デンギョー!
小松台東
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2024/05/31 (金) ~ 2024/06/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
死ぬ程面白い。大傑作だと思う。
セットは庭劇団ペニノの『笑顔の砦』っぽいリアルな作り込み。舞台美術と照明は天才の仕業だ。詰所の窓とアルミサッシの引戸が開かれる度、ふと見える外の光景。まさしく現実世界に続いていく手触り。TRASHMASTERSっぽい人物の偏執的な描き込み。どうしようもなく沈鬱な現実を提示するのかと身構えるが、展開されるのは高度な喜劇。何重にも捻り過ぎて最早哲学的ですらある笑い。平山秀幸監督の『笑う蛙』を観た時のような全く先が読めない不思議な感覚。これ一体どう落とすのか?と思ったら成程!
宮崎県にある宮崎電業。社長が病気で倒れ、社長代理の森が舵を取る。現場を知らない素人の仕切りに電工(電気工事士)達はそっぽを向き、叩き上げの電工から執行部入りした営業部長(瓜生和成氏)は間に挟まれる。更に執行役員として尾方宣久氏が突然の入社。現場主任の五十嵐明氏や松本哲也氏は不信感を募らせる。
太腿のtattooを見せ付ける事務員の平田舞さんはあーりんを思わせるふてぶてしさで貫禄。
しずちゃんとの結婚で注目を集めた佐藤達(とおる)氏は下請け業者を流石の怪演。
いぶし銀の五十嵐明氏は目付きの変化だけで唸らせる。
軽度の知的障害者であろう吉田電話氏も大ハッスル。
電材屋の依田啓嗣(たかし)氏はヴィジュアル系。
MVPは天才・瓜生和成氏。もうこの人にはかなわない。時折ドクター中松にも見える自然な抜けっぷり。凄い技術。時代が時代なら実録ヤクザ映画で引っ張りだこだったろう。
この高度な笑いのテクニック。混ぜ方が巧妙。時折、吹き出すのをこらえる役者達。シリアスな話の中に必ず毒物を混ぜてくる。
こういう作品を観れる幸運。才能が溶岩のように溢れ出している。
是非観に行って頂きたい。
みんなのご機嫌よかれが肝心かなめ
劇団やりたかった
座・高円寺1(東京都)
2024/05/29 (水) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
ライカムで待っとく
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)
2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
2022年の初演を観たときの衝撃が忘れがたい作品。今回の再演&ツアーでより多くの人に届けられるのは本当に意義のあることだと思う。
理想郷
小田尚稔の演劇
水性(東京都)
2024/05/23 (木) ~ 2024/05/29 (水)公演終了
実演鑑賞
それぞれに事情を抱えた4人の女性が共同生活をはじめ、そしてそれぞれに去っていくまでを描いた作品、なのだが、それぞれの女性の設定を見せたところで終わってしまったような印象で大いに消化不良。
また、小田作品では多くこじらせた非モテ男性が描かれ、もちろんその切実さと解像度の高さこそが小田作品の持つ「力」だったと思うのだが、そこに内在していたミソジニーが今作では悪い方向で発露していたようにも思う。それぞれの「事情」の背後に明らかに男性がいる場合にもその存在が透明化され、あたかも責任が女性にあるかのように描かれている場面が散見されたのもいただけない。
べつのほしにいくまえに
趣向
スタジオ「HIKARI」(神奈川県)
2024/05/23 (木) ~ 2024/05/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
「互助・共助のための結婚法」の施行を間近に控えたある国の話、を、『夏の夜の夢』+αの登場人物の名前と設定の一部を借りながら語る。ラブ婚とケア婚、LGBTQなど結婚に関わるトピックてんこ盛りながら『夏の夜の夢』の枠組みを借りることで2時間の枠内で(ひとまず)まとめあげた劇作が巧み。ただ、個人的にはこの作品が誰に向けられたものなのかという点が気になった。あまりに多くのトピックが詰め込まれているので、普段からこの類の問題に興味を持たない人にとっては(一応ある程度の説明はあるものの)ついていくのがかなり難しい部分もあったように思うし、逆に私のように普段からその周辺の問題に関心を寄せるものからすると新たな発見や驚きが感じられる部分はなかった(祖母と孫のエピソードにはその可能性の萌芽は感じたが)。登場人物それぞれも人間というよりは設定を背負ったキャラクターとして配置されている印象が強く(だからこそ『夏の夜の夢』の枠組みが有効に働くわけだが)、もっとトピックを絞って人間のドラマとして見たかった気もする。同じ興味関心を、もっと言えば、おおよそ同じ方向に社会が「よくなる」ことを臨む人々にとっては志を同じくするものの集うセーフスペースとしての意義はあったかもしれない(が、私自身は演劇にその機能は求めていない)。
Deep in the woods
終のすみか
調布市せんがわ劇場(東京都)
2024/05/24 (金) ~ 2024/05/26 (日)公演終了
実演鑑賞
2022年の『idk.』以来の観劇。会話が(まずは作劇の面で)巧みになっていて驚いた。俳優の演技に拠る部分も大きいが、特に明確な「引き」のない会話が続くつくりにも関わらず、飽きずに集中して見続けられる上演になっていた。ただ、その上演を通して立ち上がってくるものとして会話や場の空気以上のものが感じられなかった点は大いに不満。巧さは十分にあるのでそれで何を書くのかを観たい。
若き日の詩人たちの肖像
平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co.
戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡(東京都)
2024/05/17 (金) ~ 2024/05/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
戸山公園野外演劇祭参加作品。平泳ぎ本店の俳優たちのチャーミングさと野外劇ならではの空気、時間の経過に伴うその変化などが相互に作用しあってよい上演になっていた。
堀田善衞『若き日の詩人たちの肖像』を原作とした舞台を戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊野外演奏場跡で上演するという趣向は、能のような効果をあげているという点において評価できる一方、平泳ぎ本店の「マッチョ」なキャラクターは(それはチャーミングさとも切り離せないものなので一概にそれだけで否定すべきものでもないと思いつつ)作品で描かれる反戦的なメッセージを裏切っているようにも思え、テキスト構成の(見れないほど破綻しているわけではないが必然性もさほど感じられない)ゆるさも相まって、やはり演出家なりドラマトゥルクなりが必要だったのではとも。
かちかち山の台所
SPAC・静岡県舞台芸術センター
舞台芸術公園 ほか(静岡県)
2024/04/27 (土) ~ 2024/04/29 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「かちかち山」をモチーフに、舞台芸術公園とその周辺を歩き回りながら鑑賞するツアーパフォーマンス。「かちかち山」をおじいさんの視点ではなくたぬきやおばあさん、うさぎの視点=周縁化された視点から語り直す趣向と、舞台芸術公園の周囲=外側に観客の意識を向けさせるパフォーマンスの重なり合いが巧み。どこからか聞こえてくるオーボエの音に誘われるようにして自然と視線も周囲に開かれていく。かなりの高低差のある道のりを自分の足で歩き回ることで、そこがどのような土地なのかということが(もちろんそれはその土地のごくごく一部でしかないのだが)自分の感覚でもってたしかに感じられる体験だった。
ピテカントロプス・エレクトス
劇団あはひ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2024/05/24 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
最初の30分というか、原人のパートになるまでが少々しんどかったというのが正直なところ。それ以降はなかなか面白かったのだが、最後の方はセリフが聞こえにくくなってしまったのが残念。劇場の使い方に☆を追加。
ストレンジシード静岡
ストレンジシード
駿府城公園、青葉シンボルロード、静岡市役所・葵区役所など静岡市内(静岡県)
2024/05/04 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
オムニバス・ストーリーズ・プロジェクト『パレードとレモネード』を観劇。
50名以上の登場人物のプロフィールからそれぞれの短いエピソードを立ち上げ、それらを連ねるかたちで演劇作品をつくり上げる「オムニバス・ストーリーズ・プロジェクト」の静岡版。東京芸術祭2023で劇場空間で上演された『オムニバス・ストーリーズ・プロジェクト(カタログ版)』ではエピソードごとに異なる時空間を次々と舞台上に立ち上げていくスタッフ・キャストの巧みさに唸らされたが、街中で上演された今回のバージョンでは、実際に街の中で行なわれている様々な営みと同じレイヤーで上演を観ることになるため、「ああ、こんなにもいろいろな人がここにはいるんだ」ということを改めて、鮮やかに感じる上演になっていたように思う。ストリートシアターのフェスティバルで上演するにふさわしい作品であるのみならず、作品のポテンシャルも十二分に引き出された素晴らしい上演だった。
きなこつみ物語(再演)
劇団きらら
王子スタジオ1(東京都)
2024/05/31 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
みんなのご機嫌よかれが肝心かなめ
劇団やりたかった
座・高円寺1(東京都)
2024/05/29 (水) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
「Collapse Of Values 」Re'
SFIDA ENTERTAINMENT
劇場MOMO(東京都)
2024/05/28 (火) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
きなこつみ物語(再演)
劇団きらら
王子スタジオ1(東京都)
2024/05/31 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/05/31 (金) 13:00
熊本のベテラン劇団が5年ぶりの東京公演。いい話でちょっとホッとする。観るべし!観るべし!!観るべし!!!(5分押し)前説3分、67分。
観るのは3度目の劇団で、昨年の5月に熊本で上演された作品の再演。和菓子屋でバイトすることになった大学生男子と先輩女子2人の日常、…、な話だが、twitter を軸に展開されるあたりが面白い。この劇団独特の手法として、役者が舞台上にずっといて、効果音なども役者の口から発する、というやり方に慣れてきたこともあって、スゴク楽しめた。
黒い太陽
M²
スタジオ「HIKARI」(神奈川県)
2024/05/30 (木) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
板上は作品内容が岡本太郎の作品“太陽の塔”制作依頼過程そのものの経緯に在る為、彼の作品にふさわしく極めて斬新、而も岡本が追求した美しさとしての機能美を具えたものである。今作、脚本の良さは無論のこと、演技、演出、舞台美術から照明、音響、制作に至る迄、総てが作品の趣旨に沿って見事に収斂している。必見の舞台。華5つ☆。尺は約110分。追記6月3日0時58分
ゴースト&レディ
劇団四季
JR東日本四季劇場[秋](東京都)
2024/05/06 (月) ~ 2024/11/11 (月)公演終了
Endless SHOCK
東宝
帝国劇場(東京都)
2024/04/11 (木) ~ 2024/05/31 (金)公演終了
ジーザス・クライスト=スーパースター
劇団四季
自由劇場(東京都)
2024/02/16 (金) ~ 2024/03/24 (日)公演終了
千と千尋の神隠し
東宝
帝国劇場(東京都)
2024/03/11 (月) ~ 2024/03/30 (土)公演終了
あしたはてんきにしておくれ
トツゲキ倶楽部
「劇」小劇場(東京都)
2024/05/22 (水) ~ 2024/05/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/05/22 (水) 14:00
急逝した作家の通夜に起こる奇蹟……。
一言で表せばトツゲキ倶楽部版「煙が目にしみる(鈴置洋孝原案・堤泰之脚本)」だがあちらよりややビターテイスト? 故人が(太宰に心酔するあまり)ダメ人間なことや「一方は覚えているがもう一方は覚えていないこと」に関してなどけっこう辛辣。
その一方で故人に対する各人の気持ちがにじみ出ている台詞が随所にあったり「なぜその人だけ?」な種明かしが巧妙だったり熟練味を感ずる。
あと、「憑依する」舞台表現も巧かったな。
なお、序盤ではプラチナペーパーズ「ラフカット'95(=最初のラフカット)」で上演された鈴木聡「村田さん」を連想。