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ノア美容室

ノア美容室

劇団民藝

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2023/02/11 (土) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/02/15 (水) 14:00

座席1階

いい舞台だった。晩年の人間にとって、何が一番大切なのかを考えさせられる物語だ。劇作家ナガイヒデミの故郷である愛媛県の田舎町のパーマ屋を舞台に展開していく。相変わらず日色ともゑの熱演には感心させられる。

日色が店主を演じるパーマ屋は、お客も店主も高齢化し、今では常連の女性たちによるおしゃべりの場にもなっている。高齢化が進む全国の中山間地ではどこにでもある風景かもしれない。このパーマ屋の敷地が高速道路の予定地にかかり、立ち退きを迫られている。地元銀行の支店長である店主の息子は補償基金をもらって立ち退きに応じるよう説得するが、店を畳んで引っ越すのは、自分から人生の楽しみを奪うことだと首を縦に振らない。折しも大学の卒論を書くために帰省している孫娘も、祖母に味方する。

舞台は二部構成で、後半には旧知の戦場カメラマンが登場する。やや唐突感があるのだが、モデルは石川文洋氏だそうだ。本人がパンフレットに寄稿しているのだが、自分の慣れ親しんだ家を追われるのは、原発事故で故郷を追われた福島の人たち、戦争で故郷を失った難民と同じだと書いていて思わず納得する。二部では店主と戦場カメラマンの二人による会話劇となるが、希望の持てるラストシーンで何だかホッとした。

海外の作家の戯曲よりも、民藝にはこうした落ち着いた会話劇が似合うのではないか。若いファンを獲得する一助にもなるような気がする。


笑の大学

笑の大学

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2023/02/08 (水) ~ 2023/03/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

三谷幸喜の代表作と言われながら、96年以来、舞台では上演されていなかった作品のパルコ劇場50周年記念公演、全国ツアーもある。今回は作者本人の演出。配役も、小劇場らしい顔合わせだった西村雅彦、近藤芳正から、内野聖陽、瀬戸康史に変わった。25年ぶりの晴れやかな再演である。
脚本をなかなか出版しない(戯曲未刊行)作者だから、再演の細部の変更はわからないが、ほぼ初演と変わらない感じ。(映画は取り組みが違う)。一つのセットで二人だけの役者で二時間弱、誰もが楽しめる舞台になっている。
良いところをあげていくと、まずは、俳優二人の快演。パルコはかなり大きな舞台なので取調室内の二人だけの室内劇では隙間があるのではないかと危惧したが、全くそういうことはない。内野はこう言う軽喜劇の経験が少ないが、軽重巧みに取り合わせて融通の利かない検閲官を肉付けした。対する瀬戸康史。湿っぽくないのが良い。それが最終幕で逆転する。
間口を狭め、奥に向かった遠近をつけた堀尾幸雄の単純浴び術も効果を上げている。
脚本はすでに数々の賞がある出来だが、今回改めて「笑の大学」というタイトルが単に瀬戸の演じる軽演劇劇団の名前だけでなく、作品全体が笑いの構造を追及する「大学」になっていることがわかった。くすぐり、地口からはじめて、ドタバタ、さらには喜劇というテーマへと難題を膨らませていくうちに「喜劇」を大学レベルまで、考えさせてくれる。作者の、「喜劇」へのこだわり、ともすれば、喜劇を安全な社会批判の道具にしか考えてこなかった日本の演劇対する批判も見える。
久しぶりに、老若男女ほどよく案配された満席の良い客席だった。
三谷幸喜は、これで、現在の日本の演劇界の一角を代表する作家になったと言えるだろうが、これからも、日本の演劇のレベルを底辺で叱り支えて良い作品を見せてほしい。

アベベのベ 2

アベベのベ 2

劇団チャリT企画

駅前劇場(東京都)

2022/11/30 (水) ~ 2022/12/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

期待しすぎたのか、つまらなすぎて引きました。
途中見てられなかった本当に。

素敵な俳優さんが2名いたのでなんとか心を保ったまま座っていられましたが、本が面白いだけに勿体無いなあと思いました。
キャスティングのミスかな。

時事問題を切り取るチャリTさんの着眼点はとても天晴れだとは思っています。勿体無かった。

磁界

磁界

オフィスコットーネ

小劇場B1(東京都)

2023/02/09 (木) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ああ・・・ってなった。

舞台美術がすごく印象的で素敵だった。
照明と大道具の使い方も効果的で美しかった。

今思えば「磁界」だからあの
演出なのかあ!と納得したり。

とってもじわじわくる作品です。

割とゆっくり進むので前半
寝ちゃってる人とかいたけど
観て損はないと思います。

磁界

磁界

オフィスコットーネ

小劇場B1(東京都)

2023/02/09 (木) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

警察組織内部の閉鎖された環境。立場により変わっていく心の動きが繊細に描かれていて夢中で観ていました。西尾友樹さん、とても素敵です。お勧めします。

Angelic Miicry

Angelic Miicry

DANCETERIA-ANNEX

大倉山記念館(神奈川県)

2023/02/07 (火) ~ 2023/02/10 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

今回も少し難しい内容だったけど、
上海のあの時代は大変なのだと分かった。
ソンリェンカッコいい!クーシンと姉様かわいい!

磁界

磁界

オフィスコットーネ

小劇場B1(東京都)

2023/02/09 (木) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

夢と理想を持って警察官になったにも関わらず、警察組織内部の論理に絡めとられ、次第に押し潰され順応してしまう若い警察官の葛藤を描く。
劇団チョコレートケーキの西尾友樹さんをはじめ元KAKUTAの異儀田夏葉さん、文学座の大滝寛さんなど手練れの役者さんたちの演技の確かさ、濃密さ、熱量が見事。

ネタバレBOX

前半は笑いのスパイスを僅かに散りばめつつも、後半の重苦しい展開に息をのむ。特に終盤の西尾友樹さんと狩野和馬さんの緊迫した対決シーンには圧倒された。「スターウォーズ」の若きジェダイ騎士アナキン・スカイウォーカーが闇落ちしてダース・ベイダーになる瞬間を見るようだった。
本作は警察を描いていたけど、閉鎖的な組織で人間性が失われ組織の論理が最優先される世界はどこにでもある。とはいえあの若い警察官は洗脳されることで、ある意味救われたとも言えるし、ずっと葛藤を抱えたままなら自殺すら選択しかねない状況だったので、組織に染まることが一概に「悪」とも言い切れない。
そのあたりのややこしさや難しさをただ善悪の二項対立で描くのではなく、人の心が徐々に変わっていくグラデーションを丁寧に描いていたのがとてもよかった。
磁界

磁界

オフィスコットーネ

小劇場B1(東京都)

2023/02/09 (木) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても重厚な素晴らしいお芝居でした。二時間弱の公演時間もあっという間で、役者の皆さんの演技もとても真に迫っており本当に面白かったです。内容もリアルで申し分ありません。立場立場で誰も悪くない。でも、なんとなかったのではという気持ちがとてもよくわかりました。たぶん初めて拝見した団体さんですが、今後も気になる団体さんになりそうです。

磁界

磁界

オフィスコットーネ

小劇場B1(東京都)

2023/02/09 (木) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/02/13 (月) 19:00

JACROWの中村が作・演出した舞台。タイトでいい芝居だった。(4分推し)114分。
 実在の事件をベースにしているが、犯罪そのものでなく生活安全課という警察の組織の問題を扱う。難しい判断を迫られる生活安全課の警察官を演じた首藤(西尾友樹)と捜索を訴える姉(柿丸美智恵)がいいが、他の役者陣も熱演で緊張感ある舞台を作る。。異儀田夏葉は大変だったろうなぁ…の役。タイトルは、特定の意識・価値観に捕われた世界を言っているのだと思う。

対話

対話

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2023/02/10 (金) ~ 2023/02/24 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

強姦殺人事件の被害者の娘の父母と、加害者の母、姉弟、伯父。さらに調停人のマニングと、性犯罪者の更生に取り組む心理療法家、8人出ずっぱりの会話劇。被害者遺族の夫婦は、怒りと憎しみをぶつけ、加害者の母は「私たちも痛みを抱えています」「それでも私の息子なんです」と許しを請う。弟は「殺人犯の弟」の烙印を押された恨み、終身刑の兄スコットに死んでほしいと、被害者遺族と同じ気持ちだと叫ぶ。大学卒の姉は、弟の貧しく放置された生育環境を考慮してほしいと自説をぶつ。心理療法家の女性は「彼は良くなっていた。釈放を求めた判断に誤りはない」と自己弁護する。

遺族の母は「あなたたちは私たちの痛みを理解する入り口にも立っていない」と迫り「奪われたのは未来だけではない、娘の過去も奪った」と。アルバムを見ると、悲惨な最後に至ることが思い出されて、アルバムもみられないと泣き崩れる。
どこにも救いの見えない前半から、どう何らかの結末を引き出すのか、目が離せない。

出演者はみな熱演で、ヤマ場では本当に互いに泣いていた。加害者の母を演じた山本順子は、貧しく弱く哀れな母親そのものだった。2時間10分休憩なし

ネタバレBOX

最初互いに憎しみ、責任を擦り付け合い、自己弁護しあう。被害者遺族のバーバラが「娘の話をしたい」と、13歳の誕生日パーティーの思い出を語り始めるところから、雰囲気が変わる。さらにキッチンをカナリア色のペンキで塗り替えた思い出を語ると、父も急に言葉に詰まり泣き出す。そこで胸をつかれた。憎しみや怒りをいくらぶつけても人は共感しない。人を責めることをやめ、自分の悲しみ(弱さ)を見せた時、人は心を動かされる。これは万国共通の真理だ。

心理療法家が、自分の判断ミスを認めるところから、次々と自分が悲劇を防げたのにやらなかった後悔を語り始める。かたくなだった被害者の父も、ついに「防犯ベルを買うと約束したのに、忙しくて買ってやらなかった」「学歴のないミュージシャンとの結婚を認めなかった」と懺悔を口にする。スコットを、刑務所内のリンチから守るための保護官房行きを、すぐには同意しないが、変わるかもしれないことをにおわせて終る。

最後、マニングが「今日は何がえられましたか」と問うと、被害者の父は「軽くなった」と答える。「ラビットホール」のハイライト場面を思い出した。そこで幼い息子を亡くした母は、自分の母に問う。「悲しみは消えるの?」「いいえ。でも変わる」「どう?」「軽くなる、持ち運べるくらいに」と。

自分の過ち後悔を口にすることで、浄化されるのは、キリスト教の「懺悔」と告解からきている作劇術ではないか。公開中のアメリカ映画「対峙」は、高校乱射事件の加害者被害者の4人の対話を描く。ここでも、加害者の息子、被害者のむずめの思い出を語るところから、心を開きだす。そして互いが自分の過ちを口にし、後悔を語ることで心が近づく。「対話」とよく似ている。ストーリーのモデルが何かあるのかもしれない。
あの春の約束を歩き出す君のために2023

あの春の約束を歩き出す君のために2023

東京印

ザ・ポケット(東京都)

2023/02/08 (水) ~ 2023/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/02/10 (金)

中野ザ・ポケットにて東京印『あの春の約束を歩き出す君のために2023』を観劇。
初見のカンパニーでしたが、客席に一歩足を踏み入れた瞬間、ステージ上にそびえ立つ古民家のような造りの舞台セットが目に入り、いきなりテンションが上がりました。 玄関、廊下、居室、庭などの間取りに加え、家具や小物など、細かな部分まで凝っているセットは圧巻。しかも、このような昭和レトロな雰囲気のセットは個人的にも好みのテイスト。このセットを見るだけでも価値があるなと感じました。それくらい惹き付けるものがあったような気がします。
「~あなたが大切な人に届けたいものはなんですか~」というサブタイトルが付けられたこの作品は、下宿屋「桃山荘」を舞台に繰り広げられる人間ドラマ。過去にシェアハウスを舞台とした作品は何度か観たことがありましたが、この作品も似たような雰囲気を感じました。年齢も性別も趣味もバラバラの人々が一つ屋根の下、共同生活を送っているという設定は、何かが起こる予感しかなく、ワクワク感が高まるのです。
しかし、いよいよ本編が始まり、キャラの濃い人物達が次々に登場してきたのですが、、。確かにひとつひとつのシチュエーションはユニークで、それ単体で見れば面白いものの、間の取り方の問題なのか、あまりにも一定のテンポで進行する各シーンに、逆に違和感を覚えてしまいました。もともと台本ありきで進むフィクション作品に求める部分ではないのかもしれませんが、日常生活を映し出したドラマであれば、もう少しテンポに変化が欲しかったような気がします。順番に次から次にポンポンと台詞が出てくる会話劇は、見ていて飽きない部分はあるものの、いかにも演じているだけという作品にも見えてしまい、若干感情移入がしにくいような印象を受けました。実際、サブタイトルに込められたテーマよりも、賑やかなドタバタコメディーだったという感想の方が先行したような気がします。ウケを狙ったキャラ、台詞が多く、じっくり楽しむというよりは勢いで一気見するような感覚。また、暗転が多く、各エピソードに繋がりが見えにくいようにも感じました。単に面白いシチュエーションを詰め込んだだけのような、 短編のオムニバス作品を観ている感覚に近いような…?
冒頭に書いた豪華な舞台セットに関してももう少し活かして欲しかったかなと思います。全体的なセットは勿論ですが、奥の部屋や隣の書店の部分などを含め、とてもしっかりと作られているように見えたので、その辺をもう少し見せるシーンがあっても良いような気がしました(個人的に見たかったです)。
舞台の雰囲気、BGMの雰囲気、フライヤーの雰囲気、タイトルの雰囲気と、内容が若干合っていないような印象を受けましたが、個々のエピソードは面白く、熱量の高い作品だと感じました。

OH! MY GOD!〜2023

OH! MY GOD!〜2023

パン・プランニング

博品館劇場(東京都)

2023/02/10 (金) ~ 2023/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

昭和の雰囲気が何とも楽しく地上波ギリアウトかな どうかなという毒加減も絶妙
手を変え品を変え散々笑いつくしたというのに後に何も残っていないというのもある意味贅沢な娯楽だったなと
超くだらない部分が好物か否かでハマり具合が変わりそう
友人同士とかで観に行って高揚した気分のままワイワイお茶して帰る
これがベストな観劇スタイルじゃないかと思える公演でした

磁界

磁界

オフィスコットーネ

小劇場B1(東京都)

2023/02/09 (木) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

重い話だったが、1時間55分があっという間に終わる感じる舞台。
印象的だったのは、医者の件のセリフは自分自身にすっと入ってきて印象的な掛け合いでした。

Angelic Miicry

Angelic Miicry

DANCETERIA-ANNEX

大倉山記念館(神奈川県)

2023/02/07 (火) ~ 2023/02/10 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

脚本が素晴らしい。独特の香りがある舞台でした。好きな人は多分、めちゃめちゃ好きだと思う。

Angelic Miicry

Angelic Miicry

DANCETERIA-ANNEX

大倉山記念館(神奈川県)

2023/02/07 (火) ~ 2023/02/10 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

佐々木さんが歌っていて感動した。

武士とジェントルマン

武士とジェントルマン

朗読劇『武士とジェントルマン』製作委員会

サンシャイン劇場(東京都)

2023/02/01 (水) ~ 2023/02/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/02/03 (金) 13:00

タイトルだけから幕末か明治初期の話かと思いましたが、現代日本で無骨に生きる男とイギリスから来た人の話でした。トランスジェンダーも登場する、頭の柔らかい、やさしい気持ちにつつまれる作品。

朗読劇タチヨミー第十巻ー

朗読劇タチヨミー第十巻ー

タイキマニアプロデュース

サンシャイン劇場(東京都)

2023/02/08 (水) ~ 2023/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

声優さんたちの朗読劇、バラエティーに富んでなかなかに楽しめました。さとうきび畑の歌とこの曲をモチーフにした朗読劇には涙しました。

FLAGLIA THE MUSICAL

FLAGLIA THE MUSICAL

サンライズプロモーション東京

日本青年館ホール(東京都)

2023/02/03 (金) ~ 2023/02/09 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/02/08 (水) 13:00

テレビでたまたま見つけたアニメ・バージョンを少し見て予習してから行ったのですが、私が見たところはこのステージを補完する脚注みたいな部分だったと判明。スケールが大きい物語で、役者たち(特に堂珍)の歌唱力に圧倒されました。

OH! MY GOD!〜2023

OH! MY GOD!〜2023

パン・プランニング

博品館劇場(東京都)

2023/02/10 (金) ~ 2023/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/02/11 (土) 13:00

いろんな方面から叱られそうな過激で毒のある笑いが多く、とても刺激的でした。歌とダンスも素敵でした。

磁界

磁界

オフィスコットーネ

小劇場B1(東京都)

2023/02/09 (木) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

L字型の客席。舞台美術(金安凌平氏、西山みのりさん)がやり過ぎぐらいに凝っている。打ちっぱなしのコンクリート。(加工したシートを敷き詰めている)。廃墟ビルの埃の溜まった一室。雑然とそこら中に転がる椅子。両端に積み上げられた縄で縛られた椅子の山。ディストピア感満載、流れるインダストリアル・ミュージック。
二人が向き合い会話を進める途中でノイズ音が走る。するとカメラを切り替えしたように、互いの場所を入れ替えて会話の続きを始める。どちら側に座っている客にも役者の表情が見えるようにとの配慮だろう。とにかく客に見せたいものがハッキリしている。

磁界とは磁気が働く空間の状態のこと。
「教示願います。」
マルガイ(被害者)、マルヒ(被疑者)、警察用語が飛び交う。

署長(青山勝氏)、課長(大滝寛氏)、係長(谷中恵輔氏)、主任(西尾友樹氏)、巡査(井上拓哉氏)のヒエラルキー。それぞれ味のある役者が重厚なハーモニーを奏でる。格と名のあるプロレスラーが次々にリングに登場し、ファンの妄想を刺激するような。青山勝氏は怖ろしい。権力という暴力を身に纏っている。

失踪した妹に電話で金を無心された姉(柿丸美智恵さん)、双子の妹(異儀田夏葉さん)、相談を受ける弁護士(狩野和馬氏)。
柿丸美智恵さんの居酒屋のシーンは人間的で良かった。
双子という設定で、失踪した妹役も異儀田夏葉さんが演ることの予想はつく。判っていても度肝を抜かれる。

熊井啓映画の気分。反権力弁護士は鈴木瑞穂にやらせたい。
西尾友樹氏はテッド・バンディみたいなサイコパス役が似合うと思う。企業舎弟のインテリヤクザや新興宗教の広報(上祐史浩的役回り)なんか打って付け。まともな善人役では勿体無い奥行き。目の玉が据わる演技が凄い。ティム・ロス流か?目の玉のくすみで役柄の内面の変化を表現する技術。ゾッとした。ここだけでも今作を観る価値は充分ある。

ネタバレBOX

西尾友樹氏が罪悪感に押し潰されそうになる、象徴的な場面が欲しかった。

最もド迫力な名シーンは、個人の判断で遺族に謝罪に行った西尾友樹氏を叱責する青山勝氏の場面。「お前等末端が意思を持つな!」と言わんばかり。組織の論理で徹底的に総括される。逃げる余地などもう何処にもない。

実家の母の世話を妹に押し付けて出て行った姉。未婚なのか姓は変わっていない。駅前のスーパーでレジ打ちをしていた大人しい妹。ホストや風俗嬢と何処で知り合ったのか、家族や仕事を投げ出す程の刺激的な出会いだったのか?そこにも描かれていない“磁界”に囚われた者の物語が。

警察批判というよりも組織論の話。最も無駄がない最強の組織は軍隊である。上意下達で組織が一人の人間のように動く。頭脳の部署が決定したことを正確に遂行することのみが要求される。個々で判断したりためらったりすることは許されない。それが軍隊であり、全ての組織はそれに傚ったもの。組織で生きていくことを決めたならば個々の善悪の判断は邪魔になる。どれだけ優秀な機械に徹することができるのか。
今作は学校や新興宗教を舞台にしても面白かったと思う。自殺した生徒の苛め問題の隠蔽。理想を持って身を投じた筈の宗教団体の中で、組織論で醜く捻じ曲がっていく信仰の有様。

嫌なら必死でその“磁界”から逃げるしかない。

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