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Wの非劇

Wの非劇

劇団チャリT企画

駅前劇場(東京都)

2023/05/17 (水) ~ 2023/05/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/05/19 (金) 15:00

座席1階

今作はチャリT企画の作品でも間違いなくトップレベルに入る面白さだ。茶化した時事ネタが向こうから歩み寄ってきたというか、時代が味方したというか、実にタイムリー。舞台となる「芸能事務所」(どこかはお分かりですね)の性暴力被害だけでなく、チャットGPTとか今話題になっている時事ネタを徹底的に小道具化。笑わずにはいられない。笑いすぎて涙が出てきた。

開幕前に会場に流れる音楽は、よく聞くと薬師丸ひろ子のオンパレードだ。タイトルが「Wの悲劇」だから? ん?よく見ると「悲」劇ではなく「非」劇だ。その理由は舞台上で明かされるのだが、薬師丸ひろ子とタイトルの関係も劇中で種明かしされる。ここが最大の爆笑ポイントか。昭和に歌謡曲を聴いたり映画を見た人たちのツボを直撃する。
しかし、やはり何と言ってもラストシーンか。この替え歌は秀逸だ。秀逸すぎてもうどうしようもない。チャリTの本領発揮とも言えるこのステージを、見逃してはならない。これだけ時事ネタを笑い飛ばしてこのチケット代は安い!

被害者か加害者か。世の中の事件は、見方によって180度転換することがあるのだが、一面的な思考を警告している舞台でもある。ついでにいうと、ダンスも切れがあってよかった。
ほんと、見ないと損するぞ。

アクターズハイ

アクターズハイ

LUCKUP

劇場MOMO(東京都)

2023/05/10 (水) ~ 2023/05/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/05/11 (木) 19:00

座席1階D列

演者の皆さんの一生懸命さが伝わってきました。
演技もそうですが皆さん声もとても良い!

「なんもできない」「チキン南蛮の夜」

「なんもできない」「チキン南蛮の夜」

くによし組

OFF OFFシアター(東京都)

2023/05/16 (火) ~ 2023/05/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/05/19 (金) 14:00

「なんもできない」85分。休憩なし。

「4…」

「4…」

四分乃参企画

JOY JOY THEATRE(東京都)

2023/05/18 (木) ~ 2023/05/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 原作はつかこうへい、今作の脚本・演出は劇団四分ノ三の清水みき枝さん。部長刑事役に鈴木克彦氏、婦人警官役に谷菜々恵さん、速水刑事役に山城直人氏そして容疑者・大山役に斉名高志氏の4名。ご存知の方もいらっしゃるであろうが社会人劇団ThreeQuarterは2024年12月を以て解散が決まっている。今回の公演はカウントダウン公演の4。

ネタバレBOX

スリクオの後継組織となるのは四分乃参企画、本拠地は長野県の小諸に移るが演劇活動は続ける。
 げに儚きは、何ら命の痕跡すら残さず移ろい流れ、常住するものなど何一つ無く変わり果てその痕跡すら残さず流れ去る、我ら生きとし生けるもの総てがこの条理から逃れること能わぬ。何より其の理を知りその意味する所を問わざるを得ぬ、ヒトという我らの存在と思惟。唯受け身でいる限りその耐え難い重圧に圧し潰されそうになる我らヒトに許された数少ない救いが芸術である。
 言うまでも無くつかこうへいの作品は舞台化することはできるが、成功させることは極めて難しい作品群である。つか存命中に残されたフィルム等を観ると、台詞は機関銃の弾のような勢いで発出され、全体に漲るテンションの高さとエネルギーの発する熱量は半端なものではないのだ。当時、リアルタイムでつか作品を観ていた観客たちが熱狂したのも頷ける。
 今回、清水さんの台本では、劇団員の加齢やCovid-19に対する政治の理科学的音痴というよりハッキリ無定見・無能が余すところなく失策に繋がり、矛盾だらけの政策に反映してパンデミックそのものの脅威をより増幅させ、人々を精神的・社会的に疲弊させたこともありつか作品の本質である被差別者の生きる状況そのものへの言及・表現と登場する4名個々の人物の持つ、被差別者が差別される自分を抱えながら人間として生きることを選んだ時のダンディズムが見事に対峙されることで作品に強い訴求力と深みを齎した。前半は、平凡な作りに見えるが、この陳腐に近いような定型表現が中・後半に際立って生きてくる。観客の生活者としての凡庸さに襲い掛かった、パンデミックと社会的不合理が負わせた深い不条理感に見事に呼応するような形を成したと言えよう。社会人劇団であるからこそ、解決不能な不条理に対する防波堤としての芸術の姿を描いてみせたと言えるのではないか。
「なんもできない」「チキン南蛮の夜」

「なんもできない」「チキン南蛮の夜」

くによし組

OFF OFFシアター(東京都)

2023/05/16 (火) ~ 2023/05/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/05/18 (木) 19:30

『なんもできない』を観た。すごく深く重い内容をポップに演じる。観るべし!観るべし!観るべし!74分。
 何かを掘ってる男たちが抱える様々な問題が徐々に明らかになって驚く作品だった。明確には言わずにセリフから背景を察することができる脚本が見事だ。社会問題への関心があるのかとも思わせ、以前観た『人人』とも通じる所があるように思った。私が知る限りでは初の、男優だけの芝居というのも珍しいが、角のある人間、という、人間ではないモノが出てくる当たりは、いつものくによし組。

Wの非劇

Wの非劇

劇団チャリT企画

駅前劇場(東京都)

2023/05/17 (水) ~ 2023/05/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/05/17 (水) 19:30

座席1階B列8番

まさに痛快エンターテインメント。

日本が抱えるタイムリーな社会問題を忖度無しでテンポよく描いており、「ふざけた社会派」を標榜する劇団チャリT企画の面目躍如のお芝居です。

皆さん是非劇場に足を運びましょう。

ネタバレBOX

日本の某大手芸能プロダクションの世界的な大スキャンダルに対して臆することなく果敢に挑んでいますよ。
空に菜の花、地に鉞

空に菜の花、地に鉞

渡辺源四郎商店

ザ・スズナリ(東京都)

2023/05/02 (火) ~ 2023/05/05 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

工藤良平を久々に拝めた。彼の「身体」をフル活用。畑澤氏が重いテーマを軽々と扱う「遊び」の勝った舞台で、音喜多咲子、山上由美子ら常連に新顔の頑張ってる俳優も多数(人材には苦労しない?)。
「北のあの方」の命を受け、青森の核再処理施設に潜入した青年の前に、このお方が現われる。「わが国の科学の粋を結集した」脳内図像伝送技術?によって工藤良平演じる北の方は頻出する。核処理施設の安全をPRする展示館のマスコットガールに恋をした青年。そこにも現われ「惚れたな」と突っ込むお方。
核物質が集められ、頭上をミサイルが飛び、三沢基地も抱える当地からの舞台は恋と使命に引き裂かれる青年の物語を縦軸に、どこまでも軽妙に進む。「翔べ、原子力ロボむつ」を思い出す。

人魂を届けに

人魂を届けに

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2023/05/16 (火) ~ 2023/06/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

奇想天外なストーリーで観る者を驚かせ引き込んでしまう劇団だが、今回は、奇想天外というよりは内面的・象徴的で静かな雰囲気が素晴らしい。ただし、笑いをとってくるのはいつもと変わりない。篠井さんの抑制のきいた演技も印象的。

エンジェルス・イン・アメリカ【兵庫公演中止】

エンジェルス・イン・アメリカ【兵庫公演中止】

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2023/04/18 (火) ~ 2023/05/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

前半に第一部、第二部を観た。コンディションに恵まれなかった第一部はもう一度観たいな。
以前読んだ戯曲に関する本に、「叙事詩劇」の優れた作品と紹介されていた。題名は覚えておらず、作者名を見てハッと思い出し、レビューにも背中を押され観劇。上記の本を後で読み返して見ると、さほど字数は割かれず、書いてある事は作品を観た後ではピンと来なかった(戯曲がどう優れているかの説明が晦渋)。
しかし一部、二部それぞれ3時間を超えるこの大作が、20世紀後半に書かれた代表的な作品と紹介されていても何ら異議はない。
「死に至る病」であるエイズを扱った作品と言えば「RENT」がよぎったが、この戯曲で扱われる出来事や事実、状況は全て俯瞰され、対象化され、人生や世界を構成する一要素に過ぎないように見えて来る。登場する天使や天界の博士たち、自分たちの先祖に当る人物らが織りなす不可思議の絵は、苦悩する登場人物の内的世界を象徴するかに見え、同時に世界そのものの視野に導く。詩的な台詞がこの構図にずっしりとした中身を与える。(あんこたっぷりな鯛焼き、でも甘さ控えめサッパリで重くない。)
休憩二回で殆ど疲れさせない面白さ。作品の魅力などうまく説明できない。トニー賞とピューリッツァ賞を獲った作品なだけはある、と書いて済ませるが早いかも知れぬ。

「ダイハツ アレグリア-新たなる光-」日本公演

「ダイハツ アレグリア-新たなる光-」日本公演

CIRQUE DU SOLEIL

お台場ビッグトップ(東京都)

2023/02/08 (水) ~ 2023/06/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

アレグリア、寒かったです!!前回行った時(3月)はまだこちらも冬の装いだったのでそんなに気にならなかったのですが、今回はもう夏の陽気。一応用心して長袖Tシャツに薄手の上着、冬のストールまで持っていったのですが、それでも寒くて思わずスタッフさんになんとかなりませんかと訴えたところ「演者さんが汗で滑らないように気温を低くしていますので気温は上げることはできません」とのこと。仕方ないかと思いましたが、第2幕が始まると、本当に仕方ないのねーと言う気分になりました。「エアリアル・ストラップ」持ち手のついたロープ1本で男女が空中を舞い、時には自分のロープを離して相手と手を繋ぐ。その手ひとつで宙に浮くのですから万が一にも滑ったりしてはいけないのです。2人の繋ぐ手に全てがかかっている、その信頼に胸が熱くなる私でした(でも寒いの・笑)
コロナ規制が緩和されたからでしょうか。前回とは演出が変わっていて、演者が客席通路から登場というシーンもありました。
いつもは一人で行っていましたが、次回は妹と行くのでまた違った見方ができるかと楽しみです。暖かい服持ってくるように言わなければです。

金閣炎上

金閣炎上

劇団青年座

紀伊國屋ホール(東京都)

2023/05/12 (金) ~ 2023/05/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

期待が大きすぎたのか、私には物語が難解でした。良さが全く分かりませんでした。 全ての俳優の演技が素晴らしかっただけに残念。

舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド

舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド

Bunkamura

THEATER MILANO-Za(東京都)

2023/05/06 (土) ~ 2023/05/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

せっかくの大劇場のこけら落としに、こんなことは言いたくないが、これは考えすぎである。
マンガに、テレビに、劇場映画にとさまざまなクリエーターの手で育てられてきたエヴァンゲリオンだが、芯となるものは、単純なファンタジーである。劇場お向かいの映画館の上に君臨するゴジラと同じで、難しく考えすぎると失敗する。
ゴジラもかなり日本的キャラクターだが、ウルトラマンに始まる巨大戦体人間と、子供を絡ませたヒーローアクションものも、我が国で独自に発展したジャンルで、海を渡ると理解されにくい。子供だけが操れる科学の粋を尽くした人間型兵器、なんてファンタジーに決まっている、というのが日本なら、そんなナンセンスな、と言う常識派が海外である。当然その後のドラマの組み方が違ってくる。
こけら落としというので呼ばれてきた著名な振付師であるジェルカウイも大いに悩んだに違いない。それは、構成台本とか上演脚本とか原作とか、さまざまな名称でクレジットに並べられている日本側の台本関係者の多さからも察しられる。結局舞台は誰かが統一しなければ出来ないから、最もギャラの多い(推察だが)ジェルカウイが八方、取り入れられるものは取り入れて、自分で自信のあるダンスを軸にしてまとめてしまった、のがこの舞台である。95分の一幕と15分の休憩の後2幕50分、
ストーリーについては、舞台独自のものと断ってあるし、タイトルにもビヨンドとつけて、今までのエヴァンゲリオンものとは別物と強調しているが、それが、理に落ちて面白くもない。災害をもたらし、戦う相手の「使徒」が自然からの警告、だとか、ラストに舞台から木が育ってくるとか、もう飽きられているジブリ風のテーマの置き方が陳腐としか言いようがない。それでも通用する場所もあるだろうが、ここは新宿ど真ん中の最新鋭の劇場のこけら落としである。この良い子チャンぶりでは意気が上がらない。今までのエヴァンゲリオンには最新の兵器戦争もあるが、同時に、おかまいなしに父子関係に溺れるとか、同性に興味を持つ14歳の少年たちの生態を組み込むとか、傷ついた少女が忘れられないとか、子供がらみの(親になっても忘れられない経験にもとづく)経験がドラマに仕込んであって、ほとんどの作品がそこを中心に展開してきた。
従って、エヴァンゲリオンそのものの周囲の状況は行き当たりばったり(でもないだろうが)で、さまざまに展開されたエヴァンゲリオンの解釈本というのは三十種類もでているそうだ。
今回の舞台もその解釈のエピソードの一つと思えばいいのだろうが、それにしては得るところが少ない。
劇場は客席は4階までもあるが見た1階席は見やすく、音響も良い。時代を映して、映像処理も多彩である(しかし、劇場の映像マッピングはどうやっても映画にはかなわない。映画はドラマも映像に取り込めるからである。舞台機構も良さそうだが、今回はフルに活用、というわけでもなさそうだった。(むしろ昔からある、ハンギング(吊り)、舞台のスライディング、多様な幕などを使っている。圧倒するような装置はなく、それがこの作品のスケール感を乏しいものにしている。
良いところは、さすが一流の振付師と言うだけあってダンスをたてたシーンの演出は見事である。ことに、意味がよくわからないが、ハンギングで水中であるかのように見せる踊りは見事であった。
幕が開いてからほぼ20日、一階で八割ほどの入りは寂しいが、これに懲りず新しい劇場にふさわしい快作を観客は期待している。





人魂を届けに

人魂を届けに

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2023/05/16 (火) ~ 2023/06/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ネタバレ

ネタバレBOX

イキウメ『人魂を届けに』を観劇。

あらすじ:
絞首刑となった政治犯。首を吊るされた直後、臓器の様な謎の物体が身体の中から落ちてくる。そこから囁くような声が夜な夜なしてくるので、偉い人は捨ててこいと言う。
刑務官・八雲は物体を持って深い森に住む母親に届けにいくが、そこは傷ついた者たちの集まる場所でもあったのだ…。

感想:
今作はイキウメらしからぬ展開であった。何かしらの仮説を立てて、まるで実在するかの様な物語を作り出し、騙されてしまう面白さがあるのがイキウメだが、今作は一気に作風を変えてきた。だがよくよく考えてみると屍人の臓器が人魂となって蘇ってくるという話しは現実味ではないにしても、ありえなくもないな?と勘繰ってしまうほどだ。
だが政治犯の人魂に込められた意味は何なのだろうか?と考えあぐねていると、死刑廃止制度への意味も込められている意図を感じつつも、思考を一瞬でも止めてしまうと置いてきぼりを食らってしまう。難解なテーマではないが、日頃からそれについて考えを巡らせていないと追いつくのがやっとだ。
見事なまでに今作に乗り遅れてしまったのは間違いないようだ。
Kappa~中島敦の「わが西遊記」より~

Kappa~中島敦の「わが西遊記」より~

劇団扉座

座・高円寺1(東京都)

2023/05/17 (水) ~ 2023/05/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

中島敦の「悟浄出世」「悟浄歎異」を用いた、沙悟浄が主役というか、ひたすら苦悩する西遊記。相変わらず上手い作りで、岩波の文庫本あたりを読んでいるとより一層楽しめる。

「なんもできない」「チキン南蛮の夜」

「なんもできない」「チキン南蛮の夜」

くによし組

OFF OFFシアター(東京都)

2023/05/16 (火) ~ 2023/05/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/05/17 (水) 19:30

『チキン南蛮の夜』を観た。最高傑作と思う作品がバージョンアップした。面白い。観るべし!観るべし!観るべし!(3分押し)64分。
 2018年に上演された作品の再演で、初演も観ている。國吉の最高傑作だと思ってる作品。初演では私は笑っているだけだったが、本作では加奈子の抱える切なさが前面に出て、ちょっと悲しくなるような部分もある。小野寺ずるを起用したことが効果を持っているのだろうか。インコのピー助を演じた渋谷裕輝が大柄で、力関係がよく分からなくなるという効果もあるように思う。
 星15くらい付けたい。2018年に上演されたときは、新御徒町の古民家カフェで、平日5ステージだけということで観られる人が限られていたと思うが、今回は劇場でまだまだやるので、是非とも多くの人に観て欲しい。

独り芝居『月夜のファウスト』/前芝居『阿呆劇・注文の多い地下室』

独り芝居『月夜のファウスト』/前芝居『阿呆劇・注文の多い地下室』

フライングシアター自由劇場

音楽実験室 新世界(東京都)

2023/05/13 (土) ~ 2023/05/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

懐かしい空間である。ここは上海バンスキングの初演の地として、今や歴史的存在でもあるが、自由劇場がコクーンへ大出世した後は、忘れ去られ捨て去られていたらしい。相変わらずの階上のガラス屋は健在だ。上海バンスキングはここでは見なかったが「赤目」は見た(記憶がある)と串田説(すべては個人の記憶しか残らない)に倣って言って見たくなる。
前半四十分・前芝居「阿呆劇・注文の多い地下室」は、この空間発見の時を素材にした、演劇発見の青春感懐。後半は芝居(メフィストレレス)に捕まってしまった自ら(ファウスト)の人生を回顧する一人語りである。こう言う作品は得てして自慢話になってしまって嫌みになるところだが、地下室に寝転がると天井に星空が見えたとか、悪魔と人間を分かつものは何だ?とか、嫌みになりそうなところが、良い気分で見られてしまう。こちらも、記憶の罠にはまっているのだが、そこを超えて楽しめるのが演劇である。
小劇場ブームのただ中で一風変わった劇団を率いて五十年近く、ほとんど路線も変えずに波乱の昭和演劇史に鮮やかな一ページを加えてきた演劇人の芯の強さに敬服する。それを、都会風な照れと、自負が支えている。テキストを売っていたので読んでみると、そこはよく作品に反映している。先頃横須賀まで行ってみた白鸚とは真逆の道で人生を演劇に捧げた演劇人の舞台であった。(確か二人は同年?)
五十人ほどの観客で満席。2時間20分。

地獄のオルフェウス

地獄のオルフェウス

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2023/05/09 (火) ~ 2023/05/23 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 昨年の紀伊国屋サザンシアターでの「欲望という名の電車」に続き、テネシーウィリアムズを取り上げた、文学座のコンセプトに共感する。
 まるでアメリカ南部のとある町に立ち寄ったような錯覚を覚えさせる、俳優一人一人が立ち上げる空気感。それは、文学座にいつものことと思いながらも、やはり圧倒される。そして、同じ1軒の店内で起こる出来事を、3時間見ただけで、観客はアメリカという国の根っこに、複雑に絡み合う葛藤があり、現代に至りなおはびこっていることを痛感させられる。
 自由主義の盟主として世界を主導し、ウクライナ戦争に於いても、大きな存在感を示すアメリカに、差別と偏見の熱病がはびこっており、それが地獄を生み出している衝撃。
 地獄は、キリスト教の厳格な倫理観が、規格外れの不道徳な人間を処断し、排斥する中で生じており、自由を求め憧れる者は、皆犯罪者のように、白い目で見られている。
 ギリシャ神話の中で、吟遊詩人オルフェウスは、亡き妻エウリュディケー会いたさに、命を絶ち、あの世を訪れ妻と再会する。しかし、決して振り向いてはいけないという戒めを破ったため、妻を連れ戻せなかった。
 ギター弾きの色男ヴァルは、夫との間で地獄に落ちて苦しむレイディの救いの主となる。しかしレイディは、狭い世界の幸福に拘り、ヴァルを地獄にとどめようとする。自由を求めるヴァルは、愛する人を捨てたため(振り向いたため)殺されてしまう。この世界の掟(倫理)を破ったため、レイディも殺される。
 地獄と対比して描かれているのが、体の透き通った、足のない、小鳥。地に触れたら、その鳥は死ぬと言う。ギター弾きは、その歌う哀切な歌によって、彼がこの世界で生きては行けない鳥であることが暗示されている。また、重い病で2階に閉じこもっていたジェイコブが銃を持ち、登場する場面は、地獄の主が、天から降りて来たことを想わせ、たいへん印象深い。
 この世界に希望はない。神もおらず、結局天もない。差別や偏見に満ちた、酷薄で凄惨な現実があるばかり。その哀しみを、神話に重ねて昇華した原作のすばらしさ、そして、それを見事に表現し切った俳優さんたち、演出を称賛したい。

綿子はもつれる

綿子はもつれる

劇団た組

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2023/05/17 (水) ~ 2023/05/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

舞台は四分円。豪華なアコーディオン・カーテンが寝室と客間を仕切る。爆竹花火のような、ビニールに叩き付ける豪雨のような効果音の炸裂と共に時空間が切り替わる。

ある壊れた家庭の人間模様、様々な感情に揺れ動くコップの水。自分でもどうしたらいいか誰にも判らないまま、ただ揺れ続けている。

ホテルでは永遠の美少女、安達祐実さんと不倫相手の鈴木勝大(かつひろ)氏。自宅では夫の平原テツ氏、継子の高校生の息子、田村健太郎氏。息子の友達、秋元龍太朗氏と天野はなさん。鈴木勝大氏の妻、佐藤ケイさんも登場。

表現が不器用な平原テツ氏が安達祐実さんのふくらはぎをマッサージするシーンが秀逸。韓国映画っぽい。
二人のイライラする掛け合いは流石。もう定番。

田村健太郎氏の両親とのシーンにおけるチック症が見事。そして対比しての同級生とのシーンの開放感。食ってるものがやたら美味そう。

個人的MVPは天野はなさん。すっぴんの彼女の魅力に溢れている。加藤拓也氏は良い仕事をした。誰もが昔好きだったあの娘のことを胸の鈍い痛みと共に想い出すようなキャラ。第十一回公演『百瀬、こっちを向いて。/小梅が通る』の2本立てのテイスト。こういうものの描き方がずば抜けている。大林宣彦だったかが石田ひかりと吉岡秀隆で綴った初体験の鈍い記憶のシーンを想起。(付き合えずに妄想で終わった方が、らしかった)。

上手く説明出来ないけれど人に勧めたくなる作品。

ネタバレBOX

平原テツ氏は私立大学の講師。別れた前妻との間に連れ子の息子がいる。後妻の安達祐実さんは前妻との息子に気兼ねして子作りを諦めた。しかし平原テツ氏が別れた前妻と浮気をしていたことが発覚。夫婦仲は冷え切り、家庭内別居の暮らし。安達祐実さんはかつてパーティーで知り合った既婚の男とW不倫。しかし、その男はホテルから出た所で事故に遭い亡くなる。平原テツ氏は夫婦仲の再生に力を注ぐが、安達祐実さんの財布に大切に仕舞ってあった指輪を見付けて激昂。不倫を認める安達祐実さんだったが、既に相手は亡くなっている。彼のことを想い出し泣きじゃくり過呼吸に。やり場のない怒りの拳をどうしたらいいのか判らないまま、安達祐実さんの介抱をする平原テツ氏。「別れたいわけじゃないんだ」。

平原テツ氏の「その変な泣き方をやめろ!」が名台詞。トッド・ソロンズの『ハピネス』を連想させる、一体これ何の話なのか?が炸裂。いや、まだ話は何も始まっちゃいないんだよ。
原色★歌謡曲図鑑

原色★歌謡曲図鑑

株式会社ビーウィズミュージック

CBGKシブゲキ!!(東京都)

2023/05/11 (木) ~ 2023/05/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

めっちゃおもしろかった!かっこいいだけじゃない。楽しかったです。

殺意(ストリップショウ)

殺意(ストリップショウ)

ルサンチカ

アトリエ春風舎(東京都)

2023/05/15 (月) ~ 2023/05/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
未見の三好十郎作品、濃厚な一人芝居(独白劇)。
当日パンフにドラマトゥルクの蒼乃まを サンが戯曲を大幅にカットしていると記している。戯曲を読んでいるわけではないので テキレジの効果的なことは分からない。しかしタイトル「殺意」を抱くに至った真情、その吐露が少し弱い(説明不足)ように感じられたのが憾み。とは言え、膨大な言葉(台詞)で語られる心情、その鬼気迫るような情念。

物語は、最後のストリップショウを終えた女の独白。時代は戦中 前後、その激動期に敬愛した男に殺意を抱くことになった経緯を心情面とすれば、彼をじっと観察することで見えてくる男、いや人間の本質とも言える<生>を突き付けた真情面、この深奥を鋭く妖しく抉ってくる。

ミラーボールの輝く光の中で妖しく揺れる肢体、その魅惑的な姿態が妖艶であればあるほど切なく観える。ショウの後の語り掛けであるから、勿論 体だけではなく心の裸も表している。舞台美術は媚態美術と言い換えてもいいような、シンプルだが物語にマッチした造作。

戯曲の力、それを体(表)現した演技、美術や技術に支えられた効果など、舞台という総合芸術に相応しい公演だ。卑小だが、主役の緑川美紗を演じた渡辺綾子サンが自然体で役になりきっていたのか否か、熱演だが何となく淡々の(線が細い)ような 素が感じられた。もっと荒ぶる凄み迫力、激情があってもよかった。
まぁそれだけ本人と役が渾然一体となっており 観(魅)入ってしまったということか。
(上演時間1時間45分 途中休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台美術は、中央に下方から照らすライトが埋設された舞台、上手 下手にはパイプが組まれており、上手にはマイク、下手には洋酒瓶とグラスが置かれている。勿論 劇中で使用し飲酒する。時にミラーボールが回転し妖しく光のシャワーを浴びせる。

緑川美紗が語る半生、そこには人間の愚かさや卑小さ、その相反する優しさや大らかさを膨大な言葉で紡ぐ。彼女は南の小さな町に生まれ 兄の勧めで上京し、進歩的思想家で左翼の社会学者である山田教授のもとに身を寄せる。そこで教授の弟・徹男に淡い恋心を抱き、二人は心密かに気持ちを通わせる。やがて日本は戦争に突入すると、教授は、軍国主義に迎合した論調に変わる。ほどなくして徹男は出征し戦死する。そして敗戦。戦後、美紗は教授が再び左翼になったことを知る。高級娼婦となった美紗は、あることから教授の殺害を決意。そして教授の後をつけ日常を観察し、俗的な一面を垣間見る。知的であり恥的でもある本性と本能、それが人間であると…。

「転向」という言葉はもう死語であろうか。戦中戦後で思想や信念を180度変えても恥じない厚顔、そうした人に対する憎悪という<怒り>を浮き彫りにする。物語は1940~50年代であるが、現代にも通じそうな内容である。コロナ対策でブレる施策、臆面もなく前言撤回するという、人間の本性は時代<状況>に関わらず醜悪なのかも…。それでも緑川美紗は強かに生きていく。

シースルーの衣裳から下着が透けて見える、その姿こそ本性を曝け出して と言える。舞台を降り、下手の壁に寄りかかり、また舞台で寝そべったりと自由に動き回る。戦前戦中の思想信条に絡めとられた生き方、一転 戦後の踊り子としての自由な生き方、を対比しているような。生きるのは「強い悪意」がエネルギーになっている、は物語の核心であろうか、鋭くて怖い!
次回公演も楽しみにしております。

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