アメリカの時計 公演情報 KAAT神奈川芸術劇場「アメリカの時計」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    冒頭、白いスーツの語り手(河内大和)が「アメリカにとって、全国民をまきこんだ国民的体験は第一次大戦でも第二次大戦でもない。南北戦争と大恐慌だ」と語る。大恐慌直前からの、ニューヨークのある家族のおよそ5年の生活の芝居である。まさにアメリカの国民的惨事を追体験できる。

    アーサー・ミラーの戯曲は、自分の青年時代の体験が反映して、さえている。息子(矢崎広)、母(シルビア・グラブ=好演)、小遣いを息子に借りる父親は中村まこと。平時はいい父親なのに、いざとなるとまるで頼りにならない好人物を自然体で演じていた。息子の学友たちも、就職も決まらず、借金がどんどん膨らんでいく。一家は場末のアパートで、借金の取り立てを恐れながら息をひそめて暮らしている。「しばらくすれば」「来年にあれば」事態は良くなると言いながら、何の打つ手もない。

    ネタバレBOX

    大富豪モルガン家にも自殺した青年がいたとは知らなかった。アイオワ州での農民の暴動、競売判事を脅して財産を取り戻す実力行使がすごい。息子はミシシッピー河のボートで肉体労働し、マルクス主義を正しいと考えつつ、共産党には入らない。「ストライキの労働者たち60人と話したんだ。誰も社会主義を理解していなかった。それでも革命は来ると信じられるのか?」と。アーサー・ミラーの切り取った苦い真実であろう。

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    2023/09/21 22:47

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