最新の観てきた!クチコミ一覧

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海をゆくもの

海をゆくもの

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2023/12/07 (木) ~ 2023/12/27 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

おもしろかった。小日向文世の悪魔役がすばらしい。他のうらぶれたガサツな労働者たちと違い、嫌みなスマートぶりが絶品。弟役の平田満と二人っきりになったとき、正体を現して魂を懸けた勝負を挑む。ぞっとするような怖さがあった。
上演3時間(休憩20分)

ネタバレBOX

最後のどんでん返しも素晴らしい。浅野和之が登場してからずっと探していた眼鏡を、ひょいと見つけることで、勝負の結果をガラッと変えてしまう。見間違いには爆笑だった。この舞台の笑いは浅野の細かい所作が多くを担っており、素晴らしい喜劇訳者だ。捨て台詞して去る悪魔に、悪魔とは知らない兄が「ナンダ未練たらたらじゃないか」と毒づくのも笑えた。

神の恩寵で、最後は悪魔が負ける展開は「ファウスト」だと思った。パンフを見ると、ポーカーに悪魔が参加して最後は負けるというアイルランドの「ヘルファイア・クラブ」の民話がある。それを作者はもとにしたそうだ。でも「ファウスト」も似ている。
東京ローズ

東京ローズ

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2023/12/07 (木) ~ 2023/12/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

アイバ・郁子・トグリは、戦争中、米軍向け「戦意喪失」放送でDJをつとめたアメリカ生まれの日系二世。UCLAを卒業し、医学部の大学院への進学が決まっていたという、当時としては超がつく才媛である。ちょうど叔母の見舞いのために日本に来ていて、日米開戦で帰国できなくなった。戦争中も特高の圧迫に抵抗してアメリカ市民権を手放さなかったのに、それが災いして、戦後米国で国家反逆罪に問われ、禁固10年、市民権はく奪の判決を受ける。なんという悲劇、なんという不条理。この人生だけでも最高のドラマの素材だ。

米穀からの来日、叔母の家、帰国失敗、同盟通信勤め、ラジオ東京勤めときて、戦後はDJ「東京ローズ」を探す米週刊誌記者の誘いに乗って、2000ドル(3万円=日本円で3年分の給料)という報酬と引き換えに「自分は東京ローズ」という契約書にサインし、インタビューを受ける。記事でも、そして裁判でも「真実はわかってもらえる」という甘い考えが裏目に出て、米国の裏切り者探しのスケープゴートにされてしまう。

6人の女優たちの芝居。主人公のアイバを、6人がバトンリレーのようにして交代で演じる。シルビア・グラブの演技がぴピカイチである。ドラマの一番のかなめである戦後、「東京ローズ」とみなされ、米国で有罪判決を受け、刑期短縮で6年で出所するまでを担っている。孤立無援のたたかいを歌う「クロスファイヤー」の重苦しいうめきのような歌も迫力があった。
70年代になって、全米日系人協会が支援を決め、フォード大統領の恩赦が出る。どん底からの逆転勝利の喜びは、歌も大いに盛り上がり、涙が出た。

他の女優は名前は知らないが、パンフを見ると、私が見た舞台にも出ている人が多い。いわば隠れた実力派ぞろい。叔母を演じた飯野めぐみが、拘留中のアイバに面会に来た時の歌がよかった。弁護士コリンズと最後のアイバを演じた森加織も、苦しくてもあきらめない正義派の感じがよく出ていた。最初のアイバと、平ラジオ局員を演じた山本咲希は小柄なのが目立ったが、まだ現役の学生とは驚いた。
2時間半、休憩15分込み

ネタバレBOX

舞台の感想を書こうとして、どうしても概説的なことが先に立ってしまう。ここにこの芝居の難しさがある。救いは全編ミュージカルになっていること。出来事の説明の場面が続くので、音楽がなければトグリ人生のエトキのような芝居になっただろう(民藝、俳優座、文学座など老舗劇団でもこういう芝居はあった)。

先日の青年座「同盟通信」(作・古川健)で、アメリカに帰国できなくなった女性タイピストが出ていた。あれがアイバ・トグリか!と、予想もしなかった二つの芝居のつながりに驚いた。(アイバのほかにも、同じ境遇の二世の女性はいたのかもしれないが)
夜の初めの数分間

夜の初めの数分間

劇団牧羊犬

王子小劇場(東京都)

2023/12/13 (水) ~ 2023/12/19 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

素晴らしかったです。W主演の親子の女優さんの演技に度肝抜かれました。ほんといいものを見させてもらいました。最後の最後で「なるほど、そういった理由であのタイトルなのか…」と思いました。ほんと最高の舞台でした。

ガラスの動物園

ガラスの動物園

劇団銅鑼

銅鑼アトリエ(東京都)

2023/12/15 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

実演鑑賞

さすが銅鑼。
新人とはいえちゃんと俳優。ちゃんと上手い。

開演前と休憩中にポーグスのBGM 。
シェインの逝去をうけてのものだろうか?
それに関係なくこのBGMを使うと決めていたのなら、偶然とはいえタイムリーなものになったなあと。

藁

TinT!

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2023/12/13 (水) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

毎年暮れは、ひっそりと行われるTinT!の公演を楽しみに観ている。毎年、マニアックだがたまらなく興味深い歴史題材を突いてくるが、今年はチャウシェスク。あの壮絶な歴史的事件のエッセンスを、2組の夫婦の対峙のみの舞台で表現してしまう台本の洗練され具合に感嘆する。日本の近隣にも同じような国がありそうな・・・。ついつい今から来年の暮れを期待してしまうが、主宰者にはリラックスして続けていただきたい。

夜の初めの数分間

夜の初めの数分間

劇団牧羊犬

王子小劇場(東京都)

2023/12/13 (水) ~ 2023/12/19 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても面白かったです。私の中ではありそうで今までなかった設定(内容)で良くできたお話だったと思います。役者の皆さんの演技も鬼気迫る場面や弱さ、悲しさなど表現されて素晴らしかったです。ラストも、こう来たか!見つめ会うことでわかり会える。コロナ等で人間関係が希薄になった今に響きました。良い時間が過ごせました。

空ヲ喰ラウ

空ヲ喰ラウ

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2023/11/28 (火) ~ 2023/12/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

12月3日午後、東京は墨田区にあるすみだパークシアター倉で上演された劇団桟敷童子新作公演『空ヲ喰ラウ』を観てきた。これは、知人の役者・もりちえが出演していた関係からである。

客席について目に付いたのが、丸太を組んで作り上げられた舞台装置。バックステージツアーの組まれた日もあるので、この舞台装置、いつものようにラストシーンで大転換をするであろう事が予想された。出演する役者は、劇団員15人に客演4人という桟敷童子としては大人数ではないだろうか。
今回、脚本のサジキドウジは話の骨格に空師という職業を据えた。当初自分はこの空師というものはサジキドウジが舞台のために作り上げた架空の職業と思ったのだが、開演前スマホで検索すると、この空師というのは実在の職業である事を知ってビックリ。ん~、ただ、舞台を観ていて空師達の発する「来々」(らいらい)や「ご安全に」というフレーズは過去の作品でも結構聞かされていたなぁという印象。何か新しいフレーズもあってほしかった。

さて、話はとある山村。この山々の木々を管理しているのが、中村組と梁瀬組という空師の組織というか会社。かつては中村組が幅をきかせていたのだったが、今は頭領が脚を痛めて妻にその座を譲り、梁瀬組が大きくのし上がってきている。過去の歴史もあり、梁瀬組も一応中村組の顔を立てているが、なにせ中村組は女性ばかり。まして、中村組の空師の一人・織本千尋は心臓に持病を抱え、空師の厳しい仕事を続けて行くには不安があった。そんな山地に紛れ込んできたのが、町で問題を起こし逃げてきた彦島春一。偶然中村組の人間に発見され、空師の仕事に向いている事が分かり千尋の元で空師の仕事を学び始める。そこに横やりを入れてきたのが中村組の元頭領、現頭領・中村歩生の夫で脚を痛めた中村成清。町で起こした事件を空師達に暴露すると春一を脅し鐘をせびるようになり、それがエスカレートして春一は死を覚悟して山に消える。中村組や梁瀬組の山師達が春一を探すが見つからず、どうやら春一は山で命を絶ったらしいことが知られる。
その後、中村組は梁瀬組の傘下となり、空師達は今日も仕事に死を出す。

劇のクライマックスは春一が死を覚悟をして山に入り、それを皆が探すシーン。舞台装置が左右に展開し、巨木が現れる場面であろう。
舞台を観ている瞬間は感動と衝撃を受けるのであるが、よくよく考えてみると春一の犯した町での罪は死を覚悟するほどのことだったのかという疑問。春一を死に向かわせる動機がやや弱かったのではなかろうか。
その春一を演じた吉田知生の演技が素晴らしかった。それに、中村組頭領役の板垣桃子、織本千尋役のもりちえと、中村組を演じた役者達の熱演が目立った。客演陣も頑張ったけれど、今回はこの3人に良いところを全て持って行かれたという感じ。

次回は来年の新作。楽しみにしている。

藁

TinT!

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2023/12/13 (水) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/12/17 (日) 14:00

座席1階

今日が千秋楽。40人入るかどうかという池袋の小劇場を訪ねたが、この演劇はすばらしい。あっさり終わってしまうのがいかにも惜しい。「見ないと損するぞ」と書きたいが、千秋楽では仕方がない。

舞台は1989年に起きたルーマニアの革命。民主化運動に倒された大統領と言えば、独裁者チャウシェスク。個人崇拝を高め、困窮する市民を尻目に宮殿に住み、妻とともに贅沢を尽くした。5人以上子どもを産むように国民に強制し、その結果大量のストリートチルドレンを生んだ。今作「藁」は、こうした史実を交えながら独裁者が銃殺されるまでをフィクションとして描いている。演説しているときに暴動が起き、とある田舎町の工場に大統領夫妻が逃げ込んでくるところから物語は始まる。
この工場は政府の配下にある靴工場でありながら、材料にも事欠き、工場長の夫婦は食うに食わずの生活だ。日ごろ憤怒の的としている大統領夫妻が目の前にいるという驚きのシチュエーション。工場長夫婦は表向きは忠誠の言葉を並べるが、民主化組織に寝返った軍に大統領夫妻を突き出そうと画策する。

工場長や、大統領夫妻を演じた俳優たちの迫真の演技は見事だった。ラストシーンに向かっていく時にハンカチを握り締めて涙している客席もあった。一見、そんな感動的な物語ではない。だが、工場長夫妻の一粒種がろくに医療を受けられず病死し、息子への思いが目の前の大統領夫妻への静かな怒りとして表現されている筋書きは、確かに涙を誘う。俳優たちの力に加え、こうした台本の秀逸さが感涙となるのだろう。

「TinT!」の過去作を見ると、タイトルが全部漢字一文字になっている。欧米の史実や著名人の物語をモチーフに主宰の染谷歩が劇作と演出をしている。今作の「藁」は物語の象徴となる一文字であり、過去作もきっとそういう感じなのだろう。思わず次作に期待してしまうが、次の公演予告は来年12月ということであった。

白夜

白夜

池の下

劇場MOMO(東京都)

2023/12/15 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

寺山修司とのことでしたので、こちらの劇団を初観劇しました。

結果から言うと
想像してたのとは全然違い、ほぼ夫の一人芝居だと思います。
個人的には好みの問題だと思いますけれどね…
名古屋からコレを観劇にいらしたというお客さんの気持ちは理解出来ないかも

芝居に限らず良い点と良くなかった点も書いてみます。

・良かった点
開場前後の客の誘導が素晴らしく良かった。
説明も的確、声も聴きやすくこの男性100点です。

・よくなかった点
ストーリーが良くないのかな??
1時間ほぼ夫の一人芝居のあと、あまりにも呆気ない終幕な気がした。

客席で最良と思われる席にキャストを座らせるなんて…

1時間で3500円の芝居とは思えなかった。
厳しく言えば1500円程度、一般的な価格で考えても2000円が限界です。
考えようによっては1時間で終了してくれたのは助かりました。

感想書いたら負け越しでしたね。。。
誘導の方★5、芝居で★-3てところでしょうかね。

夜の初めの数分間

夜の初めの数分間

劇団牧羊犬

王子小劇場(東京都)

2023/12/13 (水) ~ 2023/12/19 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/12/16 (土) 18:00

初見のユニット。新劇っぽいかと思ったら、ちょっと違ったファンタジー。面白い。127分。
 ひまわり(井上薫)は大人気の女優だったが、妊娠を秘密にするために休暇に入り娘・画子(平体まひろ)を産むが、同じ時期、鏡・レンズ・画像に人が映らなくなる「現象」が起こり始める。人々は自身の状況を見るために、肖像画を書いてくれる人を求め、その達人を「カガミ」と呼ぶようになる。有名なカガミになった画子だが…、の物語。SFチックな設定の下で何か事件の展開を考えるのかと思ったら、ファンタジーとして母娘の物語が展開される。ちょっと予想したものと違った展開だったが、それでも面白く観た。作・演出の渋谷は映像系の人らしいのだが、観るのは初めてで、独特のセリフのセンスが面白いのだが、ちょっと過剰な感じがする。また、登場人物それぞれに振ったエピソードをすべては回収できず、これはどうなったんだろう、と思うところが結構あるあたりが惜しい。
 『東京原子核クラブ』から興味を持って観ていた平体だが、今までのイメージとはちょっと違ったテイストの役をしっかり演じていた。『ホテル・イミグレーション』で観た井上は確かな役者だと改めて思った。

なるべく強く踏みつけて、

なるべく強く踏みつけて、

あんよはじょうず。

新宿村LIVE(東京都)

2023/12/13 (水) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/12/16 (土) 14:00

今気になっている劇団の新作は、訳が分からないけどワクワクするアングラテイスト作。(2分押し)104分。
 元々がアングラテイストの劇団。筋はあるんだけど追おうとすると頭がおかしくなるくらいの展開が興味深い。耽美的と言おうかヴィジュアルにも拘り、「いびつな愛」を描く。とにかくスゴイ。

トリプルパパパーズ!

トリプルパパパーズ!

はらぺこペンギン!

新宿シアタートップス(東京都)

2023/12/13 (水) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

実演鑑賞

年に一度しかない公演。
年に一度しか観られない村田康二の演技と絶叫…www
もはや「ゆく年くる年」ですよ。

今回は、
白坂英晃を「武田信玄」と見間違えるほどの猛将揃いの布陣。
将棋でいうたら、キャストは飛車と角行ばっか。
熊野善啓が香車のごとく一手一手指してきますw

とにかく全員、演技が巧い!
キャスティングもミスって無い。
だけど…

他者に影響されない限り、人間って変われないんだなぁー…親にしろ、子にしろ。

とりあえず今は、ここまで。

ねこはしる

ねこはしる

関西芸術座

ドーンセンター・パフォーマンススペース(大阪府)

2023/12/15 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

子猫の成長を通じて生きることと向き合う難しさ、命の大切さについて考えさせられる作品でした。素晴らしかったです!

悪手、喝采

悪手、喝采

21世紀のキリン

SPACE9(大阪府)

2023/12/16 (土) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★

関大系
時間は150分と長いものの、内容が素晴らしい❗LGBTや普通の恋愛だけでなく、師弟関係やパッション等々色々なファクターが絡み合い、狂喜な世界を造り上げていて、長くは感じられない
後ろのおっさんの椅子を蹴るや見えるところに足を投げ出す、マスク😷無しでかなりの数の咳をする等々がなければ完璧
次回も楽しみです❕

鴉翼

鴉翼

関西大学劇団万絵巻

大阪市立芸術創造館(大阪府)

2023/12/16 (土) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

満足度★★★★

学生演劇としては素晴らしいでき
殺陣好きにはたまらないし、内容もgood
但し、ランタイムが二時間(受付確認)→150分(前説)→それ以上(実際)というのは…
関大といえば学園座だが、肩を並べるレベル(直近はこちらに軍配)
楽しめます

『メトロノームが叫んでる』

『メトロノームが叫んでる』

ウテン結構

六本木ストライプスペース(東京都)

2023/12/16 (土) ~ 2023/12/21 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/12/16 (土) 19:05

価格3,500円

初日公演を観てきましたが、とっても良かったです。
今回のだけでも充分に楽しめる内容だったのですが、にみえました2ndシーズンを観続けた人に向けての「X'masプレゼント」的な事があって、「ヘー」とか「あー!」とか思いながら観てました。

ネタバレBOX

始まってすぐの吉成さんのセリフが、伏線になっていたなんてビックリでした。
決められた運命を見に行くという設定も面白かったですね。
自分が居なくなった世界へ行くのは、「絶対に自分で見る事の出来ない世界を見に行く」事で、凄い決心をしたご褒美にみえました。
蒲公英チャン親子もよかったですがマスター夫婦の関係性は憧れちゃいますね。
今回のお芝居は過去の公演と繋がっていて追っかけて観てきた人へのXmasプレゼントのようで嬉しくなっちゃいました。
次の公演の予告もあってもう今から楽しみです。
他人

他人

公益社団法人日本劇団協議会

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2023/12/15 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
現代的なテーマのリアルを コメディータッチで描いた珠玉作。
本作は2022年「日本の劇」戯曲賞最優秀賞(竹田モモコ女史)を受賞している。その上演台本(冊子)を無償で配付しており、上演前に1~2頁読んでみた。会話の中に方言があり、急いで当日パンフを見ると彼女の出身地 高知県土佐清水市の「幡多弁」を使用…とある。この方言が、作品の中で独特の味わいと保守的になりそうなテーマへの緩衝的な役割を果たしているようだ。

登場人物は3人の女性。彼女たちと関わりのある 言わば中心人物は登場しないため、「他人」同士が気まずい雰囲気の中で探り合うような会話をしていく。物語は中心人物が不在の一週間、この限られた時間の中で本音と建前 そして<秘密>を紡ぐが、面白さの中に切なさが滲み出るような味わいがある。

3人の女性は年齢や職業、 住んでいる所も地方と都会で地域での付き合い方も違う。勿論 立場や性格も違うが、女性という共通項で親近感、世代や考え方で違和感を浮き彫りにする。一週間という短い そして奇妙な共同生活の中で それぞれを認め合い将来を話し合うが…。

観客は劇中の設定を知っているが、登場人物はその事実をどのようにして知るのか、そしてどんな態度をとるのかといった関心を惹きつける。慌てふためき、戸惑い 困惑といった可笑しみと人に話せない苦悩、そのコミカルとリアルな姿にテーマの難しさを落とし込む。この3人の女性を原日出子さん、畑中咲菜さん、平松美紅さんが見事なコメディエンヌぶりを発揮して溌溂と演じている。観応え十分、ぜひ劇場で…。
(上演時間1時間35分 途中休憩なし) 追記予定

ガラスの動物園

ガラスの動物園

劇団銅鑼

銅鑼アトリエ(東京都)

2023/12/15 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

久しぶりの「ガラスの動物園」(作:テネシー・ウィリアムズ、訳:小田島雄志)、試演会とは思えない充実ぶり。演技は迫真の表現、照明・音響といった舞台技術は効果的で物語をしっかり支えている。

登場人物はウィングフィールド一家の3人と後半に現れる青年の4人。物語は一家の息子トムの回想として語られる。1930年代のアメリカ セントルイス、一家が住むアパートの一室が舞台。公演は、四方囲み舞台で 観る位置(場所)によって印象が異なるかも知れない。ペーパー仕様のテーブルや引出しは勿論、蓄音機や電話をピアノ(or硬鋼?)線で吊るした舞台装置。四隅が出ハケ口になっており、寝室、キッチン、玄関ドアといった別空間に繋がる。舞台と客席の間を路地として見立て、室内という閉塞とは違った広がりを感じさせる。

試演会(新人公演)であるから、観どころは 役者の演技であろうが、各者各様 その役柄を立ち上げていた。勿論 個々人の立ち位置と性格が中心であるが、全体として観ると1930年代のアメリカの状況が垣間見えてくる。すなわち1929年のウォール街大暴落 世界恐慌を受けての不況、その閉塞・貧困に喘いでいる。その様子が家族の暮らしに色濃く反映されているような描き方。

さて、個々人を観てみると、次のような性格等が浮き上がる。それぞれの人生観を丁寧に現わし(演じ)ており、滑舌も良い。
●母アマンダは大橋由華さん。過去の栄光に縛られ、現状に不満を抱いている。子供たちを自分の意に添うよう口うるさく説教する。
●娘 ローラは井上公美子さん。足が不自由でインフェリオリティーコンプレックスを抱き、内向的で引籠り。ガラス細工の動物コレクションを大事にしている。
●語り手で息子トムの中山裕斗さん。靴会社の倉庫で働いており、毎夜映画を観に出かける。惨めな人生から抜け出したいと足掻く若者。詩作が趣味。
●ジム・オコナーに伊藤大輝さん。トムの職場の同僚。トムが自宅へ夕食に招く。ローラがハイスクール時代に淡い恋心を抱いていた。既に婚約者がいる。

卑小だが、気になったのは場転換(薄暗)時のこと。
(上演時間2時間25分 途中休憩10分含む) 

ネタバレBOX

舞台美術は、銅鑼アトリエの奥にテーブル・椅子、入口近くに玄関、そして鏡、電話、蓄音機が吊るされている。天井には裸電球やガラス細工。テーブルの上にはバスケットや紙皿等があり丁寧な作り。アトリエ内(壁)は暗幕で囲い、床は黒っぽく 全体的に薄暗く電球が橙色に灯るだけ。これが休憩後には配色を変化させ…。

先に気になることを記すが、場転換時、さらに薄暗くなるが それでも歩く姿は分かる。そんな中で、すぐ足が不自由なローラが普通に歩いて移動 いや機敏のよう。劇中ではないが、物語が始まると また跛行のような歩き方という違和感。場転換も含め公演全体の統一というか自然感がほしいところ。
以降 追記予定
ジャズ大名【愛知公演中止】

ジャズ大名【愛知公演中止】

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2023/12/09 (土) ~ 2023/12/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/12/10 (日) 14:00

少し遠い席だったが、楽しく観劇できました。
ジャズって良いなあと体がリズムを取っている公演。
入手さんのダンスも見れて良かった。

#34「闇の将軍」四部作

#34「闇の将軍」四部作

JACROW

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2023/12/08 (金) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

やはり狩野和馬氏のこの演技は高く評価せざるを得ない。敬意を表する。
台本もよくできている。緊張を孕みながら多くの登場人物を巻き込んで淡々と進んでいく政治ドラマの作りがすばらしい。長時間観ていてもまったく厭きない。
「家族か敵か使用人・・・」あの人、ほんとにそう思っていそう。

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