実演鑑賞
満足度★★★★★
冒頭、白いスーツの語り手(河内大和)が「アメリカにとって、全国民をまきこんだ国民的体験は第一次大戦でも第二次大戦でもない。南北戦争と大恐慌だ」と語る。大恐慌直前からの、ニューヨークのある家族のおよそ5年の生活の芝居である。まさにアメリカの国民的惨事を追体験できる。
アーサー・ミラーの戯曲は、自分の青年時代の体験が反映して、さえている。息子(矢崎広)、母(シルビア・グラブ=好演)、小遣いを息子に借りる父親は中村まこと。平時はいい父親なのに、いざとなるとまるで頼りにならない好人物を自然体で演じていた。息子の学友たちも、就職も決まらず、借金がどんどん膨らんでいく。一家は場末のアパートで、借金の取り立てを恐れながら息をひそめて暮らしている。「しばらくすれば」「来年にあれば」事態は良くなると言いながら、何の打つ手もない。