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蜘蛛巣城

蜘蛛巣城

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2023/02/25 (土) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

オリジナルは黒澤明監督の1957年の映画で、シェイクスピアの「マクベス」を日本の戦国時代に移したものである。私は10数年前にこの映画をTVで観て黒澤映画とシェイクスピア戯曲の面白さを初めて理解できたのであった。

それが今回舞台化された。出演者を見てみると
・マクベス→鷲津武時(わしづたけとき):三船敏郎(37):早乙女太一(31)
・マクベス夫人→鷲津浅茅(あさじ):山田五十鈴(40):倉科カナ(35)
となっていて、三船と山田という超名優に対して今回のお二人がどんな風に対抗してくるかがポイントである。山田さんは実際の年齢以上に見えてしまうのに対して倉科さんはかなり若く見える。それは三船さんと早乙女さんについても同じであってどちらも20歳くらいの違いにすら見える。重厚対新鮮の戦いやいかにというところか。

最初から若くストレートな演技でぐいぐいと引き込まれた。そして残り30分までは星5つだったのだがエンディングは映画とは異なるもので私好みではなかった。そこだけが残念。

ネタバレBOX

『マクベス』、『蜘蛛巣城映画』、『蜘蛛巣城舞台』で気が付いたことを脈絡なく記す。それぞれ「マク」、「蜘蛛映画」、「蜘蛛舞台」と略記する。「蜘蛛映画」と「蜘蛛舞台」に共通することは単に「蜘蛛」とする。

「マク」はいくつか省略したと思われるところがあって、長時間バージョンがあったのではないかと言われている。「蜘蛛」ではそういうところを補っているので「マク」にくらべて納得させられながら進んで行く。そう感じるところを重点的に挙げて行く。

*スコットランド王ダンカン(=都築国春、以下では大殿と記すことが多い)の長男マルカム(=都築国丸)は目立った記述がないのだが「蜘蛛舞台」だけは道化の役目を与えられている。ここは原作よりもシェイクスピアらしい。次男のドナルペインは「蜘蛛」には登場しない。

*ダンカンがマクベスの居城を訪問することは「マク」では直接マクベスに伝えている。「蜘蛛」では突然大殿の兵が居城の周りを囲んでしまう。この恐怖が鷲津が大殿を殺す決心をする大きな理由となる。まあしかしちょっと不自然ではある。さらに「蜘蛛舞台」ではその後の宴で大殿父子が浅茅を我がものにしようとするかのような言動をする。これは倉科には山田のような説得力のある冷酷な夫人はできないので、殺害の決心をするダメ押しの必要を感じて付け加えたのだろう。ここで浅茅と国丸が社交ダンスのように舞うシーンがある。かなり無理があるがここは倉科の特性を逆に生かしたものだ。

*マクベスがバンクォー(=三木義明)とその息子フリーアンス(=三木義照)を殺害するが、「マク」では「他人の息子を王位に就けるために悪魔に魂を売ったのか(=ダンカンを殺したのか)」という不満が原因である。ここでは夫人でなくマクベス本人が主導する。「蜘蛛」では義照を養子にするお披露目の宴の直前に浅茅が身ごもってしまう(その後流産)。それが主要な動機になる。一方でマクベス夫人が妊娠することはない。

*マクベスがバンクォーの亡霊を見る宴会は「マク」では通常の晩餐会だが「蜘蛛」では義照を養子にするお披露目のものだった。

*マクダフ(=小田倉則保)は最後マクベスと1対1で戦い倒す、他方則保は「蜘蛛映画」では軍師として森を動かす指揮をとる。しかし「蜘蛛舞台」では妻同士が姉妹であることから序盤で気を許して大殿に対して不満があるようなことを鷲津に言ったりする。また最後には国丸に殺されてしまう。

*マクベス夫人の名前は不明である。親兄弟の記述もない。浅茅も「蜘蛛映画」では親兄弟の記述はない。「蜘蛛舞台」では小田倉夫人の若菜が妹である。

*マクダフ夫人(=小田倉若菜)と息子が殺されるシーンは「蜘蛛映画」では存在しない(そもそも夫人は登場しない)が「蜘蛛舞台」では子供の旭丸と共に殺されてしまう。若菜が浅茅の妹という設定が悲しみを深める。

*最後まで生き残る人
「マク」フリーアンス、マクダフ、マルカム、ドナルペイン?
「蜘蛛映画」三木義照、小田倉則保、都築国丸、鷲津浅茅?
「蜘蛛舞台」三木義照、鷲津浅茅:則保は国丸に殺され、国丸は義照に殺される。「蜘蛛舞台」は下剋上を徹底している。冒頭の戦いの謀反人も一家皆殺しにされている。他は本人だけ。

*マクベスの出自の記述は無い。「蜘蛛舞台」だけは百姓出身となって独自のエンディングにつながる。もっとも農民と兵隊の兼業がほとんどだっただろうから区別に意味はないのかもしれない。

*マクベス夫人は狂って自殺する、「蜘蛛映画」では狂うが生死不明、「蜘蛛舞台」では狂うも最後まで生きている。

*ダンカンが殺されるのはマクベスが引っ越す前なのでグラームズ城(=一の砦)であるが国春の場合は鷲津が昇進して引っ越した北の館(=コーダー城)である。

*あの魔女の予言の一つ「女から(自然に*)生まれた者にマクベスは殺せない」という理解が難しい言葉は「蜘蛛」では出てこない。しかしこれがないので普通の人間に一対一で殺されるわけには行かない。そこで映画では家来達の射た大量の矢で殺されることにした。しかし舞台ではそれはできないので落ち武者になって百姓たちの手にかかるシーンを追加した。百姓から成り上がって百姓に殺されるという形をとったのである。その結果、折角盛り上がった戦いのシーンからすっかり白けてのエンディングとなってしまった。
ここで(自然に*)は後で「実は帝王切開で生まれたのだ」と言ってもインチキにならないためには日本語では入れる必要があるが実際にセリフに出すとネタバレになってしまうというジレンマがある。英語だとそんなことはなくて単に one of woman borne で後から帝王切開と言ってもああそうかで済むらしい。まあそんな説明をグダグダするのを嫌って「蜘蛛」ではそういう設定を止めたのだろう。

参考文献
Yu_Seさんのnote
舞台 「蜘蛛巣城」 観劇レビュー 2023/02/25
は大量の記述で圧倒される。この舞台に興味を持った方は必読である。
リンクは検索してください。
橋の上で

橋の上で

タテヨコ企画

小劇場B1(東京都)

2023/03/08 (水) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/03/09 (木) 19:00

価格4,000円

主人公の生い立ち…それは 身近 ではないが
かと言って“他人事”では決してない。。。
重く…考えさせられるテーマ

でも…主人公の身の上に…一人でも多く
想いを馳せることができるなら
こんな“悲劇”はいつかなくせるに違いない‼ と
想いたい1時間50分でした

なるべく派手な服を着る

なるべく派手な服を着る

MONO

吉祥寺シアター(東京都)

2023/03/03 (金) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

もう30年以上の歴史がある劇団なのに、今日が初観劇。今回は劇団員だけによる上演だそうだが、みないいキャラクター造形で、クスクスが止まらず。セットも素晴らしい。最後まで楽しませてもらった。

割と近くの席に、何度となく携帯のメールか何かの着信音を(それも結構な音量で)響かせてた○○がいたのが残念…。

LAST SMILE ラストスマイル

LAST SMILE ラストスマイル

学園座

関西大学・千里山キャンパス内KUシンフォニーホール(大阪府)

2023/03/09 (木) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

大阪の学生劇団では間違いなくNo.1(阪大の六風館も良いけど)
演劇は人数があると迫力もあって、観ていても面白い
今回はタイムスリップやタイムリープをしながら、争いや平和の意義を問いかけていく流れ
間に殺陣(音響とズレあったけど、気にならない程度)もあったり、三時間弱の長丁場であるが飽きさせない工夫が盛りだくさん
泣ける場面もあって大満足

DADA

DADA

幻灯劇場

AI・HALL(兵庫県)

2023/03/03 (金) ~ 2023/03/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度

音楽劇として、やや珍しいアプローチに取り組んでいる点が印象に残りました。物語パートと歌唱パートに分け、それらをレイヤーとして重ね合わせることでひとつのシーンを構築しようとする。その見え方も観客によって各々異なるでしょうし、様々な感想を呼び起こす効果があると感じました。僕の観た回は客席の反応も上々で、ファンをしっかり形成する活動歴を誇る団体であることがうかがえます。社会問題を内包するモチーフを選んだ一作なので、登場人物の内面描写から飛躍させ、何かしらの問題提起まで到達できれば、更に良かったかも。

蜘蛛巣城

蜘蛛巣城

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2023/02/25 (土) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

黒澤と『マクベス』を全く知らない方が楽しめるのかもしれない。一体何を観せられているのか途中不安になった。『マクベス』の翻案ものの最高傑作とされる黒澤明の『蜘蛛巣城』。それを下敷きにこんな作品を作る人間の業。「蜘蛛手の森」の妖婆の笑う声が聴こえるようだ。

衝撃を受けたのは開幕から幕間ごとに流される曲。お経を英語でがなっているようにも聴こえたフスグトゥン(Khusugtun)の『Tes Gol』他。モンゴルの伝統音楽グループのニューウェーヴ。和洋折衷なおどろおどろしさ。この曲を選んだ人が今作のMVP。
美術のセンスも良い。蜘蛛の巣の張られた背景を仕切る幕。

主演の早乙女太一氏は声が通るので台詞が聞き易い。マクベスにしてはカッコ良すぎるが。弟の早乙女友貴(ゆうき)氏の方がこういう汚れた役は似合いそう。

「蜘蛛手の森」の妖婆役は銀粉蝶(ぎんぷんちょう)さん。上品で声が朗々としている。

黒澤明は『マクベス』を「自分の身の丈以上の地位を求めた故の悲劇」と語っていた。
ちなみに黒澤明のシェイクスピア翻案ものは三作ある。『マクベス』は『蜘蛛巣城』、『リア王』は『乱』、そして実は『ハムレット』は『悪い奴ほどよく眠る』だったりする。(外国人からの指摘)。日本人よりも外国人の方が気付き易い。

ネタバレBOX

蜘蛛手の森が歩き出すシーンとラストの鷲津武時の矢ぶすまをどう表現するのかが注目ポイント、どちらもなかった。

城主が妻を所望する描写や主人公の行動を正当化する要素を挿む必要はなかった。あくまでも主人公の心の出来事であるべき。逆に何の文句もない素晴らしい君主に描いた方がテーマがハッキリする。

倉科カナさんはミスキャストだろう。山田五十鈴の役だぞ。
ここまで弄るならマクベスと夫人が隣国に生き延びるラストでも良かった。(どうでもいい)。

収録日だったのだが、城主が主人公の武勲を称え「北の館」の主に任命する場面、「北の館」を「一の館」と言い間違えてしまうハプニングがあった。

『マクベス』の恐怖の本質は“罪悪感”だと思う。欲望に負けて主君を殺め、親友にまで手を掛ける。全て望みが叶った筈が“罪悪感”の後ろ暗さで不安で不安で堪らない。その不安と恐怖を掻き消す為に誰も彼もを殺していく。一体、自分が欲しかったものは何だったのか?妖婆の高笑いが聴こえてくる。精神の安寧、心の平穏こそが一番人間に必要なものだったのだ。
Don't freak out

Don't freak out

ナイロン100℃

ザ・スズナリ(東京都)

2023/02/24 (金) ~ 2023/03/21 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

劇団初めて三十年、先に「しびれ雲」いまこの「D!ont freak out」。同じ昭和戦前期ものをそれぞれ好きな先行作品の本歌取りをしながら、自分の長い付き合いの俳優たちと作るのは作者冥利に尽きることだろう。Conglaturation!!
松永玲子 村岡希美の二人に捧げたような作品だが、二人から引き出すものは引き出し、しびれ雲とは真反対のホラーである。それでいながら、ともに芝居見物の楽しさを十分味合わせてくれる。スズナリでは見たことがないようなマッピングや照明、道具操作の技術を尽くして、昭和期なら松沢病院、といった感じの脳病院院長一家の不気味な安逸を、松永・村岡の奇妙にメイクした女中二人の目で追っていく(二人、快演)。つじつまが合っているような、合っていないようなストーリー展開もステージ技術で見せられてしまう。
「女中たち」のようでもあるし、狂人幽閉の話もどこかで見た(イプセンの幽霊?)ような気がするが思い出せない。客席一杯に客を入れているが二百までは行かないだろう。このキャスト・スタッフで普通にやれば赤字である。チケットも8千円を割る。こういうスズナリという劇場に配慮できるところもKERAの偉いところである。補助席も出ていて手に入りそうだから、一見をおすすめする快作である。意外に短くて2時間20分。


ぬるま湯のあとさき(12/26.27の公演中止)

ぬるま湯のあとさき(12/26.27の公演中止)

ツケヤキバ

OFF OFFシアター(東京都)

2022/12/21 (水) ~ 2022/12/27 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

笑わせてもらいました。男特有のエネルギーは好きです。これからも応援します。

デラシネ

デラシネ

鵺的(ぬえてき)

新宿シアタートップス(東京都)

2023/03/06 (月) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

役者たちの演技はとても良かった。観る人を選ぶ作品かもしれない。もうすこし考えたい。

デラシネ

デラシネ

鵺的(ぬえてき)

新宿シアタートップス(東京都)

2023/03/06 (月) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鵺的の芝居は思い込みの激しい程面白くできあがるのだが、この作品は、業界内輪話としては、中村ノブアキのように陽性ではなく、陰気な告発調で、中身も今までにも言われていたことで今更舞台で見ても気が滅入るばかりだ。
すっかり創造力を失ったヒットメーカーが、周囲の才能をパワハラ・セクハラで食い尽くして生き延びる、という話はテレビ・シナリオ業界ばかりで無く、商業芸術(とまでは行かない広告なども含め)の世界にはよくある話で、おおっぴらに語られなくなった今でも、その産業システムの中に内在しているのだから、どこにでもある。他の業界にもあるだろう。
そこでなにか新しい生き方を生きる人物でも描き切れていれば、面白くなるのだが、(現実に泳ぎ切った人はこれまたいくらでもいる)ここは、昭和のパターンを一歩も出ていない。エピソードも主演女優が勝手なことを言うとか、ロケハンと称してセクハラとか、一家のホームドラマとか、昔の週刊誌、噂の真相並では迫力に欠ける。
似たことは今でもあるだろうが、才能が埋もれる確率は非常に低い。今は周囲が放っておかないし、周囲も商売なのだからそれなりに真剣なのだ。
主演の佐藤弘幸をはじめ女優陣も一本調子なのもうまくない。なんとかつじつまを合わせるのはうまい寺十吾を今回は手がつきた。これで「デラシネ」と言われても気取り損ねたという感じだ。



幽霊塔と私と乱歩の話

幽霊塔と私と乱歩の話

木村美月の企画

小劇場 楽園(東京都)

2023/03/01 (水) ~ 2023/03/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/03/02 (木) 19:30

 かつての奇妙な縁の宮地一郎、駒込いちこ、清掃員大月春吉とともに権正さとみは幽霊塔に入っていき、不可思議で不安と恐怖、そして途中から江戸川乱歩の孫の?江戸豊も加わって、物語の前半から中盤にかけてはごく平凡でありきたりな若者の屈折した青春群像劇劇で、劇のタイトルと、主演の女優さんの個性的な雰囲気や独特な喋り方とは裏腹に全然期待はずれだったのが、一気に乱歩的な世界観と現実が交錯してきて、劇世界にいつの間にか引き込まれていた。

 特に幽霊塔内で主人公も含め、それぞれの登場人物が仲間とはぐれ、自分の過去が立ち現れてくるという自分との闘いであり、そして少し不思議な場面でもあるが、非常に現代において、ふと立ち止まって考えることの大切さを感じた。

カミサマの恋

カミサマの恋

ことのはbox

萬劇場(東京都)

2023/03/01 (水) ~ 2023/03/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「お前さんの言うことはもっともだ」カミサマは相手の話を否定しません。話を聞いてもらう時共感してもらえたらいいですよね。イタコのような力もあるようです。
愚痴のような話から、これからの人生まで。
いかにも田舎の家という作りのセットもよかったです。
脚本ですが、これは他の地方の人にもわかるくらいの易しい津軽弁にしてあるのかなと思いました。

ペリクリーズ

ペリクリーズ

演劇集団円

シアターX(東京都)

2023/03/01 (水) ~ 2023/03/08 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

シェイクスピアのセリフのきらめき、嵐や女郎屋をイマジネーションで現出する野田秀樹的見立て表現、ギリシア劇にもとづく波乱万丈と壮大なハッピーエンド。これらが結合した出色の舞台だった。
特に船が嵐に翻弄される、演劇ワークショップ的ダイナミックな動きは抜群。またペリクリーズ(石原由宇)が娘(古賀ありさ)と再会した時の、信じられないけど信じたい、信じたいけど信じられないという行きつ戻りつを誇張しつつ、最後の歓喜の涙に至るシークエンスは見事だった。

話は荒唐無稽だが、それを神々しいまでのドラマにして、見ていて目頭が熱くなった。若い中屋敷法仁の大胆な上演台本・演出の成功である。2時間20分(休憩15分)。語り手(藤田宗久)もよかった。

マギーの博物館

マギーの博物館

劇団俳小

サンモールスタジオ(東京都)

2023/03/03 (金) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

貧しい海辺の炭鉱の町の話ということで気が重くなっていたのでしたが、思っていたほど暗くなくてよかったです。マギーは食堂?にお茶飲みに行けていたし、生きる気力を失っているというお母さんも、何か遊びに出かけられていたようだし。しかし仕事が無いらしいとはいえ、たまに臨時の仕事しかしないニールってどうなの?バグパイプが上手で優しいし、なかなか面白い人物みたいだけど私には疑問でした。
貧しさに負けて飲んだくれてるような人がいなくて(少なくともこの家族には)、みんな気丈に生きている姿がよかったです。
でも、チーチコフが弟役って、いくら舞台とはいえ老けすぎて無いですか?

Don't freak out

Don't freak out

ナイロン100℃

ザ・スズナリ(東京都)

2023/02/24 (金) ~ 2023/03/21 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

歪んだ人物たちの濃密な関係が、ユーモアをたたえつつホラーな展開へ進んでいく。ダークな芝居を得意とするケラの本領発揮。狭いザ・スズナリの舞台を、通常よりも桟敷席、ミニ椅子席まで作って客席を増やし、一層奥行きを狭くしていた。その狭い舞台に、女中部屋のセットをしっかり建て、奥の窓の向こうに屋外の演技スペースと、奥の上部に地下の監禁部屋をつくる。人間関係と同様にきわめて密度の濃いセット。ザ・スズナリであんなに作りこんだセットは初めて見た。

松永玲子の妹あめと村岡希美の姉くもの女中姉妹に、一家の主で監禁されている清太郎(ミノスケ)、今は主人になった次男(岩谷健司)、奥様(安澤千草)、お嬢様(松本まりか)、おぼっちゃま(新谷真弓)に、大奥様(祖母)の吉増裕士の一族。次男は大奥様の言いなりで、奥様は邪険にされる。大奥様がお坊ちゃまが学校でいじめられてることを見抜き、「本当のことをお云い」とステッキでせっかんする場面は迫力あった。そして「復讐するのよ、それだけ覚えておけばいい」と。これが伏線となってひたひたとダークな結末へと転がっていく。
妹あめの婚約者だった鏡と葬儀屋の傀儡(くぐつ)の二役の入江雅人、田舎警官のカブラギ(藤田秀世)もよかった。

全員おしろいを濃く塗り、目じりにくまを作る濃いメイクで、虚構の芝居の雰囲気を醸していた。その虚構(怨念と物語)の物語のリアリティーがさえていた。
2時間20分の休憩なし。でも、ちょうど疲れたころにブレイクタイムとばかり、全員で歌う幕間が二度ある。二回目のブレイクの後は、怒涛の悲劇の連続で、疲れも吹き飛んだ。

ネタバレBOX

坊ちゃんをいじめていた子たちが行方不明だという教師の話、外に出られないはずの清太郎が外で子供を作っていたという告発など、謎をちりばめながら、それを無残な悲劇へと回収していく。面白い展開だった。
マギーの博物館

マギーの博物館

劇団俳小

サンモールスタジオ(東京都)

2023/03/03 (金) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

演技(表情)、舞台美術、照明、音響どれも素晴らしく、しっかりとこの壮絶な闘い(貧困との闘い)を描いていた
貧困の悲しさで胸がいっぱいになる
「聖なる日」のディジュリドゥの音色に対し今回はバグパイプが通奏低音
ともかく息つく余裕もなく見入った2時間15分
加賀谷崇文と小池のぞみは大男とチビという原作にピッタリの配役
4人ともよく声が通っていた
そしてしゃべれぬおじいちゃんの大久保たかひろが木片をたたいて意思表示をする様が実に良く表現されていた

狼なキミとエンドレスな魔女

狼なキミとエンドレスな魔女

劇団1mg

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2023/03/08 (水) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

満足度★★

控え目に言っても面白くないというか、なにこれ感満載
ステタイをパクったような演出や、コロナをもじったようなストーリーは頂けない…
極めつけはスタートが30分以上遅れ、制作の陳腐さが露呈
全ての回を観てきたが、最低の出来だと思う
Wコール当たり前の劇団が、シングルコールからもわかると思います
この内容でこの値段は…😢
過去公演を見直した方が良いと思う
次回からは優先順位を…

マギーの博物館

マギーの博物館

劇団俳小

サンモールスタジオ(東京都)

2023/03/03 (金) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

開幕から滅茶苦茶面白い。
1947年カナダの東海岸、ケープ・ブレトン島にある炭鉱町グレース・ベイ。スコットランド移民のアイデンティティはケルト語。バグパイプで奏でる曲はスコットランド民謡。『テルーの唄』に似たメロディーがメイン、元々谷山浩子がケルト音楽をイメージして作ったのであろう。

「洟ッ垂れ」と呼ばれ、誰にも相手にされないチビのマギー(小池のぞみさん)が今日も独りダイナーで時間を潰している。そこに現れたのは戦争帰りの大男ニール(加賀谷崇文氏)、デカい荷物を抱えて。「この席いいかい。」と相席になり、ポテトとティーを奢ってくれる。警戒するマギーの前でニールはバグパイプを取り出して組み立てると、大音量で吹き鳴らす。店主に怒鳴られ叩き出されるニール。

こんな出会いから物語は転がり出す。『俺たちに明日はない』のオープニング、歌の歌詞のような出だしが心地良い。

マギーの暮らす狭い掘っ立て小屋では、塵肺で寝たきりの口のきけない祖父(大久保たかひろ氏)、ビンゴだけが楽しみの母(荒井晃恵さん)、独り一家を支えて炭鉱で働く弟(大川原直太氏)が。弟は労働組合の力で炭鉱夫の待遇改善を目指している。マギーに惚れたニールは毎日通ってバグパイプを吹き鳴らす。

ロバート秋山風味の布袋寅泰、加賀谷崇文氏がカッコイイ。一本気で無頼、プライドが高く強い信念を持っている。
小池のぞみさんの揺れる女心、亡き兄への今も変わらぬ畏敬の念。
大川原直太氏は潮健児や高並功の若い頃を思わせるアクの強さ。
大久保たかひろ氏はいいキャラ設定、ガンガン木片を叩いて人を呼ぶ。
荒井晃恵さんが床を雑巾で拭く様子が印象に残る。

貧しい惨めな暮らしの中で人々の考えは揺れ動く。
一番の名シーンは湾に死にかけた鯨が打ち上げられる。酔っ払った住民共はおどけてふざけ合い小便をかけ痛めつけて遊ぶ。それにキレた弟は独り止めに入ろうとする。弟を宥めるニール。「あいつら何人いると思ってるんだ?それにたかが鯨じゃないか。」弟は怒鳴り返す。「それを言うならば俺はたかが炭鉱夫だ!何とか生き延びる為に必死になっている奴を助けることに理由なんかいるものか!」それを聞いたニールもはっとなり、二人で多勢に殴りかかっていく。

何も持たない弱者達が手を伸ばすべきものは過去の栄光か?闘争の果ての未来か?

ネタバレBOX

年齢設定が見た目で判り辛い。なんか配役に無理がある。
ニールには軍で稼いだ金があり海辺に家を建てるのだが、それまでの無一文の生活の理由が分からない。
中盤から話が停滞してプロレタリア文学みたいになっていく。掘っ立て小屋のセットのままではどうしても物語がうねらない。登場人物も少なすぎる。重要な絵で見せるべきシーンをト書きで済ませてしまっている。弟の恋人はいるだろう。

クライマックスに大規模な賃上げストライキを弟が組織して闘うのだが、ナレーションのみ。
どうもこの話の見せ方を間違えている。あくまでもマギーが主人公で彼女のラストの発狂まで繋がる心の揺れにフォーカスしていかないと。
愛する夫や弟、祖父の遺体を解体してホルマリン漬けにしてまでこの世に残したいと思った狂気。虫けらのように踏み潰された彼等の存在をいつまでも博物館に飾ってあげたいとの願い。それが伝わらない。
マギーの博物館

マギーの博物館

劇団俳小

サンモールスタジオ(東京都)

2023/03/03 (金) ~ 2023/03/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

結構話の背景が重たいですが、役者の演技力もあって、観やすかったです。
マギー役の小池のぞみさん、可愛らしくもあり力強さもあって良かったです。

ペリクリーズ

ペリクリーズ

演劇集団円

シアターX(東京都)

2023/03/01 (水) ~ 2023/03/08 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

もともと吟遊詩人の作品が元ネタになっていると言うから、日本で言えば、平家物語みたいなもの、歌舞伎で言えば義経千本桜のようなものか。
これだけご都合主義を並べられると、呆れてみているしかないが、いままでは安西徹雄先生に習って、とにかく、ロマンス劇なりに筋道をつけようとしていたが、先生ご逝去で、今回は若い中屋敷法仁の演出。これがなかなか良い。
本音を言えば、かつて彼の劇団柿食う虫で、女体シェイクスピア(だったか?)というシリーズをやっていて、一つ二つ見て、あまりのことにその後はこの劇団も演出作品も気をつけて見てはいなかった。ほぼ十年ぶりに見たわけだが、この間にものの見方も演出技術も老練のうるさ型もいそうな円の役者の手なずけ方もすっかりうまくなって、快調である。
学者の方に聞いてみないとよくわからないが(聞けばたちどころに教えてくれると思うが)この作品のシェイクスピア作品の中では異質の吟遊詩人的街頭演劇の特質をよく捕まえている。つまり、つまらないところは全部語りに任せて、その場が面白ければ良いのである。
例えば、舞台はモノカラーの机二つと椅子十脚(少し数は違うかもしれない)だけで、出演者が振り付けで自在に動かして場を作る。ここが、ダンスとも、コンテンポラリーとも、ただの説明ともつかぬ形でさまざまな音楽に乗って場を作るのがうまい。特筆したいのは、そのテンポが演劇をしっかりベースにしていることで、今までのこう言う舞台にありがちのドラマの全体の中身やテンポをダンスや音楽で崩すと言うことがない。振り付けも、さして難しいものはないが、俳優が一糸乱れず演じられるレベルでまとめている。海上(波と難破)も町もよく出来ている。
ほとんど安西演出は踏襲していないが、安西演出で覚えているところが一つだけあった。芝公園の中にあった朝日放送のホールでの初演。死んだはずの妻が生き返るところ、
安西演出はずっと、舞台に何気なく放り出してあったズタ袋が突然動いて、中から生き返った妻が現れる。観客はぎょっとするし、受けもした。五十年も前の話だから他のところは忘れてしまったが、ここだけは鮮やかだったので覚えている、安西先生もキワモノであることは知っていたのだ。

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