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灰色の街

灰色の街

Project JUVENILE

中板橋 新生館スタジオ(東京都)

2023/07/20 (木) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

けた外れにおもしろい。
おもしろ過ぎる。
もらったパンフレットによると、演出の富樫さんが、二十数年前、富樫さんが初めて観劇し心を奪われ、夢中になって芝居作りに励むキッカケになった思い入れのある作品とあった。
そんなにいい作品なのか、と気合いを入れて観た。
正直なところ、最初の30分くらいは、普通のどこにでもあるお芝居ですが、半分を過ぎたあたりから、おもしろくて夢中になる。
最初もおもしろくないわけではなく、朝倉健太郎役の役者さんが、一途な好青年を演じていて、私は、彼の演技がとても可愛く好感が持てて、楽しんでしまった。

途中からは、ピストルをふんだんに使うスリルある展開になり、目が離せなくなった。
やくざ風な展開を期待して行ったので、超満足でした。

もっと書きたいのだが、ネタバレ厳禁と念を押されているので書けない。

印象に残ったのが、竜造寺役の富樫さんの演技だ。
味があり渋くて、スゴかった。
迫力も貫禄も半端ではない。(ここのところ必見です。)
衣装もバッチリ決まっていた。


飯原優さんのひたむきな演技もとても良かったです。



スペーストラベロイド

スペーストラベロイド

collaboLab

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2023/07/19 (水) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

こんないい加減な管理の宇宙船には絶対乗りたくないが、そのいい加減さが上手く活かされたストーリー。嘘に勘違いの連続の笑いはあまり好きではないのだが、ついつい笑いに惹き込まれた。くどさを感じることはあったが、泥臭さがないので嫌味にはならずに観れたと思う。初日のせいか、キャスト間に少し距離を感じはしたが、これからどんどん仕上がっていくのではと思う。楽日観劇は相当良い仕上がりでは?

エゴイズムでつくる本当の弟

エゴイズムでつくる本当の弟

Stokes/Park

小劇場B1(東京都)

2023/07/19 (水) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/07/20 (木) 19:00

座席1階

札幌出身の劇作家白鳥雄介による演劇ユニット。今作は自身の生い立ちや家族の実話を基にした作品という。
自分の物語を書くのはどんな気持ちなのだろうか。パンフレットによると、家族にはいいイメージを持っておらず、長年悩まされてきたというが、その悩みに全力でぶつかり、けじめをつけたいとしてこの作品をつくったのだという。「いいイメージでない」エピソードは満載だ。エステティシャンの母は子どもたちとの会話の端々でギャグをかます底抜けに明るい性格だが、兄弟が幼いころに離婚。新たな恋人も離婚していて男の子がおり、連れ子同士で同居をする(結婚はしていない)という展開だった。こういう性格の母親だからだろうか、血のつながっていない息子に対しても兄弟同様の愛情を注いだが、事態は悪い方へ悪い方へと展開していく。

次男(原作者)の結婚式前夜の場面から始まる舞台。軽妙な会話劇で進行していく。兄と弟の関係、さらに連れ子の弟との関係。親が勝手に同居しても、その連れ子たちが家族、すなわち「3兄弟」になれるかというのは別問題である。あえて入籍しないという親の選択が、東日本大震災の緊急避難時に長兄と血のつながっていない末弟との兄弟関係の証明ができず、不利益をこうむるというエピソードがあった。名字が違うままの連れ子同士の兄弟に対する、世間の冷たさも描かれる。

演出はシンプルで好感が持てる。擬人化された飼い猫が登場するが、今ひとつ効果的ではなかったようだ。タイトルの「エゴイズムでつくる本当の弟」は筆者の胸の内をさらけ出した本音だとは思うが、タイトルとしては分かりにくくインパクトに欠けたのではないか。

若者中心の家族劇として、新たな姿を提示しようという意欲作であることには違いない。

シュガシュガ・YAYA

シュガシュガ・YAYA

東京にこにこちゃん

OFF OFFシアター(東京都)

2023/07/12 (水) ~ 2023/07/19 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/07/19 (水) 18:00

価格3,500円

初日及び楽を観劇。
ハッピーエンド路線を確立、公言する東京にこにこちゃんが描く大学生活のモラトリアム、そしてそこからの一歩を描く物語。
和光大学...をモチーフにした大学に入学した春瀬舞笑(大畑優衣)が演劇研究会に入部。様々な経験を重ねつつ成長も迷走もし、最後には周囲に力強く背中を押されて自分の意志で「ドア」を閉める。
団体側で不定期で過去作を無料配信している(本作も期待!)ので、以下ネタバレBOXへ。

ネタバレBOX

冒頭はサザンオールスターズになりたいと演劇研究会を訪れた新入生・豊丸光(四柳智惟)が2年生の大池奈々(菊池明明)、三町景(髙畑遊)に弄られるところから。豊丸は浪人して入学しているので2年生の両名と同い年なのだが、大学の上下関係は学年が基準なのだから敬語を使えと。こうしたちょっとしたネタでも笑いのギアが一気に入り、場内はドッカンドッカン沸いていた。この辺りの笑いの空気作りは本団体の得手だ。独特のリズムととぼけた持ち味の特撮サークルの里秋穂奈(立川がじら)、明らかに住み着いている感のフォークソング連合の中森悟(尾形悟)、出番は少し後だが、8年生から後に再入学の離れ業を行う奇人の鍛冶宮樹(武藤心平)が醸し出す雰囲気がにこにこちゃんらしさであり、1980~90年代の漫画的でもあり、(モデルの大学の特異な実態は知らないが)大学生活あるある感、こんなだったら面白いな感で何層にも面白い。
前述の彼らはにこにこちゃんへの出演がお馴染みのメンバーであったり、あるいは大変な個性を放つ芸達者達。そんな中に主役の舞笑に抜擢されたのは舞台出演が2作目の大畑優衣。どこか自信無さげで、何なら迎合する為の嘘も付いてしまう、舞台の演劇研究会への居着き方もふわっとなし崩し(入部自体はヘンなタイミングで決心している)と、万事何となくの等身大な揺れる若者像と言える。一方で好奇心旺盛で人当たりが良くてチャーミング。そんな両面を見事に体現していた。

時間軸は白幕の上げ下げと豊丸らの「〇月~」のような宣言で進行していく。舞笑は舞台の脚本を書いたり、音響を務めたりとサークルに勤しみつつ、初めての恋と失恋(相手はなんと鍛冶宮)のような経験も。愉快な先輩達にも可愛がられ、大学生活に居場所を見付ける。そして依存してしまう。日に日に目標を増やして部室の壁に貼り付けていく(友達を作る、授業を休まない、資格を取る、海外に行く...etc)。そんな前向きさと楽しみに溺れていく両面。どちらも極端に振り切ってはいないのが舞笑の在り方だ。前向きと言いつつも目標を叶えられていない焦燥、サークル活動を満喫しながらも先輩の卒業や新入生が居着いてくれない現実。バックボーン的なものは特に描写、説明は無いのだが、舞笑自身は元から自分に自信があるでもなく、序盤の振る舞いからしても強い意志を持った人物でもない。楽しみみに溺れつつ不安からの現実逃避。結果として部室で怠惰に過ごして昔話をするばかりのお荷物になってしまう。大学生活のモラトリアムは理解の無い人から見たら「楽しそうだね、甘えてるね」と切って捨てられるのだろうが、負の意識を自覚していないわけではないし、現実は直視出来ないが薄目で見えてはいて、きっかけや背中を押してくれる人や物事をうっすらと渇望しているのだ。甘えと言われたらそれまでだが。
さて、世知辛い現実とは違うので、舞笑は周りに恵まれていた。優しくそっと諭してくれる奈々、憎まれ口と力業でと強引さの景、一足先に現実に目覚めていた豊丸ら。景らは一緒に部室に住んで、昔話をしながら楽しく過ごそうと提案、そして舞笑がほったらかしにしている目標の全否定。感情的反発と大立ち回り。吹っ切れた舞笑は部室のドアを力強く閉めて出て行く。部室からの、モラトリアムからの卒業。終幕。

お馴染みのキャストも多い中で、今回は主演に抜擢した大畑優衣の働きも作風へのアクセント、新風として実に機能していた。役と存在感がマッチしていたという話だけではなく、細やかな部分の芝居も丁寧に取り組まれていた。奈々や豊丸がドアを閉めて去って行く時の「待って」はその人物への呼びかけの言葉であり、時間の経過と取り残される自分自身に対する心の悲鳴でもあり、静かな場面ながら作品の象徴的な部分と思う。その際の表情や声色には心を打たれた。鍛冶宮が「ここを出る」と言い出した時の、彼だけはいつまでもいると思っていたのにという驚きと残念さと取り残されてしまったという一瞬の表情、卒業した奈々が部室に来た時のバツの悪そうな負い目ある表情(普段なら嬉しそうなのに)。序盤の子供っぽい可愛らしさ、様々な試練でいじけてる様、景の好きな男を奪った件の感情の吐露など、振れ幅の点でも大変な見応え。抜擢に応える見事な芝居。

笑いの台風のようだった豊丸(舞笑を取り押さえる姿は寄り添う姿にも映って素敵)、お母さんのような優しさ、柔らかさの奈々(切ないラブコメ要素も!)、暴君だけれども一番力強く背中を押した景(風早くん...)、文科系サークルの先輩像で場を和ませた里秋(何たる朴念仁!)、ウザさ炸裂ながら本作最高の表現(飲み会~)の鍛冶宮、奴隷、盗聴、ワニワニパニックと要素多過ぎな中森。どの登場人物も面白く、人間臭く、愛くるしい。役者陣も流石。

ほろ苦さと苦難、終盤も笑いをてんこ盛り、笑顔と少し涙のハッピーエンド。象徴的な「ドア」の使い方。
本作も傑作だった。にこにこちゃんのアベレージは凄まじい。
ハートランド

ハートランド

ゆうめい

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2023/04/20 (木) ~ 2023/04/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

なんだか思っていたものと違っていました。今回は今まで違ったものだったみたいで、それででしょうか?相島さん見たさもあっての観劇でしたが予想以上に出演されていなくて残念でした。

デンジャラス・ドア

デンジャラス・ドア

爍綽と

浅草九劇(東京都)

2023/04/26 (水) ~ 2023/04/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白かったです。ただ、面白い前に笑ってしまうファンのような方が多く、笑いたいところでハズされてしまいました。女性版山内ケンジ感が強かったです。

明けない夜明け

明けない夜明け

演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2023/07/14 (金) ~ 2023/07/20 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ヘビーなはずのテーマが日常空間に溶け込んで、演劇という形でそこにあったのが印象的でした。
クライマックスは圧巻でした。

スペーストラベロイド

スペーストラベロイド

collaboLab

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2023/07/19 (水) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

2回公演観ましたが、何回みても笑える。要所要所に置かれている伏線を最後できれいに回収して、温かい気持ちになれました。土田が宇宙遊泳しているところは、本人いないけど、舞台上の演者の息ぴったりで本当に泳いでるんじゃないか?と後ろを振り返ってしまったくらいリアルでした。

スペーストラベロイド

スペーストラベロイド

collaboLab

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2023/07/19 (水) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

イケオジ!イケメン!美人さん!ストーリーもめっちゃ良くて、期待以上!笑った〜

『つやつやのやつ』と『ファンファンファンファーレ!』(再演)

『つやつやのやつ』と『ファンファンファンファーレ!』(再演)

ムシラセ

駅前劇場(東京都)

2023/07/13 (木) ~ 2023/07/18 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/07/16 (日) 18:00

115分。休憩なし。

ストレイト・ライン・クレイジー

ストレイト・ライン・クレイジー

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2023/07/14 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 日時によって星組、花組Wキャスト上演である、どの役を誰が演ずるかテイストの違いを楽しむこともできる。(花組を拝見)
2部構成、休憩なしの2時間25分程。一瞬たりとも目が離せない。

ネタバレBOX

 今作は燐光群が演じるデイヴィッド・ヘア第5作目の作品であるが、1929の世界大恐慌に重なるような時代、1926年が起点だ。当時は未だ一般的ではなかった都市開発計画を立ち上げ現在のN.Y.で見られる都市景観の大本を作った実在の男・ロバート・モーゼスの前半生(マンハッタンから近く資産家が好環境の現地を好み多くの地域を私有化していた合衆国本土では最長最大の自然豊かな島・ロングアイランドを一般市民が通い使えるようにする為の開発、海浜公園&公園へ通じるノーザン・ステート・パークウェイやサザン・ステート・パークウェイ建設等)を前半第1部で、
29年後の1955年代に入り世の多くの人々の意識やジェンダー感覚が大きく変わるとワシントン・スクエア・パークに高速道路を通そうとするモーゼスの計画はビレッジ住人の市民運動と対立、激しく批判されるようになって以降を第2部で。ヴァイタリティーと信念を持ち実践したさしもの男は、変転することこそ唯一の自然な世界の姿であることに置いてきぼりを喰らいつつ尚一種のアメリカ流ダンディズムを貫こうとした。そして彼をその事業の開始からサポートし仕事で無理をした結果障碍者となった現在も未だ現役の男性社員の覚めた意識に出会い、秘書を務め続けた女性社員の「辞めます」宣言迄叩きつけられたモーゼス、また仕事一途な余り妻をアルコールに走らせ剰え暖かい言葉一つ掛けてやったわけではなかった鈍感が遂には妻の精神を破壊、精神科病棟で薬漬けの生活を送っていることへの遅過ぎた気付きなどの経緯を描いて、仕事最優先で成功を収めた男のそれ以外の価値観や柔らかくしなやかな感性に対する鈍感や差別意識がそれらに無意識であることから生まれるが故に鈍感差別者自身に気付かれ難く更に仮に気付いたにしても為す術を知らぬことによって鈍感・差別を永続化してしまう状況が描かれる。現在の人権意識から観ればこれは余りに特異な事象にも見えよう。だがモーゼスは決して卑怯者でもなければ非紳士的な訳でもない。単に現在の我々から観て具体的に街の活動家の抗議の背景にあったもろもろの価値観や本源的に彼ら彼女らに湧き上がってくるパッションの根っこ、妻の現状を一人の人間としてケアできるだけのヒトとしての常識を欠いているように思われるに過ぎまい。また、白人内でもカソリック系やアイリッシュ、イタリア系などに対する差別があったとはいえ、ネイティブアメリカン、黒人、プエルトリカン、イエロー、中南米諸国民に対する人権蔑視に比べれば遥かにマシなものであったから、モーゼス自身も市民活動家、女性や有色人種に対する根源的な差別・蔑視が克服されていた訳ではなさそうである。こういった偏見をベーシックなレベルで持っていたことこそ、彼が遂には孤独に追い込まれた原因であろう。それにしてもラストに集約された彼の纏う侘しさは堪らない。
 一方、このがむしゃらな個性は、アメリカが生み出した一つのキャラクターでもあるように思われる。ヨーロッパ、殊にフランス等の現在にも残る優れた思想家、科学者、芸術家等は基本的に命懸けで己の思想や論理を実現し現在に迄伝えた者が多い。アメリカの場合は、それが個々人の破天荒な行為と性格をベースにした一種のフロンティアスピリットとして顕現するケースが多かったように思われる
ストレイト・ライン・クレイジー

ストレイト・ライン・クレイジー

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2023/07/14 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/07/20 (木) 14:00

座席1階

ニューヨークのマスタービルダーと呼ばれた都市計画・建設者であるロバート・モーゼスの物語。ストレート・ライン・クレイジーとは、先住の都市住民を追い出してもまっすぐな高速道を通そうとした彼の人生につけられたニックネームだろう。

産業が興り、従事する人たちが集住して都市ができていくが、そのまま放置していては無秩序な街になる。都市の基幹は道路だ。都市計画は、道路をいかように通していくかということに集約されると言ってよい。
ただ、道路建設と言っても単純ではない。特に、既に建物が集まりコミュニティーができているような地域では、コミュニティーを守りたいという住民と、都市全体の交通網を考えた都市計画当局とは衝突することが多い。東京の都市計画道路は関東大震災後というほぼゼロからのスタートで後藤新平というリーダーが辣腕をふるって骨格ができた。だが、戦後の復興計画で道路建設がうまくいかなかったのは、後藤のようなリーダーが東京都にいなかったからだと自分は思う。朝鮮戦争特需で街が急速に発展する中で、東京都が環状道路を建設していくのは至難の業だった。全部で8本ある都心の環状道路の中で、環状三号線など計画倒れになっている道路が依然として残り、都心の渋滞をひどくしている。

この演劇の上演地である下北沢も、東京都が通そうとしている都市計画道路がある。裁判にまでなった小田急線高架化は断念され地下化となり、元線路だった場所は歩いて楽しむ、今やテレビドラマに何度も登場するトレンディースポットに変貌した。立ち退きを伴う道路建設は、北朝鮮の将軍様のような独裁者でもいない限り、今や不可能に近い。下北沢でこの演目が上演されたのは、何だか因縁みたいなものを感じる。

物語はモーゼスがニューヨーク近郊のロングアイランドを庶民の避暑地にするために二本の高速道を建設する場面から始まる。土地所有者である富豪たちとの強硬な交渉や、法の手続きを無視してまで進める仕事ぶりにまず、驚かされる。まさに人間ブルドーザーだ。日本で言えば、田中角栄のようなものだ。懸命に付いていく部下たちが痛々しいが、そこには庶民の生活向上という納得できる理屈があった。
戦争を経て、経済成長の中でニューヨークマンハッタンの高速道整備は難渋する。モーゼスはやり方を変えない。都市生活者として成長している市民たちが組織する反対運動の力を見誤って、時代の流れと共に計画は頓挫していく。「人間ブルドーザー」が都市の発展に力を発揮した時代は既に終わり、都市の成熟にはブルドーザーは害悪となっていた。しかも、彼が信奉した車社会に疑問が投げかけられようとしていた。
高速道計画を阻んだワシントンスクエアは車両通行禁止に。市民がそぞろ歩きをしながら都心の生活を満喫するという今のスタイルの萌芽となった。ニューヨークにはかつての高架鉄道の跡地を遊歩道にするなど、都市遺産というべきモニュメントがトレンディースポットになっている。上演劇場のスズナリがある下北沢のように。

さて、今作は力のある燐光群の看板俳優たちが遺憾なく実力を発揮し、見応えのある舞台に仕上がっている。2時間の上演時間の間、迫力のある会話のやり取りが続き、舞台から目が離せない。モーゼスの人生とは別に、民主主義と都市計画、貧困と富裕など考えさせられるテーマが散りばめられ、観劇後の一杯の席のネタには事欠かない。観てよかったと思える舞台だった。

力、族

力、族

劇団光合聲

表現者工房(大阪府)

2023/07/15 (土) ~ 2023/07/17 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/07/17 (月)

家族、華族にまつわる苦悩と葛藤を描いた心理劇でした。全体的に暗くて暴力的な場面が多かったので、厳しめの評価です。趣きを少し変えて痛快感などを全面に出すお芝居にしたほうが良かったのでは? が観劇後の印象です。

クレイジー・フォー・ユー【5月18日~21日公演中止】

クレイジー・フォー・ユー【5月18日~21日公演中止】

劇団四季

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2023/04/25 (火) ~ 2023/07/22 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

流石に完成度が高い。これはリピートするべき作品。古典的な物語をまるでパロディのように構築し直したクラシックで現代的なミュージカル。文句なしに面白い。

1930年初演のジョージ&アイラ・ガーシュウィン兄弟のミュージカル作品『ガール・クレイジー』。女癖の悪い主人公を心配した金持ちの父親は、西部の田舎町にある男子専門大学に通わせる。その大学の経営者の孫、郵便局員の娘に恋をする主人公。経営危機で閉校が決まった大学を救う為、ロデオの女王コンテストを企画、州知事も巻き込んでの大盛り上がり。
1992年、この作品を基にリブート、『クレイジー・フォー・ユー』が誕生。大ヒット作となる。設定から何から全て弄ってある。

明るくハッピーなシェイクスピア喜劇を思わせる入り組んだラブコメ。ドリフや志村けんのコントを思わせる連発ギャグ。シーンごとダンスごとに詰め込みまくった細かいネタは何度も観ないと消化し切れない。贅沢なアイディアを惜しげもなく大盤振る舞い。『フル・モンティ』や『フラガール』など、どうしようもない素人労務者が見様見真似で何かにチャレンジしていく物語はいつの時代も人の心を刺激し興奮させる。

主人公のボビー・チャイルド役、萩原隆匡氏はとにかく華がある。見ているだけで楽しい。タップダンスをたっぷり味わえる。
ダンサーに憧れているが母親の跡を継いで銀行家にならなくてはいけない。渋々、西部の峡谷と砂漠の町にある劇場を差し押さえに出発。

ヒロイン、ポリー・ベーカー役・町真理子さんが最高。自分の席からだとトリンドル玲奈や村重杏奈みたいに見えた。ガサツな田舎娘の乱暴な仕草やつっけんどんな態度、足を広げてどっかと椅子に座る男勝りな無作法さ、優雅の欠片もないダンスのステップ。それがまた魅力的で主人公が夢中になる気持ちがよく分かる。心を奪われた主人公が“彼女の為”になりふり構わず頑張ろうと決める。その物語に観客を巧く乗っけてしまえば後はそのまま突っ走るだけ。
閉業状態の劇場は今では町の郵便局になっている。亡き母親がこの劇場でどれ程美しく歌い踊ったことか、父親は何度も何度も遠い目で語る。

主人公の婚約者、赤毛のアイリーン・ロス役・ 岡村美南さん。主人公を追い掛けて遥か西部の田舎町まで。
ブロードウェイの大物プロデューサー、ベラ・ザングラー役・ 荒川務氏。妻と上手く行っておらず、テスのことを口説き続けている。
ザングラーのショーの踊り子、テス役・宮田愛さん。主人公の友人で彼の為に協力を惜しまない優しい人。
他の出演者も一人ひとり魅力的で語り倒したい。

曲もダンスも超一流、一度は必ず観るべき。

ネタバレBOX

誰一人、悪人がいない世界。後半の御都合主義的展開はやり過ぎなのだが、それを良しとさせるだけの作品世界の魅力。踊れない大男を仕方なくコントラバスにあてがうとバッチリ嵌って見事な名演を繰り広げる。町中の工具や農具、ノコギリやトタン屋根、全てがミュージカルのセット、小道具に変わっていく魔法。
終演後、玄人衆が「今日のは凄かったね。」と語り合っていたので、当たり興行だったのだろう。
ストレイト・ライン・クレイジー

ストレイト・ライン・クレイジー

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2023/07/14 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

内容的には燐光群の今までの演目のような社会問題を扱っているイギリスの作家の翻訳劇である。燐光群40周年の記念公演という。もうそんなに年月がたったのかと感慨もある。
いつもの正邪明白、立場明白の戯曲ではなくて、一頃よく上演されていたインフォメーションドラマ、のタッチである。そういえば、坂手の初期の作品は、よく考え抜いたこの手の作品があったな、ト思い出す。「天皇と接吻」「海の沸点」、多作の作者だからすぐには思い出せないが、フレッシュな視点から現実に発言するドラマだった。しかも見ていて面白い。
今回の作品も、演劇激戦区の英米市場の作品だけに、都市開発問題を扱っていてもなかなか手が込んでいる。ニューヨークの都市計画を強引に推し進めた官僚の功罪を問うドラマである。1920年代後半、大恐慌の前、この官僚(大西孝洋)が、利用できる政治家(川中健次郎)や腹心の部下(秘書、技師・((竹山尚史)大健闘)を、自己の構想のママ使い倒して、平民の幸福のために自動車社会をスムースに実現できるよう近代的な都市計画を実現していく。ここまでが前半で、後半はそれから30年(1950年代後半)。官僚は、下町改革に取り組むが、ヴィレッジの多様な住民の反対に遭って挫折し、腹心たちも離れていく。
関東大震災後の後藤新平の改革はどうだったかと問うようなもので、大都市の住民にはどこでも共通する問題をうまくすくい上げている。最後に、ヴィレッジは現在NYで住むには最高級住宅地になっている、というオチがついている。
大都市住民とその環境整備の公と私を巡って、現在も大きな問題を抱えた都市問題を多角的に扱っており、一つ一つの論点を巡っても、限りない議論が生まれる。そこをあまり一方的な視点に落ちず、また、日本ではよくある人情話に落とし込まず、2時間20分、休憩なしで押し切った。多面的な情報を仕組んだ戯曲のうまさが第一の見所である。
燐光群の俳優たちも初期からの人たちも多くこう言うドラマには慣れていて、ソツはない。しかし、いつも感じることだが、役が見物が楽しめるように膨らまない。必要ないと思っているのかも知れないが、秘書の役なんかもっと面白くやれるのに、と思ってしまう。せっかく森尾舞という技術、ガラ抜群の女優を呼んできているのに、これでは勿体ない。


ハナイトナデシコ Vol.13

ハナイトナデシコ Vol.13

ハナイトナデシコ

ギャラリーサイズ(東京都)

2023/07/15 (土) ~ 2023/07/17 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

観てきました。初めての劇団、初めての場所での観劇でして不思議な感じでした。予想通り楽しかったですよ。また機会があれば次の公演も観てみたいですね。

ザ・キャラクタリスティックス/シンダー・オブ・プロメテウス

ザ・キャラクタリスティックス/シンダー・オブ・プロメテウス

お布団

アトリエ春風舎(東京都)

2023/07/18 (火) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#宇都有里紗 #大関愛
#立蔵葉子 #永瀬安美
#新田佑梨 #畠山峻
(敬称略)
初日。
100分とは思えない情報量。
疲れたけれど嫌じゃない。
これは、無責任で、歪んだ、誰もが誰かをコントロールしようとする社会に警鐘を鳴らす作品。
その恐ろしさと愚かさにゾッとする。
"違い”を嫌い差別する悪しき島国根性が染み付いた日本人の、日本というダメな国の未来を案じる。
シンギュラリティを超えた世界にも手前の世界にも思えたそれは、やはり滑稽だった。
人の命を奪わないサイバーテロは痛快なのに、人間の怠惰がゾンビのように溢れている気がしてゾッとした。
声に出さない「バカやろー」について、ずっと考えている。

追記◼️アフタートークで作演出の得地弘基さんが話されたことが合点のいくことばかりで有意義だった。そしてチクッと心が痛み、日本の演劇人の幸せを改めて願った。

スローターハウス

スローターハウス

serial number(風琴工房改め)

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2023/07/15 (土) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/07/19 (水) 14:00

座席1階

実際の事件をモチーフにして人の心の表裏を描き出すというのは、演劇でしかなしえない表現方法なのではないか。神奈川県の障害者施設で起きた大量殺人事件を取り上げた作品はこれまでもあった。だが今作は、殺されたのが一人の障害者でその母親が未成年の容疑者を訪ねていくという設定にして、優生思想に染まった容疑者の胸の内と母親の胸の内が交錯するというすさまじいシチュエーションを現出させた。(現実の大量殺人で容疑者は死刑でこの世におらず、雄弁に語ることはできない。殺人被害者が一人で容疑者が未成年であるというなら、あり得る設定だ)

パンフレットによると、原作の詩森ろばは、この事件の資料を集めておきながら読まなかったという。その理由は「怒りにまかせて正義の物語をペラペラと書くのではないか」ということだった。だが、資料を読み始め、容疑者の尊大さと惨めさのそこかしこに自分がいて、たまらない気持ちになったという。彼女がこう書いているまさにそのことを、客席の一人ひとりが自分の心に痛いほど感じることになる。
「尊大さと惨めさ」。これが重度障害者に対する周囲の人や、全く関心のない人の胸に巣くう隠された感情なのではないか。詩森は、障害者の一番の身近にいる母親ですらこのような感情を持つということを描くことで、日ごろ障害者と全く縁のない生活をしている一人ひとりも同じなんだと迫ってくる。
印象に残るせりふを一つだけ。「障害者カースト」。これは、殺された障害者の母親が、障害者の親による自助グループに参加した際、そこに参加していた親がすべて発達障害を持つ子の親であり、その一人が「知的障害は本当に大変ですね」という趣旨の発言をしたという。その言葉の主に特段の差別感情はなかったと思いたいが、その「ねぎらい」を受け取った方は、自分の子が障害者カーストの最下位に位置することを思い知らされたのだという。

物語ではこれだけでなく、容疑者と母親との会話、そして施設職員の言葉を通してさまざまな投げかけが客席に向けてなされる。静まり返った客席。役者たちを食い入るように見つめる客席。ここ数年の観劇体験でめったにあるものではない。
原嘉孝の感情を抑えた演技は秀逸だった。ジャニーズタレントであるこの人目当てのお客さんもかなりいたと思うが、詩森作品2度目の出演という彼を抜てきした詩森の目は確かだった。障害者の役を演じた新垣恒平もとてもよかった。

この作品はすごい。見ないと損するかも。

ザ・ショルダーパッズ この身ひとつで

ザ・ショルダーパッズ この身ひとつで

劇団鹿殺し

本多劇場(東京都)

2023/07/13 (木) ~ 2023/07/18 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

冒頭で奈月チョビさんが、劇団の始めたばかりの頃の話を聞いて、ショルダーバッッズの意味を知りました。
いやあー、本当に面白い!テンポよく展開する話、役者の肉体が駆け巡る!
演劇って他のメディアに比べて、やっぱり好きだなと実感しました。
これからも駆け抜けてください。
それとチョビさんの歌は演劇界で最高の歌い手さんです!

明けない夜明け

明けない夜明け

演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2023/07/14 (金) ~ 2023/07/20 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/07/18 (火) 19:00

久留米看護師連続保険金殺人事件をモチーフにした舞台。母が父を殺害したという、被害者家族であり加害者の子どもという立場に立つことになった三姉妹の物語。前作に引き続き、この三姉妹が成長した後を描いた。
殺人者の子であり、被害者家族であるという環境の中で、世間とのかかわりを拒むように生きているという姿が描かれる。特に長女は、世の中に対して激しい拒絶感を示し、新たな人生を作って生きようとする三女と衝突する。主人公の次女は、二人の仲立ちをしながら「明日は幸せになる」と呪文のようにつぶやいている。
三姉妹がいた、という設定は事実なのかどうかは分からない。作者の小野健太郎の創作なのだろうとも思う。だが、この舞台の核心である「殺人の被害者家族であり、加害者家族」という人間関係の描き方は、「面白い」と表現するには語弊があるがとても印象的。3姉妹の性格や立ち位置はかなり違っているのだが、やはり世間から抑圧され続けている半面、世間の中でささやかな幸せを感じながら生きたいという願望を、なかなか興味深い演出方法で描いていく。
客席を三面に配置した円形の舞台中央で、開幕前から二女がぼーっとテレビを眺めているという出だしがまず、印象に残る。そして舞台後方のカーテンからの出入りで時系列の物語をうまく出し入れ。円形の周囲をグルグル走らせるという形も一つなのだが、3姉妹の胸の内がにじみ出てくるような演出がなかなかすごい。

メリハリの利いた舞台。次作がどのようなものになるのか、とても楽しみだ。

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