コマツマツリ2023「コマツ狂想曲〜独奏〜」
コマツマツリ
CBGKシブゲキ!!(東京都)
2023/04/21 (金) ~ 2023/04/21 (金)公演終了
妄想先生
プレオム劇
ザ・スズナリ(東京都)
2023/04/26 (水) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/04/27 (木) 14:00
座席1階
個人的な趣向だが「ああ、観てよかった」と劇場を出て思える舞台は、やはり笑いあり涙ありの会話劇だ。期待通りに満足させてくれた中島淳彦作品はやっぱり、そんな力がある。
プレオム劇は女性だけの劇団で、中島主宰のホンキートンクシアターが解散後に分かれてできた。もう一つは中島作品も手掛ける劇団道学先生。道学先生の中島作品もいいが、こちらは女性だけの舞台で果たしてどうか。中学校の職員室は女性の方が多いのかもしれないが、女性しか出てこない不自然さを全く感じさせない。これは、登場する先生たちのキャラクター設定がとてもバラエティーに富んでいるからだと思う。
物語は中学の国語教師を中心に展開する。小学校の時にあこがれた先生を追うようにして教職を得た女性教師だが、いろいろ悩みの尽きない毎日だ。家には少し認知症気味のお母さん、国語教師だからと卒業式のあいさつの起草を押しつけられ、てんてこ舞いの最中に担当するクラスの花壇が荒らされるという事件が起きる。
親にたたかれたことがない女性教師が生徒を初めて殴った件で一発で懲戒免職にされるとか、関係者の話も聞かずに事件の白黒を付けたがる体育教師、校長の顔色ばかりうかがう教頭とか。そうした多彩なキャラクターに加え、タイトルにもあるこの国語教師の「妄想」、胸の内の物語をきっちり描くことで、この教師が子どもだったときの教室の話や、初恋の話など、それこそ多彩な妄想が次々にさく裂する。
ネタバレになるので控えるが、演出もよかった(メメントCの嶽本あゆ美。劇場に出掛けた理由の一つでもある)。少し不自然とも思える左右の壁は何なんだろうとずっと思っていたが、ラストに感動的な展開が待っている。
昭和の色濃い曲の選択も自分のツボにはまった。まさか伊藤咲子の「乙女のワルツ」が美しいハーモニーで聞けるとは思わなかった。他にも名曲が登場する。中島が作った歌も入っている。
悩みというのは一人で抱えることが多いが、そもそも人間は一人では生きていけない。弱音を吐いたときに隣にそっと手を差し伸べる人がいたら世の中、それほど捨てたもんじゃない。これまで何回も演劇を見に行ったが、「やっぱりそうだよね」と心に響く作品はそれほど多くない。今作は胸を打つ舞台として新たに記憶に残るだろう。
ブロッケン
ゴツプロ!
新宿シアタートップス(東京都)
2023/04/21 (金) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ものすごく、グッときた。
兄ちゃんと弟の物語かと思いきや、娘ちゃんが全身全霊で生きてる様がかっちょよいお話だった。
それぞれの生きざまで正解があって、他人にはわかりえないセオリーがあって。
みんな真剣に生きてるんだなぁと思わされる舞台でした。
めちゃ泣けて、笑えて、スカッとして、昭和を感じさせるお話。
ワタシは神様にはなれない
劇団YAKAN
王子小劇場(東京都)
2023/04/19 (水) ~ 2023/04/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
青春群像劇といって良いのだろうか、全体としてうまくまとまっており、軽快で面白かった。
各キャラクターの設定もよく、役者も上手く表現できている。
若いメンバーで構成されているので、良くも悪くも若い人の感覚で創られた作品という感じ。
やりたいことに表現が伴っていかないところもあり、特に天使の反乱(?)は拍子抜けの感がある。
天使長と親友の関係を描きたかったのかと思うが、うまく行っていないと感じる。
個人的には余分を削ぎ落とした方が良いと思う。
ハートランド
ゆうめい
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2023/04/20 (木) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
立ちバック・トゥ・ザ・ティーチャー
Peachboys
ザ・ポケット(東京都)
2023/04/19 (水) ~ 2023/04/23 (日)公演終了
舞台「遙かなる時空の中で3 Ultimate」
High-position
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2023/04/23 (日) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
再縁編観劇。久方ぶりのハルジク、華やかな衣装に派手な殺陣(メインキャストだけでなく、アンサンブルの動きっぱなしに近い頑張りに拍手!)、そして、ロマンス!・・・はちょっと要素足りないかなぁ?とはいえ、ヒロインの成長を感じられる作品でありました。
SEXY女優事変
劇団ドガドガプラス
浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)
2023/04/25 (火) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
たぶんこれ銀河鉄道の夜
ニッポン放送
サンケイホールブリーゼ(大阪府)
2023/04/15 (土) ~ 2023/04/16 (日)公演終了
『コントロールオフィサー』+『百メートル』二本立て公演
青年団
聖天通劇場(大阪府)
2023/03/23 (木) ~ 2023/03/26 (日)公演終了
立ちバック・トゥ・ザ・ティーチャー
Peachboys
ザ・ポケット(東京都)
2023/04/19 (水) ~ 2023/04/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/04/21 (金) 19:00
劇が始まる前のMCの俳優が、自虐あり、ぼやき芸あり、ツッコミあり、客いじりありと、観客を飽きさせず、自分の話術に観客をいつの間にか参加させていく、その巧みさ、可笑しさは前回を飛び越えていて、大いに楽しめた。
ケン・ヨーヘイ・ハヤオの3人は仲良し童貞3人組。
「絶対に好きになった人としかヤッてはいけない」鉄の掟で結ばれた彼らだったのだが、今回、それどころではない事態に直面する!!!
3人の前に現れる、よく知らないおじさんの科学者「毒(どく)」。彼は突如、自身の作ったタイムマシン「ペロリアン」を彼らに見せびらかし、前日に性欲を異様に増大させるクスリを飲んでいたハヤオが暴走し、「毒」の腹を自らの股間で貫いて殺してしまう!逮捕され、連行されていくハヤオ。ケンとヨーヘイは「ペロリアン」に乗ってハヤオが暴走を止めようと思い、暴走前の時間に戻ろうとするのだが、辿り着いたのは、30年前の1993年!
令和5年と平成5年!2つの時代を行き来あいながら、童貞3人組は「今からそいつを殴りに」行って、ヨーヘイの父の童貞を捨てさせ、歴史を変えることが出来るのか!?
あと、多分尺的に無理そうだけど、3人組は童貞を捨てられるのか!?
あと、Peachboysは、本当に、ザ・ポケットの広さを使い切れるのか!?といった疑問も持ったが、前作を良くも悪くも凌駕し、今回かの有名な映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を下敷きにしつつ、あまりにもしょうもなく度を越したレベルの露骨な下ネタ満載、時事ネタ、政治話題を徹底的に揶揄り、これでもかというほど市井の目線で下らなく、面白おかしく、それでいて鋭く斬り込んでいて、そのあまりの自由っぷりと、何でもありなうえ、今流行のものから昔懐かしいものまで詰め込めるだけ詰め込みすぎて、大体の予定時間を大幅に過ぎてもやり続け、収集がつかないと思いきや、意外と最後は上手く締めくくっているあり方に、演劇として、一表現としての無限の可能性を感じた。
令和5年の現代の場面において、フワちゃんはそんなにイメージを崩しては来なかったものの、ユッキーナこと木下優樹菜が極端に誇張されたギャルキャラなうえスシローの店長をやっているという無茶苦茶な設定のうえ、Breaking dawnの朝倉未来が主催するYouTubeで生配信される公開オーディションに何故か、かつて一斉を風靡したドラマ『家なき子』の家なき子がヤバ過ぎる情緒不安定なサイコパス少女として登場したり、今話題筆頭中のアドちゃんが毒(博士)の元ダッチワイフ人形で現在は毒の改造によりアンドロイドという奇想天外で支離滅裂、こじつけがましく、あまりに本人に対して失礼すぎるが、さらに主人公の一人ハヤオに対してアドちゃんが○○○しよっと抱きついてみたり、何かというとアドちゃんが過去に行っている時でも「新世界だっ」と言っていたりと、呆れを通り越して大いに笑えた。
令和5年の現代の場面で、ガーシーがドバイから謝罪動画を配信しているのだが、謝る気ゼロどころか、つらつらと文句を並べ立て、ところどころ苦しい言い訳をするあたりが妙に生々しく、それでいて馬鹿らしく大いに笑えた。
30年前の1993年(平成5年)の場面では、意味もなく漫画でアニメ化もされた『ドラゴンボール』の曲に合わせておそらく初代〜現代のドラゴンボールのアニメの戦闘シーンや飛ぶ場面を、かなりチープに作り込んでいたり、漫画でアニメ化もされた『ワンピース』の主人公が現実にいることになっていたり、喫茶店で漫画『タッチ』のヒロイン朝倉南が働いており、さらに病院でも働いていることになっており、さらにはSTEP細胞の開発にまで携わっていたと、歴史の整合性以前に、あまりに荒唐無稽な設定すぎて唖然とした。
家なき子がこの時代では令嬢で、漫画『白鳥麗子でございます!』の主人公白鳥だったといういくら何でも苦し紛れ過ぎる設定、シンスケ(紳助)が、後に漫画『タッチ』の朝倉南と結婚して、その子どもがBreaking dawnの朝倉未来だという、誰がどう考えたって突飛で無理矢理過ぎて、あまりにあり得ない設定の連続で面白すぎて、気がつくと爆笑していた。
最後のほうで、メガヒット映画『シン·ゴジラ』をパロってシン·平成は出てくるし、一大ブームを巻き起こしたRPGゲーム『ドラゴンクエスト』を再現した場面でかなり尺を取るわ、敵役ピーチ姫をの妨害をかわし、シン·平成を倒すため大ヒットゲーム『マリオカート』で勝負したり、最終的にシン·平成にドラゴンボールを投げつけるとシン·平成が爆発し、かつて流行ったゲーム『ポケットモンスター』に出てくるポケモンボールが開き、シン·令和が出てくるというファンにとっては嬉しい限りかもしれないが、盛り込み過ぎて、玉石混交で、何でもありで、色々同時多発的に起こり過ぎて、前作以上にお腹がよじれるほど連続して大笑いしていた。
途中の場面で、WBCの栗山監督の2刀流と言っているところの音声が変な意味で無駄に使われていたり、ジュリアナ東京は出てくるわ、大谷翔平選手が、主人公のケンに対してヌートバーを静的な意味として使われたりとイメージダウンもいいろところなうえ、最後の場面であのちゃんはイメージ通りででてくるわ、喫茶店のマスターとして出てきた藤井風に至っては、主人公の一人ハヤオの背後から立ちバックするオジサンとして描かれるという扱いが雑なうえ、最悪な描き方に、現実とはあまりにかけ離れ過ぎていて、吹き出した。
第2部のレビューショーでは1970~80年代くらいのアメリカンポップスをあまりにしょーもない下ネタが露骨に歌詞に入った替え歌になっていて、馬鹿馬鹿しくて大いに笑いつつも、役者人に歌が上手い人も多くて、ノリつつ、感動した。
レビューショーの最後のほうで、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主人公が最後のほうで言う有名なセリフをオマージュしたセリフをヨーヘイ役の俳優がいっていたのに胸を打たれた。
SEXY女優事変
劇団ドガドガプラス
浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)
2023/04/25 (火) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ハチャメチャな展開に着いていくのが必死だったけど、驚きワクワクしながら、そういうこともあったなーと考えてしまったり。とにかく忙しく刺激を受ける舞台でした。
知っていても決して口にすることのない言葉をこんなにあっけらかんと聞き、笑ったり考えていいんだと、ここ数年の煮詰まった閉塞感を吹き飛ばしてくれた感じがする。何より主演の古野あきほさん始め女性陣のたおやかな美しさ、切なさ。たくましさは言葉に尽くせない。
そして、若者からおじいさんまで、みんな中学生男子のようにいとおしい。
背景も盛りだくさんで興味深いが、一度では消化しきれない。それがこの劇団の魅力でもある。
PARADURE -パラデュール-
壱劇屋
すみだパークシアター倉(東京都)
2023/04/22 (土) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
セリフのない殺陣芝居ばかりと思っていた壱劇屋さんがセリフのあるお芝居を上演。これでお話がもっとちゃんと分かるかと思ったら、世界観がいろいろぶっ飛んでいて難しい。上演前に当パンに目を通していたけれど、え、ちょっと待って、それってなんだっけ?と私にはついていけなかった部分もあるけれど、殺陣満載で面白かったから満足です。3回くらい見たら物語世界をもっと理解できるのかも。客演の椎名亜音さんもカッコ良かったです。
アフターイベントの「大クイズ大会」楽しかったです。
八人の悪逆
テッピン
劇場MOMO(東京都)
2023/04/26 (水) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白いことは面白いが、ストーリーに行き当たりばったり感が少々残る。これだけの役者を揃えたのだからもっと上を期待したい。寺十さんのダメ悪の演技が見所。
二次会のひとたち
エイベックス・エンタテインメント
紀伊國屋ホール(東京都)
2023/04/14 (金) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/04/25 (火) 18:30
ONEOR8の田村孝裕の作・演出で、美村里江出演というので観に行った。面白い。107分。
友人の結婚式の2次会幹事を頼まれた、新婦同僚・新婦友人・新郎同僚・新郎友人が起こすドタバタ。文句を言いつつ一生懸命準備をするが、…の展開。恐らくこうなるんだろうな、という展開になるが、そこも含めて予定調和的ないい話になってて、思わず微笑む感じ。それぞれの登場人物に隠された黒い部分があるのが興味深く、美村はちょっと意地っ張りな女を演じつつ、とてもダークな過去があるのが見事。楽しめる舞台だった。
空席が結構あるが、もったいないとしか言いようがない。
ラ・マンチャの男【2月8日~12日、2月17日~28日公演中止】
東宝
よこすか芸術劇場(神奈川県)
2023/04/14 (金) ~ 2023/04/24 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
これは白鴎の祝狂言だ。千三百回も同じ役で、しかも日米で大劇場で主演したという記録はめったに現れるものではない。見ておかなければ、と初めて横須賀まで出かけた。
よこすか芸術劇場は都内でも数少ないびっくりのオペラハウスで客席5階まである。その上、フォーラムなどに比べたら、見やすい客席になっていて一階でも30列ほどに抑えられている。おかげで、後ろから五番目くらいの席でも、白鴎の最後のドンキホーテをしっかり見られた。
「ラマンチャの男」のブロードウエイ初演は1965年。五年六ヶ月のロングランで、そのうち1970年の60ステージを当時26歳の市川染五郎が単身渡米して主役を演じている。そのきっかけは前年69年の日本初演(帝国劇場)での好評だった。以後、周囲は次々と変わっていったが、主役のセルバンテス/ドンキホーテ役だけは、市川染五郎から松本幸四郎、白鸚と名前は変わっても白鸚ひとりが演じ続けてこのファイナル公演を迎えた。日本の演劇史上も希有な演目となった。
最初はテレビドラマから始まったこのミュージカルは、当時よく使われていたメタシアターの劇中劇の構造を使った基本的には小ぶりな作品である。
舞台は、セルバンテスが「ドンキホーテ」を書いたのは教会冒涜の咎で入牢中だったという史実を元に、捉えられたセルバンテスが囚人たち(囚人のボス/上條恒彦)に遍歴の騎士/ドンキホーテの物語を聞かせるという枠組みで作られている。
セルバンテスをモデルにした田舎鄕士キハーナが、獄につながれる現実と、自らを守るために囚人たちに役を振り、自らも作中人物/ドンキホーテとなって演じる見せる劇中劇の二重構造になっている。柱としては、汚れ果てた現実社会の権力構造に対して、戦いを続けようという単純な正義感がおかれているが、戦う人ドン/キホーテの周囲に王女と妄想される売春婦アルドンサ(松たか子)忠実な下僕サンチョ(駒田一)囚人のボスなどの市民を置き、メタシアターを生かしたドラマになっている。
ミュージカルナンバーの主題歌「見果てぬ夢」はポピュラーソングとしても流行った。あとは「ドルシネア」松の小曲の{どうしてほしいの」や「アルドンサ」も歌のうまさでいい彩りになっている。
俳優としての松本白鸚にとっても生涯演じ続けるという希有な経験をもたらした。伝統芸能の家に生まれて、周囲に似た経験のある俳優たちが居たこともあったのだろうが、伝統演劇と現代劇ではワケが違う。乱暴に例を挙げれば、伝統演劇には演ずべき型があるが、現代劇には型がない。白鸚は近年の上演では自ら近代劇的な「演出」も担って、公演を重ねるごとにさまざまな変化がある。今回のファイナル公演の白鸚は80歳、さすがに足腰の衰えは舞台に出ている。二十歳代と同じ演技は出来ない。型で乗り越えようとしているところもあるが、それだけではない。最初は、大丈夫かと思いながら見ていたが、終盤、主題歌の「見果てぬ夢」になった。「道は極めがたく、腕は疲れはつとも、遠き星を見つめて我は歩み行かん」。死を目前に自覚した白鸚がまさに地で行っているように立ち上がる。「たとえ傷つくとも、我は歩み行かん。永遠の眠りにつくそのときまで」型になる。
ひょっとしてここまでのよろよろぶりはファイナルのためだったのかもしれない。こう言う役作りは歌舞伎にもあるから、白鸚はここでもそれを自分の年齢と体力も考慮してやって見せたのである。白鸚ならやりかねない。何しろ、自分に娘が出来たときにこの芝居にちなんで紀保と名付けるような役者なのである。
これはそう言う芝居ではない、メタシアター作りの現代劇で、そのためには、前半のセルバンテスが型でしのいでいるのはいかがか、という意見はあるだろうし頷けるが、それも含めて演劇の多重的な楽しみがある祝狂言なのである
松たか子(アルドンサ/ドルシネア)は、舞台の上では父親の分まで大活躍である。そういえば、松が初めてドルシネアを演じた舞台を帝劇(2002)まで見に行ったことがあるなぁと思いだした。それからも二十年たっているのだから、月日のたつのは早いものだ。東宝ミュージカルを地道に支えてきた上條恒彦も神妙に務めている。ファイナル公演はオケも結構分厚いし、表は東宝が仕切っているらしく、横須賀が似合わない黒服が場内整理をしている。すべて祝狂言らしい。
しかし、このミュージカルは珍しくしっかりメタシアター作りになっているから、小劇場の手にかかると、また別の仕上がりもある本でもある(先頃上演の木ノ下歌舞伎の櫻姫と同じ趣向である)。あまり遠くない機会にそう言う舞台も見られたらと思うが、それまではこちらの命もおぼつかない。それは演劇の宿命だが、そう言う芝居に出会えたのは見物の幸せというものであろう。
SEXY女優事変
劇団ドガドガプラス
浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)
2023/04/25 (火) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鬼才望月監督待望の新作。それも〇〇新法成立の着想をえた作品と聞き、煽情的タイトルと相まって大いなる期待と不安を胸に初日いってきました。 役者さんのツイートにもありましたが、所謂ヤバいシーンは皆無(セリフは、、ですが)なので男女で見に行って気まずくなることは(多分)ないでしょう。もちろんいつものドガドガが売りの音楽・ダンスも凄いです。モブシーンも多くて東洋館の舞台が所狭しとなることも多々ありです。こんな素敵な芝居は他所では見られません! 30日まで浅草でソワレのみ。お時間があるかた、おススメです。
したいとか、したくないとかの話じゃない
AOI Pro.
俳優座劇場(東京都)
2023/04/20 (木) ~ 2023/04/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
佐藤仁美×山崎樹範の回観劇。ちょっとしたアクションのある朗読劇で、映像も加わっていました。非常に興味深い設定で、楽しい時間を過ごせました。
二次会のひとたち
エイベックス・エンタテインメント
紀伊國屋ホール(東京都)
2023/04/14 (金) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
チャップリンの『ライムライト/テリーのテーマ』がここぞとかかる。この名曲、作曲すらもチャップリン。チャップリンを流されたら反射的に感動するように日本人は幼少時より躾けられている。
セットが見事。吹き抜けの洋館、オープンテラス。大きなカーテンが鍵になる。閉めればスクリーン、映像の投影。開けば開放的で気持ちのいい清々しい空間。調度品もバッチリ。中二階への階段。
美村里江(旧芸名ミムラ)さんが美しい。できる女オーラが半端ない。後半のジャージ姿でこの美貌と気品は宝塚OG並み。皆が使いたくなる気持ちが分かる。
内田理央さんもスラリとしたシルエット。かつて『星の数ほど星に願いを』と云う、ある意味記憶に残る舞台を観たことがある。
東啓介氏は190cmの長身でフルポン村上のようなうざキャラ。誰得なクイズを出し、シンキングタイムでは妙なステップで踊る。
元光GENJIの佐藤アツヒロ氏は初めて観たが、稲垣吾郎みたいに軽妙な俳優になっていた。
さくらももこのような可愛いイラストはカラテカの矢部太郎。『のろい少女』が良い。
巨大なカーテンを上手く利用し、イラストやアニメやシルエットを使って心象風景を表現。ふざけた新郎新婦からのラブラブ動画も。
結婚式の二次会の仕切りを任された、あぶれた初対面の4人。手探りで互いのことを知っていく。
かなり好感度の高いコメディ。
ブロッケン
ゴツプロ!
新宿シアタートップス(東京都)
2023/04/21 (金) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
最近、この手の騒々しい舞台は少なくなった。乱暴で我を通すだけの父(塚原大助‘)に育てられた娘(前田悠雅)が、その乱暴な生き方に耐えられず家を出て、すでに別れている母(岩瀬顕子)のもとに身を寄せる。父には叔父になついている弟(高畑裕太)がいる。父は会社勤めをしているがいつも上司(泉知東)を困らせてばかり。父は弟とも、仲違いしていて相撲で決着をつけようと迫っている。折しも、一族ではまっとうな叔父が交通事故で亡くなって・・という展開で、以後は通夜の客モノになっていくが、キャラクターの置き方も話の展開もかなり乱暴で、物語のスジはなかなか飲み込めない。
出来損ないと言ってしまう評者も出てきそうだが、この、全く今までの夫婦・親子関係にはないようなドライな環境に生きていく一家はいかにも現代の片隅にはありそうなリアリティがあって捨てがたい。思わず笑ってしまうような無茶ぶりの中に、今の社会の生きづらさが潜ませてある。母子を演じる岩瀬顕子と前田悠雅が新鮮な演技で新しい現代社会を生きていく女性を演じる。前田悠雅は「花柄八景」で見せた叙情性を捨てて強く生きる。
このグループ・コツプロは初めて見たが、どういう方向なのかよくわからない。演出の西沢栄治はたしかつかこうへい系で、その影響は見えるが、この先は解らない。脚本も部分的にはなかなかうまいな、と思うところもあるが、全体としては収拾がついていない。シアタートップスは幕内らしい男女の客で8割の入り。