の姿は驚く程違って見える。醸成した空気に演出をつけているような作品。卓越した舞台美術。