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アプロプリエイト―ラファイエット家の父の残像―

アプロプリエイト―ラファイエット家の父の残像―

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2023/02/16 (木) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「Appropriate」はBranden Jacobs-Jenkins(1984-)の2014年の作品で「An Octoroon」と合わせてObie賞のBest New American Play部門賞に輝いた(参考:Wikipedia英語版)。ワンツーワークスは以前に彼の代表作のひとつ「グロリア」を上演したことがあるが、私には良さがさっぱり分からなかった。しかし本作は非常に分かりやすく60分+10分休憩+90分の長丁場を退屈することなく楽しむことができた。最後は疲れたけど。

物語は田舎に暮らしていた父が亡くなって、後始末に集まった姉・兄・弟の3人と彼らの家族の怒涛の罵り合いである。相手の技をしっかり受けてからこちらの技を繰り出すという言わば口喧嘩のプロレスである。関谷美香子さん演じる姉トニーが小山萌子さん演じる兄嫁レイチェルのマシンガントークを受け止めてからの余裕の反撃には痺れた。多勢に無勢で負けが込んで行くのもご愛敬。

亡くなった父の恥ずべき過去が人種差別主義者だった(らしい)ことが全編を通しての柱となっているのは2023年の今にはあまりピンと来ない。ニュースでKKKの話を聞くことは無くなったのであの装束が出てきたときは懐かしさを覚えたほどだ。

いつもは暗転の代わりに行われるmove(stop&go のダンスパフォーマンス)が無いのかと思っていたら一番ピッタリなときに爆発した。やっぱりこれがなくっちゃ。

ネタバレBOX

弟嫁のリバー(高畑こと美)が要所要所に印象的に登場し、思わせぶりな会話もあるので何か大きな秘密があるのかと思ったが結局何もなかった。ここはがっかりポイントだ。

最後、家が朽ち果てて行く様を短時間での大道具の移動で表すのは苦労の割に効果は薄い。家そして家族が崩壊して行くというのは観客の脳内で十分補完可能だ。それに最後は早く帰りたいし。ああでも結局家が売れなかったということを確認するという意味はあるなあ。
対話

対話

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2023/02/10 (金) ~ 2023/02/24 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

表現がきつく、不快・嫌悪感を強く感じる向きも居るだろうから観る人を選ぶ一面も。開始早々、被害者遺族が凄愴な心持ちを吐露する場面では、隣席の方が肩を震わせているのが分かる。重い題材を扱い、130分間8人の演者が出ずっぱりで主張し合うのだが、決して暗いだけに止まらず、演劇ならではのLIVE感と緊張感、醍醐味がたっぷり詰まったとても見ごたえのある舞台。

沙也可~海峡を越えた愛~

沙也可~海峡を越えた愛~

吉本興業

ABCホール (大阪府)

2023/02/16 (木) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

満足度★★★★

過去にこんな経緯があったことは、とても勉強になりました‼️
故郷は生まれ育ったところだけでなく、今からでもつくれる
だから生き抜け ま、こんなことを言いたかったのだと思う
生きていれば、何か良いことあるさみたいな僕みたいな軽い思いではなく、必死に生きて来たんだな〰️
ほぼ満席でWコール
内容は文句なし 客層はNMB目当てで少しキモかったけど😅

長い夢

長い夢

シタチノ

王子小劇場(東京都)

2022/09/22 (木) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

最後の松浦さんの台詞で泣きそうになってしまいました。お気に入りです。

 Bisous Bouquet

Bisous Bouquet

代々木アニメーション学院 エンタメスタッフ学部二期生

YOANI Live Station(東京都)

2023/02/16 (木) ~ 2023/02/16 (木)公演終了

実演鑑賞

良い舞台だったと思います。

超訳 ヴェニスの商人

超訳 ヴェニスの商人

名前はない劇団

王子小劇場(東京都)

2023/02/15 (水) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/02/16 (木) 19:30

良くも悪くも若い芝居だった。(5分押し)76分。
 有名な『ヴェニスの商人』を75分で上演、という企画だが、シェイクスピアならではのセリフも活かし、極めて真当な上演。開演前に役者2人が出てきて背景や人物名を説明するというアイデアは良いが、開演時間になってから5分も他の芝居のCM映像を流すのはいかがなものか。黒と赤の紙を使った演出も意図が今一つつかめない。役者の力量に差があり、安心して観てられない所もあったが、全体として丁寧な上演だった。配役表がないのが残念だが、ポーシャ訳の采乃がいい。若い観客が多いが、終演後の会話を聞いてて、結末を知らない観客が結構いることに驚いた。

ネタバレBOX

 上演の出来とは違う話だが、本戯曲は本当にユダヤ人差別がひどいなと思った。肝心の法廷シーンでも、「法に従って」と言いつつ資格ないポーシャが宣告したり、そもそもアントーニオは名前を呼ぶのにシャイロックはユダヤ人としか呼ばないとか、よりによって改宗を求めるとか、なかなかヒドイことをしている。
対話

対話

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2023/02/10 (金) ~ 2023/02/24 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

近年評価の高まるオーストラリアの戯曲。
粗筋と感想を目にして、これこそ自分が観るべき作品だと足を運んだ。
入場時に「必ず開演前にお読み下さい。」と配られる紙。
「一部、性暴力についての強い表現がございます。」との警告。「途中で会場を出ることは自身を守る行為です。」と不快なら我慢せず途中退場することを劇団側から促している。一体これから何を観せられるのか?異様なムードの会場。

観客が体験するのは地獄の光景。2回レイプ事件を犯した性的サディズム障害の青年スコット。刑務所で臨床心理士にOKを出されて仮釈放、弟の働くスーパーに勤務。そこで美人で良家の出である女子大生の客に目を付ける。ずっと我慢しようと様々な方法を試みるもどうにもならない。彼女のマンションに侵入し、帰宅と同時に室内に滑り込む。両手を後ろ手に縛り上げ口を塞ぐ。お気に入りのSM雑誌のグラビアを見せて、想像の限りを尽くして凌辱。罵倒殴打内出血虐待暴力性行拷問屈辱苦痛懇願、詰め込まれたコーラの瓶。彼女は絶望の果てに死ぬが、スコットは「殺意はなかった」と語る。
医療刑務所にて終身刑で服役中のスコット(声のみ山田貢央氏)。

今日一室に集められた8人。
被害者の父デレク(斎藤淳氏)、母バーバラ(安藤みどりさん)は今も地獄の日々を送っている。
加害者の母コーラル(山本順子さん)、姉ゲイル(天明屋〈てんみょうや〉渚さん)、弟ミック(辻井亮人氏)、叔父ボブ(河内浩氏)。
スコットを担当した臨床心理士ローリン(佐藤あかりさん)。
「修復的司法」の調停人・ジャック・マニング(八柳豪〈やつやなぎたけし〉氏)。
「修復的司法」とは罪に対して国家が罰を与える「応報的司法(刑事司法)」では、本当の意味での解決にはなり得ないとの考え方から生まれた。直接的な「被害者加害者対話」を通じて、被害者の回復と加害者の更生について当事者及び周囲のコミュニティの者が話し合うこと。性善説のようなぬるいイメージが付きまとうが、この試みに一体どんな意味があるのか?それとも何もないのか?は見てみないことには分からない。

この場にいないのは加害者と被害者だけ。
誰に一番感情移入して観ることになるのか?
被害者の母親役の安藤みどりさんがヤバかった。

ネタバレBOX

いろんな感情や思考が渦巻き、まとまりがつかない130分。死者がいなくなるのは不公平だ。この世界は生者達のもの。殺された者に発言権はない。残った生きている人達で一番心が安らげる方法を選択することが正解なのだろう。

加害者の家族は何もしていないのだから責めるのは筋違いというもの。だが被害者の両親の気持ちに誰もが共感する筈。出来ることなら顔を合わせたくないし、口もききたくはない。なら何故この場があるのか?

「奴は娘の未来だけではなく、過去をも奪ってしまった。娘の思い出のアルバムを開こうとしてもどうしても開けない。この娘が最期に行き着く結末の光景が頭をよぎることで、楽しい優しい思い出すら全て残酷なものに変わってしまう。」

娘の頬笑ましいエピソードを語り出す母。
娘が自ら企画主催した誕生会、両親が良かれと思って呼んだサプライズのマジシャン。それに怒り心頭のエピソード。キッチンの壁の色が気に入らなく、自らペンキでカナリア色に塗り替えるエピソード。意地になってやったものの、それが失敗だったことを終いには認める。話の途中でふっと何かを思い出し、慟哭を堪らえられない父。

「ふとした時に、神に娘のことを祈って下さい。」との母の言葉にはっとする。このどうしようもない修羅地獄を主観だけではなく、俯瞰する神の視点こそが心には必要なのか。
この台詞と、「娘はもう死んでいるのよ。」の台詞が一番突き刺さった。
どうしようもない現実の受容。
そのどうしようもなさすら、時間に包まれていく。

今作について正当な評価は出来ない。素晴らしい作品とは思わないが、ここまでいろいろ考えさせる(体験させる)ことに対して認めざるを得ない。

Oasisで一番支持されている曲、『Don't Look Back in Anger』〈「想い出を醜い感情(怒り)で汚さないで」〉のことを考える。
2017年5月22日の夜、英国マンチェスター(Oasisの地元)でISによる爆弾テロが発生。22人の死者、負傷者59人。哀しみと怒りに暮れた、犠牲者を追悼する集会で不意に一人の女性が『Don't Look Back in Anger』を歌い出す。段々と参列した皆が声を合わせて歌い出し、最終的には大合唱となった。このことが世界的に大きく報道されて、この曲はアンセム(この事件に対する民衆の心構えの象徴)となる。
これを知った作詞作曲のノエル・ギャラガーは今曲の印税収益をマンチェスター支援基金に全て寄付した。
初めに歌い出した女性はこう語る。「私達は起きてしまったことに対して後ろ向きになってはいけない。前を向き、未来に向かって行かなければいけない。」

「そう、サリーは待っていてくれる
 共に歩くには手遅れだと知っていながら
 彼女の気持ちは離れていく
 けれど、『想い出を汚さないで』ってそう聴こえたんだ」
NEHAN

NEHAN

桐朋学園芸術短期大学演劇専攻

俳優座劇場(東京都)

2023/02/15 (水) ~ 2023/02/16 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/02/16 (木) 15:30

125分。休憩なし。

対話

対話

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2023/02/10 (金) ~ 2023/02/24 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/02/16 (木) 19:00

135分。休憩なし。

Bug

Bug

serial number(風琴工房改め)

サンモールスタジオ(東京都)

2023/02/15 (水) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

息つく暇もない後半。秘密がほどかれ、アグネスの哀しみが痛く残る。
キャストそれぞれが良い味を出している。

磁界

磁界

オフィスコットーネ

小劇場B1(東京都)

2023/02/09 (木) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

去年亡くなったこのプロダクションのプロデューサー綿貫林の追悼公演。急逝だったので積み残しの発注済みの作品の上演である。
これは中村ノブアキの警察内部の企業もの。中村自身の劇団JACROWの作品は企業ドラマのを目指すというのが目新しく二三度足を運んだが、そのときは、経営についても、企業人についても認識が甘く、浅いドラマになっていて、その後、足が遠のいていた。今回は企業と言っても公共企業体の警察が舞台。こちらは、営業利益が唯一の価値判断になる企業とは、同じ企業体でもずいぶん違って、公共の理念、国民の負託、権利と義務、自助・共助・公助のモラル、職員自身のモラルと企業体のモラル、と人間的なドラマになる要素がたくさんある。このドラマでは、中年の姉妹が、ホストクラブ詐欺に巻き込まれた事件を巡って、警察の生活安全部の職員は、何でも持ち込んでくる(勝手な)国民に対してどうあるべきか、それは警察内部のヒエラルヒーとどう関わっていくのか、ということを事件サスペンス仕立てで、かなり人間的に追っていて、数年前とは様変わりの進境である。数多いこの欄の「見てきた」にある通り、飽きずに最後まで安心してみられるし、軸になる主人公の生活安全部の職員を演じる西尾友樹は、熱演。周囲の署長、課長、係長も、被害者の姉妹も、類型的な性格付けだが、隙なく演じている。
これはこれで行き止まりのような気もするが、以前の生半可な企業ものよりずっと良い。無い物ねだりで言えば、この上に、誰でも感じている社会人の人としての生き方、それで構成される社会のあり方について方向を示すようなところ(裁判を起こそうとか、抗議デモに行こうというようなものではなく)があれば新しい現代劇への道が開けたようにも思う。
まだどこか足りない。

ひとり語り芝居『土神ときつね』他

ひとり語り芝居『土神ときつね』他

お茶祭り企画

space korallion (スペースコラリオン)(大阪府)

2023/02/10 (金) ~ 2023/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

動けない状況での恋、
動けてもよりより早く動き力のある者には、殺されてしまう。 
動けない状況が、とても苦しく感じた。
動けないのは、貧乏、家督とかかな? 
明治の時代なんでしょうか。
今回 改めて感じた感覚 面白かった。

No Robot

No Robot

One Bill Bandit

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2023/02/04 (土) ~ 2023/02/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

う~ん、上手い。すごくキチンとまとまった舞台でした。

磁界

磁界

オフィスコットーネ

小劇場B1(東京都)

2023/02/09 (木) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/02/13 (月) 19:00

警視庁生活安全課で起こるドラマ演劇。
「磁界」とは何だったのか…なるほど、最後に繋がる台詞で妙に納得。
物語の終着地はどこで落ち着くのか…
筋道立てた2時間の芝居に途中で間延びするかと思いきや、そこは役者の力。
キャスト陣も含め、写実的な要素が役と舞台とも相まって良い色合いを醸し出していた。
代表曰く「会話劇」ということで、小劇場でなければこの世界観は出ないように思う。
作品の終わり方、個人的にあまり好きじゃなかったのですが「良作」である事に違いありません。

Bug

Bug

serial number(風琴工房改め)

サンモールスタジオ(東京都)

2023/02/15 (水) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/02/15 (水) 19:00

かなり強烈でタイトな舞台だった。(4分押し)127分。
 荒唐無稽な話をする青年を信じる女性、という物語は、信じるということはどういうことか、というようなテーマの作品と言えるか。11月にトラムで公演する予定だったものを、役者と会場を変えて上演。珍しいR15指定だが、そんなに強烈な場面はないものの、15歳未満に見せにくいなと思う。終盤に出てくる塩野谷正幸の存在感が印象に残る。

生者に梔子

生者に梔子

牡丹茶房

高田馬場ラビネスト(東京都)

2023/02/15 (水) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

前半は死ぬ程面白い。この設定、この導入だけで群を抜いた才能。清水崇や中田秀夫はこの作家〈烏丸棗(からすまなつめ)さん〉に書かせた方が良い。「ああ、成程」と細かい所まで工夫の効いたシチュエーションに感心。テーマは「口は災いの元」。詰め過ぎの客席、客の期待度はMAX。

山形県にある黒殿山深願寺。冬の雪山の禅寺にて泊り込み一週間の断食道場を実施。参加者は女性四名、男性二名。住職の國枝大介氏、スタッフの飯智一達(いいともかずと)氏、池島はる香さん、二ツ森恵美さん。
芸能事務所所属の赤猫座ちこさんは8キロ痩せることを事務所から要求されて決死の覚悟。売れない芸人(杉本等氏)と妻(片渕真子さん)、専業主婦(三浦久枝さん)と仲の良いその隣人(佐藤友美さん)、やたら下調べをしてこの地に詳しい山田健太郎氏。

空腹でギスギスしていく人間関係。大雪に閉じ込められていく寺院。不意の闖入者。

飯智一達氏は楽しんごとライスの田所仁似。

ネタバレBOX

ここは曹洞宗の寺ではなく、元々は江戸時代に湯殿山(黒殿山?)信仰の拠点(山形県鶴岡市)となった真言宗・山岳信仰の寺院。自らの意志で断食死しミイラ化した遺体を即身仏と呼ぶ。一世行人(いっせいぎょうにん)と呼ばれた一代限りの修行者の即身仏を御本尊に祀る伝統。
参加者達は次々に起こるトラブルが自分等を即身仏にさせる為の罠ではないかと訝しむ。

この辺りから話がもやもやし始める。この寺では口のない女性(二ツ森恵美さん)を尸童(かばねわらし)と呼んで御本尊に奉っている。昔、廃墟の寺院で務所帰り(?)の國枝大介氏は尸童と出会った。人の死の間際の告白を聞くことが性癖だった彼はネットで自殺希望者を集めて逮捕された。尸童の正体はハッキリしない。病気の女性とも考えられるが、口腔のない人が生きられるとは考えられない。國枝氏は断食合宿参加者を極限状態に追い詰め、死の前の告白をさせる。その上で「これは嘘でした。お帰り下さい。」と参加者に帰宅を促す。怒り狂った参加者にリンチされて殺される国枝氏。実はこれも国枝氏の当初からの策略で、皆に誰にも話せない共有する罪の意識を植え付けることが目的。尸童に抱かれて死んでいく。

ディレクターや輩の存在意義もハッキリしない。即身仏に憧れる修行僧みたいなキャラが欲しい。
撮影された謎の映像を後日観ている、別の視点が必要。その語り手がこの寺で一体何が起こったのか考察するような構成にするべき。

後半はどんどんどんどんガッカリしていった。
磁界

磁界

オフィスコットーネ

小劇場B1(東京都)

2023/02/09 (木) ~ 2023/02/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
「綿密な下調べを基に俯瞰した目線で創るドキュメンタリータッチの作品」という謳い文句、その緊迫・緊密感に圧倒される。観応え十分。

警察署とそこで勤務する警察官という両観点から、組織とは 人間とは を重厚に描き出した秀作。警察組織の花形は刑事課であろうが、ここでは生活安全課という市民に寄り添った部署ーーその理想と現実の狭間で揺れる男の悲哀が良く表れている。警察という市民の暮らしの安心と安全を担う組織、しかし一皮剝けば<内側から見れば>出世という上昇志向という典型的な競争社会が浮き彫りになる。警察署という設定が妙、いわば市民の協力なしに その機能を発揮出来ないという相互の<信頼>関係の上に成り立つ。物語はその市民からの依頼と警察の事情、どちらも納得してしまう描き方、そこにコトの善悪では解決できない複雑な事情を絡め巧く展開していく。

一警察署という設定から、表れない都道府県本部、更には警察庁といった上層の権力構造が見え隠れし、典型的な組織としての本音<市民の安心安全>と建て前<事件性の有無>がぶつかり合い、どちらの言い分も尤もに思えてしまう。同時に典型的な人心掌握術、飴と鞭というどの組織でも通じそうな言動、そこに人間としての悲喜交々を巧く織り込む。

舞台美術は、警察組織の人間関係や体質を象徴的に表すと同時に、心の虚しさ、殺伐さといった心情光景でもある。一方、舞台としての機能ーー警察内とその外を巧く切り分け、情景表現にも優れている。その舞台で 役者はそれぞれの立場と性格を立ち上げ、濃密な演技を観(魅)せる。
(上演時間1時間55分 途中休憩なし)

ネタバレBOX

L字客席、舞台美術は盛り土のようで、客席と舞台の間は溝のような空間<道>がある。奥は一段高くし、テーブルと椅子があり別空間を表す。場景によって弁護士事務所であり酒場になる。上手 下手には色々な形の椅子が紐に括<縛>られている。天井からも紐が垂れ、全体的に薄暗く、あるのは椅子だけ。縛られているのは、署内の色々な人たちを表しているのであろうか。

冒頭 生活安全課の署員が、ある部屋を訪ねるところから始まる。緊迫した様子、警察無線から流れる言葉から一気に物語に引き込む。場転換し、一人の女性が生活安全課に妹の行方を捜してほしいと依頼。生活安全課に自ら望んで配属された署員は、事件性がないと動けない旨説明するが、市民のための警察ではないのかと食い下がられる。対応に苦慮し上司に相談するが埒が明かない。民間企業ならクレーマー処理するような展開であるが、無下にできない警察署という設定が上手い。いつの間にか「市民のため」が蔑ろに、そして事件が…。

警察では事件性の有無によって対応が異なる。その見極めが重要であり、「君には期待している」という飴のような甘言。逆に組織の体面を傷つけるような軽はずみな言動や行動は叱責ーー「君には失望した」「将来を考えたまえ」は鞭のような苦言。署長から課長・主任へ、逆に諫言は出来ない組織体制、その保守的な考えが人間性を支配していく怖さ。<精神的な>病に倒れるか、洗脳されていくか、その究極の選択を迫られるような圧迫感。制服(交番勤務)と私服(署内勤務)の違い、私服は相談する相手がいないこと。その孤独・重圧感を早い段階で示す。

市民の相談、そして権力機構への対峙として弁護士を登場させる。生活安全課の署員と弁護士、その従兄同士であり立場を違えた男二人の激論は心魂震える。二人の議論は 理想と現実のように思えるが、何故か生活安全課署員の心内が引き裂かれた、そんな葛藤する姿を見るようだ。出来れば、続編として、この法廷劇を観てみたいところ。
次回公演も楽しみにしております。
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東京文化会館

東京文化会館 小ホール(東京都)

2023/02/04 (土) ~ 2023/02/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

このところオペラづいているが(先月が「カルメン」と「トスカ」、今月はこれから「タンホイザー」と「トゥーランドット」)、この日は12月の「いちとしいけるもの」に続く小規模な新作オペラの初演(先にニューヨークでワールドプレミア)だった
アメリカで注目を浴びる作曲家デヴィッド・ラングと演出家笈田ヨシが初タッグを組み、芥川龍之介の『或旧友へ送る手記』『点鬼簿』がベースとなった、東京文化会館とジャパン・ソサエティー(ニューヨーク)との国際共同委嘱による新作オペラ
弦楽四重奏による音楽はミニマルミュージックに分類出来るが、かなり変化に富んでいた
今をときめく4人の若手の演奏は見事に劇の進行に合っていた
ブレックマンは歌(マイク使用)だけでなく踊りの入った演技も素晴らしかった
ステージングも演出がやっているのかな
正気を失ったお母さんの回想のシーンの仕草が面白かった
モシュレフは椅子を乗り物のようにしてサーッとステージを移動したのが「おっ」と思わせた
スクリーンを兼ねた半透明の仕切りが、そこに投影したり、透過して後ろの光景が見えたりと色々な使われ方があって面白かった
テーブルの上の燭台のローソクがメタファーに用いられていた
言ってしまえば家族の回想から自殺に至るだけなのだが、友人にそれを語っていくことで、自分が生きたことの意義を見出そうとするプロセスと言っていいかもしれない
芥川の原作は半世紀前に読んでいたのだけれど(中学時代から30過ぎまで芥川は好きな作家ベストスリーに入っていた)、もう中身はおぼえていなかったなぁ

日本文学盛衰史

日本文学盛衰史

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2023/01/13 (金) ~ 2023/01/30 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

なんと高橋源一郎のこんな原作を戯曲にしてしまうのか‼️
明治から大正にかけての4人の文豪の葬儀(通夜)の場での会話を通じて文豪たちの時代の流れとの葛藤を描く(平田オリザさんの挨拶で良く分かる)
とはいえコメディタッチでパロディ、現代の社会風刺満載で、笑いの連続
文句なく面白かった
連れて行った若い音楽家も面白かったと言ってくれたが、会場に早く行って解説して読めばよかったな
自分は98%分かったけど、彼女には何のことか分からないエピソード、人物、人間関係多かったろうな

カルメン

カルメン

光藍社

東京文化会館 大ホール(東京都)

2023/01/06 (金) ~ 2023/01/07 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今年のオペラ初め
この状況下で良くぞ来てくれたな
キエフ・オペラだった2010年にアイーダを観たのだけど、その時アンケートを裏まで細かい字で書きまくってもらったサイン色紙
なんとキャスト全員のサインだった
そして今日、最初から断然いい声のバスだなと唸った竜騎兵隊長スニガ
なんと13年前のラムフィスだった(セルゲイ・マゲラ)‼️

合唱含め歌唱力抜群
昨年のハンガリー国立よりずっと上
隊長もだが、ミカエラ(テチアナ・ハニナ)の声良かったなぁ
カルメン(アンジェリーナ・シヴァチカ)は最初ハバネラでちょっとブレスが気になったのだが、太い声でよく通り、尻上がりに良くなってラストではさすがはタイトルロールと思わせた
ホセ(ドミトロ・クジミン)は時にムラがあったけど良く通っていた
カルメンの仲間ふたりのソプラノは素晴らしかった
密輸団の仲間ふたりもなかなか
正直エスカミーリョだけが不満が残った

子供の頃からレコードを聴いて育ったので、ほとんどの曲は口ずさめるのだが、第二幕は意外と記憶にない部分があって、またそこの歌唱、特に五重唱などが気に入った
セットは各幕(場)オーソドックスなもので、変に簡素化もしていないが凝ったと言うほどでもなかった(第三幕第一場がちょっと変わってた)

無事に帰ってウクライナでも公演を続けられることを願うのみ

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