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これが戦争だ

これが戦争だ

劇団俳小

ザ・ポケット(東京都)

2023/07/22 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/07/25 (火) 14:00

見ていて、こちらの胃が痛くなるステージ。仲間内で、恐怖によるストレス溜まりまくりで、誰もが異常な精神状態なって一触即発の状態。いや、小さな即発など日常茶飯事か。戦争ものというと、日本でははるか昔の敗戦が描かれることが多いが、これは21世紀の出来事ということで時間的にものすごく身近に感じられ、それが怖かった。帰宅後、ネットで「カナダ軍兵士をむしばむアフガン従軍/自殺者が62人」という記事を発見した。

犬と独裁者

犬と独裁者

劇団印象-indian elephant-

駅前劇場(東京都)

2023/07/21 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

初めて見る劇団だが、もう20年もやっているという。記念公演だ。主催者の鈴木アツトのカンパニーのようで公演数が少ないから見る機会がなかったのか、目立たないようにやってきたのか。作者にこれだけの力量があるなら、もっと注目されるチャンスはあっただろうにとも思う。
スターリン独裁下のソ連の劇作家・ブルガーコフの話である。鈴木アツトは時代の罠に落ち込んだ芸術家の評伝劇をいくつか書いていて、これもその一作だ。芸術家の伝記というのは数々ある名作を引くまでもなく、演劇向きの材料だ。
ソビエトの社旗主義国家という構想は今も人類の忘れがたい夢の一つで、ソ連の夢の後引きになったウクライナ戦争が泥沼化している現在、時宜を得た良い企画である。
物語は、グルジア出身のスターリンが青年時代には現地語で詩を書いていたことを梃子にしている。あの愛に満ちた詩を愛した青年が、社会主義の理想に触れて、なぜ、世紀の殺戮者になったのか。スターリンは、自分の詩を封印してしまう。
舞台では、頭角を顕しはじめたブルガーノフにスターリンの評伝劇を書くようにとモスクワ芸術座から記念公演のために注文が来る。スターリンの詩人性と、脇目も振らず全体主義国家構想への邁進したスターリンが、劇作家の中では融合していかない。作家自身の身辺の前妻と現在の妻との葛藤、飼い犬と劇作家の関係、モスクワ芸術座の見事なまでの忖度ぶりと変節が、巧みな劇作術の中で展開していく。この実話性は一部は聞いたような記憶もあるが、そこはどうでも良い。今の時代につながる現代の芸術家の当面する現代の病癖をドラマにしている。ほどよい前衛性もあって、忘れ去られている後期ソ連時代に現在の後期アメリカ資本主義が重なってくる。知的な構成で、変なキャンペーン性などまるでないところも見事である。戯曲はうまいものだ。
しかし、この作品を生かすには、表面に立つ、演出・演技が戯曲に遠く遙かに及ばない。それでも、一応満席になっていたのはひとえに戯曲の力である。そのほかの点は一つ一つ悪口を言うのは止めるが、この本を、文学座のアトリエで今、旬の女性演出家の手で見られなかったのは残念というしかない。30歳代の若い作家たちはかつての新劇の運動性とは無縁である。劇団運営も演出も得意ではないだろう。この惨憺たる俳優陣にもどう言えば良いか解らなかったのではないだろうか。戯曲を他者に渡すという共同作業が出来るオープンな場を積極的に作ることがこれからの日本演劇の課題だろう。



これが戦争だ

これが戦争だ

劇団俳小

ザ・ポケット(東京都)

2023/07/22 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

役者さんたちの熱演が素晴らしかったです。
特にターニャ役の蜂谷さんは、女性兵士という日本ではほとんど観れない兵士役で、インパクトがあり、雰囲気も魅力的でした。

[これが青春だ] と言えばわかるが、[これが戦争だ] と言われても、戦争を体験していないのでわからないが、このお芝居を観て、悲惨さがかなり伝わってきた。

個人的には、いつもの[俳小]の物語仕立てがとても好きですが、斬新な舞台で意外性があり、とても良かったです。

猛暑の中、行くのが大変でやっと劇場に辿りつきましたが、迎えてくれたスタッフの方々のご配慮が嬉しかったです。

素晴らしいお芝居で、観て満足でした。

友達

友達

劇団第一主義

布施PEベース(大阪府)

2023/07/26 (水) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

満足度★★★★

友達の定義は人それぞれ異なる
はじめの警察の対応は置いておいて、その後の家主の対応はつけこまれやすい人間の対応そのもの
友達だよねといった不確定なポジションをネタに、退職金前借りまでさせて…
思い込みやはまりこみは危険だと教えている

みんなのえほん

みんなのえほん

9-States

小劇場B1(東京都)

2023/07/26 (水) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

昨年の「彷徨いピエログリフ」では正義とは?を問うていたが、今回は人間の尊厳とは?がテーマ
死期の迫った絵本作家は絵本を書くことを選ぶべきなのか?
それとも命を長らえることを選ぶべきなのか?
医師も延命を考えるものと患者のやりたいことをやらせようとする者が・・・
全体としては暗くなり過ぎずにテーマについて深く考えることができた気がする

ネタバレBOX

4人部屋の病室の他の患者もいろいろと抱えている
医師も延命を考えるものと患者のやりたいことをやらせようとする者の対照的ともいえる二人が登場(最後には真反対ではないと思わせるが)
相変わらず暗転の間ディスプレイで警句的なモノローグや単語が流れる
「必死とは必ず死ぬこと、それをずっと言ってきてる」
「光に群がる虫は自らも輝きたがっている」等々
演技ではタマちゃん役の浅賀誠大が最高!(マツコに似てた)
長距離トラックの運転手してる詩織の母恵役の吉田汐もピタリはまった演技で良かった
主演のいろは役松木わかはも感情表現がうまく、最後はダンスまで披露、昨年より存在感大きかったかな
あかね役の板本こっこは途中の感情の爆発が迫力あった
最後は患者の好きにさせようじゃないかという藪先生いいなぁ
ああいう先生にかかって終わりたい
犬と独裁者

犬と独裁者

劇団印象-indian elephant-

駅前劇場(東京都)

2023/07/21 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

本作で取り上げられるブルガーコフの名前を聞いたとき、この人ってSF作家じゃなかったっけ?という記憶があり、説明文にある評伝本を依頼されるような作家というイメージとうまく結び付かず、なんだかモヤモヤ。かなり前に文庫本で何かを読んだ覚えがあるのだが、ネットで出てくるこの人の文庫本の表紙画像を見てもそれらしいものがない。ならばと部屋を探しまくって、ようやくそれが創元から出た『ロシア・ソビエトSF傑作集』というアンソロジーで、読んだのはそれに収録されていた「運命の卵」だったと分かった。この舞台を観る前につい読んでしまったのだけど、読まずにというか、この人の小説を忘れていた状態で観た方が素直に楽しめたかも。

スタンダップコメディ・サマーフェス2023

スタンダップコメディ・サマーフェス2023

合同会社 清水宏

小劇場 楽園(東京都)

2023/07/18 (火) ~ 2023/07/24 (月)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★

7/21(金)収録分、カルトナイトを視聴。

犬と独裁者

犬と独裁者

劇団印象-indian elephant-

駅前劇場(東京都)

2023/07/21 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

作家を通した壮大なストーリー
見応えがありました

力、族

力、族

劇団光合聲

表現者工房(大阪府)

2023/07/15 (土) ~ 2023/07/17 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

全体的に重たいお芝居
最初からみんなが殺されてしまう
なぜそうなったのか?
それを巻き戻してプロセスを
説明していく展開のお芝居
んーー思ったままの内容に少し肩透かし
また驚きの展開が欲しかったなぁと思う作品
貴族の演技は良かった!

犬と独裁者

犬と独裁者

劇団印象-indian elephant-

駅前劇場(東京都)

2023/07/21 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ブルガーコフなんて、マイナーな作家をよく引っ張り出してきたものだと思っていた。見てみると、なかなかスリリングで深い芝居で、シリーズ第1弾のケストナー以来の秀作である。受付で、戯曲を本にして売っていたのも、この劇団では初めてで驚いた。作者の確実なステップアップを喜びたい。

「巨匠とマルガリータ」は河出世界文学全集で読んでいたので、ブルガーコフとスターリンの関係は知っていた。しかし、スターリンの評伝劇をモスクワ芸術座から頼まれて書いたとは知らなかった(同書解説にあるが、読み飛ばした)。当局は、どういうつもりで、反体制作家ブルガーコフを選んだのか。最初から上演させないつもりで、ぬか喜びびさせるために依頼したのだろうか。スターリンは知らなかったわけはない。

よく芝居で寝てしまう連れは、今回は舞台に見入りっぱなし。「一つ一つの台詞がよかった。一言も聞き漏らすまいと、2時間10分集中して、全然眠くならなかった」と興奮気味だった。

ネタバレBOX

最初、虐げられたグルシアの犬として出てきた男ソソが、実は若き日のスターリンという仕掛けは見事だった。その男が詩人であり、プーシキンに学び、その分際にレーニンが目をつける……。歴史の皮肉である。

ブルガーコフは自分の評伝劇「バトゥーム」の穏便さに飽き足らず、ソソに「血が足りない」と指摘されて戦慄する。そんなものは書きたくないし、書けば上演の芽も消える。しかし、スターリンが血と暴力へと踏み込む決定的瞬間へと、一歩一歩近づいていく。コーカサスの市場で現金輸送馬車を若いソソの作戦で、女たちが襲う。狭い舞台でのリアルと象徴が混在する場面だが非常にスリリングで、この芝居の白眉だった。

ブルガーコフの周囲が、若い演出家も、妻も、当局の監視役だったというのも暗然とさせられる。
椿姫

椿姫

東京二期会

東京文化会館 大ホール(東京都)

2023/07/13 (木) ~ 2023/07/17 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

16日を拝見。さすがの名曲である。大満足。ヴィオレッタの谷原めぐみは初めて見たが、スター歌手の派手さはないが、きっちりした歌唱で繊細な心情を切々と聞かせた。

今回、1幕は非常にコンパクトに感じた。乾杯の歌の宴会があり、ヴィオレッタの愛の目覚めと享楽生活への傾斜の二部構成のアリアでおわる。このアリアだが、後半の軽やかな疾走感が際立っていい曲だが、この部分は享楽の喜びをうたっており、作品の主題である愛の献身とは反する。主題と反するところで、こんなにいい曲を書いていることを発見し、意外な感がした(吉田秀和の文に示唆を受けた)。この後半ではヴィオレッタの愛の主題は、アルフレードの舞台袖からの歌で対比される構造になっている。

2幕のヴィオレッタと父ジェルモンの二重唱の切々たる心理劇は絶品。「プロヴァンスの海と陸」は有名だが、息子とやり取りする後半に会ったのをうっかりしていた。すっかり前半と思っていたが。後半より、前半の二重唱の方がいい。

3幕が意外と盛り上がらない。結果がわかっているからではあるが、1幕の愛と享楽、2幕1場の愛人と父の衝突という葛藤構造からすると、予定調和の救済が単調だからだろう。これに対し、プッチーニ「ラ・ボエーム」のミミの死の場面は、二人の出会いと愛を振り返る(曲もその時の旋律が回帰する)ことで、物語の総括になっている。

夏の匂いは嫌いじゃない

夏の匂いは嫌いじゃない

WAO!エンターテイメント

アトリエアーサム(大阪府)

2023/07/24 (月) ~ 2023/08/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

内容を理解していたので、二回目として(役者が違っていた?)
前回よりブラッシュアップされて、とても分かりやすく、何度か涙する場面も
アヤポリの歌も上手すぎで、更に涙💧に追い討ち
内容はあるあるだけど、とても良かった

これが戦争だ

これが戦争だ

劇団俳小

ザ・ポケット(東京都)

2023/07/22 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

アフガン戦争から帰国したカナダの兵士たちがインタビューに答える、
答えながらそれぞれの回想を再現ドラマのように見せる、という構成。
役者陣の熱演が素晴らしい。
声も台詞も力強く明瞭で、戦地の緊張感がビリビリ伝わって来る。
だがインタビュアーが知りたがっている「合同作戦」は
イマイチぼやけたような気がする。

ネタバレBOX

ほとんどセットらしい物もなく、舞台中央奥に出ハケの口を残して壁があるだけ。
ここが時にキャンプとなり、戦いの最前線となり、帰国したカナダの現在地となる。

登場人物4人が帰国後インタビューを受けている。
インタビュアーは執拗に「合同作戦」のことを聞いてくるが、
核心を突く返答はなかなか出てこない。

質問の合間にはつい作戦前夜のことを回想してしまう。
皆普通の精神状態ではなかった。
少し前に罪もない5歳の子どもを射殺してしまった伍長のターニャは、
それ以来ずっと不安定なままだ。
自爆テロなのか、重傷の子どもを助けたい民間人なのか判別が難しい場面で
どうしてもその子どもを助けたいと、軍のヘリを要請する必死の姿が強烈な印象を残す。
結果的にヘリはこの民間人救助に向かったため、
作戦の現場で重傷を負ったジョニーの救助は遅れ、彼は重い障害を負うことになる。
このターニャ役の蜂谷眞未さんが美しくて
こんな人が部隊に居たらトラブルは目に見えてるだろう、と思わせる。

スティーブン軍曹の帰りを待っている(はずの)妻は浮気しているが
だからと言ってターニャに手を出す理由にはならないだろう。
新兵のジョニーはまだ二十歳、ターニャにぞっこんで追い回しているが
軍隊ってみんなこんなに性行為で心のバランスをとるものなのか、私にはわからない。
この”誰かをぶん殴る代わりにやっている”ような性行為が実に虚しく映る。

終盤、ようやく「合同作戦」がタリバンの塹壕を水攻めにする作戦であり、
現地部隊からの提案であったこと、部下の負傷に気を取られて
その残忍さを予想できず、反対しなかったこと、
その凄惨な結果を知って悔やんでいることが軍曹の口から語られる。

最後に、その悲惨さを語るのは軍医のクリスだった。
彼は作戦の「後片づけ」を命ぜられて塹壕の遺体処理に当たる。
気温50度の中、腐敗の進んだ遺体の山と格闘すると、
下の方に小さな体がいくつもあった、と語る。
聞いていたほど、彼らは銃を持っていなかった、とも。
そして客席に向かって淡々と「これが戦争だ」と告げる。

「戦争」を兵士目線から語るところは素晴らしい。
政治や本部の連中から離れた、地べたに近いところから発せられた声がする。
ただインタビュアーの知りたいことは何だったのか、
私は「水攻め」のことだと解釈したが、よくわからなかった。

”平凡で平穏であるはずの日常”が否定されることから戦争は始まる。
助けたり見殺しにしたり、間違って死なせたり、愛することを間違ったり、
他人を貶めたり、それで自分が浮き上がろうとしたり・・・。
人が日常を喪う。同時に「戦争の日常」が始まる。
戦地から帰って来てからも、もう以前の日常は戻らない。
たぶんあまりにも多くの人間の日常を奪ったことから
もはや逃げられないと知ったから。
この作品は、そのことを改めて心に刻むよいタイミングだと思った。



ジャングルジャングル8

ジャングルジャングル8

アイビス・プラネット

配信スタジオ(東京都)

2023/07/24 (月) ~ 2023/07/26 (水)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

25日回を鑑賞 安定感のある試合運びでとりあえずやりきるから一歩進んでクオリティーアップのために時間を割く余裕もあり単純な面白さの面ではレベルが高く感じた。コメント欄も治安が良くとても良い

ネタバレBOX

反面追い詰められたところから演技力でねじ伏せてくるパワーは低くなった結果ヒリヒリする感覚は減ってちょっとその辺は物足りなくもある(わがままな客)
第77回「a・la・ALA・Live」

第77回「a・la・ALA・Live」

a・la・ALA・Live

小劇場メルシアーク神楽坂(東京都)

2023/07/22 (土) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

今回の会場はアングラ度の高いコンパクトな地下スペースで、内容もマッチしていましたね。気になっていた初出のヴァイオリンの小池彩夏さんはアイリッシュハープ弾き語りの村上栄子さんとのデュオ。なかなかにいい雰囲気でした。

灰色の街

灰色の街

Project JUVENILE

中板橋 新生館スタジオ(東京都)

2023/07/20 (木) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

かなり無理めのありえねー設定に唖然としますが、強引に引き込まれますね。なかなかに楽しめました。

犬と独裁者

犬と独裁者

劇団印象-indian elephant-

駅前劇場(東京都)

2023/07/21 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/07/25 (火) 14:00

座席1階

医師から劇作家に転身したミハイル・ブルガーコフの評伝劇。スターリンの評伝劇を書くように頼まれてからの人生を描いた。力作ではある。だが、やや難解でもあった。

何せ、自分に反対するものはすべて粛正してしまう独裁者だ。劇中ではスターリン自身は出てこないが、当時の息苦しさは十分に伝わってくる。表現の自由、言論の自由がない世の中というのは、芸術があったとしてもちっとも楽しくない生活であるというのはよく分かる。
そんな中で、革命家である前は詩人であったというスターリンの詩を、世の中を明るく照らす力としてあでやかな花束に託して舞台で表現してみせた。役者たちによるこの表現力が卓越している。

この劇作家の思いを反転させるような役割を果たす「犬」の存在は面白い。苦悩や喜びなど胸の内を叫ぶように表現しながら舞台を引っ張っていく。ただ、せりふにのめり込んでいくと頭の回転が追いつかないようにも感じた。百年近く前のソ連という舞台だからスッと頭に入ってこなかったのか。

これが戦争だ

これが戦争だ

劇団俳小

ザ・ポケット(東京都)

2023/07/22 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 今作はアフガニスタンに派遣されたカナダ兵士の戦場に於ける行為に対するジャーナリストの質問に対して返答する各兵士の返答内容を再現する形で話が展開する。舞台美術は極めてシンプルで板中央に出捌けにも用いる空間を開け、その両側に大きな衝立を1つづつ置いた抽象的で無駄の無い内容。作品内容に集中させる為に最も効果的な舞台美術となっている。また、出演俳優4名はそれぞれの役を生きるべく奮闘していることが伝わってくる演技で好感を持った。(追記2023.7.26、それにしても、今作のような作品が書かれ、上演されるカナダという国の文化レベル、社会の懐の深さ、自由度には称賛すべきものがあるように思われる。自分の直接の友人、知人を含めたカナダ国籍者との付き合いを通じても良く感じることではあるのだが)
 一応下らない誤解を防ぐ為に書いておくが、パシュトゥーンワーリーなどに触れたからといって自分がターリバーンの女性政策に賛意を表明している訳ではない。ただ、対話する他に合理的な解決法は無いと考えるから、話の持っていきよう迄考えて掛からないといけないのではないか? ということである。

ネタバレBOX

 登場人物は4名、唯一の女性兵士・ターニャ伍長、責任感が強く部下思いの軍曹・スティーブンは故国に妻を持つが妻は浮気中、自身は看護婦ともターニャとも肉体関係を持った。一方、現地の下士官らしく独学でパシュトゥーン語を勉強してもいる。軍医・クリス。彼は通常の診察以外に兵士たちの心理的ケアも担当しているが、軍というものが戦闘を基本に構築されている組織である以上これは自然な分担ということになろう。当然、総てが剥き出しになる戦場体験の中で性の問題は極めて執拗で深刻な問題であるが、男性中心の軍隊で彼もホモセクシュアルである、脚本家が彼のキャラをそのように設定していることでLGBTQの問題も可視化されていることになる。そして新兵・ジョニー20歳はターニャに夢中の4名。証言される事象が起こった時期は9.11以降のターリバーン勢力排除の時期を経て再び西側に支えられて漸く成立している傀儡政権に反発したターリバーン復活以降のアフガニスタンの前線、パンジェイ。西側バックアップでかろうじて成立している傀儡政権の国家治安部門と国際治安支援部隊(IFSA)が共闘する直前から共闘し始めた頃の前線。カナダ兵は着任初日に兵士1名が死亡する攻撃を受けた為、この任地を亡くなった兵士の名で呼ぶようになっていた。各証人が各々の記憶を頼りに往時の自らの体験を、記憶を元に再現する内容が戯曲化されているが、アタックを掛ける前日の模様を各々が語る共有シーンもあるので、その証言者毎に若干の違いがある点などを観客自身はどう解釈するか? も問われている。(例えばヘルメットを着けている・いないや、ほんの僅かな動作・所作の差などで各人の記憶の相違等も表現されていると取るか、或いはそういった小道具を袖から手渡すだけの裏方の手配が時間やスタッフ人数の関係でできなかったと取るかで観客の読みの深さそのものが観劇後反復する思考の中で試される。この演出がグーと筆者は判断した)つまり前者の場合、命の懸かる前線で兵士、軍医を含めて個々の人間が味わっている部隊のミッションでは必ず複数で対応している最中にとてつもなく孤独・孤立感を味わっている兵士たち個々の人間という生き物の深さも描かれていると見る観客が出てくる点が良かろうと自分は思うのである。
 物語に出てくる基本的なシーンは、ジョニーとターニャの淡い恋のシーン(ジョニーはマジだが、ターニャは距離を置いている)、ターニャの証言の中に彼女がもう1人と共に歩哨に立っていた時、アフガニスタンの民間人と思われる大人2人が一人の腹を裂かれ血みどろの子供を抱きかかえて陣地に近づいてきた話がある。自爆とは考え難いが可能性零とは判断しかねぬ2人、制止する為に英語で呼び掛けるが彼らには言葉が通じない、そのまま進んでくる。あわや彼らを殺害しそうな時、スコープで詳細を観察していた歩哨の相棒がスコープに見える模様を逐一ターニャに伝えた。以前、5歳の女児を心ならずも射殺してしまったことを気にしているターニャは助けを求めてやってきたと合点し軍の携帯を用い緊急に救援ヘリを要請した。然し答えはノー、というよりヘリは軍負傷者の為に用意されていると電話を切られてしまった。話の続きは、ターニャが相棒の制止も聞かずもう1度、ヘリ派
遣を要請し2度目は認められたこと。その直後、ジョニー達が塹壕の中で戦っている最中に少年兵がスーサイドボンビングを決行、結果的には死ぬことになった家族思いで26歳の兵士が瀕死の重傷を負い、その救援を頼んだ軍曹の緊急連絡にも拘わらずヘリ到着に1時間も掛かったこと、それ故、緊急オペも死んだ兵士は受けられなかったことなどが語られるが、ジョニーもこの時重症を負い障碍者となった。4人の証言に共通していたのが先に述べた、明日は敵との初の戦い前夜のことであった。
 ところでターリバーン(*アラビア語は男性形、女性形があるので女性形は別な表記発音になる)という呼称の意味をどれだけの日本人が理解しているだろう? 今作を少しは現実的に解釈する為にこれは極めて重大な問題である。現在ターリバーンが復活を遂げていることにも今作を理解する為にも大きな関わりがあるからである。如何に諸外国が様々に圧力を掛けようが、ある国や大きな地域で実権を獲得し、握り続ける為には権力者は住民の支持を不可欠の要素とする。少し話が逸れた。ターリバーンとはアラビア語で学生を意味するターリブの複数形である。今回のケースでは「神学生」を意味するから複数形では「神学生達」とでも訳したら良いのかも知れぬ。これはフスハー(正則アラビア語で、所謂アーンミーヤではない)表現である。
 歴史の現実に即し密着して言えば単数形のターリブはソ連の軍事侵攻を受けたアフガニスタンで多くの子供が戦災孤児となった為、モスクが施設内で子供たちを育て教育を施した。モスク内の学校であるからクルアーンは必須である。その結果孤児たちの頼るべき精神的支柱が宗教的色彩を帯びるに至った。同じ頃、世界の政治はムスリムに対し偏見を持って対した。宗教的な思考を中心にアイデンティファイした元戦災孤児の中にムスリムフォビアに反発し過激な思想が目覚めるのは必然であったと言えよう。然も傀儡政権の中で大きな力を持った北部同盟のリーダーたちの殆どはマスードと僅かな例外を除き殆どが無頼の輩であり傀儡政権成立後も腐敗の温床を為していたから、都市部を除けば民衆から完全に離反していた。繰り返しになる部分があるが、もう一度振り返ってみよう。何故ターリバーンが生まれたのかだ。ソ連によるアフガニスタン侵攻によって多くの戦災孤児が生まれそうした戦災孤児の多くがムスリムの教会とも言えるモスクに引き取られ、付属の学校で教育を受け成長したからである。そういう環境の中で育った彼らの多くが、倫理的に可成り厳格でストイックな宗教観を持つに至ったことは自然であろう。そういった事情も価値観も分からず、唯自分たちの価値観だけを中心に判断する米英を中心とする西側諸国の根本的な過ちは、余りにも自己肯定的で他の価値観や論理ベースを認めようとしない傲慢で排他的な価値観を政治利用しつつ、実際には自分たちより軍事的に劣ると見做した他国や他政権を軍産学複合体の儲けと政治力で自由に操ろうとする勢力によって、西側諸国の国民の命をも費消しつつ実行されているのが現実の戦争の姿だということではないのか? 
 “戦争の初め、最初に殺されるのが真実である”との格言が正しいのはまさしくこの点を見事に隠蔽してしまうことを指摘しているからである。今作でもその辺りのことは、各兵士の証言の至るところに見て取れる。兵士たちは「アフガニスタン国家治安部隊の指揮官たちですらジュネーブ条約の内容を知らない」と非難するがそう述べる彼ら自身が前線でアフガニスタン民間人に、自分たちの前線基地に来ないよう制止する最も簡単な現地語や共通語すら知らない、教えられていないことに抗議しないどころか、抗議しようとの発想すら浮かんでいないように思われるが、もし“ストップ、引き返せ、来るな、それ以上近づけば殺す”などが言えるだけでターニャが僅か5歳の民間人少女を撃ち殺さずを得なくなり実際に殺害してしまったことで強く深く自らの精神を病んでしまうようなことには至らなかった可能性も高かろう、ということである。国際治安部隊を派遣していた主たる国々は世界でもトップクラスの経済力を誇る先進国でもあった、その豊かな先進国国民である兵士たちが国内で経済的弱者であるとしてもその程度の要求すらできないほど知的訓練が出来ていないということであれば、これは国家として非常に大きな問題でもあるハズ。遥かに貧しいアフガニスタンの人々がジュネーブ条約の諸協定を知らないことを非難する前に自国政府を批判するのが先だと自分は考える。何となれば、金銭流通が世界を席巻している以上、金銭的貧困は即ち命の値段がその分安くなるということである。貧しければそれだけで死は日常となるのである。この単純極まる事実の重みを我らは先ず理解しておかねばならぬ。また先進国の軍事的指導者たちはターリバーンの中核を担うパシュトゥーンの部族法であるパシュトゥーンワーリーを理解する程度のことは人権をことあげする以上最低限知っておかねばなるまい。そのような努力や外交努力も無く戦争を始め、最前線へ派遣する兵士への十分な教育も無しに平和だの正義だのと言えるのか? そのことを今作は訴えている。もう少し言っておくなら、カナダ部隊が死者1、重傷者1を出した戦闘後もターリバーンは、正確な銃撃と武器の扱いでカナダ軍を苦しめたが攻撃したターリバーンを1時間ほどで一掃したのはアフガニスタン国家治安部門であり、ターリバーンが利用していた地下通路内に水を導き入れ全員(確か167名、多くの少年兵を含む)を溺死させた。敵兵と雖も年輪もゆかぬ少年が襤褸の如く殺された事実、マスコミが注目しないハズはない。こういったことも含めて“これが戦争だ”なのである。
ザ・ショルダーパッズ この身ひとつで

ザ・ショルダーパッズ この身ひとつで

劇団鹿殺し

本多劇場(東京都)

2023/07/13 (木) ~ 2023/07/18 (火)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

「銀河鉄道の夜」前回見た時はもっとしっとりとしたお話だった気がしたのですが、「少年探偵団」との組み合わせだったから?いや、やっぱり変わったんですよね?ちゃんと覚えていないのが申し訳ないですが、面白かったです。
見にいく時間がなかったので、配信のアーカイブで見ていますが、少し無理をしてでも劇場で見たかったです。

これが戦争だ

これが戦争だ

劇団俳小

ザ・ポケット(東京都)

2023/07/22 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

良い舞台だったと思います。

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