闇の河
劇団俳小
シアターX(東京都)
2024/02/16 (金) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
この劇団の2021年3月公演の『聖なる日』に凄まじく衝撃を受けた。そんな作品を求め、2022年7月サンモールスタジオ公演の今作のチケットを購入したもののコロナで中止。そして到頭今回本邦初の御披露目。『聖なる日』と同じく、アンドリュー・ボヴェルの戯曲。原作はオーストラリアの国民的ベストセラー、テーマは「オーストラリア建国の闇」。
1770年に観測隊を率いたジェームズ・クックがオーストラリア大陸を発見、イギリス領と宣言。1788年1月、上陸した第一船団11隻が植民地シドニーを建設、入植を開始。その後約80年間で約16万人の囚人が流刑地として送られる。
その地には先住民アボリジニ(現在は差別語とされアボリジナルと呼ばれる)が25万〜100万人程生活していたが、1920年頃には約7万人にまで激減。イギリス人が持ち込んだウイルスと虐殺が理由。全てを共同体で共有することが当然だったアボリジニには土地私有の概念がないとされた。(だが近年アボリジニのドリーミングと呼ばれる特殊な世界観の研究によって、ドリームタイム〈天地創造神話〉で生まれた祖先、大地、人類の物語に対し篤い信仰心を持つことが知られるようになる。彼等が自分の生まれた土地とそこに伝わる物語を極めて重要視することも)。
オーストラリアの建国神話は、①イギリス階級社会の犠牲者であった罪人が②未開の地で開拓者として生まれ変わり③土地所有の概念のない先住民と交流し新世界を築き上げる、とされてきた。だが③は全くの虚構であったことが近年暴かれていく。先住民の土地を奪い征服して築き上げた血塗れの歴史であったことを。オーストラリア人が生まれながらに背負った原罪を見つめ直す作品が国民的ベストセラーになる時代に。
焦茶色の布が何枚も垂れ下がり、深い森の奥地の雰囲気を醸し出す。
時は19世紀初頭、些細な盗みを犯した罪でロンドンからオーストラリアに終身流刑となったウィリアム・ソーンヒル(千賀功嗣〈いさし〉氏)。彼について行く妻のサル(夏海遙さん)、息子のディック(根本浩平氏)。シドニーで真面目に舟運の仕事に就くウィリアム、生まれた二人目の息子ウィリー(諸角真奈美さん)。数年後、模範囚として恩赦を受け到頭自由の身になる。ロンドンに帰りたがる妻を説得するウィリアム。「5年間ここで稼ぎ、財を成して帰ろう」と。ウィリアムには以前から目を付けていた土地、ホークスベリーがあった。自分が土地を所有することへの本能的な欲望。「ホープ(希望)号」と名付けた自分の舟で一家は新天地へと漕ぎ出す。だが無人の未開地の筈だったそこは先住民がヤム芋を収穫し、祭祀を営む場所でもあった。
アボリジニの言語を本当に使っているそうだ。よく覚えたものだ。だが、余り効果を上げていない。異文化交流の面白さのようなおっかなびっくり相手と打ち解けていく件だけ。結局、アボリジニが何を話していたかが解らないと、互いの誤解が伝わらないので勿体無い。観客にだけ分かるようにラスト近くの一部を字幕で見せる方が良かった。
アボリジニを妻として暮らす手塚耕一氏。今作の良心的存在。
虐殺から生き残り、全てを目撃したその妻役を西本さおりさん。かなり長大な台詞を上手で立ちっぱなしで話し続ける。大浦千佳さんに何となく似ている。
ある意味、主演の夏海遙さんは山本陽子に似た美人。
惨めな使用人を好演する大久保卓洋氏はガリガリの肉体がリアル。三谷昇のような名助演。
アボリジニの族長役、片桐雅子さんも印象的。
中盤、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』っぽい描写が結構続くが、何か絵的に見えてこない。バランスが悪い。ウィリアム・ソーンヒルの内面の変化に焦点を当てていないからか。作品から曲が流れてこない。
地球星人
うずめ劇場
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2024/02/16 (金) ~ 2024/02/18 (日)公演終了
実演鑑賞
大勢が出演するうずめ舞台は粗くなる傾向があるが、今回は特色ある配役(燐光群猪熊氏や何と言っても黒テント服部氏..ペーター・ゲスナー氏の恐らくリスペクトが反映してると思しい)もありとても楽しみに劇場へ向かった。
もっと狭い劇場で観たい「パフォーマンス」であった(もっとも大勢の場面は板の上に乗らないだろうが)。些か癖のある性格(コミュ障併発)とぶっ飛んだ空想癖の主人公、小学生の奈月は、年一度田舎のお祖母ちゃんちでお盆に会う従兄の由宇と健気な恋を育み(どちらかと言えば奈月の一方的な)、二度目の夏に二人だけの結婚をする。誓約事項は奈月の方からの要求、他の女の子と手を繋がない、等だったが、問われた由宇は少し考えて「来年の夏まで生き抜くこと」と加えた。それが予言でもあるかのように、奈月は小六にして塾講師(大学生)から性的玩具とされて行く。始めは「ごっくん遊びをしよう」と声かけられる。警戒するも巧妙に誘導され、親のいない講師の実家に通う内、ついに口がけがされる。そして「あそこ」=本番の時も時間の問題と感じた奈月は、由宇にセックスをしようと持ち掛ける。ここへ至る経緯も、小学生でしかも病弱(だが性格は悪い)姉の都合優先な家庭では田舎へ行けるかも危うく、紆余曲折して3度目の夏を迎える。挿入までの経過の描写も子どもらしく細かいが、それが親戚中の者に知られ、さらし者となる。以来、実家には戻れず由宇とも会えない思春期を過ごして23年後。休憩を挟んで後半となる。この時点で1時間余が経過したが、配役が変っての二幕が約二時間。こちらが更にぶっ飛んでいた。
幼少の生い立ちゆえに、セックスが出来ず、味覚もない女性となった奈月が、別の男と夫婦になっている。だがこの夫とは特殊な関係で、夫も人と接触できない性質を持ち、仕事は長続きしないがそれを独特の解釈で必然と悟っている。実に際物でお似合いのカップルとして奇妙な同居生活が紹介される。彼らは自分たちが独自の原則で生きている、と捉えていて、彼ら以外の外界は「外部」と呼ぶ。家族からの干渉は相変わらずで、いつしか二人が奈月の田舎に行こうと思い始める。家族には内緒で。そして叔父さんの手引きでお祖母ちゃんの家屋を紹介され、逗留する事に。そしてそこには由宇もいた。彼も過去がしこりとなり普通の生活でないようだ。三人が次第にこの場所での生活の中に意義を見出し始めると共に、彼らは「外部とは異なる行き方」を模索し始めるのだが・・。
ここから先の展開が生物学的にぶっ飛んでおり、体質まで変わって行くグロテスクな彼らの様態は滑稽でもあり、崇高でもある。作者は、演出は、それを狙ったのに違いない。そしてある程度は成功したが、かなりの無理もある。芸劇というおしゃれな空間で、これをやるのか・・。汗が出たし最後まで涼やかさは訪れなかった。祝祭性のためには色々と犠牲にしており、哲学的な掘り下げのためには喜劇性が勝っている。
近年の芥川作家の作品の舞台化と言えばオフィス3○○の「私の恋人」もぶっ飛んだ世界であったが、今回の挑戦もあまりにもな挑戦である。
荒野1/7
愛知淑徳大学演劇研究会「月とカニ」
G/Pit(愛知県)
2024/02/16 (金) ~ 2024/02/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
子供の頃に起こった妻殺しの罪で服役出所し、
今は寝たきり状態の父親の入院費用を
弟妹にも負担してほしいと願い出る長男。
事件後、バラバラになって育てられた7人の兄弟姉妹。
荒野1/7
愛知淑徳大学演劇研究会「月とカニ」
G/Pit(愛知県)
2024/02/16 (金) ~ 2024/02/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
まだ来てない客がいるからと20分近く遅れての開演。
過去の事件を機に
それぞれ別の家庭で育てられた7人の兄弟姉妹。
成長しどういう方法でか長兄が弟妹全員を探し出し呼び集め
出所して今は昏睡状態の父親の面倒をどうするか
最初から最後までテーブルを囲んでほぼ座りっぱなしの状態で話し合う。
夜は昼の母
風姿花伝プロデュース
シアター風姿花伝(東京都)
2024/02/02 (金) ~ 2024/02/29 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
かなりヘビーで難解と感じた。各登場人物のキャラクターが時折把握できなくなるというか、はぐらかされる感がある(16歳なのにずっと家にいるのは高校に行かなかったということ?その歳で働けよ!という話になるのか?)。不条理劇のようにストーリーが迷走するようなところもあり、とにかく素直に流れることがない。そういう作品を書いている作家なのだろう。俳優陣の演技は迫力があり、父親役の山崎氏は凄まじいとすら思えるし弟役の岡本氏はリチャード二世を思わせるような振れ幅の大きい演技で魅せる。
掟
TRASHMASTERS
駅前劇場(東京都)
2024/02/15 (木) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
昨年、復調ぶりを見せてくれた中津留章仁の地方都市の若い新市長と、旧態依然の市議会の対立を素材にした問題劇。22年にも地方都市の閉塞ぶりを描いた作品〈出鱈目〉があったが、過疎化の中で出口のない地方都市は、日本の縮図としては格好の材料で、何とかしなければ、と皆思ってはいてもどうにもならないところを見せる。
汚職で市長ら首脳陣が退陣した地方都市の市長選に、地元出身のデータコンサルタントが故郷帰りする。さっそく初当選するが、新市長(森下庸之)は地方自治法を盾に(占領軍が基本を作ったので結構、住民本位。それをいいことの政府は手を抜く。能登地震でもそこは丸見え)旧勢力の市議会員たちと対立しながら改革を試みる。背景にほっておけば十年もすれば過疎でどうにもならなくなる地方都市の現実のデータがある。三権分立を立て前にまずは、議会に根回しなしで財政改革を進める手法(道の駅に都市企業を誘致する)、次に議会運営のなれ合い手法(この辺りは「堕ち潮」)、さらには地方新聞、ローカルテレビの地方政治癒着が争点にあがる。対立構図は、いままでふつうに取られる善悪の構造とは半逆転しているほかは、さほど新鮮味があるわけではないが、こうして地方の実情を露骨に見せられると、出口がないだけに暗然となる。結構新人も出ている地方の現実もこうなのだろう。
中津留は多作の人で、トラッシュマスターズだけで、もう39回公演というから、ほかに書いた社会問題、風俗劇も作品は多く、数えればそろそろ百になるのではないか。問題の素材だけが面白いという作品も少なくないが、なかには「絶海の孤島」のような傑作もあるし、何よりも、多作して(テレビのような他愛ない娯楽作もある)なかには昨年の「入管収容所」のように実話を巧みに芝居にした見るべき作品もある。とにかく、戦後新劇の社会問題劇作者たちとは比べ物にならない馬力のある現在の演劇界では異色の作者なのである。そこは評価すべきだと思う。
今回は、地方議会の対立勢力の議員たちに新劇大劇団の幹部級のいい俳優を呼んできたのが成功した。青年座の山本竜二の田舎大名さながらの無神経ぶり、女性議員と言えばいい役が多いのだが、気位だけは高く横暴で勝手なだけの女性議員(斎藤深雪・俳優座)、取りまとめが取りまとめにならない議長(葛西和雄・青年劇場)、立て前だけで結局頼りにならない良心派(小杉勇二・民芸)と主演級が巧みに役を肉付けしていて、なんと、3時間(間に休憩10分)飽きさせないのだ。みな面白そうにやっている。
ドラマの結末はお察しの通りで、変なアジ劇になっていないところがいい。だが、作者の馬力を考えればやはりここも面白いだけでなく、一度は本気で取り組んでみるべきテーマであることは忘れないでほしい。
笑わせんな
メディアミックス・ジャパン
本多劇場(東京都)
2024/02/08 (木) ~ 2024/02/18 (日)公演終了
中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~
ホリプロ
東京建物 Brillia HALL(東京都)
2024/02/06 (火) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
かむやらい
カムカムミニキーナ
座・高円寺1(東京都)
2024/02/01 (木) ~ 2024/02/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
毎度のことながら、あらすじは説明不可能!
今回は特に、八嶋智人さんの爆発力に感服(笑)
一緒に太古のロマンの旅をした気分。
パートタイマー・秋子【石川公演中止】
ニ兎社
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2024/01/12 (金) ~ 2024/02/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
重いテーマをいつも軽やかに描いている二兎社の舞台は大好き。
沢口靖子さんの凛とした佇まいが本当に素敵でした。
生瀬さんのヨーデルは、講演後もしばらく頭から離れませんでした(笑)
ストレンジャーズ イン ザ ナイト
スラステslatstick
駅前劇場(東京都)
2024/01/16 (火) ~ 2024/01/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
入江雅人さんの一人芝居の段階から見ていたものが、ものすごい形に進化!
ハラハラドキドキの展開と、とにかく笑える内容と、ホロッとくる温かさに満ちた作品でした。
出演者の皆様方のパワーに満ちた舞台でした。
オデッサ
ホリプロ
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2024/01/08 (月) ~ 2024/01/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
宮澤エマさんじゃないと出来なかったであろうと思わせる役、ネイティブな発音の英語が生きる役。
英語のセリフに字幕を付けるところがまた三谷さんらしく面白い!
最後は畳みかけてくる展開に、本当に面白かったです。
やはり三谷幸喜さんの舞台にハズレなし。
さよなら、チャーリー
アーティストジャパン
あうるすぽっと(東京都)
2024/02/16 (金) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
カリフォルニア州LA、ハリウッドに近い高級住宅街で落ち目だった映画脚本家、チャーリー(山本一慶氏)の葬式が執り行われている。取り仕切るのは十数年来の親友、今はフランスで暮らしている映画監督のジョージ(井澤勇貴氏)。集まったのはマネージャーの柳内(やない)佑介氏と映画会社の社長夫人、枝元萌さんだけ。女たらしの快楽主義者であったチャーリーを心良く思っていた人等殆どいなかった。今回もヨットで映画プロデューサー(ルー大柴氏)の女房(大湖せしるさん)とヨロシクやっているところを見つかって射殺されたのだ。死体は海に消えてしまった。プロデューサーは妻を守る為の正当防衛ということで即日保釈。形ばかりの葬儀が終わり、皆が帰った後に最期の情事の相手だった大湖せしるさんも顔を見せる。
借金塗れのチャーリーの相続財産清算人にされていたジョージが一人家で疲れ果てていると女(山本一慶氏)が訪ねて来る。初対面だが絶世の美女。女は「俺はチャーリーだ。」と言う。「チャーリーなら死んだよ。」と返す。「いや、ここにいるじゃないか。」とふと鏡を見て驚愕する女。神の天罰か、女にされてしまっている。
脇を固める役者がメチャクチャ豪華。枝元萌さんにこんな贅沢な使い方が出来るとは!ルー大柴氏もワンシーンだけだがメチャクチャ客を沸かす。ジョージの恋人役として、神谷敷樹麗(かみやしきじゅり)さんも登場。
何と言っても大湖せしるさんが美しい。余りに美しすぎてチャーリー役を演らせたかった程。
第二幕の山本一慶氏と大湖せしるさんの話し合いのシーンが名場面。名曲「グリーンスリーブス」が流れる中、チャーリーの目が覚め、神が下した罰の意味を思い知る。
是非観に行って頂きたい。
あさがお企画『楽屋』
あさがお企画
六本木ストライプスペース(東京都)
2024/02/15 (木) ~ 2024/02/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/02/16 (金) 14:00
この会場の特色である演技エリア中央にある階段を応用して階上に舞台がある階下の楽屋という設定にしたのはここでの公演が多いオフィス再生の高木さんらしい見立て。そして原典から省いたり加筆したりした上演台本は観劇慣れしていない方にも優しくワカり易い、
それと同時に「楽屋」という芝居を知っている観客に対しては開場時点から「なるほど、そうしたのか……でもアレはどうするの?」と思わせる舞台美術や開演5分前に「そうきたか♪」とくすぐる「シカケ」、一般的には上演中は消灯する非常灯を点けたままにする工夫(?)などマニア(笑)への目配せもふんだん。
あと、「あれ」を「そうした」ことにより序盤で「雄弁に語る手」を見せたり、「影」を上手く使ったりしたのも面白い♪
さらに文字通り「手作り」感満載の当日パンフレットも佳き♪
掟
TRASHMASTERS
駅前劇場(東京都)
2024/02/15 (木) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2024/02/19 (月) 19:00
実話がベースの政治ファンタジー。笑ってる客が多いが全く笑えない話だと思った。88分(10分休み)70分。
広島・安芸高田市での「改革」を焦る市長と旧弊に捕われた市議会に新聞も交えた対立の物語をベースに描かれた作品。ほぼ実話と同じ展開のようだが、何となく納得できないものが残った。社会的な題材を扱っても、登場人物のプライベートな生活を描いて、そこから見た社会的な題材を描く、というのが中津留の特徴なのだけれど、本作ではそれがないのが要因だろうか。だから、ファンタジーに見えてしまう。前半で見せる市議会の様子や、ネットニュースのキャスターの発言など、ありえねぇ、っていうレベルだが、それはそれで面白く観たが、全体にいつものトラッシュじゃない感じが残る。エンディングも後味が悪い。笑ってる客が多いのだが、これが現実だとしたら全く笑っていられない話だとも思う。前作『チョークで描いた夢』で鮮烈な印象を残し、自身のユニット「ぽいぽいスコップ」では見事な劇作力を見せた小崎実希子は、本作でもネットニュースのキャスターを熱く演じ、印象に残った。
中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~
ホリプロ
東京建物 Brillia HALL(東京都)
2024/02/06 (火) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
どん底から這い上がった稀代の歌舞伎役者・中村仲蔵に、藤原竜也がよくはまっていた。藤原は激しい喜怒哀楽と大ぶりの演技なので、ちまちました芝居では臭くなってしまう。今回は、この藤原の特徴を存分に生かせた。二幕の外郎売の蝶早口の膨大なセリフは見ものであった。井上ひさし「薮原検校」の芸の見せ場のようだった。久しぶりにいいものを見た。
もう一つ、「50両」しかせりふのない、「忠臣蔵」五段目の斧定九郎が見せ場。ただ、セリフはないので、歌舞伎とは何が見どころなのかを考えさせられる。戯曲中心の「会話劇」である新劇では、セリフのない見せ場は考えにくい。
上を目指すギラギラした歌舞伎役者を演じる座組の中に、お稲荷さんのコン太夫役の池田成志がトリックスターとしてうまく合っていた。自然体のユーモアと、緊張を和らげるほっとした時間を担っていた。
二役の市原隼人も、肉体派の彼の特性を生かして、荒事をきわめた市川八百蔵と、身投げした仲蔵を助けた新之助にぴったり。
場面が多いらしい(「赤旗」評によれば二幕二十六場)が、舞台に3階建ての芝居の楽屋セットを組み立て、それぞれの階でスピーディーに場面転換して、まったく転換の多さを感じさせない。しかもこのセットは下は稲荷町(大部屋)から、名題(スター)役者までの役者のヒエラルキーも示していて一石二鳥である。
「抗えないことには逆らうな」「俺には抗えないことなんてないと思える」等々、決め台詞も随所に光る。「一本の道がみえる。その先には何があるのか」「お前の中の化け物を引き出してくれる人がかならずいる」「分け前をもらう子分じゃない、獲物を狙う一匹狼」そして、「役者のさが」にいたる。
J•A•C•K
劇団ネモノ会
千本桜ホール(東京都)
2024/02/16 (金) ~ 2024/02/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
若々しく元気なお芝居でしたね。テーマ事態は重いと思いますが、爽やかに比較的明るくまとめられていてよかったと思います。説明会のシーンはもう少しコンパクトにしてもよかったかもですが、うまくまとまっていたと思います。一生懸命に楽しく取り組まれているのが感じられてよい空間よい時間を過ごせました。これからも神庭ってくださいね❗
あさがお企画『楽屋』
あさがお企画
六本木ストライプスペース(東京都)
2024/02/15 (木) ~ 2024/02/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
感想遅くなりました。とても完成度が高いお芝居でした。本作、楽屋は違う団体さんで何度か拝見して大まかな内容も知っていたのですが、素晴らしい演出、演技でとても面白かったです。素晴らしいひとときを過ごせました。ありがとうございました。
掟
TRASHMASTERS
駅前劇場(東京都)
2024/02/15 (木) ~ 2024/02/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/02/19 (月) 14:00
言いたいことはたくさんあるけど、観劇後にいろいろな感想をぶつけ合いたくなるような力を持つ舞台なのだから、これは面白いと言っていい。多彩な社会問題を扱ってきたトラッシュマスターズらしい仕上がりだ。
舞台は人口減少に悩む地方都市議会。国会議員が選挙の際、地元市長や市議に金をばらまいたとして逮捕され、それによる出直し市長選挙が行われる、という設定で始まる。市議会の守旧勢力に推された候補者しか出ず無投票になりかかる直前、海外の金融機関に勤めていたという地元出身の青年が「無投票を避けるため」として出馬する。清新なイメージもあって(イケメン俳優だ)この青年は見事当選。市政運営に当たって議会への根回しなど旧態依然の慣習(=掟)を破壊し、政策を徹底討論する民主主義で二元代表制を再構築しようとする。
当然、議会の守旧勢力は反発し、次第に市長対市議会(守旧勢力)の対決色は深まる。最初は議員の居眠りを市長がSNSに投稿して物議を醸すというありがちな対決からスタートするが、舞台が進むと、地元の農家の大きなメリットになる施策をもそっちのけの政争という展開に発展していく。
その施策が住民のためになるという思いは共通していても、「俺は聞いてねぇ」、つまり根回しがないということで対決姿勢を強める市議会。こういうことは日本全国、各地で嫌というほど起きている。政治家にとってメンツをつぶされるというのは政治生命を賭けた一大事。それを分かっていながら意固地なまでに旧弊打破を唱え、政治の世界の習わしとか旧弊とかを諸悪の根源と決め付けて突っ走る市長は大人げない。最後は両方ともメンツを賭けた戦いになっており、犠牲になった施策や市民はいい面の皮である。
劇作の中津留章仁は、民主主義の正義を錦の御旗に掲げて自分を押し通す市長のあり方も問うているのだろう。人口減少や高齢化、政治への無関心などで衰退していく地方都市の再生は、こんな喧嘩腰ではとてもできないからだ。民主主義は話し合いだ。お互い譲れるところは譲り、論議を重ねていかないと改革などできっこない。この市長vs市議会の争いは、劇中でも出てくるせりふだが「子どもの喧嘩」よりもたちが悪い。
言いたいことは他にもある。市議会側は市長を独裁者呼ばわりするが、ある意味その通りだ。定例記者会見で市長が、議会守旧派寄りの地元紙の市政担当ベテラン記者を「偏向報道はやめなさい」と罵倒する場面は、独裁者を感じさせた。石原慎太郎都知事がテレビ報道もされている定例会見で、記者を罵倒していたのを思い出した。自分の思うとおりにならない報道を「偏向だ」と決め付けるのは民主主義ではない。
また、このベテラン記者が守旧派議員とツーカーの関係を築いてネタを取っていたのを、テレビ局の若い女性記者が「あなたはこんなことをしてネタを取っていたのか」と激しくののしる場面もある。何が真実か見極める報道をするためには、取材対象に深く食い込むことが必須だ。もちろん取材する側とされる側の一線を越えるような「癒着」はあってはならないが、ネタが取れない若造が、深く食い込むことを「癒着」と決め付けて先輩記者、しかも他紙の記者を批判するのは気持ち悪かった。(この女性記者に反論しない地元識者も情けない)
メディアの中にはよくあるのだが、正義感だけで突っ走る記者は表層的なことしか書けないし、本質を突いた深みのある報道を期待するのは無理だと思う。
とまあ、これだけ書いてもまだ言いたいことがある、というのはやっぱり、この舞台はおもしろいということだ。何か言いたいことがある人は、まず、この舞台を見よう。休憩を挟んで3時間の舞台が終わった後は、下北沢の酒場で激論を交わそう。
地球星人
うずめ劇場
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2024/02/16 (金) ~ 2024/02/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★
うずめ劇場を初めて観劇
ストーリーはどうでもいい感じで、主役と思われる女優の台詞が耳障りで途中退席しようと思った位。
幼少期と大人になってからという感じで演じるが
幼少期の方が男女ともに身長が高く…些細な点ではあるが気を使える範疇ではないかなと思う。
2024年観劇初めでしたが、正直長すぎて疲れただけって感じで帰路についた。